たいちの仮設避難所

某小説投稿サイトの規約改定による 仮設の避難所です。

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三十五話


南皮




私が買い物から家に帰ってくると、
憮然とした表情の桂花が椅子に座り イライラしているのか
落ち着きのない様子で足を揺すっていた。


「ただいま~、あれ? 荀諶ちゃん帰ったの?」
「あの馬鹿はもう帰ったわよ!」


私が買い物でいない間に何か有ったんだろうか?
荀諶ちゃんの話をした途端に桂花の機嫌が一気に悪くなる。


「・・・近い内に南皮を発つから準備しておいて。」
「え? いいの?
袁紹さんに結構良い待遇で仕官を進められてたんじゃないの?」
「駄目ね、袁紹の君主としての器はともかく
人の話を全く聞かないんじゃどうしようもないわ。
唯一の頼みの顔良は袁紹の言いなりだし、
どんないい計画を持って行っても、
袁紹の気分一つで採用か不採用か決まってしまうんだもの。
・・・・君主以前に人として失格よ。」
「・・・そう。
で、次は何処に行くの? やっぱり陳留?」
「そうね、陳留の曹操様の人柄は申し分ないし、
私の知る限り君主としての器は最高ね。
確実にこれから伸びる方だわ。
孫策も、悪くはないんだけど、あそこは今は袁術の配下だからね。」
「そっか、じゃあ荷物をまとめて 陳留に行く行商人や護衛の手配をしておくよ。」
「えぇ、お願い・・・・喜媚あんたさぁ・・・・」
「ん? なに桂花?」
「・・・ん、やっぱいい、なんでもないわ。
旅の支度は任せたわよ、私はちょっとつかれたから部屋で休んでるわ。」
「わかった、体調には気をつけてね。
ここんとこ桂花は働き詰めだったし。」
「えぇ、わかったわ。
・・じゃあ。」


そうして桂花は自室へ戻っていったが、荀諶ちゃんと何か有ったんだろうか?
明らかに様子が変だけど、大丈夫だろうか?


この日は桂花は一人で寝ると言ったので、久しぶりに私も落ち着いて眠ることが出来、
翌日から南皮を発つための準備を始め、
幸いなことにすぐに陳留へ行く行商人や護衛の手配が着いたため、
この五日後、私達は南皮を発つことにした。

私達が南皮を発つ日、荀諶ちゃんがわざわざ見送りに来てくれた。


「それじゃあ喜媚ちゃん元気でね♪
お姉ちゃんは・・どうでもいいや。」
「あんたはさっさと何処かへ嫁に行きなさい、コレは命令よ。」
「じゃあ、喜媚ちゃんにお嫁さんにもらってもらおっと♪
ね~♪ 喜媚ちゃん。」
「ね~・・・って言われても。」
「寝言は寝てから言いなさい。
どこぞのむさい親父の所にでも嫁に行けばいのよ。」
「お姉ちゃんこそ、さっさとお父様の決めた相手の所にでも嫁けば。
あ、お姉ちゃんみたいな貧相な身体じゃ
その手の特殊な嗜好をもつ変態にしか相手にされないか。」
「あんたも似たようなもんじゃない!!」
「私はお姉ちゃんより中身がいいから。
喜媚ちゃん、私 結構尽くす方だからお得だよ。」
「さっさと仕事に行け!
喜媚! 行くわよ!!」
「え、ちょっと桂花引っ張らないでよ。
じゃあ、荀諶ちゃんまたね。」
「喜媚ちゃんまったね~♪」
「さっさと来い!」


なぜか急に仲が悪くなった桂花と荀諶ちゃん、
一体二人に何があったのかは分からないが、
まぁ、許昌に居る時もこういう時があったから
次会うときにはまた仲良くなっているだろう。


