たいちの仮設避難所

某小説投稿サイトの規約改定による 仮設の避難所です。

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二十五話


許昌




関羽さんが一緒に生活するようになり、
畑仕事は楽になったのだが、
桂花が良く来るようになった・・・と言うか
監視しに来るので
総合的に見ると、仕事の進み方はあまり変わっていない。

桂花が来ると、作業そっちのけで
話し合いがはじまるのだ。

最初は関羽さんの希望通り、
簡単な農業の知識を話していたのだが、
途中から兵法の話になり、
小石を並べては、この状況の時はどう攻めるべきか?
等と 話しをしている。

また関羽さんが模範的な生徒なため、
教える方の桂花も楽しいらしく、
徐々に白熱していき、私も巻き込まれて
ちょっとした討論会になる。

そこに郭嘉さんが混じったらもう終わりだ。
その日はろくに作業にならない。


そして武術の訓練がまた厳しい。
関羽さんが私の限界ギリギリを見極めて 模擬戦の相手をするので、
最初の方は 終わったら ろくに立つこともできなくなる日もあった。
流石に次の日仕事にならないので、
そういうぎりぎりの訓練は止めてもらったのだが、
それでもキツいものはキツい。
更に質の悪いことに関羽さんに悪意が全く無いので、
私も下手に手を抜いたり出来ない。


そんな、新しい生活を送っていたある日、
突然城壁の見張り台に設置されている銅鑼が激しく鳴り出し、
賊が攻めてきた合図が街中に鳴り響いた。


「な、何事ですか!?」
「賊が攻めてきたんだよ!」
「喜媚、行くわよ! 関羽、あんたは喜媚の家で待ってなさい!」


私は桂花が言うように、
桂花に付いて銅鑼の鳴った東の城壁まで走っていくが、
関羽さんも私達に付いて来た。


「待ってください、お二人は何処に行くんですか?」
「城壁よ!」
「城壁!? ならばこの関雲長もお伴します!」
「あんたが何を勘違いしてるか想像はつくけど、
別に私達は戦いに行くわけじゃないわよ。」
「ならば武器も持たずに 何をしに行くのですか!?
賊が攻めてきているというのに!」
「私達は戦闘の様子を観察しに行くのよ。」
「賊が攻めてきているというのに 物見遊山ですか!!」
「違うわよ! 賊相手の策や防衛の陣形は
私達も関わっているから、実戦でどう運営されるのか見て、
兵の被害を最小限にするために少しでも改良点を見つけるのよ!」
「・・・ならばやはり私も着いて行きます!」
「ただの野次馬根性なら この許昌からあんたを叩き出すわよ!
兵の命がかかってるのよ!」
「違います! 城壁から観察するとは言え、
お二人に何かあったら大変です。
私なら飛んでくる矢くらい叩き落せますから、
お二人の護衛として着いて行きます!」
「・・・もう! だったらしっかり守りなさいよ!」
「承知!」


そう言うと私達は、城壁に登る階段を駆け上がり、
既に付いていた郭嘉さんや荀桂さんと合流する。


「どんな状況!?」
「あら、関羽ちゃんも来たの?」
「私達を守るんですって。」
「そう・・状況は悪くはないけど、
今までで一番数が多いわね・・・
どこからかき集めたのか、六百はいるわね。」
「郭嘉、兵種は?」
「ほとんどが農具などで武装した歩兵ですが
チラホラと槍が見えます。
それと騎馬が百五十ほど。」
「百五十! やっかいね・・・」
「こっちも東側で出せる最大数出していますので 平原で勝負をつけます。
畑を荒らされるわけには行きませんので。」
「他の方角は大丈夫なのね?」
「今のとこ、問題ないようです。
一応それぞれの方角に、
最低限の盾隊と槍隊の合同部隊を用意しています。
私なら騎馬は、城壁脇に伏せておいて、盾隊で抑えた所で
弓で牽制後、南北両方から突っ込ませます。
まぁ、賊が正面から突っ込んできた場合の話ですけど。」


桂花と郭嘉さんが作戦について話しあっている間に
私がこの間、郭嘉さんの眼鏡を作った職人に頼んで
部品を作ってもらい その場ですぐに組み上げれる
簡易望遠鏡を使って賊の様子を確認する。

この簡易望遠鏡は、少し厚めの皮を丸め、
その両端に作ってもらったレンズを
嵌めこむだけの簡単なものだ。
眼鏡があるなら出来るだろうと思って頼んでみたら、
以外にあっさりできてしまったので、
この世界の科学技術の進歩のいびつさを感じたのだが 便利なので使っている。


