たいちの仮設避難所

某小説投稿サイトの規約改定による 仮設の避難所です。

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雑記


こんにちは。


七十一話~七十四話まで投稿しました。
コレで、ハーメルンで投稿していた最新話まで追いつきました。
明日以降は七十五話以降の投稿になりますが、
私生活の時間があるので、以前みたいな毎日更新は出来ないかと思うので、
読んでくださる方は、気長にお付き合いください。


たいち

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  1. 2012/09/30(日) 19:58:44|
  2. 雑記
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七十四話


洛陽




--関羽--


賈詡殿に部屋で待機を命じられて、はや十日は過ぎただろうか?
それとも一年はたっただろうか?
日付の感覚が曖昧でよくわからない。


桃香様や鈴々等は、当初は洛陽の人達が悪政などで苦しんでいない事を喜んでいたが、
今では、なぜ自分達に未だに何の処罰も下されないのか、
朱里達と一緒に不安がっている。
星は・・・・いつも通り飄々としたものだが、表情にいつもの明るさはない。

張譲の処刑は速やかに行われたのに、私達には未だに何の音沙汰もない。
董卓殿は、一体我らをどうするつもりなのだろうか?

ご主人様は男という事で別室を充てがわれているが、
部屋を出て庭園で気分転換をするくらいは許されているので、
その時に会い、様子を聞いてみたら、特に何も酷い仕打ちは受けていないという事だ。

どうやらご主人様は異民族だと思われているようで、
時折、兵士がやってきては、この国の常識を教えてくれるそうだ。
だがその教え方は親切で、とても異民族を相手にするものではないのだが、
それが董卓殿の方針なのだそうだ。
まず相手を信頼しなければ自分を信じて貰えない。
実際、董卓殿は、異民族と積極的に経済交流する事で、羌や氐を抑えているそうだ。

ご主人様は、すでに以前の服は没収され、
宮中ということで、普通の民が着る服よりも上質な物をを支給され、
今後、洛陽から追放された際に生きていけるように、
この国の常識を教えられているそうだ。

董卓殿の噂を聞くくらいの兵士との会話は許されているので、実際聞いてみたのだが、
以前の洛陽はそれは酷く、民の生活も困窮していたらしい。
そこへ何進様暗殺事件が起きて、宮中の宦官が袁紹達に誅殺され、
拐われた天子様を董卓殿が救ったと言う事で、
現在の地位、相国に納まったと言う話だそうだ。
董卓殿の統治に変わってからは、違法な賄賂等の要求は一切禁止され、
今の洛陽を見ればひと目で分かるように、善政が敷かれ、民に笑顔が満ち溢れ、
兵士も洛陽を守ることに誇りを持っている。

だから今回の反董卓連合には激怒し、兵士達の士気は上がり、
何が何でも洛陽と董卓殿、
それに天子様を守るんだという気概に満ち溢れていたそうだ。


そこでついでに喜媚殿の事を聞いてみたが、
喜媚殿は以前から董卓殿に高待遇で士官を勧められていたようで、
今回、張譲達によって、反董卓連合を組まれた事で、義によって立ち上がり、
客将扱いで董卓軍に仕官し、工作部隊の部隊長として参加し、
数々の戦功を上げられたそうだ、

私がその話を聞いた兵士は喜媚殿の事を、
まるで自分の戦功を誇るように語り、褒め称えた。
どうも喜媚殿が率いた部隊は 『黒猫隊』 と呼ばれていてそうで、
皆喜媚殿と同じ、猫耳頭巾付き上着の制服を支給され、作戦時に着用している。
その部隊は五十名前後で構成され、
董卓軍の最精鋭部隊として勇名を馳せているそうだ。
志願者は数多くいるけれども、決して増員されず、
今回の戦が終わり、連合が解散した後、その部隊も解散されたが、
一部の者は、今でも重要な秘密任務を受けていて、
日々、洛陽の為に影で働いているそうだ。

その話を聞いた私は、酷く罪悪感に苛まれる事になる。
我々の陣営はあの状況では他に選択肢がなかったとはいえ、
戦嫌いで、周りの者を大切にし、日々の穏やかな生活を望む喜媚殿を、
私が戦場に狩りだした要因の一部になってしまった事に・・・


そうして私達が日々を過ごしていると、
ようやく賈詡殿から私達に対しての沙汰が下される事となったので、
謁見の間に通される事になった。

そこには董卓殿と賈詡殿、それに護衛の武官が数名待機している。


「劉玄徳、北郷一刀。」
「は、はい。」 「はい。」
「今回、貴方達の事情は察しますが、
あのような不敬な連合に参加し陛下のお住みになられる洛陽を攻め、
あまつさえ天の名を語る等という不届きな事を許すわけには行きません。
よって、前回申し付けた通り、領地は没収し、北郷一刀は我が領内から追放。
劉玄徳達以下の者は洛陽で期限付きの強制労働をしてもらいます。」
「はい。」 「はい。」
「労働内容は賈文和が説明します。」
「ではボクから説明させて貰うわよ。
まず劉玄徳、諸葛孔明、鳳士元の三名は、
最近ようやく完成した、ボク達が運営する塾での講師をする事。
コレは領内の識字率を上げ、住民の知的水準を上げることが目的よ。
その中から将来、我が軍に有望な者は現れたら積極的に登用していくつもりよ。
関雲長、張益徳、趙子龍の三名は、今度新設される、
洛陽の治安維持の為の部隊の一般隊員として、洛陽の民を守る事。
今まで貴女達の刑の執行に時間がかかったのは、
私塾の工事と、新設する部隊の屯所の建設や部隊編成に時間がかかったからよ。
なお、一応最低限の賃金は支給され、住む場所もこちらで用意するので、
刑期が終わるまでは、勝手に転居等しないように。」

「「「「「「はい。」」」」」」

「それと北郷一刀。
貴方は当初の予定通り、数日後、洛陽から追放されるわけだけど、
その際、最低限の旅の準備こちらでしてあげるので、心配はないわ。
コレは一応、黄巾の乱と今までの領地運営の功績を鑑みて、
董仲穎様からの温情だから感謝し、二度と天子様の名を語ったり、
国内を乱れさせるような真似はしない事。
希望があるなら、どこかの邑までの旅の手配をするけど何かある?」
「・・・徐州へ、できたら彭城への手配をお願いします。
俺・・・私が思慮が足りず馬鹿な事をやったせいで皆に迷惑をかけた、かけました。
せめて、皆にそのお詫びをしたい。」
「・・・わかったわ、彭城まで行く行商人の一座がないか調べておくわ。
それと、それまでにかかるであろう、旅費や食料も用意する。 それでいいわね?」
「はい。」
「他の者もそれでいいわね?」
「「「「「「はい。」」」」」」


こうして、私達の処分は決まった・・・・皮肉な事に、
私達がやむを得なかったとはいえ、
攻め込んだ洛陽の民を私達が守る事になるとは・・・

だが警備などしていたら、いつか喜媚殿に会う事もあるだろう。
・・・私はその時どんな顔をしたらいいんだろうか?
罵倒されるだろうか? 詰られるだろうか? 無視されるだろうか?
それとも私達の立場を理解してくれるだろうか?
・・・ただ、今の私は喜媚殿に会いたいというい気持ちの反面、
何よりも会うのが恐ろしかった。


董卓殿から沙汰を下され、
私達は謁見の間を出て庭園に集まり、今後の事を話している。


「それにしても董卓さんが優しい人で良かったね!」
「確かにそうなのですが・・・少し腑に落ちません。」
「うん・・・朱里ちゃんもそう思う?」
「なにか気になるの? 朱里ちゃん、雛里ちゃん。」
「いえ・・・刑が軽すぎるんです。
死罪となったのは張譲さんのみで、袁紹さんでさえ領地と私財の没収です。
橋瑁さんは戦場で呂布さんに討たれたので除外しますが。
今回の連合に参加した諸侯全員、刑が軽すぎるんです・・・私が思うに、
・・・コレは策略です。」
「策略? どういう事だ?」
「おそらく賈詡さんは連合に参加した諸侯が潰し合うのを狙っているんだと思います。
今回の戦では董卓さんが勝ちましたが、その戦の仕方は防衛に徹していたため、
被害は軽微です、汜水関等の関や道が痛みましたが、
その保守費用は等は全て連合に参加した諸侯で補うことになっています。
今回、戦に参加した諸侯は被害は甚大で戦費もかなり使っています。
その上、保証費用を長期にわたって徴収されるので、どうしても自領では補えません。
と、なると無ければどこかから持ってくるしかありません。
それに、袁紹さんの領土は国内でも最も肥沃な土地で、そのため蓄えも十分あり、
アレだけ大量の兵を養っていけていましたが、その分汚職も酷かったんです。
おそらく、最悪、袁紹さん、
もしくはその側近の誰かが陛下の裁定に反旗を翻すでしょう。
そのための布石が 『袁紹さんと配下の将官も含めて私財没収』 なんです。」
「どういう事・・・まさか!」
「そうですご主人様、賈詡さんは 『わざと』 反旗を翻すよう誘って、
それの鎮圧を連合の諸侯にやらせて弱体化させ、袁紹さんの領土を平定した上で、
自分の腹心の部下にでも統治させ、この国の役半分の領土を得る事になるんです。
自分の懐は一切痛めず、それどころか肥やして。」
「そしてその間に董卓さんの領土は益々潤っていく・・・
今回の戦の勝利で、すでに董卓さんは天下統一への道標ができているんです。
曹操さんは袁紹さんの領土を狙っているようですが、
それも董卓さんの胸先三寸、袁紹さんの配下が反乱を起こせばそれを口実に、
国を乱した責任を追求され、袁紹さんの領地はわずかに貰えたらいいところ。
下手をしたら責任を追求される事さえあります。」
「では、この国は近い将来董卓殿が統一すると?」
「そうです星さん・・・その道筋はすでに見えているんです。」
「・・・む~、鈴々にはよくわからないけど、
戦が無くなるのは良い事なのだ。」
「そうですね、ただこれからしばらく袁紹さんの領内は荒れるでしょう。
その後、諸侯同士で潰し合って、最後に残った諸侯を董卓さんが止めを刺して終わり。
董卓さんの勝利です。」
「で、でも董卓さんはいい人だから酷い事はしないよね?
朱里ちゃん、雛里ちゃん?」
「そうですね、洛陽の統治を見る限り董卓さんの統治能力は、ずば抜けています。
私も以前の洛陽の話は聞きましたが、わずかこれだけの短期間でここまで復興させ、
繁栄させている・・・そしてすでにその先も見えているんです。
だからわざわざ、国費まで使って塾を作り、
民の識字率を上げ、これからの国政を担う者を育てようというんです。
そして、それを私達にさせるつもりなんです。」
「反董卓連合なんて意味がなかったんです・・・
董卓さんは今最もこの国の未来を見ているんですから。
私達がやった事は・・・・・」


朱里と雛里は無力感に苛まれ、暗い表情になっているが、
そんな時、星が明るくこう言った。


「そうか・・・しかし、そう悪いことでもなかろう?
これからこの国は良くなっていく、我らはその手伝いをいち早くできるのだ。
今は罰を受ける身だがその期限も無期限ではない。
将来この国が良くなった時に、胸を張ってこう言えばいい。
『我らがこの国の礎を築いたのだ。』 とな。
そう言えるように、与えられた任務を果たせば良い。
桃香様の 『みんなが笑って暮らせる国』 は我等の手では無理だったが、
その手助けはできるのだから、我らはまだ恵まれているというものだ。」
「そう・・・ですね・・・
そして私達はこれからのこの国を良くしていく子供達を育て上げて、
同時に董卓さんが権力に酔って暴走しないように、
内部から見張る役目をすれば!」
「そうだよ朱里ちゃん! 桃香様や御主人様、
それに皆でこの国を良くすることは、まだ出来るんだよ!」
「そうだな・・・我らがこの洛陽の民に迷惑をかけた分・・・
それにこれからの未来の為に、まだやれることがあるんだな。」
「鈴々も頑張るのだ!」
「そうだよな・・・俺も徐州に戻って巻き込んでしまった皆に謝って、
外から袁紹の領土の民が少しでも困らないように、
今まで学んだことを生かしてなんとかやって行くよ。」
「皆、頑張りましょう!」

「「「「「「おう!」」」」」」




--喜媚--


「と言う事で劉備達の処遇はそうなったわけ。」
「あんまり酷い事にならなくてよかったよ。」


今詠ちゃんはウチの店で、休憩しつつ、
今日劉備さん達に処断を下した事を教えに来てくれた。
私が愛紗ちゃんと知り合いだというのを知っているので、気を使ってくれたんだろう。


「月も甘いからね・・・私は死罪、鉱山労働、
五十回棒叩きでもいいと思うんだけど。」
「それって、ほとんど全部、死に直結してるよね?
一番いい鉱山労働だってかなり死亡率高いって聞くし。」
「・・・つまりはそういう事よ。」
「詠ちゃんは時々言う事が過激で怖いよね。」
「それがこの国の治安に取って最もいいと思うんだもの。
特に劉備は本当は真っ先に排除したいんだけど、
月がいい先生になりそうだとか言うから・・・あんたが吹き込んだんでしょうけど!」
「で、でも子供達には人気でそうだよね。
董卓領内の識字率を上げるための実験何でしょ?
先生が生徒に好かれるのはいいことだよ。」
「はぁ・・・・あんた達は呑気でいいわね。
ボクは子供達が変な洗脳されないか心配よ。」
「洗脳って・・・」
「天の御遣いなんて怪しい名前で義勇軍をアレだけ纏めあげたのよ?
あの娘は天然で人心を集めるのがうますぎるのよ。
それだけに放置できないから、殺すか、籠で飼いならすか・・・ハァ。
月も、もう少し主君として非情な判断を取れるようにならないかな?」
「でも、そんな月ちゃんが好きなんでしょ?」
「・・・・・フンッ!」


一旦私も詠ちゃんもお茶を飲んで一息入れる。


「それにしても、本当にこの機会を捨てるの?」
「詠ちゃんも歴史は嫌というほど学んだでしょ?」
「・・・そうね、月やその子供の時代は良くても・・・その先は・・・」
「そのためにも必要なんだよ・・・出来れば三つが好ましい。」
「・・・ボクは正直、今は賛成できない・・・いや、頭では分かってるの、
喜媚の言ってる事はその通りだって、でも!」
「まだ時間はあるよ、いそがないで考えてみて。
音々ちゃんも居る、月ちゃんも居る、皆でゆっくり考えて歴史から学んで?
人はそんなに愚かじゃない。
きっと過去から学べるはず。」
「ただ問題はボク達は納得しても他がどうか・・・」
「私は信じるよ。 皆は戦なんか望んでないって。
あんな勝っても負けても虚しさしか残らない事なんか誰も望んでない。」
「そうだといいわね・・・でも腹案は必要よ? ボクはボクで策を進める。」
「うん。」
「でも・・・あんたの言う事も理解できる。」
「うん。」
「だから少し時間をちょうだい、ボクも、もう少し考えてみる。」
「うん。」


それから二人でお茶を飲んで一息入れる。
丁度湯のみは空になった。


「・・・それで、話は変わるけど、桂花から返事は来た?」
「ビクッ!? ・・・・ま、まだだよ?
あ、あの・・・お茶のおかわり 「いらないわ。」 ・・・そうですか。」


詠ちゃんが言っているのは、私が桂花に尋ねた、
本当に詠ちゃんと月ちゃんに房事を許したのか? と言う返事だ。


「返事、来たのね? ボクの言ってた事は本当だったでしょう?」
「・・・・う、うん。 でも・・・」
「桂花に悪い? 本人が許してるのに?」
「わ、私は 「ただの農家とか茶店の店主とか言うのは通じないわよ?」 あぅ。」
「大体あんた、この間この店に出入りしている豪族の娘と、
見合い話持ちかけられてたわね?
アレだって結局私が潰してあげたんじゃない!」
「こういう時どうやって断ればいいのかわからないんだよ。
下手に断って問題になってもアレだし、
今までは冗談で済んでたんだけど これからはそうも行かないし・・・」
「まぁ、あんたは元農家の息子だからしょうがないけど・・・
桂花が心配だって言っていたのがよく分かるわ。
あんたは人が良すぎるの! 嫌なら嫌って言えばいいの!!」
「う、うん・・・・」


こういう時に、元日本人の悪い癖が出てしまう。
NOと言えない日本人の癖が。


「とにかく! あんた見合い話とか、一度娘に会わないか?
とか、そういった話が来たら、まずボクに言いなさいよ!
あんただけに任せておくと、気がついたら側室が増えてました、
とかいう状況になりそうだわ。
流石に桂花に操立てしてるだけ有って、簡単に婚姻話は受けないだろうけど、
皇帝陛下に直接影響力のある喜媚なら、向こうは側室でも妾でも十分なんだからね!
有耶無耶にしようとしたり中途半端な返事はするんじゃなくて、
ボクに相談するか、はっきり駄目だって言いなさいよ!」
「はい・・・わかりました。」