こうして私達は南皮を後にし、陳留へ向けて旅だった。

陳留までの道中は特に問題なく進んだが、
やはり陳留に近づくつれ、治安が良くなってきているのか
妙な視線や怪しい人物を見ることがなくなってきている。

噂では 最近曹操さんは陳留の刺史に出世したそうだから
その影響もあってか、道中は安全に旅をすることが出来た。


「所で桂花、曹操さんのところにはどうやって仕官するの?
荀緄さんや袁紹さんの時みたいに曹操さんに人脈を使って仕官するの?
確か桂花は曹操さんと知り合いだったよね?」
「陳留では今 人を集めてるそうだから、
今回は曹操様の文官としての試験を受けるつもりよ。
曹操様は出世されたから面会できるかどうかわからないし
知り合いといっても何度か書簡をやり取りした程度だから
そんな私がいきなり訪ねていっても迷惑になりそうだしね。
それに曹操様のところなら 能力さえアレばすぐに上に行けるから
直接面会出来る立場になった時に改めて挨拶すればいいわよ。」
「そう、桂花がそうするつもりならそれでいいんじゃないかな。」
「なんか、投げやりな言い方ね。
・・そういえば、今度会う時は あんたも連れてこいって言われてたわね。
まだ覚えてらっしゃるかわからないけど
場合によってはあんたも曹操様に会うかもしれないから
失礼の無いようにしなさいよ。」
「・・私は会いたくないんだけど。」
「別に取って食いやしないわよ。」
(私はともかく、桂花は別の意味で食べられるかもしれないけど・・・)


若干桂花が曹操さんとそういう関係になったことを想像した時
不快感があったが、そのほうが桂花にとってきっと幸せかも知れない。
曹操さんの元でなら桂花はその才能を充分活かすことが出来るだろうし
陳留の民や、この国の人達にとっても そのほうが良いような気がする。

私はこの時はよく考えもせず単純にそう思っていた。


陳留に着き、行商人達と別れまずは宿を取り、
翌日から、住む家を探す。
たまたま運が良かったのか、
宿屋の御主人がこのあたりに顔が効く人で
安くてそこそこ広い空き家があるというので
持ち主を紹介してもらったのだが・・


「今まで何人も曹操様の所に仕官目的出来た者がこの家を借りていったが
誰一人として登用されなんだ。
以来、なかなか借り手がつかんでのう。」
「そう? なかなか値段の割に良い家だし、
ならば 私が借りて曹操様のところに仕官出来た第一号になってあげるわよ。」
「まぁ、儂としても借りてくれるのならば文句はないが
曹操様の所に仕官するには並大抵のことではないから
しっかりと準備をし、心してかかるようにな。」
「ご忠告感謝するわ。
喜媚、この家にするわよ。」
「桂花がいいなら私はいいけど・・・」


こうして陳留に来てすぐに家は見つかり、
数日掛けて掃除し、日常生活をおくるには問題ない状況になった所で
早速 桂花が曹操さんの所に文官としての試験を受けに行った・・・のだが
その日の内に合格してくるとは私も予想していなかった。


「案外楽勝だったわよ、あんたの算盤も一応用意していったんだけど
使うまでもなかったわね。
ちなみに兵糧を管理する部署に登用されたわ。」


桂花には以前からせがまれていたので 算盤を送っていたのだが、
そもそも暗算の能力がかなり高い桂花には
必要なのか疑問に思う時がある。
私が昔 四則演算を一緒に勉強した時にはあっさり習得してしまったし
二桁の掛け算を私は簡単に解くテクニックを使って
インチキをして 桂花をからかおうと思ったのだが
あっさり暗算で解かれてしまったこともある。


今回はその計算能力を買われたのだろう。
・・そういえば原作の桂花も最初に出た時は
兵糧の管理をしていたっけ、などと思いだしていたが・・


この時 もう少し先まで思い出していれば
あんな思いはせずに済んだのかもしれない。


桂花があっさり曹操さんの所に仕官することが出来、
急なことだったのでお祝いは翌日改めてと言うことで
その日は簡単なお祝いだけして就寝、
翌日改めてお祝いのための料理の準備をしていた。


(コレで桂花が無事曹操さんの所に仕官できたから、
私の役目もそろそろ終わりかな。
近い内に荀桂さんに書簡を送って
許昌に帰る準備でもするか・・・)