「喜媚、大将は分かった?」
「大将っていうか・・何人かそれらしいのがいるんだけど、
総大将っていうのはいないみたい。
それぞれ好き勝手に動いてる気がするんだけど・・
どう思います荀桂さん?」
「そうね、私もそうだと思うわよ。
アレだけの数の賊がまともに運用されるとは思えないわ。
見たところ装備も部族もバラバラ、
完全な寄せ集めで人数だけ集めたって感じね。」
「ならばこの後の対応はいつも通りで構いませんか、荀桂様?」
「私に言われてもね、今回総大将は私じゃないんだから。
でも警備隊の部隊長にも今の話を連絡してあげて。
あの子は優秀だから、もう知ってると思うけど一応ね。」
「はい!」


そう言うと郭嘉さんは城壁を走って行き、
部隊長の所に報告に行った。

所でさっきから関羽さんの様子が変だが大丈夫だろうか?
そう思い、彼女の方を見ると、
顔は真剣そのものだが、
きつく握りしめた拳に血が血管を回らなくなり 指が白くなっていた。


「関羽さん大丈夫?」
「・・・え? あ、大丈夫です!」
「気分がわるいなら 少し座っててもいいよ?」
「大丈夫です、私も賊退治は何度もやってますので、
この程度・・・・」
「でも関羽さんがやってた賊退治って こんな大規模な戦闘じゃないでしょ?
別に気分が悪くても誰も笑ったりしないから 少し座ってゆっくりしたら?」
「いえ、大丈夫です。
下では実際に戦う兵士の方々がいるのに、
私がのんきに座って休憩など取れるはずもありません!
それに喜媚殿達を守るのが 今の私の仕事です!」
「そう? ・・・ならお願いね。」


どう言っても 言うことを聞いてくれそうにもないので、
とりあえず関羽さんはそっとしておく。

私も賊に変な動きがないか 観察しておかないといけないので、
彼女だけにかまっている訳にはいかない。
私がなにか見落としたら、兵士の人達が危険になるのだから。


そして郭嘉さんも報告から戻ってきて、
私達は城壁の上で下の戦闘の動きを観察する。
今日は荀桂さんも弓と矢を持っているので 戦闘に参加するようだ。


「喜媚ちゃん、優先して倒すべき相手がいたら教えてね。
私が弓で狙ってみるから。」
「はい、分かりました。」


私も一応 弓は引けるが今回は簡易望遠鏡を使っての、
敵の監視が主な役割なので、その役目に徹する。


戦闘は概ね郭嘉さんや桂花の予想通りなのだが、
賊の騎馬が別々の指揮官が付いているのか 少し広がりすぎているので、
警備隊の指揮官が指示を出して、
騎馬の動きを誘導するように弓隊に指示を出す。
コレは当てるためではなく騎馬の牽制なので、
馬の進行方向を誘導するように矢の雨を降らせられれば
訓練されていない馬なら逃げるように動くので ある程度誘導できる。

誘導した所で、もはや許昌名物の長槍隊による槍衾だ。

騎馬は混乱、又は串刺しになっていくが、
一部の騎馬隊だけわかっていたように途中で方向転換し
盾隊に突っ込まず横に回り込もうとする。


「槍衾を知ってる賊がいたみたいですね。
前回の生き残りがいたのか 見てたものがいたのか・・」
「そうみたいね、でもこっちも騎馬はあるのよ。
・・・ほら。」


盾隊に突っ込まず北の方へ避けていった賊の騎馬隊は
ちょうど方向転換しようとした時、
北側城壁の影に伏せていた騎馬隊に
横から突っ込まれて蹂躙されている。

騎馬の突進が不発に終わったが
賊の方は指揮系統がしっかりしていないのか、
当初 出されたであろう 突撃の指示を律儀に守り 盾隊に正面から突撃する。

その際、既に盾隊に突っ込み槍衾に蹂躙された騎馬隊の生き残りが、
後ろから突っ込んできた歩兵に押しつぶされ、
賊の前線は崩壊、後は合図と共に 賊の歩兵後方に矢の一斉射が放たれ、
南の騎馬隊が次の合図とともに 賊の歩兵の側面から蹂躙し敵は混乱、
その後は掃討戦へと移行し、今回の戦闘は終了した。