もう、桂花云々以前に完全に尻に敷かれてるよね・・・
詠ちゃんが心配するのは解るから、私ももう少し気をつけないと。


「それで、桂花の確認が取れたならもう問題無いわね。
一回宮殿に戻って仕事を終わらせるけど、ボク・・・今日泊まっていくから。」
「・・・え?」
「意味は・・・分かるでしょ?」
「あんたがこの間、ボクを拒絶しなかったって言う事は、そういう事でしょ?
なら問題ないじゃない・・・っていうか、
女にここまで言わせて、これ以上恥をかかせるつもり!?」
「・・・詠ちゃんの事は嫌いじゃないんだよ・・・むしろ好きだよ。
でも、私にそこまでの価値があるかと言われると・・・」
「あんたがどう思おうがボクにはそれだけの価値があるの、
たとえ桂花と勝負で負けて側室扱いでもね。
桂花だってその覚悟があって、
それでもあんたと離れたくないから私と条件付きで協力してるんでしょ?」
「・・・・」
「ボクはね、いや、ボクも桂花も、そしてきっと月もだけど、
あんたと一緒に歩いて行きたいの。
これからボク達にはいろんな苦難が待ち受けているわ。
この国の未来の事やボク達の人生の事・・・
それ以外にも予想外の出来事も起こるかもしれないけど、
ボク達は皆あんたと一緒に乗り越えていきたいの。
桂花だって今は離れ離れになっているけど、
ボクの策かあんたの策、どちらかが成功すれば、
皆で一緒に暮らす事も不可能じゃないし、
桂花だって桂花なりに曹操の軍師という立場から、
あんたと一緒に生きていける方策を懸命に考えているわ。
・・・喜媚、あんたはボク達と一緒に歩んで行きたくないの?」
「そんな事はないよ!」
「じゃあ、答えはもう出てるじゃない。
あんたの今の立場では、側室を何人持ってもだれも文句も言わない、言えない。
それにボクも桂花も、お互いが求め合ってる。 これ以上何が必要なの?」
「り、倫理的に・・・?」
「適当な理由をつけてごまかすのは止めなさい、あんたの悪い癖よ。」
「うっ。」
「これが最後よ、どうなの? ボクや月、桂花と一緒になりたくないの?」
「・・・・なりたい。 皆と一緒に、ささやかでも良い。
ただ、皆と幸せに暮らしていきたい。」
「なら決まりね。 今日泊まっていくわ、お風呂の用意しておいてね。」
「一つだけ教えて、なんで詠ちゃんはそこまでして・・・
桂花や月ちゃんが居るのに私と一緒になりたいの?」
「・・・そんなの決まってるじゃない。
喜媚と二人っきりっていうのもいいけど、月がいたほうが幸せだもの。
桂花は・・・まぁ、決着さえつければ、仲良くやっていけると思うわ。
別にボクはあの娘の事、嫌いじゃないもの。」
「私にはすごくいがみ合ってるような気がするんだけど・・・」
「それは立場がはっきりしてないからよ。
お互いの立場がはっきりすれば、きっと仲良くやっていけるわ。
私、一度仕事片付けてくるから。
じゃあ・・・またね♪」


そう言って詠ちゃんは人差し指を唇に当てて、笑って店から出ていった。


この後、私は通常の仕事に戻ったが、いまいち仕事に身が入らず、
珍しく劉花ちゃんに 『喜媚様、集中していただかないと怪我しますよ!』
と注意されてしまった。


そして、この日の陽が沈む頃、詠ちゃんが店にやってきて、
皆で食事を取る時に、劉花ちゃんから妙に視線を感じたが、気のせいだろうか?

私は食事の片付けをしている間に、
お風呂に入り身を清めた詠ちゃんは、先に私の部屋へ行き、
その後私も最後にお風呂に入り、部屋に戻った時、
詠ちゃんは寝台で下着姿で私を待っていた。


「喜媚・・・その、ボ、ボクは初めてだから、やさしくね?
桂花から聞いた話だと、喜媚は激しいらしいから・・・」
「う、うん・・・なるべく優しくするよ。」
「ん・・・喜媚、好き、だよ。」
「詠ちゃん、私も好きだよ・・でも 「それは無しよ、今だけはボクの事だけ見て。」
・・・うん。」


そしてこの日、私は詠ちゃんと身も心も結ばれる事となった。


  1. 2012/09/30(日) 19:55:05|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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七十三話


洛陽




私は、自分の寝室に訪ねてきた詠ちゃんの告白を受けた後、口付けされ、
しばらくそのままでお互いの唇の柔らかさと、ぬくもりを確認した後、
ゆっくりと詠ちゃんが離れていき、やがて、お互いの唇が離れる。

その後、詠ちゃんは私の頬を一撫でした後・・・


「今日はここまでにしておくわ・・・
本当はこれ以上許してもいいんだけど、皆が居るからね。
それにアイツとの約束もあるし。
喜媚と結ばれる時はそういう余計な心配したくないし、
貴方も桂花に確認したいでしょ?
それに・・・そうやって焦らす方が喜媚がボクの事意識してくれそうだし♪」
「詠ちゃん・・・」
「フフ、要はおあずけよ♪
じゃあね、おやすみ。」


そう言って燭台を持って、詠ちゃんは扉に向かって歩いて行き、
最後に私の方を見て唇に人差し指を当てた後、ニコリと笑って部屋から出ていった。


「・・・・」


その日は宴会料理等を作ったり、
皆にお酒を飲まされたりして眠たかったはずなのだが、
しばらく眠ることは出来ず、ずっと詠ちゃんの事を考えていた。

コレが計算だとしたら、詠ちゃんは間違いなく悪女だろう。


何とか眠ることが出来、朝目が覚めた時、しばらくボーっとしていたが、
ようやく頭が働き出した時、私が昨晩何をされたか思い出し、
私はすぐさま再び布団に潜り込み、悶絶し、桂花への罪悪感や、
昨晩の事は夢だったんじゃないか? 昨晩の詠ちゃんはすごく可愛かった、等、
頭の中を整理するのに大変な時間を要した。

そうしてなんとか朝食を作る時間に間に合うように身支度を済ませ、
厨房で皆の朝食を作っている時、ようやく皆がそれぞれ起きだしてきて、
水がほしいだの、迎え酒が欲しいだの、言い出したので、
二日酔いには水分補給と糖分をとったほうが良いので、
スポーツドリンク、蜂果水をそれぞれに渡して飲むように進めておいた。

そうして調理を進めていると詠ちゃんが降りてきて、
挨拶だけして月ちゃんの隣の椅子に座ったので、そちらの方に視線を合わせたら、
頬を少し染めて、私と目を合わせて、人差し指を唇に当ててニコリと笑った。


「おはよう喜媚。」
「あ、おはよう詠ちゃん。」
「フフ・・・♪」
「っ!?」
「・・・・ん? 詠ちゃん、喜媚さんと真名を交わしたの?」
「あぁ、昨晩ね、少し眠れないから風にあたってたら喜媚と話す機会があってね。
ボクだけ真名を交わしてなかったでしょ?
いい機会だと思って真名を交わしたのよ。」
「そう・・・でもコレで家の事情がある華雄さん以外、皆真名を交わし会えたね♪」
「そ、そうね。 月、後で少し話があるから、
今夜一緒に夕食の後にでも、ボクと二人で、一緒に飲みましょうか?」
「え? いいよ。 詠ちゃんと二人っきりっていうのは久し振りだね。」
「そうね。」


コレで昨晩の事が夢などではなく現実だと確信した私は、
朝食後、皆を宮殿に見送った後、すぐさま部屋に駆け込んで、
竹簡に桂花への謝罪文と、どういう事なのか問い合わせる内容の書簡を作り、
店の開店準備を皆に任せて、
いつも陳留に書簡を届けてもらっている行商人の人がいるかどうか宿に確かめに行き、
たまたま、今日は居なかったので、
来たらすぐに私に知らせるように宿の店長にお願いだけして帰ってきた。

こうして書簡が桂花の元に届き、返事が帰ってくるまで、
私はひたすら詠ちゃんに操られるように、詠ちゃんの事を意識させられ、
桂花に対する罪悪感と、詠ちゃんに対する妙な意識に悩まされる事になる。


宴会の日から数日、桂花に確認の書簡を送ることも出来、
詠ちゃんはあれから、工事の進捗状況を確認という名目で、
更に良く家の店に来るようになり、
会う度にからかわれているが、アレ以降特に進展はない。

私も詠ちゃんは決して嫌いじゃないし、あの口付けの件もあり、
女の子として意識させられているが、
桂花の居る手前手を出すと言う訳にはいかないし、そのつもりも無い。

桂花の返事もまだ戻ってきていないが、
一体どうしてあんな書簡を書いたのだろうか?

理由は詠ちゃんから聞いたがそれだけなのだろうか?
確かにあれから馬超さんや馬岱ちゃんも董卓軍に加わり、
偶にウチの店に来てくれているが、馬岱ちゃんはともかく、
馬超さんは私の顔を見てすぐに真赤になるが、それだけで、
わたしの為人を見極めようと観察しているように見える。
逆に馬岱ちゃんは積極的に、私に絡んできたり、
買い物に付き合うと言う名目で、腕を組んできたりしてくるが、
彼女の場合、少し背伸びしたい女の子、みたいな印象があるので、逆に安心できる。
なんだか荀諶ちゃんを相手にしていた時のことを思い出す。


さて、店の増築工事もそうだが、反董卓連合が終わった事で、
国内の状況を少しでも良くするために、月ちゃん達が次々と政策を打ち出していく。

まずは以前から計画していた、塩引の発行の告知と、
新通貨発行の告知、更に、今までは色々会ったので略式だったが、
正式に協ちゃんが皇帝に着任した儀礼とお祝いの祭りの開催で、
連合との戦争で落ち込んだ洛陽や董卓領内の民の意識を明るくしようというのと、
経済を活性化させようと言う計画を立てている。
更に異民族問題で、今までは中央の圧力で各地で問題が起きていたが、
月ちゃんが中央に着いたことで、
異民族との融和政策を今後長期的に行う地盤作りをすることになっている。

それに袁紹さんの領内で、やはり領地返還に伴ない反発が起きたため、
現在袁紹さんの領内では、粛々と領地を返還しようという少数派の袁紹派と、
それに反発し、独自で勢力を上げたり、賊まがいの略奪を行う、反袁紹派、
それに日和見の中立派に別れて、領内が内乱状態になっている。

それを抑えるために、曹操さんが奮闘しているらしいが、
他の諸侯が、積極的に戦闘に参加せずに、
なんだかんだ理由を付けて挙兵を断っているため、
曹操さんから、月ちゃんに協ちゃんに勅を出すように催促が来ているらしいが、
その不仲を煽るのも詠ちゃんの策の内なので、現状は様子見といったところである。


それと、なんと言ってもこの時期に起きた大きな事件といえば、
この時の私はまだ知らなかったのだが
孫策さんが、連合を解散し、寿春に戻った時に美羽ちゃんの部隊をを背後から強襲し、
不当な約定で奪われたと主張した領地の奪還と、
美羽ちゃんの揚州の統治では民が飢えてしまうと言う名目で、
義によって立ち上がるという名目で袁術軍を襲った事だろう。

戦闘自体は、それほど大規模では起きず、
完全に予想外の強襲を受けた事と、兵糧がそれほど無かった事、
早期に孫策さんが、周泰さん等の隠密部隊を使って、
美羽ちゃんの周りで甘い汁を吸っていた、
悪徳な文官や将官を暗殺や強襲してしまった事で、
袁術軍の兵の士気は連合での敗戦に追い打ちをかけるように一気に下がり、
孫策さんに投降する兵も多かったらしい。




--孫策--


私は今、袁術軍をほぼ掃討、投降させ、
冥琳や穏や兵達と共に、目の前で袁術ちゃんを仕留める一歩手前まで来ている。


「さてお祈りは済んだかしら?
当初の約定が有ったとはいえ、今まで散々こき使ってくれちゃって・・・
それに揚州の統治もろくに出来ない状況で、
このまま袁術ちゃんを野放しにしておくと、
揚州や私達に付いて来てくれている、呉の民が苦しむのよね。」
「孫策! 今まで妾がかけてやった恩を仇で返すつもりかえ!?」
「受けた恩の分は十分働いたじゃない、
賊の討伐、水賊の討伐、揚州の統治、散々こき使ってくれたじゃない。
それで命を落とした兵だって居るわ。
私が母様を失ってから袁術ちゃんに受けた恩の分は十分働いたと思うわよ?」
「ぬぐぐ・・・七乃ぉ。」
「美羽様、私の後ろに! 孫策さん・・・他の者達はどうしたんですか?」
「他の奴ら? 揚州の統治で賄賂を貰ったり公文書の偽造で懐を温めていたり、
悪事を働いていた奴らは全て今回の事で処理したわよ。
証拠もしっかり用意してある、この後、陛下にちゃんと説明出来るだけのね。
コレで揚州の民の未来は明るくなるわ。
まぁ、でもそれを貴方達が心配する必要は無いのだけどね。」


そう言って私は孫家の主の証である宝剣、南海覇王を抜き袁術ちゃん達に向ける。


「後は貴女達だけよ?
せめて苦しまないようにしてあげるからおとなしくしなさい。」
「「ひっ・・・っ!?」」
「・・・くっ!?」


一瞬怯えた袁術と張勲だったが、袁術がすぐに私を睨みつけ、
張勲の前に守るように手を広げて立つ。


「美羽様!?」
「せめて切るなら妾だけにするのじゃ! 七乃は許してやってたも!」
「美羽様駄目です!
私がなんとか退路を開きますから美羽様だけでも逃げてください。」
「・・・もうココは囲まれておる、逃げても無駄じゃ。
ならば妾が首を差し出せば、せめて七乃だけでも助かるやもしれぬ。
七乃、妾の最後の命じゃ! 喜媚によろしくな・・・後・・・すまぬと伝えてくれ。」
「美羽様いけません!」
「喜媚も良く書簡に書いておった、配下の者の心をよく掴んでおくようにと・・・
妾は遅すぎたのじゃ・・・もう少し早く、幼少の折に喜媚に会えておれば・・・
喜媚が妾の元に来てくれればの・・・最後にもう一度喜媚に会いたいのう・・・・」
「美羽様・・・・」


正直なところ私は驚いている。
袁術ちゃんは張勲と泣き叫んで命乞いでもするのかと思ったら、
この場に来て、主君としての最後の務めを果たそうとしている。
体が全身震えているし、涙目だが、はっきりと発言し、部下を想い、
主君として最後の務めを全うしようという袁術ちゃんのその姿は、
幼いながらも確かに人の上に立つ才・・・血筋を持っている。
この娘がもう数年、主君として人の上に立つ事を学ぶ時間があったのなら・・・
せめて部下がもう少しまともなら・・・
私達との因縁がなかったら・・・
袁術ちゃんはきっと、王にはなれなくとも、
名君として名を馳せることもできただろう。


「ふん・・・その覚悟、本当かしらね。」
「妾は好きにするが良い、だが投降した配下の者や七乃は見逃してやってくれ。」
「・・・分かったわ、約束してあげる。
それじゃあ・・・・さようなら。」


私は南海覇王を袁術ちゃんの首めがけて横薙ぎに斬りつけるが、
袁術ちゃんは震えているが、私から目をそらすことも無く、
しっかりと私を睨みつけている。

そして私は南海覇王を袁術ちゃんの首の寸前で止める。


「っ・・・・!?」
「はぁ・・・まったく、この数年で何があったのかしらね。
最初はただの我侭娘だったのに・・・どう思う冥琳?」
「間違いなく喜媚殿との出会いだろうな。
明命が蜂蜜を買い、書簡を預かる様になってからこっそり書簡を見させたが、
日常会話と袁術の愚痴を聞いているような内容がほとんどだが、
さり気なく主君としての心得や、袁術を導くような内容も含まれていた。
確実に喜媚殿は袁術を導くように差し向けていた。」
「ここでも喜媚ちゃんか・・・ならあの計画、やはり実行ね。
シャオを送るわよ、もう文句は無いわよね?」
「あぁ、問題ない。」


私が南海覇王を鞘に収めたことで、袁術ちゃんはその場にへたり込み、
首のあたりを撫でながら、何事かと私と冥琳達の様子を見ている。


「? 何じゃ、妾を殺さぬのか?」
「見逃してあげるわ、袁術ちゃん斬ると喜媚ちゃんに嫌われそうだし。
そのかわり、袁術ちゃんと張勲にはこの地を出て行ってもらうわ。
二度とこの揚州、呉の地を踏むことは許さないわよ。
それと、陛下の前で、貴女の部下が犯した数々の悪事を認めてもらうわよ。」
「・・・・は? そんな事で良いのか?」
「そんな事って・・・少しは地位に未練はないの?」
「こんな不自由で周りの者が妾を小馬鹿にするような所に未練など無いのじゃ!
父上に言われてしょうがなくやっていただけだからの。
蜂蜜を好きに食べるなくなるのは惜しいが、
これ以上、七乃と妾の命を狙われるような事はゴメンなのじゃ!」
「・・・・私、もっと早く袁術ちゃんに君主を代われって言ったら、
喜んで変わってくれたのかしら?」
「・・・私に聞くな。」
「それで孫策・・・妾達をどうするつもりなのじゃ?」
「逆に貴女達はどうしたいの?
揚州に留まる以外なら大抵の事は聞いてあげるわよ?
ただし、どこかで旗揚げでもしようものなら、次は容赦なく斬るわよ。」
「もうこんなめんどくさいし、皆に恨まれるような事やらぬわ!
七乃、二人で喜媚の所に行こう!
喜媚の所で一緒に蜂蜜を作るのじゃ!」
「喜媚さんは洛陽ですから蜂蜜は作れませんよぅ・・・
でも、お願いすれば店員として雇ってくれるかもしれませんね。
今度お店を広くするって言ってましたし。」
「うむ、ならば早速洛陽に行くのじゃ!!」