買い物から帰り、お祝いのための料理を準備がほぼ完了し、
丁度 桂花が日が沈む前にお城から帰ってきたので
桂花が軽く汗を流している間に食事の準備をする。


「それじゃあ、昨日もやったけど、桂花おめでとう~。」
「ありがと、まぁ、私にかかかればあんな試験楽勝よね。」
「桂花が凄いのは認めるけどあんま調子に乗らないようにね。
調子に乗ってるといつか足を掬われるよ?」
「わかってるわよ。
お母様みたいなこと言わないでよ。」
「一応 荀桂さんから桂花のお目付け役を頼まれてるからね。」
「はいはい、まったく・・お母様も余計なことを。」
「荀桂さんの話はいいとして、今日はお城でどんな事したの?」
「今日は大して仕事らしい仕事はやってないわよ。
城の中の案内と関係者への挨拶周りと仕事の説明ね。
後は現在の兵糧の備蓄量やらが記載されてる竹簡を読んだり。
本格的な仕事は明日以降になるそうよ。」
「そっか、頑張ってね。」
「任せときなさいよ、すぐに功を上げて、
もっと大掛かりに陳留の内政に介入できる立場になって
この邑からこの国を立てなおしてやるわよ。」
「大きく出たね、でも桂花ならきっと大丈夫だよ。
焦らなくてもいいから足場を固めて安全で確実にね。」
「そんな余裕は無いわよ、
今もこの国は持ちそうにないのに悠長なこと言ってられないわ。」
「そういう思いは桂花一人じゃ無いんだから、
皆と協力して頑張っていけば いつかこの国をよく出来るよ。」
「そうね・・まぁ、曹操様は上司としては申し分ないから
後は曹操様にどんどん出世してもらって、
多くの県や州を管理する立場になってもらえば
それだけ、多くの民にいい暮らしをさせてあげられるわ。
そのためにも明日から頑張らないとね。」
「頑張ってね。」


翌日から桂花は洛陽や南皮で仕事をしていた時のような陰鬱な表情ではなく、
生き生きとした表情で、お城に出かけていった。

この調子なら、問題無いだろう。
そう判断した私は、荀桂さんに桂花の様子を伝えるのと、
そろそろ私がいなくても大丈夫だろうと言う内容の竹簡を書き、
許昌の荀桂さんに届けてもらうように手配をすることにした。


丁度その頃だろうか、
今まで以上に天の御遣いの噂があちらこちらから聞こえてき出したのは。
最近は食堂や酒場に行けば必ずといっていいほどその噂を耳にする。
そろそろ一刀くんがこの外史に降り立つ頃なのだろうか?


そんな時、近くで賊の集団が発見されたという報告を受けたのか、
曹操さんが夏侯姉妹と兵を率いて賊の討伐に出かけて行くのを遠目から見た。
ここの兵はよく訓練されているようで、
動きに大きな乱れもなく、整然と行進している。
私の周りに人々もその様子を頼もしいと感じているのか、
好意的な視線で見つめるものや、声援を送る者もいる。
この様子を見るだけで、
曹操さんがこの陳留でどんな政治を行なっているのかがわかるようだ。


この日からしばらくして、
賊の討伐が終わった曹操さん達が帰還したと言う話を桂花から食事中に聞いたが、
天の御遣いが見つかったという話は聞かなかったし
珍しい服をきた青年を拾ったという話も聞かなかった。


そしてしばらく後、私に取って最初の運命の分岐点、
その始まりとも言える日を迎える。


その日は普段通りの穏やかな日だったのだが、
二つほど変わったことがあった。
一つは曹操さんが兵を率いて賊の討伐に出たこと。
コレはそれほど珍しいことではない。
曹操さんは賊が発見されたり、近くの村や集落が襲われたと言う報告を聞いたら
すぐに兵を率いて現地の確認と賊の討伐を行う。
問題はもうひとつの方だ・・・

桂花が夜になっても帰ってこないのだ。

桂花が仕事で帰ってこない日は別に珍しいものではない。
袁紹さんの所にいた時も時折そういう日があったし
陳留に来てからもそういう日はあったが、
必ず事前に予定を話していたり、後から使いが来て連絡が入ってきたのだが、
この日は連絡が来ることがなかった。

しばらく私は家で待っていたが、
何時まで経っても状況が変わらないので夜にお城に行き
門番に人に確認をとってもらうことにした。

陳留の警備兵は基本的に親切で、
こういったことを頼んでも賄賂も要求しないし
城で働く桂花が帰ってこないとなれば
色々と問題があるため、すぐに確認してくれた。


「遅れてすみません、
荀文若殿なら本日は曹孟徳様と、
近隣の村を襲った賊の討伐に向かわれたとのことです。」
「・・・え? で、でも、桂花・・荀文若様は文官で兵糧担当ですよね?
なんで賊の討伐に同行したんですか?」
「私も詳しくは知りませんが、
曹孟徳様に呼ばれた後、一緒に出陣したと言う話です。」
「・・・・そ、そうですか・・・・ありがとうございます。」