「やはり、賊相手の防衛戦ならこの陣形や、槍衾は使えますね。」
「一本道の渓谷等でコレをやられたら最悪ね。
火計が使えればいいけど、あの盾、
燃えにくい木でできてるし、鉄板貼ってあるのよね・・・
どっかの馬鹿の入れ知恵で。
油壺の投擲だって距離が近く無いと使えないし・・・
それにあの部隊、
火計対策は徹底的に訓練で仕込んであるのよね。
・・・・私だったら どう攻めるか。」
「やはり正面からは危険です、
渓谷なら多少時間を掛けても側面に回り
落石を狙うべきでは?」
「そうね・・・でも登れる程度の渓谷ならいいけど
城壁で区切られた通路だと使えないわよ。
盾隊で抑えられて城壁上から矢で撃たれて壊滅ね。
まさに今の賊のように。」


二人は戦闘中にもかかわらず
策や敵対した場合の対策を議論している。
・・・・最初と比べて随分精神的にタフになったものである。

しかし、関羽さんはそうは行かないようだ。
城壁の上から戦闘後の戦場を見て呆然としている。
まるで、最初の頃の私達のようだ・・・
やはり幾ら未来の美髪公と言えども私達と同じ人間、
私なんかより身体も技も心も強いが 彼女も女性。
おそらく初めて見る大規模な戦場なのだろう、
大地を真っ赤に染め上げる血や 数百にも及ぶ馬や人の死体の山、
今までの常識を打ち壊すその光景に、頭が追いつかないのだろう。

私が関羽さんのそばに寄って、彼女の肩を叩くと
ビクリと一瞬 身体が震えた後、
私の方を振り向いたが、
彼女の表情は暗く、血の気が引いたのか青ざめていた。


「関羽さん大丈夫?」
「・・・だ、大丈夫です?」
「無理しなくてもいいよ?
私も そこの桂花と郭嘉さんも最初は皆 今の関羽さんみたいだったんだから。」
「・・・い、いえ! 私は武人です!
戦場で武人が怯えるなどあってはならないことです!
えぇ! 大丈夫ですとも!」


彼女の口調が少しおかしくなっている、
誰が見ても大丈夫とは思えないが
これ以上無理に彼女を追い詰めてもいい結果にはならないと思った私は
桂花達に先に帰るように言い、
彼女達もわかっているのか あっさり認めてくれた。


「じゃあ、関羽さん帰ろうか?
今回の戦闘での話し合いはまた後でもできるし、
私達がココに残ってるとみんなのじゃまになるし。」
「・・そうですね。」


私は関羽さんを連れ、家に戻る。
途中で兵士の人や死体を片付ける穴掘りの人達と何人もすれ違ったが、
皆、一様に暗い表情だった・・・


(やっぱり勝利の一瞬だけは皆喜ぶけど、
その後始末・・・この時間になると急に現実に引き戻される・・
大義ある戦争でもなく、ただ奪われるだけの争いだから
そう思うのもしょうがないんだけど、
皆がこんな目に合うのはできるだけ少ないほうがいいな・・・)


私達は家に向かう途中、お互い何も話さなかったが、
おそらく関羽さんも道中出会う人達を見て、
私と同じようなことを考えたのだろう・・・

私は気落ちするばかりだが、
関羽さんの瞳にだんだん力が戻っていくのがわかる。

何かを決意したような感じが、
彼女の表情を見ただけで感じられる。


こういう時に、私と彼女達では
明らかに生きる世界が違うのだと言うのを感じる。
私はただ、ひたすら嫌気がさし、
こんな事なくなればいいと思うばかりだが、
桂花や郭嘉さん、それに関羽さんは
自分で動いて何とかしようとしている。

時々、そんな彼女達を見るのが無性に辛い・・・


家に無事たどり着き、
母さんに簡単に報告した後、
私と関羽さんは一旦 井戸で顔を洗ってから、
母さんが作ってくれたお粥を食べた後、
軽く就寝の挨拶だけして、それぞれの部屋に向かった。




戦闘の記憶が残っていて
眠れずに布団の中でぼーっとしていると、
庭のほうから何か、風切り音のようなものが聞こえてきた。
ただの音だけなら私も無視するのだが、
その音が一定のリズムで鳴っている。

何かあるのかと思い、鉄扇を持って庭に行くと、
そこには青龍偃月刀を一心不乱に振る関羽さんが居た。


「・・・・なんだ、関羽さんか。」
「え? ・・・喜媚殿。
起こしてしまいましたか?」
「いいや、元々寝てなかったし、
気にしなくていいよ。
関羽さんは何してるの?
訓練にしては遅過ぎない?」
「・・・・・すいません。」