そう言って袁術ちゃんは張勲とどこかに行こうとするが、
私が袁術ちゃんの首根っこを掴んで、引き止めた。


「グェッ・・・ケホッケホッ な、何をするのじゃ!!
この城はくれてやると言うたではないか!」
「あんた達に好き勝手動かれると迷惑なのよ。
まだ、どこの馬鹿があんた達を利用しようとするかわからないんだから。
明命、居る?」
「はっ!」


私が明命を呼ぶと天井裏(?)から明命が降りてきた。




--周泰--


「兵を何人か連れて、袁術ちゃん達を洛陽に連れて行ってくれる。
そして董卓と喜媚ちゃんに経緯を説明してきて頂戴。
その時に今までに下準備しておいた物も全部使ってね。」
「え!? まさか・・・わ、私が董卓に今回の事を説明に行くんですか!?」
「そうよ、私も親書を書くからそれを渡して、説明してきて頂戴。
今は何としても早く揚州を治めないといけないから、
私はここを離れられない・・・悪いけど明命しか動けるものがいないのよ。
喜媚ちゃんへの説明は、口頭で説明すればいいわ、
あの子は聡い子だし、揚州の事を知っているから、
揚州の民の為にとって、コレが一番いい事だってわかってくれるはずよ。
あ、ついでにシャオを今度連れていくから預かって、ってお願いもしてきて♪」
「えぇ!? ほ、本気ですか?」
「もちろん本気よ、本当は蓮華も一回会わせてあげたいけど、
シャオを先に喜媚ちゃんのところ、
と言うか董卓との友好の使者として送り出すわ・・・
それがたとえ実質は人質だったとしてもね。」
「・・・っ!?」


小蓮さまが人質・・・?
・・・そうか!? いくら揚州の民のためとはいえ、
今の袁術軍を倒し、簒奪した我らは世を乱す簒奪者。
いくら証拠があろうが、いくら揚州の民のためだろうが、
陛下から領地を賜った袁術から領地を奪ったのだ・・・
信用を得るにはそれ相応の対価が必要・・・
それが小蓮さまの洛陽行き。

そして孫家の親族を洛陽に預ける事で、皇帝陛下に叛意は無い事を証明し、
同時に喜媚さまの血を狙いに行くのか。


「袁術ちゃんを倒し、揚州を握ったとしても、
ここで董卓や陛下を敵に回す事はできないわ。
私が書いた董卓への親書と、冥琳達がまとめた揚州の現状を綿密に調査した資料、
袁術の統治下で、揚州内の将官による不正の証拠等をまとめた書簡、
これらを使って、袁術ちゃんの統治の現状等の説明をしてきて頂戴。
まずは、今まで明命に長いこと掛けてした準備してもらっていた、
内部の協力者達も使って圧力をかけ、その書簡を董卓に渡して説明し
何としても、今回の戦の正当性は我らにある! と言う事をもぎ取ってきて。
そして、袁術ちゃん達を喜媚ちゃんに預けて無事に帰ってきて頂戴。」
「悪いな明命、今動けるものがお前しかおらぬのだ。
後始末や事務仕事で私と穏や亞莎は手一杯・・・
袁術の領内、揚州はそれほどひどい状況なのだ。
お前に渡す資料を全部読めば、賈詡ならば我らの言いたい事は全て汲んでくれよう。
お前に以前から頼んでいた、人脈を使い、外堀を埋めていけば、
明命は黙って立っていても話は通るはずだ、それだけの準備は重ねてきた。
それに、我らは何も嘘偽りは言っていないのだからな、真実に勝る武器は無い。」
「それにそのための袁術ちゃんなのよ。」
「その・・・ための?」
「そう、私達だけの証拠や証言じゃ、作り話だと言われる可能性がある。
まぁ、そうなっても、董卓の調査部隊を揚州に入れればいいんだけど、
でも、できたらそれはしたくない。
董卓に揚州の土地を調べられたくないからね。
だけど袁術ちゃん自身が、認めたら?
私達の証拠の信憑性は確実な物になる。
そして今の袁術ちゃんなら・・・震えながらも張勲を守るために主君として立って、
私を睨みつけ、喜媚ちゃんとの生活を夢見る、
今の袁術ちゃんなら・・・信じてもいいような気がするのよ。」
「・・・フッ、また雪蓮の勘か。」
「そうね・・・コホン、話を戻すわよ。
それで明命には董卓の返答を貰ってきてもらい、
その返答次第で後日、誰か適任な者を選んで、
シャオを洛陽に連れて行く事になると思うわ。」
「・・・そんな重大な任務を・・・私が?」
「大丈夫よ。
貴女は董卓に会う前に事前に根回ししておいた人脈に動くように指示して、
董卓に私の親書と冥琳達のまとめた書簡を渡して、
『今回の袁術の地位の簒奪は、民と陛下への義によって立った物です!
今は我が孫家は董卓様や陛下に逆らうつもりは毛頭ありません!』
そう言えば丸く収まるはずよ。」
「・・・わ、わかりました。」
「お願いね。」
「は、はい!」




--孫策--


こうして、揚州・・・呉、母様の領地を取り戻すことができたが、
これからが大変だろう。
母様の夢は天下を取ることだけど、現状では難しいと言わざるをえない。
もちろん諦めるつもりもないが、私達はこれから揚州を復興させ、
袁紹の領土で起きている内乱を鎮圧する諸侯がその後、
私達の領土を狙わないように警戒し、
さらに董卓と今揉めるわけにも行かない。
ココ数年・・・下手したら十年単位で動く事ができないだろう。

そうなったら董卓や曹操はどれだけ先に進んでいる事だろうか・・・
私も早急に揚州の豪族や諸侯をまとめ上げ、
蓮華に主君として早く独り立ちしてもらわねば・・・
董卓や曹操に置いて行かれる訳にはいかない。
シャオや明命には更に酷な仕事を頼まねばならない。
洛陽で行われている董卓の治世や、
喜媚ちゃんの知と血を早急に得られるようにしつつ、
その情報を送ってもらわないといけないのだから。


袁術ちゃんに関しては、喜媚ちゃんの所で働くというのなら、それでいいだろう。
もはや袁術ちゃんに構っている暇など無い。
私達はこれからやることが山積みなのだから・・・




--関羽--


連合に参加した諸侯はすでに自領へと帰っていったが、
私達はその領土さえ失い、
ご主人様も今ではただの一般の民として生きて行かなければならない。
更に私達には全員強制労働を言い渡されているが、
鉱山ででも働かされるのだろうか?
あれから大分日数が経つが、未だに董卓殿や賈詡殿は何も言ってこない・・・

私達にあてがわれた部屋は牢屋などではなく、悪い部屋ではないのだが、
それが逆に、董卓が何を考えているのか分からず、
朱里や雛里などは日々頭を悩ませている。

ご主人様も死罪は免れたものの、
今考えれば天を名乗ったのは些か早計だたとも言えるが、
あの時はああするしかなかったとも言える・・・


「駄目だ・・・こう何もやることがない時間ばかり有ると、
余計なことばかり考えてしまう・・・
私は一体何をやっているのだろうな・・・
喜媚殿・・・私は一体どこで間違えたのでしょうか?」


  1. 2012/09/30(日) 19:53:48|
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七十二話


洛陽




桂花達がそれぞれの領地へと去って、少し店内が寂しくなったが、それも束の間、
翌日から開店するための準備をして、いざ開店となった時、
待ってましたと言わんばかりのお客さんで、店内はごった返し、
中には、私が今回の連合との戦いに参加していた事を知っている人達なども居て、
お礼(?)のお土産や、お祝いなどを持ってきてくれる人も居るし、
ウチの息子の嫁にどうだ? と結婚を勧められる始末。

まぁ、それは向こうも冗談だったのだが、
中には本気で、見合い話を持ってくる人や、
所謂、黄金色のお菓子を持参しては、
月ちゃんに会わせて欲しい等と言う輩まで出てくる始末。

そういう人はウチの従業員兼警備隊の御用になって、屯所に突き出されるのだが、
以前はもう少し私が董卓軍と懇意にしてると言う噂を、確認しようとか、
もう少し伺う様子があったのだが、
今日はストレートに月ちゃんや賈詡さんに面会するために、
私を利用しようとしたりする人が現れたり、慌ただしい開店日となった。


そんな事があったせいで、店内には交代で向かいの屯所の人が一時常駐したり、
従業員の皆もピリピリして、
劉花ちゃんは接客ができずに厨房仕事をしていたりしていたが、
数日程で落ち着きを取り戻し、
今でも、私に汜水関や虎牢関での戦いの話を聞かせて欲しいと言う子供と達が来るが、
なんとか通常営業に戻れている。

その裏で、家の拡張工事は進んでいるようで、
今は隣の買い取った屋敷との壁を壊し、
通路を作ったり、一部を破壊して庭を広くしたり、
壁を厚く補強、風呂場の拡張、酒蔵の新設、東屋や池、庭の整備などの工事が、
急ピッチで進められている。
厨房の拡張工事は、すべての工事が終わった後で、
最後に店を何日か休んでするため、店内の方は今は殆どいじっていない。
工事の音でうるさいと言う苦情が来るかとも思ったが、
洛陽は、月ちゃんが治める様になって以来、
様々な所で工事をやっているので、特に問題にはならかったようだ。


こうして更に何日か経ち、月ちゃんの方も忙しさはあるが、
戦の時や、その直後のような休む時間もないほどの忙しさはなくなり、
少しづつ皆が休みを取れるようになってきた所で、
宮殿内では何日か通して兵なども各部署ごとで、勝利の宴を開いたそうなのだが、
一度、身内の皆で集まって宴会を開こうという事になり、
その場所は私の店になってしまった。
それからしばらく、私は宴会の準備に追われる事になる。

今回は私の知り合いだけで行われるのだが、
協ちゃんも変装して来るという事で、
向かいの屯所の警備隊とウチの従業員も一緒に参加して、
休みの日に日夜激しい訓練をしている。
あまり無理をさせるといけないので、差し入れを入れたり、
店の休みの日を少し増やしたり、従業員の皆の仕事を私が変わったりしながら、
無理をして倒れたりしないようにしながら、訓練と宴会の準備の日は続いた。


そして、宴会当日。


霞さんと華雄さんが一番最初に大きな酒樽を持って来たかと思ったら、
恋さんと音々ちゃんが大量の食材を持って、
恋さんの 『家族』 と一緒にやってきたり、
物々しい警備の中、月ちゃんと協ちゃんが乗った馬車が店の前まで来て、
賈詡さんが警備隊に何か指示を出している。

店内では、すでにある程度の料理の準備はできているのだが、
更に恋さんが持ってきた大量食材を誰が調理するのだろうか・・・?
私は宴会へのまともな参加を諦めた。


こうして皆が席に着き、それぞれの器にお酒も注がれ、
後は協ちゃんの言葉を待つのみとなった。


「うむ、今回は堅苦しい事は無しじゃ!
今回はがんばってくれたのう。
妾はこうして無事に洛陽の民が安心して生活を送れるようになって嬉しいし、
この洛陽を守った、皆を誇りに思う。
さぁ! 堅苦しい話はここまでじゃ!
後は皆好きなように飲んで食べて大いに騒ぐが良いぞ!!
乾杯じゃ~~!!」

「「「「「「「「乾杯~!」」」」」」」」

こうして、反董卓連合を乗り切りった董卓軍の仲間達との身内だけの宴会が始まった。


「よっしゃ! 今日は飲むで~!」
「張遼、飲むのは止めんが、酔いつぶれるのだけは止めろよ。」
「アホか! こんな席で潰れるまで飲まずに、いつ酔い潰れるんや!!」
「阿呆はお前だ! お前が潰れたら誰がお前を部屋まで運ぶと言うんだ!
私になるんだぞ!!」
「華雄・・・・後は任せたでぇ!!
喜媚ぃ~ツマミが足りへでぇ~!」
「あぁ・・・諦めるしか無いのか・・・」
「ふぁゆう・・・ふぁんば。」
「呂布、せめて口に物を入れながらしゃべるのはよせ。」
「さぁさぁ、恋殿! こっちには豚の丸焼きがありまずぞ!」
「ん・・食べる・・・」
「月・・・あのバカ共は放っておいて、ボク達は品良く楽しもうね。」
「あ、あの霞さん、私も、もう一杯いただけますか?」
「月ぇぇ~~~~!! ちょっと霞! あんた月に何飲ませてんのよ!?」
「はぁ? こんな機会でもないと月っちは喜媚の酒好き放題飲む機会無いやろが、
だから今日は月っちに優先的に飲ませてやってんねん。」
「やめなさいよ!! 喜媚のお酒はキツイのよ!
そんなに量飲んだらすぐに潰れちゃうわよ!!」
「大丈夫だよ詠ちゃん、このお酒美味しいし、私はしっかりしてるから。」
「月・・・月が見てるのはボクじゃなくてセキトだよ。」
「ワン!」
「詠ちゃんもそう思うよね~♪」
「あ~もう! やってらんないわよ! 喜媚! 私もお酒とオツマミもっと頂戴!!」
「ふむ、コレが喜媚の酒か、なかなかに美味よの。」
「劉協、この料理私が作ってみたのよ? 食べてみて?」
「おぉ! 姉様はとうとう料理まで作れるようになったのか!?」
「喜媚様に味見してもらったから、味は大丈夫なはずよ。」


そうして劉花ちゃんの作った東坡肉を食べる協ちゃん。


「うむ・・・・む! 美味いではないか!
よく味が染みていて、皮や脂身の部分がトロトロで美味いのじゃ!」
「作り方自体はそんなに難しくないし、根気よく煮込んで蒸し煮にするだけだからね。
劉花ちゃんでもできると思って。」
「うむ、コレなら姉様はいつでも嫁入りできるな!」
「まぁ♪」


さり気なく劉花ちゃんが横目で私の方を見た時に丁度目が合い、
お互い見つめ合い形になった所で、
いきなり横から何かに押し倒されたと思ったら、酔っぱらった賈詡さんだった。


「あんた、今何してたのよ!
私のツマミも作らないで劉花様といちゃつくとはいい根性してるわね!」
「いちゃつてないって、ツマミも作るから賈詡さんは席に戻っててよ。
じゃあ、私厨房に戻るから劉花ちゃんも協ちゃんも楽しんでね。」
「喜媚様も料理をつくるのはいいですが、
キリのいいところでこっちに来てくださいね。」
「分かったよ。 じゃあね。」


私は戦場となっている、厨房に戻り料理を作り始める。
宴会場もある意味戦場となっていて、霞さんが自身でもお酒を飲みつつも、
月ちゃんの器が決して空にならないようにお酒を注ぎ続け、
華雄さんがそれを止めようとするが、
「華雄は黙っとれや!」 と張遼さんが言ったと思ったら、
口にお酒の壷を突っ込まれて強制一気飲み状態になり、
恋さんは音々ちゃんや、皆が進める食事を黙々と食べ続け、
月ちゃんは霞さんか注ぐお酒を飲み続け、今はセキトや恋さんの家族の動物達を、
皆と勘違いし話しかけている・・・
動物達も、よくおとなしく月ちゃんの話を聞いてるものである。
賈詡さんは事態の収拾を早々に諦め、自身はちびちびとお酒を飲みながら、
皆の所に回っては、グチグチと日頃の愚痴をこぼしている。
協ちゃんと劉花ちゃんは二人で仲良く食事をメインに楽しみ、
偶に、皆のところに行っては劉花ちゃんが作った料理を、
皆に勧めて感想を聞いて回っている。


こうして、宴会の夜は進んでいき、皆が撃沈した所で、従業員の皆や、
かろうじて意識のある華雄さんや賈詡さん、それとお腹いっぱいで満足気な恋さんが、
皆をそれぞれの部屋へ放り込んで行き、
協ちゃんも今日は劉花ちゃんと一緒に寝るようだ。

そうしてこの宴会の夜は終わりを迎えた・・・はずだった。


それは宴会場の掃除が終わり、洗い物も片付き、
体を拭いてあとは寝るだけとなった時に事である。
私の部屋を尋ねる人物が一人・・・賈詡さんだ。


「喜媚・・・まだ起きてる?」
「起きてますよ、ちょっと待って下さいね。」


私は寝台から起き上がり、消そうとしていた燭台を持って扉に向かい扉を開けると、
そこには薄い生地で、
うっすらと下着が透けて見えるネグリジェのような寝間着を着た賈詡さんがいた。


「賈詡さんですか、こんな時間にどうしたんですか?」
「ん? 丁度いいと思ってね。
本当は別の日にボクがココに泊まりに来てから話すつもりだったんだけど、
今は皆酔いつぶれて居るみたいだからね。
話だけでも・・・と思って。」
「そうですか、とりあえずどうぞ。」


私は賈詡さんを部屋に案内し、椅子に座るよう薦めるが、
賈詡さんは寝台に座った私のすぐ横、肌が触れ合うような距離に座った。


「・・・え~っと、それで話ってなんなんですか?」
「一つは真名の話しよ、華雄は家の掟があるから別として、
ボクだけが皆の中であんたと真名を交わしていない。
別に嫌だったわけじゃないの・・・だた・・・なかなか機会がなくて。
あの戦の後お互い忙しかったし、邪魔が居たしね。」
「そうですね・・・あの戦の処理はまだ終わってませんけど、
あの直後は本当に忙しかったですね・・・
曹操さん達や美羽ちゃん達も家に泊まったりして・・・」
「それで・・・改めてボクの真名を受け取って欲しいの。
ボクの真名は・・・・ 『詠』 よ。 貴方にあずかって欲しい。」
「賈詡さん・・・・ 「詠よ。」 詠ちゃん。」
「ん♪」