わたしはとりあえず家に帰りながら、
なぜ桂花が賊の討伐に参加したのかを考えていたが、
私の記憶と知恵袋の両方である出来事が有ったことを思い出した。

それは桂花が曹操さんの軍師として登用される事件。
族の討伐に持っていく兵糧の算出を頼まれた桂花がわざと少なめに報告し、
自分の策ならば提示した兵糧で十分だと言い、
それを証明出来なければ・・・・桂花が首を差し出すと言うイベントだ。


それを思い出した時、私の頭から一気に血が引き、
頭の中に氷を突っ込まれたかのような冷たさと、
アレほど、足場を固めてじっくり行けばいいと忠告したのにもかかわらず
それを無視し 功を焦った桂花に対する怒り。
荀桂さんに申し訳ないと言う罪悪感。
原作とは違い、私と関わったせいで、
もしかしたら桂花が本当に首を斬られるのではないかという恐怖。
様々な感情で頭が混乱し、どうやって家に着いたのかわからないが
家についた時には私は完全に混乱状態になっていた。


(桂花・・どうしてこんな事を・・・
そんな危険を犯さなくても桂花なら着実に一歩一歩やっていけば
すぐに曹操さんの目に止まるのに!
もしかしたら私のせいで桂花が居なくなる?
いや! 桂花の事だ、わざわざ首を賭けなくても、
言葉巧みに曹操さんを説得したに違いない!)


こんな思考が頭の中でずっとループして
とても眠ることなど出来ないし、
今の私にはどうすることも出来ない。


(せめて私がそばにいれば桂花を守ることもできるのに!)


そんな事をずっと考えたいたら、気がついたら朝になっていたようで、
窓から差し込む朝日が私の顔を照らし、作っておいた食事も既に冷めきっていた。


この日から数日間、私はろくに食事も取れず、
眠ることも出来ず、最低限の水と食事だけはなんとか摂り、
ひたすら桂花が帰ってくることを祈りながら家で待っていた。


(桂花が居なくなる・・死ぬかもしれないと思っただけでこのザマか・・・
私は自分が思ってた以上に桂花が大切だったんだな。
それにわかっていたはずなんだ、桂花が私と生きる世界が違うことくらい。
桂花が生きる世界は、民のため、国のため、主のために命を懸け、
功を上げるために命を懸け
才を活かすために時に己の全てを懸ける世界。
ここで、桂花が曹操さんを説得して討伐に参加したのならまだいいけど、
もし、原作通りに首を賭けて討伐に参加したのなら・・・・・・私は許昌に帰ろう。
生きる世界が違う桂花にはもうこれ以上付き合えないよ。
これ以上一緒にいたら私は本当に桂花から離れられなくなる。
本当に最後まで桂花に付き合って 戦乱の世を生きることになる。
今でもこのザマなのに 私にはそんな世界・・・耐えられそうにないよ、桂花。
・・でも今は・・・今だけは無事に帰ってきて!)




結局、桂花が帰ってきたのは この翌日の午後だった。


「ただいま喜媚! やったわよ! 私 華琳様の軍師になれたのよ!!」


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  1. 2012/09/19(水) 03:00:52|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

三十六話へのリンクを設置、と
  1. 2012/09/21(金) 20:41:57 |
  2. URL |
  3. 読み返しは一気に派 #e.MnMlRY
  4. [ 編集 ]

脱字を見つけたので報告

調子に乗ってるといつか足元を救われるよ?
→調子に乗ってるといつか足元を救われるよ?」
  1. 2012/10/06(土) 17:49:29 |
  2. URL |
  3. へいほう #0DCaDBFQ
  4. [ 編集 ]

誤用?

上の方とは違う点なんですが、
[「調子に乗ってるといつか足元を救われるよ?」]は、
[「調子に乗ってるといつか足をすくわれるよ?」]ないでしょうか?
「足元を救われる」は誤用だそうです。
また「すくわれえる」は漢字では「掬う」のようです。
  1. 2012/10/06(土) 19:29:00 |
  2. URL |
  3. るーふぁ #TTgf5Lno
  4. [ 編集 ]

Re: 誤用?

誤字の指摘ありがとうございました。
修正しておきました。
  1. 2012/10/06(土) 20:05:34 |
  2. URL |
  3. たいち #-
  4. [ 編集 ]

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