関羽さんはいきなり謝ったと思ったら無言になり
偃月刀を下げ その場に佇んでいる。


「・・・今日の戦闘の事?」
・・・・ビクッ。
「やっぱり・・・」


私は関羽さんの傍へ行く、
すると彼女の手が若干震えていたので
私はそっと彼女の手を握る。


「あ・・・・」
「戦場に実際出たわけじゃないけど、
あの戦場の空気に触れて、あの結末を見たらしょうがないよ。」
「・・・・しかし。」
「さっきも言ったけど、私も桂花も郭嘉さんも皆最初はそうだったよ。
皆最初は・・・怖かったよ。」
「・・・・っ!
し、しかし私は武人として! ・・・・武人として。」
「武人が怖がったって別にいいじゃない。」
「・・・え?」
「関羽さんはあの戦場を見て怖いと思ったかもしれないけど・・・・
その帰りに皆の表情を見て、何か思うことがあったんでしょ?
私が見てても、明らかに表情が変わっていったよ。」
「・・・はい。
あの時の・・・・戦場でたくさん死んでいく賊や兵士を見て、
その後、ココに来るまでの道中で見た、あの人達の表情・・・
勝利に喜ぶでもなく、怒るでもなく、
・・・確かに戦闘には勝ったのに、
それでも 虚しさや、悲しみをひた隠しにして、
戦場の処理をする人達を見ていたら、
こんな事はもう二度と・・・あんな思いをする人達を、
もう二度と出してはいけないと思いました。
家族を失って悲しむ人や、
村を襲われ怒り悲しむ人達をたくさん見てきましたけど・・・
たとえ勝っても! 守りぬいても!
・・・それでも戦争では何かを失うんですね。」
「うん・・・でも関羽さんは凄いよ。」
「え?」
「そんな人達を何とかしてあげたいと思ったんでしょう?」
「・・・・はい!」
「だったら関羽さんは立派な武人だよ。
恐怖を感じても、それでもなんとかしようと立ち上がったんだから。」
「・・・そう、でしょうか?」
「そうだよ。」
「・・・・」
「怖いのは当たり前だよ、死ぬのは皆怖いよ。
でも、それでも立ち上がっていけるから関羽さんは凄い武人なんだよ。」
「・・・喜媚殿。」
「桂花や郭嘉さんもそうだよ、
あんな状況を見て怖いと思っても 皆、前に進もうとしてる・・・
彼女達は武は修めてないけど、
その心意気は立派な武人・・・と言うか、なんというか・・・・
とにかく凄いんだよ!」
「・・・フフ、何を言っているかわかりませんよ。
・・・でも、ありがとうございます。」


関羽さんの表情もさっきまでの 切羽詰まったような表情ではなく、
今は穏やかながらも、瞳には力が宿っている。

これならば大丈夫だろう。


「さぁ、あんまり根を詰めても身体を壊すから、今日はもう寝よ。」
「そうですね・・・・なんか、喜媚殿と話したらすっきりしました。」
「そう? じゃあ、私は部屋に戻るから。」
「あっ・・・」


そう言って、私はさっきまで握っていた
関羽さんの手を離そうとしたら
逆に強く握られてしまった。


「あの・・・手を離してくれないと部屋に戻れないんだけど。」
「あ・・あの! よ、良かったら・・・今夜は、その・・一緒に
寝てくれませんか・・・その、やはり一人になると、
さっきの戦場を思い出してしまうので・・・」
「・・・・あぁ、いいよ。
実は私達も、最初に戦場を見た後は三人皆で寝たんだ。」
「そ、そうなんですか?」
「桂花が郭嘉さんと私を自分の部屋に引っ張りこんでね。
あ、桂花には私が言ったって事は内緒にしてね。」
「フフ・・はい。」
「じゃあ、寝よっか。
私の部屋の寝台の方が大きいから 二人なら大丈夫でしょ。」
「そ、そうなんですか・・・・じゃあ、そのお邪魔します。」


こうして、この日 私と関羽さんは一緒に眠ることになった。
寝台に入り片手をつないだ状態で寝たら私も関羽さんも
精神的に安心できたようで、
それまでの肉体と精神の疲労が一気に襲ってきて
すぐに寝てしまった。



しかし、私は忘れていたのだ・・・・大事なことを。


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  1. 2012/09/18(火) 01:20:35|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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