その時の賈詡さん・・・詠ちゃんの笑顔は、今後一生忘れることはないだろう。
頬がほんのり赤く染まり、少しはにかむように微笑んだその笑顔は、
普段見る彼女の気の強そうな表情とは違って、とても女の子らしい澄んだ笑顔だった。


「これからは、僕の事は詠って呼んでね。
あんたの真名の事は知ってるから私はこのまま喜媚と呼ぶけど、
その意味が今までと違うのは・・・・いいえ、他の子とは違うわね。
そこでもう一つの話になるんだけど・・・
喜媚・・・私はあんたの事が・・・好き。」
「・・・・・え?」
「ちゃ、ちゃんと聞いてなさいよね!
ボクが人生で初めて異性に言った言葉なんだから!
私は、あんたの事が、好き。」
「・・・うん、そのなんて言っていいか、
いきなり予想外の事だったから驚いたけど、
・・・素直に嬉しいよ。
でも、私には 「待って・・・この事は荀彧も知ってるわ。」 ・・・え?」
「何時だったか、曹操達が泊まっている時に、荀彧と部屋を借りた事があったでしょ?
あの時に話したのよ。
そしてその後も何度か話をしてお互いの妥協点を見つけることができた。」
「桂花と・・・・?」
「コレを見て。」


そう行って詠ちゃんが私に渡した紙にはこう書かれていた。


『賈詡と董卓を抱くとこまでは認めてあげるわ。
洛陽での事は賈詡に任せるから、ちゃんと言うこと聞きなさいよ。
でなかったら・・・・わかってるでしょうね?』

と、そう書かれてあった


「はぁ!? (あれだけ私の浮気に敏感だった桂花が?
でも筆跡は確かに桂花の物だし・・・どういうことだ?)」
「あんたが納得出来ないのはよくわかるけど、まず話を聞きなさい。
荀彧・・・桂花も別に喜んでこの紙を用意したわけじゃないの、理由があるのよ。」
「桂花と真名を交わしてたの・・・?」
「已む無くね・・・一応言っておくけど、あいつが嫌ってわけじゃないの、
アイツとは恋敵なの、あんたをめぐってね。
だから慣れ合うつもりは無いけど、
今回は利害関係が一致し 『尚且つ』 お互いを信頼する必要があったのよ。」


そうして賈詡さんが語ったのは、私が現状置かれている立場。
馬超さん達の事、霞さん達のような他の私の知り合いの女性の事。
私の立場が変わった事で、これから色んな誘惑や話が持ち上がり、
その中には私を誘惑しようとする者や、見合い話を持ち込む者など、
様々な者達が現れるであろうという事。
そんな人達に私が騙されないように誰か信用が置ける者が付いていないといけない事。
そして桂花と真名を交換するに至った経緯。
私の正妻の座を賭けて勝負はするけど、お互い排斥はしない。

なぜ桂花と詠ちゃんがそんな事になったのか、理由を聞いたが・・・


「ボクと桂花、そして月にはあんたが必要なの。
桂花がどうしてそこまであんたに括るのかは詳しく聞いてないけど、
本気だというのは分かったわ。
そしてボク達の理由だけど、これからこの国の改革をしていく上で、
ボクも月もこれから今までに無い、苦難の道を歩いていくでしょう・・・
そしてその支えにあんたが必要なの。
月は、皆の前でもよく笑うけど、
あんたとボクの前でしか月は本当の意味で安らいだ顔を見せる事は無いの。
月にとって、皆は仲間であると同時に友人であり、
部下であり劉協様などは上司なのよ、
そしてあんただけは、そんな事関係無く友人であり、
同じ夢を持っている者どうしの共感、とでも言うのかしら?
月も自分と周りの人達が幸せならそれでいいと思っている娘よ。
そして喜媚、あんたもそう。
だからなのか、それとも単純に惹かれているのか、
月はあんたの前でだけは本当に安らいだ顔を見せる。」
「・・・詠ちゃん。」
「そしてボク・・・ボクは最初はあんたの知識が目当てだった。
劉協様と劉弁様が拐われたあの日、あんたの機転の効いた策や、
許昌で桂花と学んだという内政方法、
その時見せた知、それが目当てであんたの元に通っていたわ。
・・・でも通っている内に、
ボクが仕事で疲れている時なんかにボクの体を気遣って料理を出してくれたり、
ボクの愚痴を聞いてくれたり、悩みの解決案への道筋を示してくれたりしたり、
お酒に酔ったり、疲れて眠ってしまったボクを部屋に運んでくれたり、
そんな隙だらけのボクに何をするでもなく、そっと布団をかけてくれたり。
そんな日々を送っていたら、いつの間にか喜媚、あんたに惹かれていた・・・」


私は詠ちゃんの独白を黙って静かに聞く。


「そして反董卓連合・・・馬鹿な名前よね、
反董卓ですって? 月が何をしたっていうのよ! ・・・けど、それは今はいいわ。
その時に町の皆を守る為に、あんたが月の客将として参加し、
闘いぬいた時、ボクはあんたの本質を見た気がした。
あぁ、この子は月と同じなんだ・・・
自分の周りの人間が傷つくのが耐えられない子なんだ。
そう思った時、ボクは月に持っていた感情・・・家族、姉妹、親友、
そんな想いとは別に、
あんたには月に持っていた感情とは別に女として、
思慕の感情が生まれている事をはっきりと認識した。
・・・今、もう一度言うわ、喜媚・・・ボクは喜媚が好き。
あんたが必要なの、あんたの知、支え、伴侶、人生を共に歩く者として、
喜媚がボクには必要なの。」
「詠ちゃん・・・・」


詠ちゃんは私の目を真っ直ぐみ見てそう語る。


「別に今すぐ抱いて欲しいなんて言わないわ。
喜媚も桂花に確認したいでしょ?
だけど・・・今は、これくらいは許して?」


そう言うと詠ちゃんは私の正面に立って、私の頬を愛おしい人に触れるように撫でて、
目をゆっくりと閉じながら、顔をゆっくりと近づけ、私に口付けをした。

私はそんな詠ちゃんを拒否することは出来ず、
自然に、詠ちゃんの口付けを受け入れた。

後に私は、桂花への罪悪感に苛まれる事になるが、
その時は桂花への罪悪感は一切無く、ただただ詠ちゃんが愛おしかった。




詠ちゃんとの初めての接吻は・・・少しお酒の味がした。


  1. 2012/09/30(日) 19:52:38|
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七十一話


洛陽




馬超さんの一件があってから数日後、それまで穏やかに過ごしていたが、
とうとう賈詡さんが戦後補償の金銭の支払配分を決める会議に介入し、
その日の内に支払い金額を決めてしまった。

コレには当然のように 各諸侯不満の声を上げたが、
賈詡さんがそれまでに税収や各地の特産物、
現在の諸侯の経済情報等を、
各諸侯が洛陽に届けている税収の報告から綿密に計算して算出し、
更に細作の情報などで懐に入れているであろう分も計算に入れて、
各諸侯の前に突き出し、コレにさらに文句をいうようなら、
こちらにも考えがある、と脅しつけて話し合いを終わらせた。

多少、今後にくすぶる火種を残す結果になったが、
これ以上話し合いをしても結果は出ないし、
どこかで区切りを付けないといけないので、
今回の賈詡さんの決断は長期的に見て正解だろうと、個人的には思う。

曹操さんは店に帰ってきてから、
『もっと早くこうして欲しかったわ。』 とボヤいていたが、
賈詡さんも金額の算出でココ数日、かなり大変だったようなので、
そこは話の付かない話に付き合わされた曹操さんも、
金額の算出に追われた賈詡さんも、両方共お疲れ様でした、といった所だろう。
曹操さんは議長役と言う事で、色々と心労も溜まっているのだろうか、
ウチで飲むお酒の量も結構多かったし。


コレで数日にわたって続いた話し合いは終わり、
明日にはそれぞれの諸侯は念書を書かされて、その翌日には洛陽を出立し、
それぞれの領地へと帰ることになる。

桂花と過ごせるのもあと二日ほどかと思うと寂しくなる。

そんな時、桂花と賈詡さんだけが二人で店に帰ってきて、
急に個室を借りると言うので、言われるまま貸したが、
二人は何を話していたんだろうか?
以前は怒鳴り声などが聞こえてくる事もあったが、
今回はそんな事はなく、二人が出てきた時には、
桂花は渋い表情で、対照的に賈詡さんは、にこやかな表情だった。




--桂花--


私は宮中で賈詡に大事な話があるから、喜媚の店まで付き合え、と強引に呼び出し、
店の個室まで賈詡を連れてきた。
喜媚が私達のお茶とお菓子を置いていった時に、二人っきりで話がしたいと言って、
喜媚には部屋の外に出ていってもらっている。

すぐにお互い椅子に対面で座り睨み合いが始まるが、
今回はそんな事をしている余裕は無い。


「単刀直入に言うわよ。 あんた馬超の件はもちろん知ってるわね?」
「・・・なんであんたが知ってる・・・喜媚か。
あの子はよくも悪くもあんたに躾けられてるわね。
世の男なら力を持てば女の一人や二人囲いたくなるもの。
なのにわざわざ、あんたに言ったという事は、それだけあんたに誠実と言う事か。
・・・妬ましい。」
「うるさいわよ! 喜媚の評価は今回の話の主題じゃないのよ。
今、喜媚の回りの女で、喜媚に色目を使ってるのは何人くらい居るのか教えなさい。」
「なんでボクがそんな事を教えなくちゃいけないのよ?」


賈詡が怪訝そうな表情で私を睨んでくる。


「・・・・今回の馬超の件で確信したわ。
あの馬鹿は、私がほっとくと知らない間に女を落としてくる。
許昌にいる時も私塾で喜媚は結構人気があったのよ・・・女に、
精神年齢が飛び抜け高い事から若い子の相談役として、
色々話を聞いてあげる事があったのよ。
その時は、私が目を光らせていたから問題無かったけど、
今回、あの子は望んでもいないのに、とんでもない権力を持つ事になった。
こうなってくるとただの農家の息子ではなく、
一人の独身の豪族として考えなきゃいけない。
今回の馬超のように、縁談の話も持ち上がってくるでしょうし、
どうも私が見たところ、賈詡、あんた以外にも張遼や華雄、辺りも怪しいし、
劉花様は完全に落ちてるし、なんとか立場で踏みとどまっているだけよね。
このままほうっておくと、あの馬鹿は自制心は強いから、
誘惑されても、そう簡単には手を出さないでしょうけど
その分、真っ直ぐな想いには弱いから、
真正面から好意をぶつけられると、どうしていいかわからなくなる。
今は私が居るからいいでしょう。
でも相手がそれでも良い、側室でもいいと言ったら?」
「・・・っち。」


賈詡は面白くなさそうな表情になる。
コイツ・・・最初からその手を狙っていたな?


「今までは農家の一人息子と言う立場があったから、
妾や側室を持つなんてもってのほかだったけど、
今回、下手な豪族よりも権力を持った事によって、
側室を何人か持とうが世間的には、問題なくなったわ。
そうなると、そう言い寄られて下手したら、全員と関係を持ちかね無いわ。
これはわかるわね? あんたもどうせその線で喜媚を落とそうとしたんだろうから。」
「・・・・えぇ。」
「だから、私は考えたの。
あんたと争っていたらその間に、あの馬鹿がろくでもない事をしでかしかねない、
それこそ、あんたと私で争ってる内に、
馬超か馬岱に横から掻っ攫われたらたまったもんじゃないわ。
そこで・・・腹が立つけど・・・本っ当に、腹が、立つけど!!
お互い一時休戦と行きましょう。
あんたが喜媚に本気だっていう事は認めてあげる。
だけど正妻の座は譲る気がないけど、今はその話は横に置いておきましょう。
・・・賈詡、あんたと董卓は認めてあげる。
その代わりに、洛陽でこれ以上喜媚が馬鹿をやらかさないように、
きっちり見張っておきなさい。
そして私に定期的に連絡をよこすのよ。」
「・・・別にボク達が皆で喜媚を落としてもいいのよ?」


賈詡はニヤリと笑って挑発気味にいうが、コレはハッタリだ。
私には分かる、こいつはどこか私に似た部分があるからだ。


「思ってもないことを口に出すのは止めなさい。
正面切って私にアレだけ啖呵を切ったあんたが、
自分と董卓以外認められるわけ無いでしょう?」


私は湯のみを握り締めるがつい力が入ってしまい、湯のみにヒビが入る。


「私も本当はこんな事許したくないし、
いっそ細作を使って喜媚を陳留に拉致しようとも思ったけど、
断腸の思いで、あんた達を認めてあげるから、あんたも私を認めなさい。
そして、これ以上喜媚の周りに女が増えないように、あんたが見張っておくのよ。
私も書簡で喜媚には釘を刺すようにするけど、それだけじゃ不十分なのよ・・・」
「・・・・・・」
「コレを受け入れられないなら、私は泣き落としだろうが、
子供ができたと嘘をつこうが、なんだろうが手段を選ばずに、
喜媚と婚姻まで強引に持って行くわよ。
決してお互いの為にならないかもしれないけど・・・私は喜媚を失いたくないもの。」


その後、しばらく賈詡は目を瞑って熟考に入り、考えこむ。
そうしてしばらくすると、目を開き、私を睨みつけて話しだす。


「・・・今警戒すべきは、馬超、馬岱、霞、華雄、劉花様、それに陛下よ。
あと最近、音々も怪しいわ、恋はよくわからないけど、なついている事は確かよ。」
「私が知っているのは、愛紗、コレは関羽の真名よ。
それに今は姿を見せてないけど、
真名は稟、姓名は郭嘉、字は奉孝、稟もかなり怪しいわ。
この子は喜媚と私ほど長くはないけど、喜媚の幼馴染で真名も交わしている。
だけど今はどこにいるのか・・・偶に書簡が届くけど、
相方と偽名を使って旅をしているらしいわ。
・・・そういえば最近書簡が届かないわね。 まぁ、今はいいとして。
それに孫策の所の周泰、後は袁術と私の姉妹の荀衍と荀諶よ、荀諶は特に危ないわ。
あの娘、あんたと同じように私に真正面から啖呵切ってきたから。
喜媚を自分のモノにするって。」

「「・・・あの馬鹿! 何人の女に粉かけてるのよっ!!」」


賈詡と、思わず不意に出た言葉が同調してしまった。


「・・・コホン。
と、とにかく危険な状況にであるという事はお互い共通の認識として持てたわね。
・・・それで、賈詡、どうするの?」


そうして賈詡は長考に入る。
開いている窓からは呑気な袁術と喜媚の笑い声が聞こえてくる・・・
こっちはこんなに苦労しているのに・・・後で一発引っぱたいてやろうかしら。


「・・・・・・・分かったわ、その条件を飲みましょう。
お互い正室争いは後日の持ち越すとして、
喜媚にこれ以上女を近づけさせないために協力してあげるわ。 ・・・だけど。」
「だけど何よ?」
「相手が私達みたいに本気だったらどうするのよ?
馬超や馬岱は政治の絡みがあるから別として、
本気で喜媚を好きになった娘は、私でもどうしようもないわよ・・・
特に劉花様や劉協様みたいな人生を救われたような人は・・・」
「・・・・劉花様に陛下、か。」
「陛下はともかく、劉花様は・・・
ココからはあんたは察してるみたいだけど言えないわね。」
「劉花様の事はどうしようもないわ・・・できる事があるとしたら、
誰よりも先に私達が喜媚を堕とす事よ。
喜媚が納得できて、私達が納得できる生き方を見つける事。」
「・・・聞こうかどうか悩んだけど、
そもそも、なんであんた達そこまでお互いが求め合ってるのに、
一緒になってないのよ・・・普通もう婚姻しててもいいじゃない?」
「・・・当時の私と喜媚では、生き方が違ったのよ・・・」


そうして私は陳留で喜媚と別れた時の話を賈詡に語る。


「そう・・・でも今は喜媚の生き方が変わってしまった。
私が華琳様に会う前だったら、間違いなく今でも私は喜媚と一緒にいたわ。」
「・・・だったらあんたもさっさと袁紹の領内を治めて、
この国を安定させる事に協力しなさい。
そうすればあんたと喜媚の生き方も交わる事ができるわ。」
「華琳様がそれを望めばね・・・私は華琳様の、軍師だから。」


そう、私は自分の与えられた裁量を超えて独断では動けない・・・
私は華琳様の軍師なのだから。


「そう・・・でも少なくとも、袁紹の領内を安定させるまではウチと曹操のところは、
同盟こそ組んでないけど、お互い不可侵ではあるし、表面上は友好的なはずよ。
あんたが洛陽に来たって何もおかしくないんだから、
少しは喜媚に会いに来る事ね・・・私達が喜媚を骨抜きにする前にね。」
「はっ、やれるものならやってみなさいよ、忠告しとくけど、
あの子あんな可愛い顔してるけど、一旦共に閨に入ったら中身は獣と変わらないわよ?
せいぜい、自分を保てるように気合を入れることね。」
「な、何よ、脅し?」
「事実よ。 今でこそある程度制御してるけど、
私は最初の数日は、事後はまともに歩く事さえできなくなったんだから。」


賈詡の表情がこわばり、つばを飲み込む音が聞こえる。


「とにかく、いい?
ここまで私が妥協してあげたんだから、あんたは仕事はきっちりしなさいよ!」
「わかってるわよ、ボクもこれ以上増える事には反対なんだから。
ボクと月と・・・本っ当に、むかつくけど! あんただけで十分よ。」
「とにかく今危険なのは、馬超、馬岱、張遼、華雄、劉花様、陛下、
後、愛紗・・・関羽の七人よ。
周泰と袁術は領内に帰るから問題ないとしても、
他の奴らはきっちり見張っておきなさいよ!」
「わかってるって言ってるでしょ! 何度もしつこいわね。
あんたとは後で、きっちり白黒付けてやるけど、
ボクもこれ以上増えるのはゴメンだわ。」

「いいわね、・・・『詠』、任せたわよ。」
「・・・分かったわよ、『桂花』。」


こうして不本意な状況ながら、私達は運命共同体となり、
信頼の証として不本意ながら・・・本当に不本意ながら真名を交わす事となる。


話が丁度終わった頃、扉が開いて、
喜媚が扉から首だけ出してお茶のおかわりが要らないか聞いてきた。




--喜媚--


「あのお茶のおかわり・・・何の話してるの?」

「「あんたは黙ってなさい!!
誰のお陰でこんなに苦労してると思ってるのよ!?」」

「あ、あぅ・・・
(おかしい、私は何も二人を怒らせるようなことはしてないはずなのに、
なぜここまで非難を受けるのだろうか?
ちょっと聞こえた、桂花達があげてた名前は、皆私と仲の良い娘達ばかりだから、
その辺に関係があると思うけど、
二人を怒らせるような付き合いはしてないはずなのに・・・理不尽だ。)」


その後、賈詡さんが帰り、桂花は策を練る、とか言って私の部屋に篭ってしまった。

しょうがないので、私は店の仕事をしながら、
なんであの二人があんなに怒っているのか考えるのだった。


この日から二日後、とうとう曹操さん達や美羽ちゃん達が翌日帰るという事なので、
夕食は盛大に宴会を開いて、また皆が無事に出会えるように祈ると共に、
今ココに集まっている皆が、また無事に出会える事を願うのだった。


翌朝、皆で朝食を取っていた時・・・


「むぅ、やはり喜媚は妾達と一緒にはコレぬのか・・・」
「ごめんね。 私もお店があるから。
だけど美羽ちゃんはお仕事で洛陽に来る事があるでしょ?
その時に来てくれたらまた会えるよ。
それになにか困ったことがあったらいつでも相談に乗るから、
また書簡に書くなり、洛陽に来た時に相談するなりしてくれたらいいよ。」
「うむぅ・・・」
「ほら、美羽様、あんまり我儘を言うと喜媚さんが困ってしまいますよ。」
「・・・わかったのじゃ。」
「・・・・・」
「桂花ともしばらくお別れだけど、当分私は洛陽に居る事にになるから、
こっちに直接書簡を送ってくれたらいいよ。」
「そうね、だけどあんたもちゃんと定期的に書いてよこしなさいよ。
あと余計な隠し事はしないようにしなさいよ。
こっちにはきっちり見張りを頼んだ者が居るんだから。」
「・・・賈詡さんか、賈詡さんに何を頼んだかしらないけど、
変な事はさせないでよ。」
「別に変な事はさせないわよ、賈詡とはある一部において、
ちゃんとした取引をしただけなんだから。」
「本当に頼むよ?」
「あら? あなた達昨夜はあんなにお楽しみだったのに、今朝は仲が悪いのね。」
「か、華琳様!!」
「桂花、曹操さんは私達をからかってるだけだよ。」
「フフフ、桂花はもう少し落ち着かないとね。
それにしても喜媚は引っかからなくて面白く無いわね。」
「曹操さんだって昨夜は夏侯淵さんとお楽しみだったんじゃないですか?
おぉ、卑猥、卑猥。」


私が鉄扇で口元を隠して神経を逆なでする視線で、
曹操さんを見下すように見ながらそう言ったら、
夏侯淵さんの方から箸が投擲され、私の顔のすぐ横を通過していき、
箸の行方を確認したら、後ろの壁に突き刺さっている。
どうやったら箸があんなに深く突き刺さるんだろうか・・・


「良かったわね、春蘭だったら首と胴がさよならしてたわよ。」
「・・・本当にすみませんでした。」
「貴女達は見ててホント楽しいわね♪」
「見世物じゃないわよ、孫策。」
「どうでもいいが、朝から下品な話はやめてもらえるか?
せっかくの朝食の味が不味くなる。」
「すいません・・・大体曹操さんが変な事を言い出すから・・・」
「華琳様が悪いとでも言うのか?」


そう言いながら夏侯淵さんは箸を構える。


「・・・いえ、私が全て悪かったです。」


そうなのだ、私はこの店内で最弱の虫けらなんだ・・・
私に曹操さんや夏侯淵さんに逆らうなんて不可能なんだ。


「そうだ、喜媚ちゃん。」
「何ですか孫策さん。」
「今度もしかしたら私の妹が洛陽に勉強しに来るかもしれないから、
その時は仲良くしてやってくれない?
できたらこの店で、こき使ってあげてほしいんだけど。」
「ウチでですか?
まぁ、もう少ししたら店が少し大きくなるので、
従業員は増やすつもりではありましたけど・・・
どんな娘なんですか?」
「孫尚香っていう私の末の妹よ、それとお付きで、大喬、小喬っていう二人も、
もしかしたら一緒に来るかもしれないから、 『仲良く』 してあげて。
連絡役に偶に明命も洛陽に来る事になると思うけど。」
「はぁ・・・仲良くするのはいいんですけど、
店で雇えるかどうかはわかりませんよ。」
「その辺りは任せるわ、その内、董卓ちゃん辺りから話が来るかもしれないけどね♪」
「・・・孫策さんと月ちゃんが仲良くするのはいいですけど、
変な事に巻き込まないでくださいよ?
私はただの店の店主でいたいんですから。」
「あんたまだそんな事言ってるの?
いい加減ちゃんと自分の状況を理解しておかないと、
変な事に巻き込まれるかも知れないから、いい加減認めなさいよ。」
「だけど、つい最近までただの農家の息子だったり、肉まん屋の店員だったのに、
いきなり、『お前は豪族の仲間入りだ。』とか言われても正直実感わかないよ。」
「その内嫌でも実感するようになるわよ、とにかく気をつけなさいよ。」
「分かったよ、桂花。」


そして朝食後、それぞれの皆が荷物などを持って、
それぞれの領地へと帰ろうとする。


「じゃあ喜媚これ、今までの宿代、これだけアレば足りるわよね。」
「コレは私達の分です、一応孫策さん達の分も一緒になってますから。」
「それじゃあ、頂いておきますけど・・・・随分重いですけど、
中身金とかじゃないですよね?」
「なんでそこまで奮発しないといけないのよ、銀よ。」
「あれ? 金のほうが良かったですか?」
「いいえ! 滅相もない、銀でもこの重さだったら貰い過ぎです!
ただ、昔美羽ちゃんが蜂蜜買った時に、銀の塊を頂いたので、もしかしたらと思って。
流石に金だったら、受け取るわけには行かないので。」
「残念ながら今回は戦時だったのでそんなに持ち歩いていないんですよ。
美羽様は金を出せと言ったんですけど。」
「いいえ、結構です、コレで結構ですから!」
逆に貰い過ぎなので、お釣りを返さなきゃいけないくらいですから!」
「釣りはいいわ、あのお酒かなり美味しかったし、料理も美味しかったわ。
それだけの価値は有ったわよ。」
「私達も同じですよ。」
「そうですか・・・それじゃあ、ありがたく頂戴しておきます。
・・・それで、次にまた皆さんが来た時は・・・
その時に、このお代のお釣りの分も含めて丁重に迎えさせてもらいます。」
「後、喜媚、あのお酒、陳留までまた送っておいてちょうだい。?」
「またですか? 無理ではないと思いますけど・・・流石に家に在庫が・・・」
「あんたの家の裏で酒蔵が有ったでしょ?
あのお酒作ってるんじゃないの?」
「・・・なんで曹操さんが知ってるんですか?」
「見たもの。 アレができたらウチに少し送るくらい問題無いわよね?
楽しみにしておくわ。」
「・・・・・はい。」


曹操さん・・・・どこまでも抜け目の無い人だ・・・
あの蔵の事は誰にも話してないのに・・・桂花か?
桂花なら蔵の中少し見たり匂いとかで分かりそうだけど。


「それじゃあ、喜媚またね。
今回は無理だったけど、次会った時は貴女を私のモノにしてあげるわ。」
「まだ諦めてなかったんですか・・・お手柔らかにお願いします。」
「喜媚それではな。」
「夏侯淵さんもお元気で。 夏侯惇さんには・・・よろしくしなくていいです。
ただ、私は曹操さんに何も失礼なことはしていないとだけお伝え下さい。」
「フフフ、わかった。」
「じゃあね・・・・(隠れて浮気したら・・・わかってるわね?)」
「わ、わかってるよ!
桂花も元気でね、身体には気をつけてね・・・また絶対遊びに来てね。」
「えぇ、また来るわ。 あんたもたまには陳留に来なさいよ?」
「分かったよ、なんとか都合付けるよう努力はするよ。」
「うぅ・・喜媚ぃ・・・」
「美羽ちゃん、また会えるからそんな悲しそうな顔しないで?
美羽ちゃんは笑ったほうが可愛いんだから。」
「う、うむ。 それではの、また絶対来るからの!」
「うん、待ってるから。」
「それでは喜媚さん、また会う日までお元気で。」
「七乃さんもお元気で。」
「喜媚ちゃん、またね。 あのお酒、できたらウチにも送ってね♪」
「・・・分かりましたよ・・・また作る量増やさないと駄目かな。」
「喜媚殿、雪蓮が迷惑をかけるが、これからも仲良くしてやってくれ。
アレでも・・・一応悪気はないからな。」
「何よ冥琳! 悪気なんかこれっぽっちもないわよ!」
「そういう事らしい。」
「ハハハ・・・それじゃあ周瑜さんもお元気で、あまり仕事に根を詰めすぎて、
また体を壊さないでくださいよ?」
「あぁ、分かった・・・そうだ、喜媚殿、
今度また会えるように願掛けとして一つ約束でもしよう。
今度会った時は私の真名を受け取ってくれ。
喜媚殿は命の恩人だし、かけがえのない友人でもある、
また会える日を楽しみにしている。」
「わかりました、私も周瑜さんとまた会える日を楽しみにしています。」
「あ、それ私も! 喜媚ちゃん私も今度会った時真名受け取ってね♪」
「孫策さんはなんか軽い印象を受けるんですよね・・・」
「ぶ~なんでよ! 冥琳は私の家族みたいなものなんだから、
その命の恩人に真名を預けるのはおかしくはないわよ。」
「確かに私もそう思うんですけど・・・
でも、また会えることを楽しみにしてますね、孫策さん。」
「えぇ・・・私も楽しみにしてるわ♪」
「喜媚さま、今までお世話になりました。
私はまた何度か洛陽に来ますが、その時はまたよろしくお願いします!」
「うん、周泰ちゃんならいつでも大歓迎だよ。」
「はい! その時は、よろしくお願いします!」


こうして私は店の前で皆を見送った。
曹操さん達は一度宮殿の方に顔を出し、宮殿で逗留している他の諸侯と一緒に、
虎牢関の東で野営している部隊と合流し、それぞれの領土に帰っていくそうだ。

コレで、なんとか反董卓連合は、無事に洛陽の皆を守ることが出来、
戦火を広げずに済ませることができたが・・・これからが大変だろう。
戦争や革命などではなく、ゆるやかに国内の政治体制を変えていくのは、
難しく根気のかかる作業だ。
月ちゃんはそれをやり切るだけの覚悟と仲間を持っている。
私も微力ながら、知識面で援護し、何とか漢王朝をゆるやかに変革し、
戦の無い国にしたいものだ。


  1. 2012/09/30(日) 19:51:24|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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雑記


こんにちは


先日は色々と私生活であったので更新できませんでしたが、
本日、六十六話~七十話まで投稿しました。

それといつもまにかカウンタが10万HITいったようで、
ありがとうございます。
これだけ多くの方が見に来てくれているのかと思うと、
ありがたい思い出いっぱいです。

明日くらいには、七十四話まで投稿完了し、
新作を投稿していけると思いますので、
今後も、ネギま!SS、恋姫SS共々よろしくお願い致します。


>>レクサスさん
出来る範囲内で更新頑張りたいと思います。

>>Gfessさん
ご指摘ありがとうございます。
履歴に乗せておきました。

>>綾宮琴葉さん
明日くらいには連載分に追いつきそうです。
仕事と私生活が忙しくなってきたので、毎日更新はきつそうですが、
完結目指して頑張りたいと思います。

10万HITですね。
正直私も、避難所を作った当初はここまで伸びるとは思いませんでした。
これからもよろしお願いいたします。


たいち
  1. 2012/09/29(土) 18:48:52|
  2. 雑記
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オリジナルキャラ紹介


こんにちわ。


ココでは 真・恋姫†無双 変革する外史。に
登場するオリキャラの簡単な説明をしたいと思います。

原作を知っている人なら、
原作キャラはすぐに分かると思うのですが、
このSSのオリキャラだと、 「誰コレ?」 と言う事に
なると思いますので、簡単な説明をさせて頂きます。

話の進行に伴ない、随時追加されていくので
このオリキャラ誰だっけ?
と思った時などにご覧下さい。




胡喜媚(こ きび)

主人公。
現実世界で左慈が銅鏡を回収しに着た時の
ドタバタに巻き込まれ、
恋姫の外史に渡ることになった人。
将来の目標は、平穏な暮らし。
彼につけたチート能力である『知恵袋』は
よく内政物のSSで、「なんでそんなに色々詳しく覚えてるんだ?」
と言う疑問があった為、それを補完するモノとしてつけた能力です。
彼が女装する経緯については本編を御覧ください。
女装は本人が望んだものではありません。

感想欄で以前書いた喜媚のイメージ画を、
ココでリンクを貼ってほしいという希望があったので、載せておきます。
20分くらいで適当に書いたものなので、あまり期待しないでください。

イメージイラスト (適当描き)
http://current9.blog.fc2.com/img/kibi001.jpg/



蘇妲己(そ だっき)

オリジナルキャラとして出てきた外史の管理人。
左慈達の上司に当たる人で
喜媚を男の娘化しようと日々画策中。
今回の事故を利用して、なにか企んでるっぽい。


荀緄(じゅん こん)

史実での荀彧のお父さん。
このSSでも荀彧のお父さん。
尚書と言う役職を務めており、洛陽に常駐している。
洛陽の宮殿内での黒い争いに辟易し、
宮殿からさっさと出ていきたいのだが、
娘達が一人前になるまでがんばろうと
日々ストレスで胃を痛めているとかなんとか。


荀桂(じゅん けい)

オリジナルキャラとして出てきた
荀彧のお母さん。
史実を調べてみたんですが
結局名前がわからなかったので捏造した。
名前の由来はもちろん桂花の真名の一部。

※私の初期の調査不足で、古代中国では同姓の人間の結婚は出来ず
それに中国は夫婦別姓なんだそうです。
あと自分の名の一部を息子などに継承させる事もあまり無いようです。
そのため私のSSでは諸事情でこのままとさせてもらいますが、
実際は上記の通りなので、私のSSを読んで
勘違いなど無いようにお願いします。

ちなみに私は当時日本の感覚で、結婚したら姓が変わると思ってました。

このSSでは、荀彧がMに目覚めたのは
この人と喜媚のお仕置きのせい。


荀衍(じゅん えん)

荀彧のお姉さん。
史実では荀彧は4人兄弟だったということで
チョイ役。
クール系の優しいお姉さんだが、可愛いものにめっぽう弱い。
喜媚を密かに狙っている。


荀諶(じゅん しん)

荀彧の妹。
姉達とは違い甘え上手の小悪魔系で
よく荀彧をからかったりしている。
喜媚の事を気に入っていて、ストレートに喜媚を狙っている。


荀愔(じゅん いん)

荀彧のお姉さん。
今のところ、殆ど出番はない。
お父さんっ子だが、恋愛感情などではなく単純になついているだけ。
長女だったので荀緄が猫可愛がりしたせい。


許昌の北門を守っていた警備隊のお兄さん。

警備隊のお兄さん。
北郷一刀に顔がよく似ていて、
このSSの捏造設定では
本来なら襲われた荀彧をこの人が助ける。
喜媚に出番を奪われたかわいそうな人。
裏設定で 数年後、可愛い嫁さんをもらって、
子供も何人か生まれて幸せに暮らしたそうな。


許昌の鍛冶屋のおじさん

鍛冶屋のおじさん。
それ以外の何者でもない。
荀桂さんが良く仕事を依頼するだけあって
許昌では一二を争う腕の持ち主。


洛陽の肉まん屋のおじさん。

喜媚が行きつけの店で お気に入りの肉まん屋、
よくココで買い食いをしているため、
このおじさんには顔を覚えられている。

後に、喜媚が洛陽でしばらく暮らす際、
このお店で住み込みの看板娘(?)として働いている。


弁ちゃん

謎の少女A
分かる人にはすぐ分かるが、
喜媚は恋姫原作キャラにしか警戒していないので
彼女達の事は殆ど無警戒。
性格はおとなしく、流されやすいが、
根っこの部分のどうしても譲れない事に対しては頑固である。


協ちゃん

謎の少女B
分かる人にはすぐ分かるが、
喜媚は恋姫原作キャラにしか警戒していないので
彼女達の事は殆ど無警戒。
明るく人なつっこい性格で わりと誰とでもすぐに仲良くなれる。
意外に耳年増で、時々姉に余計なことを吹き込んだりしている。

※この二人の偽名に喜媚が気づかないのがおかしい。
と言うのはさんざん指摘されてきましたが、
敢えて読者にわかりやすくしているため、お約束と言う事でお願いします。
初期設定では弁ちゃんが 「夕日」 、
協ちゃんが 「朝日」 と言う偽名案があったが、
読む人に分かりやすくするために 今の名前に決まった。


何進(か しん)

屠殺業をしていたが母違いの妹何氏が
霊帝の宮中に入り貴人となったため取り立てられ郎中となる。
何皇后の姉で、黄巾の乱の時に大将軍になる。
その後、十常侍に暗殺され、それがきっかけで
袁紹、袁術に宦官、十常侍の誅殺が実行され、
その後 董卓、賈詡達により、
洛陽内部の汚職に関わった者達が一掃された。
ググるとアニメ版の画像がよく引っかかるますが
アニメ版では結構出番があるのかな?
このSSではPCゲーム版の世界観なので
チョイ役の上暗殺されました。


丁原(てい げん)

呂布の義理のお母さん。
放浪していた呂布と陳宮を召抱える。
漢の行く末を憂いて、何とかしたいと思い 日夜苦心している。
呂布さんの非常識な性格に悩み、
最低限の礼儀を教育しようとしているのだが、
未だ成果は現れていないようである。
誠実な人柄のため 暗躍している一部の宦官や十常侍から目の敵にされている。
史実では呂布に殺されたが、恋姫呂布はそんなことしそうにないので
善人ではあるがそれ故に十常侍などに邪魔だと思われる、
と言う立場になっていただいている。


張譲(ちょう じょう)

十常侍。
洛陽で悪政を働いていた中心人物の内の一人、
その後、袁紹に言葉巧みに取り入り
反董卓連合を組むのに暗躍する。


橋瑁(きょう ぼう)

史実では、三公の公文書を偽造し、
董卓に対する挙兵を呼びかける檄文を作った人。
このSSでは悪役になって頂いている。
決して嫌いとかではないが 立場が都合よく、董卓が善人になる恋姫では
反対に橋瑁が悪役になると話が収まりやすいため。
張譲と丁原暗殺を企み、丁原を暗殺し、親の敵として呂布に追われていた所、
張譲の口利きで袁紹に取り入り、反董卓連合設立の中心人物の一人になる。


劉弁(りゅう べん)

このSSでの重要人物、弁ちゃん。
幼少時に喜媚と出会い、年に何回かしか会えなかったが、
数少ないありのままの自分を見てくれる喜媚に対して
親愛の情を抱いているが、
それがどう発展するかは今後の彼女次第。
劉協との姉妹仲はかなりいい。
後に劉花と言う偽名を名乗り、喜媚と一緒に茶店で働いている。
今の生活には満足しているが、妹の劉協に皇帝職を押し付けてしまった事と、
喜媚がなかなか自分を一人の女として見てくれない事が悩みの種。


劉協(りゅう きょう)

このSSでの重要人物、協ちゃん
幼少時に喜媚と出会い、年に何回かしか会えなかったが、
外の世界の様々な事を ありのまま教えてくれたり、
遊びを教えてくれる喜媚に対して親愛の情を抱いている。
彼女は皇帝などさっさと止めて、
喜媚や姉の劉弁と一緒に暮らしたいと日々願っているが、
状況が許してくれないので、
時折 宮中に喜媚や劉弁を呼び出しては愚痴を言ったりしている。
劉弁との姉妹仲はすごくいい。
姉の劉弁がさっさと喜媚とくっつけばいいと思いつつも、
最近自分も成長してきたので、皇帝などさっさと辞めて、
自分も喜媚の嫁に一緒になろうと画策しているとかいないとか。

この二人は真名を許す相手は家族か夫になる者以外には教えていけないという
古い風習を守っているので、喜媚と違って真名が無いわけではない。
このSSでは華雄さんも同じ風習を守っている為、
裏設定ではちゃんと真名がある。

それとボツ設定であった二人の偽名案で、
劉弁には 「夕日」 これは漢王朝の衰退を意味し、
劉協には 「朝日」 これは新しく生まれ変わると言う意味を密かに含ませていた。


馬騰(ば とう)

馬超のお母さん。
董卓とは同盟とまでは行かないが
一緒に羌族や氐族に対して対応していた。
恋姫董卓の異民族を排除するのではなく、
共に生きていこうと言う考えには 賛成はしていないが、
その人柄と思いは認めている。
後に、喜媚が華佗を派遣したため、
病気が治り、恋姫では病死で死亡するはずだったが このSSでは生存している。
華佗を派遣してくれた董卓と喜媚に感謝しており
洛陽での喜媚の立場等を考えた結果、
娘の馬超か姪の馬岱を喜媚の嫁にするか側室に入れようと画策している。
私の頭の中ではロリババァ設定、馬岱ちゃんより若く見える。


今後 物語の進行と同時に随時追加されていきます。
  1. 2012/09/29(土) 18:42:51|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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七十話


洛陽




馬超さん達との面会で予想外の展開になった後、
私は、董卓さんの執務室へ、賈詡さんと一緒に向かった。


「月~入るわよ~。」
「ど~ぞ~。」


董卓さんの執務室に賈詡さんに続いて入ると、
賈詡さんの部屋よりは少ないが、竹簡が机の上に所狭しと置かれ、
董卓さんが竹簡に埋まっているような状況になっている。


「何、詠ちゃん・・・またお仕事?」
「今日は違うわよ、喜媚が来たから連れてきたのよ。」
「董卓さんこんにちは、お土産持ってきたよ。
仕事で頭を使った時には甘いモノがいいと思って、甘いお菓子。」
「わぁ、ありがとうございます♪」
「ボクはお茶を持ってこさせるわ。」


そう言って賈詡さんが、近くで仕事をしていた女性の文官に、
お茶を持ってくるように指示を出す。


「お久しぶりですね、喜媚さん。」
「お久しぶりって董卓さん・・・前に私が来たのは二日前だよ。」
「あれ、そうでしたか? 何か十日ほど会ってないような気がします。」
「董卓さんはどうしても仕事が多くなるから、
仕事に追われて時間間隔が少し、私達とずれてるのかもね。」
「そうですか・・・へぅ、なんか私だけ、先に老けちゃいそうな感じです。」
「流石にそういう事はないけど・・・」
「今はどうしても戦後処理で忙しいからね、
月には悪いんだけど、月の決裁を貰わないと進まない工事とかあるから。」
「ううん、それはいいの。
でも、こうして私が忙しいのは、
その分、この領土や国が良くなっているって言うことだもんね。
書簡にも、治水工事とか農地拡張工事とか道の補修とか、そういうのが多いから、
戦の前みたいに武器や防具の発注とかそういう書類は前より少ないし。
・・・でも遺族への慰労金の書簡とか見ると、
ちょっと悲しい気持ちになっちゃうな・・・」
「月は悪くないわよ! 悪いのは難癖つけて攻めてきたアイツらなんだから。
慰労金も家族が困らないように、多めに出してるし、
連合の奴らから、ふんだくってやるわよ。」
「フフ、慰労金の方はともかく、連合の方はあんまりやり過ぎないようにね。
それでまた攻められたら、元も子もないんだから。」
「わかってるわよ、その辺の手綱はしっかり握っておくわよ。」
「さて、仕事の話はこれくらいにして、なにか違う話をしようか?」
「そうですね・・・喜媚さんは何か面白いことでも有りましたか?」
「面白くはないんだけど・・・董卓さんも知ってるかもしれないけど、
今、家に曹操さんや袁術ちゃん達が来ててね・・・」


私は、曹操さんや美羽ちゃん、孫策さんが家の店で好き放題する様や、
それでも曹操さんと孫策さんが(一見)仲良さそうに話している様子や、
美羽ちゃんが私の手伝いと言って料理に挑戦する話や
霞さんと華雄さんが来て汜水関では出来なかった、
真名を交わしたお祝いの席の話等をした。


「そうですか、私も霞さんから聞いていましたけど、真名を・・・
そうだ、いい機会かもしれないですね、喜媚さん。
私とも真名を交わしませんか?」
「え? 董卓さんと。」
「はい! 喜媚さんには、今まで色々お世話になってますし、
今回の戦でも私達を助けて下さいましたし、華雄さんの件も感謝しています。
それに個人的にも・・・ゴニョゴニョ・・・
わ、私も喜媚さんと真名を交わしたいと思ってたんですけど、
忙しくて、なかなか時間が取れなくて・・・
そこで、今日はせっかく話題に出ていい機会なので・・・どうですか?」


そう言って董卓さんは上目遣いで不安げな表情で私を見てくる。
やめて董卓さん、董卓さんのそれはただ、可愛いだけだから!


「私は光栄だけど・・・董卓さんはいいの?
私は 「はい、そこまで。」 賈詡さん?」 「詠ちゃん?」
「喜媚が農家の息子とか真名がないとか月も知ってるし、
あんたはもう農家の息子じゃなくて、洛陽屈指の豪族でしょ?
おまけに皇帝陛下にいつでも好きな時に会える許可まで持ってる。
そんなあんたが、ただの農家の息子のはずないでしょ!」
「うぅ・・・私はごくごく普通の、農家の息子でいたかったのに。」
「私も地方でお父さまから継いだ、小さい領主で良かったんですけど・・・」
「互い苦労するね・・・」
「そうですね・・・」


そうしてお互いの顔を見ながら、二人で軽い溜息を吐く。


「・・・董卓さんが良かったら、
ありがたく真名を交換・・・はできないけど呼ばせてもらうよ。」
「はい! 私の真名は 『月』 です。
これからは私を呼ぶ時は月でお願いします。
・・・一応、私が殿方に真名を預けるのは、
父や親族以外では喜媚さんが初めてなんですよ? ・・・へぅ。」


そう言って月ちゃんは恥ずかしそうに俯いてこちらをチラチラと見てくる。


「うっ、あ、有り難く呼ばせてもらうよ。」
「フフ、お願いしますね?
詠ちゃんは・・・喜媚さんと真名交換しないの?」
「え? ボ、ボクはその・・・
こ、今度、喜媚と二人で飲む時に交換しようと思って・・・」
「え~! ずるいよ! 私は喜媚さんの家に、まだそんなに行った事無いのに!」
「ボ、ボクは仕事とかで行く事が多いだけで・・・」
「でもずるいよぅ・・・」


董卓・・・月ちゃんは上目+涙目で賈詡さんを睨むが、
その睨みは・・・威圧感と言うよりも、
相変わらず、ただ可愛いだけだよ・・・月ちゃん。


「・・・・うぅ、わ、分かった。 分かったわよ!
近い内に月の休みを調整して喜媚の家に遊びにいけるようにするから。」
「本当!? ありがとう詠ちゃん!」
「はぁ・・・でも、月もその分仕事がんばってね、ボクも手伝うけど、
今の時期で休みを取ろうと思ったら、
かなり頑張って仕事を早く片付けないと駄目だから。」
「わ、分かったよ・・・・へぅ。」


その後も他愛のない話をしながら過ごしていたが、
賈詡さんが思い出したように、馬超さん達の話をしだした。


「あ! そうだ月、馬超達の処遇なんだけど。」
「どうかしたの?」
「馬超達はしばらく出向と言う形で、ウチの軍に入ることになったから。」
「それはありがたいんだけど、西の方は大丈夫なの?」
「馬騰の体の調子が戻ってきて、親戚も集めて十分対応可能らしいわよ。
連合に馬超が駆けつけてきてくれた時にそう言ってたし。」
「そう、ならいいけど、どうしてわざわざそんな事になったの?」
「うぅ・・・・実は・・・・」


こうして賈詡さんは先ほどまで馬超さん・・・
と言うか馬岱さんと話していたやり取りを月ちゃんに話す。


「へぅ・・・喜媚さん・・・結婚しちゃうんですか?」
「しない、しないよ! いや、将来的には(桂花と)するかもしれないけど、
今すぐはしないよ!」
「そうですか! 本当ですね!?」
「本当! 馬超さん達とはまだ会ったばっかりだし、お互いの事殆ど知らないし。」
「でも、そんな結婚よくある話じゃない・・・「賈詡さん!!」 「詠ちゃん!!」
ご、ごめん・・・つい・・・」
「と、とにかく、その話は私もいきなり聞かされて、
まだどうしていいものか判断がつかない状態だから。」
「でもあんた、これからこういう話は増えてくるから、
中途半端に返事するんじゃないわよ?
まずボクか、音々、月辺りに相談しなさい。
変な約束させられたり、変な嫁あてがわれたくないでしょう?」
「そ、それはもちろんだよ!
政略結婚とか、豪族同士の権力絡みの結婚なんてゴメンだよ!!」
「だったら今回の馬超達の件もしばらく様子を見て、
私達が何か妥協案が無いか考えておくから、馬超や馬岱に誘惑されたからって、
すぐに手なんか出すんじゃないわよ!」
「私はそんなに手は早くないよ!
むしろ自分では奥手なくらいだと思ってるのに・・・」
「でも無理やり襲われたら喜媚じゃどうしようなないでしょう?」
「馬超さん達も月ちゃんや協ちゃんとの友好が目的なのに、そんな事しないでしょ?
それに馬超さん見たら、本人だってまだ納得しきれてないみたいなのに、
そんな強硬手段に出てくるわけないじゃない。」
「まぁ、そうだけど、世の中にはそういう輩もいるって事よ。
今度から、あんたにも誰か護衛を付けるようにするから、気をつけなさいよ。」
「わかったよ・・・・ハァ。
もう普通の農家の暮らしには戻れないのか・・・ハァ」


何やら協ちゃん達を助けたことや、今回の戦で私の立場も大分変わり、
ただの農家から一気に地位が上がってしまったが、
今後は、今まで以上に、いろんな事に警戒しないといけないのかと思うと憂鬱になる。

私のそんな気分の変化を察したのか、
月ちゃんが気晴らしに碁でも打たないかと話しかけてきた。


「そうだ、喜媚さん。
前の続きやりませんか? 囲碁の続きを。
時間はまだ大丈夫よね? 詠ちゃん。」
「そうね、少しくらいならいいわよ。」
「でも碁盤や石はあるけど、私どんな状況だったのか大体しか覚えてないよ?」
「ボクが覚えてるわよ、石を並べてあげるから碁盤と石を持って来なさい。」


私は賈詡さんの指示通りに、棚に置いてある碁盤と石を持ってくると、
賈詡さんがよどみなく石を置いていく。
私と月ちゃんはその様子を唖然と見ているだけだ。


「賈詡さん、全部棋譜覚えてるの?」
「全部は覚えてないわよ、ただ、月と喜媚が打ってた棋譜は、
あの時は勝負がつかなさそうだったから覚えといたのよ。
あんた達が打つと本当に何日もかかったりする時もあるから・・・
ほら、できたわよ。」


そこには確かに私の朧気な記憶でこんな感じだったな~と、思わせる石の配置だった。
こういう時は知恵袋は使えないから当てにならない。
まぁ、流石に現代で私と月ちゃんが打った碁の棋譜が残ってたらびっくりするけど。


「次は喜媚の手番だから、喜媚から打ちなさい。
この時間で勝負がつかなくても、ボクがまた覚えておくから、
続きがやりたくなったらいつでも言ってちょうだい。」


その後は私と月ちゃんで、囲碁を楽しみながら雑談したり、
今度、月ちゃんが家に来た時、何が食べたいかなどを話しながら、囲碁を楽しんだ。

余談だが、私と月ちゃんは、私が知恵袋使って丁度同じ位の強さなので、
置き石は無しで毎回いい勝負になっている。
私も知恵袋の棋譜を当てにしなくても、
月ちゃんといい勝負ができるくらいにはなりたいものだ。


碁を少し打った後、仕事の時間だというので、月ちゃんとは一旦別れ、
協ちゃんの部屋へ劉花ちゃんをむかえに戻った時、
劉花ちゃんは何か中くらいの、服でも入ってそうな袋を抱えていたが、
協ちゃんから貰った物で女同士の話なのだそうなので、深く追求するのは止めておく。

途中、賈詡さんと話したのだが、後一~二日中に話が解決しないようなら、
賈詡さんが介入し、戦後補償の話を終わらせるそうだ。


護衛の人と一緒に家に帰り、今夜の食事の準備に取り掛かり、
陽が沈む頃に、曹操さん達と孫策さん達、それに美羽ちゃん達が帰ってきた。
美羽ちゃん達は私が宮殿に行っていたので、暇だったらしく、
洛陽観光をしていたそうだ。


その日の夕食後、恒例の曹操さん達と孫策さん達による座談会(お酒付き)をした後、
私と桂花は明日の事があるので、先に眠ることにしたのだが、
私の部屋に戻り寝台に入る前その前に、桂花には話しておく大事な事がある。


「実は桂花に話があるの、ですけど・・・」
「・・・何、あんた。 何かすごく私にとって不愉快な話をする時の態度ね?
どんな話しよ? 聞かせてみなさい。」
「実は・・・・」


そこで私は、今日宮殿で馬超さんと馬岱さんに言われた 『お礼』 の話をした。
話が進む度に桂花のコメカミに血管が浮いてきて、
それを通り過ぎたら、ただ無表情で桂花は黙って私の話を聞いていた。


(こ、コレは辛い・・・別に浮気をしたわけでもないのに、
なんで私がこんな目に・・・)
「ふ~んそういう事、あんたも相当 『ご活躍』 されたそうですから?
洛陽での地位も上がったのはわかるけど、
いきなり他人との婚姻の話を私に持ってくるとはいい度胸ね。」
「ひぃっ!?」


そう言って桂花の目から光が消え、虚ろな目に変わる・・・がそれも一瞬、
すぐにいつもの桂花の顔に戻った。


「・・・・なんて冗談よ。 あんたが汜水関にいて戦功を上げて、
陛下の横に立って現れた。
その後、考える時間が有ったからね、こういう話もいつか出てくるとは思っていたわ。
・・・でも、少し早すぎる気がするけど!」
「ご、ごめん。」
「べつにあんたは謝る必要ないわよ。
向こうが勝手に持ってきた話でしょう? で、どうするつもりなの?」
「私としてはなんとか断りたいと・・・」
「だけど断るにも相当の理由がいるわよ?
向こうはあんたに正妻が居ても、側室として捩じ込むつもりなんでしょう?
しかし馬騰もやってくれるわね・・・
涼州を治めていて華琳様が目をつけるだけの事はあるか・・・」
「で、どうしましょうか、桂花・・・さん?」
「とりあえずは様子見ね、馬超か馬岱が何かやらかしてくれたら、
それを理由に断ればいいわ。
様子見の間に交渉して、他のお礼・・・例えば涼州なら名馬か宝物に変えてもらうか、
そうでなかったら最悪、私とあんたの婚約話を持ち上げて、
最悪・・・本当の本当に最っ悪! の場合は、側室として迎えるかしかないわね。
・・・あんたまさかここで私に相談してきて、
今更、私と婚姻するつもりがないなんて言い出さないでしょうね!?」
「そ、そんな事言うつもりはないけど、
まだ、お互いの生き方が、こんな状況で話を進めるのも・・・」
「そうね、せめて私と喜媚が同じ勢力下か同じ邑に住んでいるのならいいけど、
洛陽と陳留、董卓軍のあんた、と華琳様の所の私ではね。」
「私はもう董卓軍の客将は辞めたんだけど・・・」
「辞めたからって、はいそうですかって董卓があんたを手放すはずないでしょう!
さらにあんたは陛下との付き合いもあるから洛陽から出るわけにも行かないし!
本当っ! あんたはなんでこう厄介事ばっかり首を突っ込むのかしら!」
「ご、ごめん。」
「・・・・ハァ、もういいわよ。
あんたが隠し事せずにちゃんと私に、その日に報告してきたって事で、
浮気する気があるわけじゃないって事は信じてあげるわよ。
・・・だけど本当にどうするかよね。」
「どうしようか?」
「まず前提条件として正妻は却下よ、その場合は婚約者がいるって言いなさい。
もちろん私の事よ!!」
「は、はい!」
「その上で側室としてでもいいって向こうが言い出したら問題よね・・・
私はその馬超と馬岱って娘の事、武勇くらいしか知らないし。」
「桂花、一応馬超さん達の事知ってたんだ。」
「華琳様が馬騰とはいつか勝負を付けたいって言ってらしてね、
その関連で調べたのよ、錦馬超とか呼ばれてるんですって?
馬上での戦闘や騎馬隊の運用はかなりの物みたいね。」
「そうだね、私も噂くらいでしか知らないけど。」
「あんたから見てどんな感じだったの?」


私は自信ありげに髪をかきあげこう言い切った・・・


「二人共、赤子の手をひねるような感じ?」
「あんたが捻られるんでしょうが。」


・・・がすぐに桂花には見破られてしまい、おでこをコツンと叩かれた。


「為人はどう? 何か問題起こしそう?」
「馬超さんは少し恥ずかしがりやな部分があるけど真っ直ぐそうな人かな、
不正を働くような人ではないよ、
馬岱ちゃんはなんというか・・・武闘派の荀諶ちゃん?」
「最悪ね・・・となると・・・・賈詡もその場にいたのよね?
どんな感じだった?」
「へ? 賈詡さん? 結婚話が出た時に、
なぜか私よりも先に反応して大反対してたね。
しょうがなく董卓軍に置いておく事は認めたって感じ。」
「そう・・・となると・・・・ここまで来たらもうしょうがないか、
・・・敵の敵は味方よね。
この件は私が賈詡に少し話してみるわ。
あんたはとにかく馬超と馬岱に絶対手を出すんじゃないわよ!!
出したら・・・わかってるわね。」
「わ、わかりました!!」


こうして桂花へ馬超さん達への事を報告・・・相談した事で、
一先ず桂花の逆鱗に触れることは無くなった。

私が緊張で喉が渇いたので、いったん下に水を取りに行った。




--荀彧--


(・・・この先を考えたら最悪、賈詡を引きずり込むしか無いか・・・腹が立つけど!
喜媚を放っておいたら、
この先、どれだけ女を引っ掛けてくるか、分かったものじゃないわ。
私は陳留に近い内に戻らなきゃいけないし、
洛陽で誰か喜媚の見張りを付けておく必要があるわ。
・・・この際、正妻の件は後できっちり話を付けるにしても、
喜媚を放置するのはあまりにも危険だから、賈詡に見張らせて置くしか無いか・・・
今のところ、あいつだけが私に真正面から啖呵を切ってきたから、
アイツ以上の厄介な女はいないはず。
喜媚の性格なら色仕掛けは通用しないし。

逆に喜媚を落とそうとはするでしょけど、私との決着は必ず付けてくるはず。
賈詡は、他の女みたいにコソコソやる事はないでしょう。
それに賈詡がなにか企んでも、喜媚は私に嘘をつく事はないから、
マメに書簡を送らせれば現状は把握できるとして・・・
後は洛陽に放ってる細作にもついでに見張らせて・・・
・・・まったく。
あの時、力ずくでも陳留に留めておけばこんな事にはならなかったのに・・・ハァ。

結局あの時お母様の言ってた事は本当だったのか・・・
『喜媚ちゃんは一人じゃ止め切れないわよ?
そんな器じゃない、だから荀諶や荀衍と協力しなさい。』
本当にあの馬鹿には苦労させられる・・・喜媚のバカ。」


  1. 2012/09/29(土) 18:40:57|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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六十九話


洛陽




音々ちゃんから賈詡さんの書簡を受け取り、読んだ翌日、
朝から曹操さんと美羽ちゃん達は宮殿に出かけていったが、
曹操さんは店を出る前から、早くもうんざりした様子だ。
話し合いはうまくいっていないのだろう。
賈詡さんが関与するのも時間の問題だろう。

私は午前中は掃除メインに仕事をし、
午後は皆に任せて、護衛を何人か連れお土産を持って劉花ちゃんと宮殿に向かった。


宮殿に着いた後、まず、劉花ちゃんを協ちゃんの所へと連れて行き、
協ちゃんに差し入れのお菓子を渡し、少し談笑した後、賈詡さんの所へ向かう。




--劉協--


今妾は部屋の侍女を全員外に出し、姉様と二人っきりで話会っている。


「姉様、喜媚とはうまく言っておるか?」
「それがなかなかねぇ・・・今は荀彧さんが居るから・・・」
「そんな事では駄目だぞ姉様!
荀彧など蹴飛ばして、妾か姉様が喜媚と結婚するのじゃからどんどん押していかぬと!
それに荀彧に子でもできたらどんどん立場が悪うなる。
姉様にはなんとしても喜媚と懇ろになってもらって、妾も一緒に娶ってもらわねば!」
「でも劉協、そんな事をしたら喜媚様が皇帝の夫になるなんて事になってしまうわよ。
それは喜媚様も望まないでしょう?」
「その時は董卓にでも禅譲すれば良いのじゃ!」
「良いのじゃ・・・って。」
「まぁ、それは冗談じゃ。
だが妾は姉様には幸せになってもらいたい。
そのためにも喜媚を決して離してはならぬぞ?
何かあったら妾に言うのじゃ、妾にできることならなんでもするからの。」
「ありがとう劉協。」
「なぁに、姉様が気にすることではない。
最悪、妾が勅を出して妾が喜媚と結婚して姉様を側室にしてしまえば良い。」
「・・・・劉協。」
「じょ、冗談じゃ・・・・半分くらい。」


今の姉様は本当に怒った時の姉様じゃ・・・
姉様はニコニコと笑っておるのに妾の体は恐怖しか感じぬ。


「・・・怒るわよ。」
「じゃ、じゃがそうでもせぬと姉様は奥手すぎるから、
事が進まぬではないか!」
「でも、無理矢理そういう事をするのはダメよ。
私もなんとか頑張るから。」
「う、うむ。」




--喜媚--


(ゾクッ・・・な、何か私の知らない所で凄い事が計画されるような気が・・・)


私が賈詡さんの執務室に向かって移動している時に、妙な悪寒を感じた。

そうしている間にも賈詡さんの執務室に着いたので、
外から賈詡さんを呼び、返事があったので部屋の中に入る。

部屋の中には所狭しと竹簡が積まれ、壁には私が前書いた国の地図が貼られており、
所々に赤い羽根のついた針が刺されていたり、
メモ書きのような紙が針で固定されている。
賈詡さんの机の上も数多くの竹簡が積まれており、
賈詡さんの頭が少し見えるだけの状態だ。


「やっときたわね、馬超の方は客室でもう待ってもらってるわ。
喜媚の準備ができてるなら、すぐにでも向かいたいのだけど、大丈夫?」
「会って話をするだけでしょ?
だったら大丈夫だよ。」
「そう、だったら行きましょう。」


こうして私と賈詡さんは部屋から出て、馬超さん達の待つ客室へと向かう。
その途中で賈詡さんが話しかけてきた。


「前からボクが話していた、曹操達が帰った後、
あんたと大事な話があるって言う話は覚えている?」
「覚えてるよ、だからっていって、今から何かするこ事は無いけど、
ちゃんと、その時用のお酒も確保してあるよ。
隠しておかないと、曹操さんや孫策さんに飲まれちゃいそうだし。」
「そう・・・ならいいの。
それと今日、馬超と会った後、月の顔も見ていってあげて。
あの娘、あんたに会うの楽しみにしてたから。」
「私も董卓さんには会うつもりだったし、お土産のお菓子も用意してきたよ。」
「そう、ありがとう。 月も喜ぶわ。」


そう言って、詠ちゃんは先に進んでいく。
少し進んだ所で、私ももう何回も来た事のある、客室へと着く。


「・・・着いたわね、この部屋よ。
失礼するわよ。」


そう言うと、賈詡さんは扉を開けて中に入り、私も一緒に中に入ると、
そこには馬超さんと馬岱ちゃんが椅子に座ってお茶を飲みながら待っていた。


「馬超、あんたの希望通り、胡喜媚を連れてきたわよ。」
「・・・へ? この娘が胡喜媚・・・殿?」
「そうよ、前に見た目は女に見えるって教えといたでしょ。」
「はじめまして、胡喜媚と申します。
私を呼ぶ時は喜媚と呼んでくれて構いませんので。」
「あ、は、はじめまして! 馬孟起です、馬超で結構です。」
「わたしは馬岱です! よろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします。」
「あ、あの大変失礼な事を聞くかもしれませんが・・・本当に男ですか?」
「そうですよ・・・・少々事情が有って、
と言うか、親の歪んだ教育の所為だと思ってください。
私が望んでこの格好をしているわけでもありませんし、
同性愛者でもありませんので。」
「そ、そうですか・・・失礼しました。」
「お姉様! その前に先にお礼を言わないと駄目でしょ!」
「あ、そうだった!
この度は、母、馬寿成の為に医師を派遣していただきありがとうございました!
お陰で母は日々健康を取り戻し、今では無理をしなければ、
普通に日常生活を送れるようになるまで回復しました。」
「叔母様、皆が見てないと、
武器を持ち出して、訓練場に現れて訓練するくらい元気になったんだよ!
『体が鈍るわ!』 とかいい出して。
ありがとう! おね・・喜媚ちゃん!」


馬岱ちゃん今間違いなく、私の事お姉ちゃんって呼ぼうとしたね。
やっぱり初対面の人にはまだ、私は女に見えるのか・・・


「私は董卓さんから聞いて、華佗に診てもらうようにお願いしただけだから、
そんなに大したことはしてないよ。
だからそこまで感謝されるようなことはないですよ。」
「いいえ! 華佗が言うには自分の医療知識だけでは対処療法はできても、
治療は出来なかったそうなんだ。
喜媚殿がら授かった知識がなければ、絶対に治療は不可能だったらしい、
だから母さんも華佗を派遣してくれた、
喜媚殿には、最大のお礼をしないと行けないって言ってて・・・」
「私はそこまでしてもらわなくてもいいですよ、
大体、直接治療した華佗はどうしたんですか?」
「華佗には旅をするための金子が欲しいと言うことだったから、
母さんが相応しい額の金子を支払おうとしたんだけど、
あんまりたくさん貰うと邪魔だからと言って、銀で幾らか貰ったそうなんだ。
後、護身用にウチの家に伝わる短刀をもらってたかな?
しゅじゅつ? するのに丁度いいとか言って喜んでたよ。」
「そうですか。 (じゃあ、私にあまり無茶なお礼を渡しては来ないだろうな。)」
「それに華佗くんは、もう大事な人が居るみたいだったしね!
卑弥呼さんって言ったっけ? たんぽぽにはちょっと理解できないけど、
そういうのも有りだとたんぽぽは思うよ。」
「? 話がよく見えないんだけど?」
「実は喜媚ちゃんへのお礼は・・・
「ば、馬鹿! 蒲公英黙ってろ!」 ・・・モガー!!」


馬岱ちゃんが私へのお礼の内容を言おうとした途端、
馬超さんが、馬岱ちゃんの口を塞いで、取り押さえようとする。


「貴女達、一応ここは陛下がお住みになる宮殿で、
貴女達は喜媚にお礼をしに来たんでしょ?
もう少しおとなしくしてもらえるかしら?」
「ご、ごめん、蒲公英が余計な事を言おうとするから。」
「・・・ふぅ、余計な事じゃないよ、大事な事じゃない。
実は、喜媚ちゃんへのお礼は・・・その前に喜媚ちゃんって独身?」
「へ? ・・・一応独身ですけど?」
「じゃあ、良かった! 喜媚ちゃんへのお礼は・・・私かお姉様なんだ!」

「「・・・はぁ?」」


私と賈詡さんは馬岱ちゃんが一瞬何を言ったのか分からなかったが、
徐々に理解をしていく・・・つまり・・・


「喜媚ちゃんが独身だった場合、
私かお姉様、どちらか気に入った方を、
お嫁さんとして娶ってもらっうって言う事だよ。
既婚者だった場合は側室になるんだけど、独身だから正妻で大丈夫だよね!」
「ダメよ!!」
「賈詡さん!?」


私が何か反論を言おうと考えて口に出そうとしたら、
横から賈詡さんが、いきなり口を挟んできた。


「なんで賈詡さんがそこで出てくるの?
もしかして賈詡さんと喜媚ちゃん、婚約でもしてた?
でも真名でも呼んでないみたいだしそれはないよね!」
「と、とにかく駄目! それはダメよ!」
「な、ほら、喜媚殿も駄目って言ってるから蒲公英、ここは別の案で・・・」
「喜媚ちゃんは駄目って言ってないよお姉様。」
「え、ええっと・・・いきなりはその、流石にちょっと困るんですけど。」
「喜媚! もっとはっきり言ってやんなさいよ! 」
「あ、うん、流石に二人のどちらかをお嫁さんに貰うのはちょっと・・・
まだお互いの事よく知らないし。」


私もいきなりの展開で、自分が何を言っているかわからないが、
とにかく、ここで二人の内どちらかと婚約とかになったら・・・私が桂花に殺される。


「う~ん確かにそうかもね、お互いの事をもっとよく知る必要があるよね。
私達二人共一緒に嫁入りと、側室に迎えてもらうと言う話もあったんだけど。」
「あ、あの! ちょっといいかな?
そもそも、なんでそんな話になったの?
ちょっと話がおかしいよね?」
「それは叔母様の命を救ってくれたんだから、
それ以上のお返しをする必要があるんだけど、
叔母様は流石に嫁入りできないから、代わりお姉様かたんぽぽのどちらか、
もしくは両方を娶ってもらうって話になって。」
「ちょっと待ちなさいよ! 治療した華佗は金子と宝刀で済ませたのに、
なんで喜媚は婚姻なのよ! おかしいじゃない!?」


そう言うと馬岱ちゃんは賈詡さんの方を向いて、
人差し指を立てて左右に動かす。


「ちっちっち、その辺は賈詡さんのほうが良くわかってるんじゃない?
私達、馬一族は漢室、皇帝陛下に忠誠を誓ってるよね?
その陛下の生命を救ってくれて、国を救ってくれて、叔母様の命も救ってくれた。
更に今回の反董卓連合での働きは、将官としても申し分無し。
そんな喜媚ちゃんに、
ウチの一族から嫁を出して漢室と董卓軍との友誼を図ろうっていうのが、
ぶっちゃけた理由なんだ。」
「・・・・あんたぶっちゃけ過ぎよ。」
「でも隠し事するよりはいいでしょ?
私達、馬一族は陛下と董卓様に忠誠を誓う。
今回の婚姻の話は喜媚ちゃんへの恩返しもあるけど、
私達一族と、董卓様、劉協陛下、この繋がりをより強固にする事が目的なの。
・・・というのが叔母様が言っていた理由です!
ココに叔母様の書簡もあるよ。」
「・・・・っく!」
「あ、あの私はただの農家の一人息子なんですけど?」
「あんたはすでに洛陽において、上から数えたほうが早いくらい有力な豪族なのよ!
いい加減理解しなさい!!」
「・・・あ、あぅ。 いきなりそんな事になっても・・・」
「そういうモノなのよ!!」
「とにかく私も、そこで固まってるお姉様も手ぶらじゃ帰れないし、
必要なら董卓軍に出向してもいいと言われているんだ。
喜媚ちゃんも、お姉様もこの様子だと、決められなさそうだから、
しばらく私達を董卓軍に出向させるという事で手を打たない?」
「うぐぐ・・・・」
「賈詡さん、今董卓軍と馬騰さんのとこはどういう関係になってるの?」
「・・・・この間の書簡では連合に勝利した時点で、
馬騰は私達の配下になるのよ、条件付きだけどね。」
「その条件って?」
「陛下の安否の確認、洛陽での善政の確認、
それと馬騰がこのまま鎮西将軍として涼州に収まり、
西の守りをこのまま請け負う事よ・・・・あと喜媚と馬超の面会。
馬騰に西の守りを任せる事は問題ないの、
ウチのやり方を受け入れてくれるそうだから、
羌や氐との経済交流も行なっていくそうよ。
だ・け・ど、喜媚との婚姻は認められないわよ!」
「それは喜媚ちゃんが決めることでしょ?
賈詡さんには関係ないと、たんぽぽは思うな~。」
「・・・っく、この小悪魔娘が!」
「とにかく、私達はしばらく董卓軍に身を置いて、洛陽に住むことになるから、
喜媚ちゃんともこれからお互いの事をよく知ってもらって、
お姉様かたんぽぽ、どっちを娶るか決めてね♪
たんぽぽは両方がおすすめかな♪」
「・・・・・・あ、あはは。
(コレは隠すわけにも行かないし・・・
今夜、桂花に殺されるかもしれない・・・・)」
「・・・・・っは!
た、蒲公英! どうなった!?」
「お姉さまが真っ赤になって固まってる間に、あらかた話し終わったよ。
私とお姉様はこのまま董卓軍に出向して、
その間に喜媚ちゃんと仲良くなるためにがんばろうね。」
「・・・じゃあ、私のよ、嫁入りは・・・?」
「お互いの事を知るために一時保留~。
ンフフ、どうやら敵は多いみたいだから、気合をしっかり入れていかないとね♪」
「・・・せいぜいあんたらをこき使ってやるわよ!」
「や~ん、たんぽぽこわ~い♪」


そう言いながら馬岱ちゃんは私の腕にしがみついてくる。


「こ、こらっ! たんぽぽ!」
「だってぇ~賈詡さんが怖いんですもの~。」
「くっ・・・・あんた達離れなさい、話はとりあえず終わったんだから離れなさい!
この後、喜媚は月に会う用事があるんだから!」
「もぅ、しょうがないなぁ・・・」


そう言って馬岱ちゃんは私から離れる。


「さぁ・・・行くわよ喜媚。」
「は、はい!!」


この時の賈詡さんの私を呼ぶ声は、
いつか聞いた桂花の地獄の底から聞こえてくるような声とそっくりだった。
私はそんな賈詡さんに逆らう事など出来ずに、
部屋から出ていく賈詡さんにおとなしくついていくのだった。


「ンフフ、楽しくなりそう♪ ね、お姉様?」
「わ、私は楽しくなんか無いぞ!
それにもしかしたら、あの喜媚殿と、その・・・・うぅ。」
「お姉様真っ赤になって、可愛い~♪」
「う、うるさい!!」




--袁紹--


私は今、陛下からの御沙汰を受けた後、
用意された部屋に、文醜さんと顔良さんと共に部屋で謹慎をしている。

何が悪かったのだろうか?
・・・そんな事は明確ですわ、私が何進様暗殺事件の時に、張譲の口車に乗り、
その後来た橋瑁と、二人の口車に乗せられ、愚かにも陛下に弓を引いた事ですわ。

それでも・・・それがわかっていてもこう呟かざるをえない・・・


「・・・何がいけなかったのでしょうね。」
「姫は悪くねーよ! あのバカ共が姫を騙すような事をしたから!」
「・・・」
「いいのよ文醜さん。 あの二人がどんな事を言ったとしても、
最終的に口車に乗ってしまったのは私ですもの・・・
名門袁家の者が陛下に弓を引くだなんて・・・
ご先祖様や、お父様達になんて言っていいか。」
「袁紹様あまりご自分を責めないでください、
止められなかった私達にも責任はあるのですから・・・」
「いいえ、全ては主君たる私の責任ですわ・・・
領地や官職、私財まで没収されこれからどうしたらいいのか・・・」
「姫、一からやり直せばいいっすよ!」
「そうですよ袁紹様、幸い董卓様は、
最低限の旅費と旅に必要な道具などは用意してくれるそうですし、
どこか遠くの・・・交州当たりででもやり直しましょう!」
「斗詩の言うとおりだぜ姫!
そして今度こそ董卓を見返してやろうぜ!」
「文ちゃん! 董卓さんを見返すのはいいけど、
武力では駄目だよ、領地を大きくして洛陽を越えるくらい大きい都市を作って、
それで見返さないと。」
「え~そんなのまどろっこしくないか?」
「今の董卓さんを攻めたら、また反董卓連合の二の舞でしょ!!」


董卓を見返してやる・・・か・・・確かに名門袁家の者として、
このまま負けっぱなしでは、ご先祖様に顔向け出来ませんわ。
何らかの形で董卓さんを見返してやらないと!


「文醜さん、顔良さん・・・いいえ、猪々子さん、斗詩さん、
私に・・・付いてきてくれますか?」
「「はい! れ、麗羽様!!」」
「フフフ・・・それならば、
あんなしみったれた城等董卓さんにくれてやりますわ!
私は交州で新しい、私の王国を作るのですわ!!」
「その意気です! 麗羽様!!」 「どこまでもついていきます、麗羽様!!」
「私は必ずこの洛陽以上の都市を作って、董卓さんを見返してやるのですわ!!
オーッホッホッホッホ!!」
「やってやるぜ!」 「頑張りましょう!」


こうして、私達は陛下の御沙汰通りに、全ての物を董卓さんにくれてやり、
新たな目標に向かって突き進むの事にしたのですわ。


  1. 2012/09/29(土) 18:39:59|
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六十八話


洛陽




--周泰--


雪蓮さまと冥琳さまと曹操達が食事の時にもしていた、
洛陽の統治についての話を風呂あがりにも軽くして、
夜も深まった所でようやく就寝となり、
私達にあてがわれた部屋に戻り、眠ろうかという時、
雪蓮さまより大事な話があるという事で、
私と冥琳様は、椅子に座り雪蓮様の話を聞く事となった。


「さて大事な話というのは冥琳、貴女も気がついてるわね?
劉花という娘・・・いや劉弁様の事には。」
「あぁ、謁見の間でちゃんと容姿を確認したし、
喜媚殿が陛下から受けている信頼を考えても、
劉弁様を預けるなら喜媚殿だろう。
そしてこの店の従業員は全員かなりの訓練を受けた兵や細作で構成され、
向かいの屯所には常に兵が常駐している。
それにこの店。 ただの店ではなく壁も厚く扉も堅牢、
少しくらいなら籠城する事も容易だろうな。」
「なら決まりね、あの劉花ちゃんが劉弁様。 前皇帝少帝弁様だという事は。」
「そうだな。 噂通り怪我をしている様子はないが、
怪我といっても色々ある・・・心の怪我と言うのもな。
原因まではわからんが、何らかの原因で劉協様に皇帝職を譲ったのだろう。
そして自身は、洛陽で怪我の治療という名目で、この店に住んでいる。
聴きこみでも時折、喜媚殿と二人と護衛を連れて宮殿によく行くそうだ。
おそらく劉協様に会いに行くのだろう。」
「で、私達はどうするのかなのだけど。
どうする? 劉弁様拐っちゃう?」
「最も最悪な愚策だな。」
「そうよね、劉弁様に手を出した時点で、朝敵。 国内全ての諸侯を敵に回すわ。」
「間違い無いだろうな、劉協様と劉弁様の不仲は聞いていないし、
定期的に宮殿に会いに行くくらいだ、相当仲は良いだろう。」
「そ・こ・で、私は考えたんだけど、喜媚ちゃんなんだけど・・・
明命、貴女喜媚ちゃんの子を産まない?」
「・・・・は?」


一瞬、雪蓮様が何を言っているのか分からなかったが、
理解した途端、顔が熱くなるのを感じた。


「な、ななな、何をおっしゃるんですか!?」
「大きな声出さないでよ、皆が起きてちゃうでしょ。」
「雪蓮様がおかしな事を言うからじゃないですか!」
「別におかしな事じゃないわ。
考えても見て、劉弁様・・・この場合劉花ちゃんと言うけど、
あの娘、間違いなく喜媚ちゃんに気があるわよ。
今は荀彧が居るから、抑えてるみたいだけど、
その内、劉協さまが仲を取り持つ事だって考えられる。
その劉協様にしてもそうよ、
謁見の間で陛下の真横に立つ事を許されるような信頼を受けているのよ?
しかも男と女、劉協様本人が喜媚ちゃんを婿に取ってもおかしくないわ。
取らなかったとしても、皇室に対して絶大な影響力を、喜媚ちゃんは持っているし、
冥琳が認めるほどの知もあるし、
武も私達と比べたら駄目だけど、一般の兵よりは強いし病気もなく健康。
喜媚ちゃんの血を孫家に入れられたら、
コレは後の孫家のために、必ずいい方向に進むわ。
劉協様と婚姻すれば、
次期皇帝は禅譲されて喜媚ちゃんになるか、またはその子になるか。
劉花ちゃんでも同じでしょう。
そうしたら孫家に喜媚ちゃんの子がいれば皇帝の血縁になる事ができる。
曹操もおそらく、その事に気がついているから、
荀彧を喜媚ちゃんの所に行かせてるはずよ。
もちろんあの二人の場合、元からそういう仲というのもあるけど、
打算も、もちろんあるはず。
ココで私達が出遅れる事はしたくないわ。
そ・こ・で、明命よ。」
「わ、私ですか!?」
「貴女喜媚ちゃんの事、憎くは思ってないわよね?
アレだけ嬉しそうに話すんだもの。
もちろん明命だけではなく私や、冥琳、蓮華や小蓮も狙っていくわよ。
だけど今一番可能性が高いのは明命、貴女よ。」
「わ、私が・・・?」
「そうよ、少なくとも喜媚ちゃんは明命にはほとんど警戒してないように見える。
喜媚ちゃんも暗愚じゃないから、
明命がどんな仕事をしてるか、察しはついてるかもしれないけど、
それが自分に向くとは思ってないはずよ。
あの子はよくも悪くも自分をただの農家の息子か、店の店主くらいにしか考えてない。
自己評価と出世欲が異様に低いのよ。
だけどそれももうすぐ代わるわ。
謁見の間で皇帝の横に立ったと言う事はそれだけで大きな意味を持つ。
これからあの子の周りにはあの子を取り込もうとする奴らが、
それこそ腐るほど湧いてくるわ。
もちろん董卓や賈詡がそれを許さないでしょうし、
喜媚ちゃん自身、人を見る目もそれなりにあるでしょう。
だから、今の内に喜媚ちゃんと私達の間に、
確固たる信頼関係を築いておく必用があるのよ、
そしてその先に明命か、他の誰かが、喜媚ちゃんの子を産むことが出来れば最高ね。
私は、寿春に帰り袁術を打倒した後、
小蓮を董卓との友好の使者と、
喜媚ちゃんの所に洛陽での勉強と言う名目で送るつもりよ。
幸いなことにシャオは私達の勢力下には名目上入っていない、
ただの孫家の娘と言う立場よ。
友好の使者としてと勉強のために洛陽に来たと言っても、
董卓や賈詡は警戒するでしょうけど、断る理由はない。
それと並行して明命には喜媚ちゃんと是非とも仲良くなってほしいの。
貴女をシャオとの連絡役と言う事で洛陽に派遣できるから、
その間にいろんな意味で・・ね♪」
「・・・・」
「正直、明命がおもしろくないとは思うのは、しょうがないと思ってるわ。
貴女と喜媚ちゃんの友情を利用しようとしてるんですもの。
でも、袁術から呉を取り戻した後、孫家が生き残り、
お母様の夢を実現させるには方法は、今はコレが最短なのよ。」
「・・・」
「明命、今我が孫家は反董卓連合に参加し、張譲を捕縛したという事で、
董卓陣営には一定の繋がりがあるが、袁術を討つと、それがどう転ぶかわからん。
そこで、明命には董卓との繋がりを維持するためにも、
董卓と喜媚殿との友誼は維持してもらわねばならぬし、
深めて貰う必要もある。」
「し、しかし、袁術を討てば、きっと喜媚さまは・・・」
「すごく怒るでしょうね・・・私も正直悩んだのよ。
・・・・だから袁術から領地は奪うが、
命は奪わないことにしたわ・・・
悔しいけど、今袁術ちゃんを討つと、国内での私達の立場はかなり悪くなる。
反董卓連合が失敗に終わり、袁紹は領地没収、袁紹領内では、内乱に近い状態になり、
諸侯は保証費用の工面などで袁紹領内で略奪を繰り返すでしょう。
そうでもしないと、自領の維持すらできない程の保証額を賈詡はふっかけてくる。
賈詡は、コレを機に一気に他の諸侯の弱体化を狙っているわ。
そして、その後に狙われるのは、
袁術を討った直後で地盤が固まっていない私達よ。
だけど董卓と強い繋がりを持つことが出来れば、
董卓と縁の深い私達を叩けば董卓が敵に回る可能性が出てくる。
そうなってくると、近隣の諸侯、特に劉表はウチに手を出せないわ。
だから私達は董卓と友誼を深めつつ地盤を固める時間をかせぐことが重要なの。
そのためのシャオでもあるの、今回の張譲捕縛と、
あの娘を友好の使者・・・悪く言えば人質として洛陽に出す事で、
董卓に叛意は無いと証明し、
一時的な短期間でもいいから同盟に近い状況を作り出して、領内を安定させる。」
「その間にシャオや明命には喜媚ちゃんと色々仲良くなってもらって、
董卓との友好も深めてもらう。」
「・・・・」
「貴女がどうしても嫌だというのなら別の人員を用意するわ、
亞莎辺りでも問題ないでしょう。
あの子は元武官だし、今は軍師見習いでもある、
喜媚ちゃんと話をすればきっと興味を持つはず。」


私以外の物が喜媚さまのお子を・・・?


「・・・っ! や、やります。
私が、やります!」
「亞莎を出しにしたみたいだけど、嫌ならいのよ?
喜媚ちゃんは明命が嫌々抱かれようとしたのならあの子、多分見抜くわよ。
そんな気がする・・・あの子からはなにか不思議な感じを受けるの、
歳相応に見えないと言うか、本当にこの国の国民なのかしら?
劉備の所の本郷一刀に感じた違和感と同じモノを感じるわ。
それでもいけるのね?」
「・・・私がやります。 喜媚さまの事はもともと嫌いでは、
・・・好意は持っていました。
それに他の者にやらせるなら、
もともと喜媚様がす、好きな私がやったほうがいいですから。」
「・・・わかったわ、だけど焦っちゃ駄目よ。
いきなり明日、真名を交換しようとか言うのはダメよ。
明命が本当に真名を交換してもいいと感じた時に交換して、
抱かれてもいいと思った時に抱かれなさい。
無理をしたら喜媚ちゃんは見抜いてくるわよ。」
「分かりました。」
「それで雪蓮、袁術は討たないとすると、どうする?」
「呉には当然置いて置けないから、好きな所に行かせるつもりだけど・・・
十中八九喜媚ちゃんのとこって言うでしょうね、
あの娘が他に頼るとしたらそこしか無い。」
「いいのか?」
「しょうがないでしょう。
逆にそうする事で、私達に対する喜媚ちゃんの印象をよくできるわ。
あの子、袁術ちゃんの境遇に同情していたもの。
歳相応に生きられなかった境遇に・・・
喜媚ちゃんのところなら歳相応の生き方をするでしょう。」
「だが袁術が喜媚殿と通じたらどうする?」
「それは、どうもこうもないでしょう?
私達には選択肢が少ないし、仮に袁術ちゃんが喜媚ちゃんの子を産んでも、
普通に二人の子として育つわよ。
その時の袁術ちゃんは官職も勢力もない状態になる、
今までの情報や、喜媚ちゃんの話から、
あの娘が野心を持って旗揚げすることは考えられないわ。
喜媚ちゃんと仲良く店で働いてたら、それで満足するような娘よ。
あの子には幼さから来る出世欲があるけど、
それは美味しい物がたくさん食べれるようになるとか、その程度よ。
張譲たちのような権力を持ちたいと言う願望じゃないわ。
もちろん将来的にはわからないけど、
その頃には私達は地盤を固め終わった後よ。
袁術ちゃんがでしゃばる隙はないわ。
それに喜媚ちゃんのところなら美味しい物を食べて、
喜媚ちゃんと一緒に働いて偶に怒られてそれであの娘は幸せでしょうよ。」
「・・・そうか。」
「あの子の本質は、権力志向ではなく、日々の幸せや、愛情に飢えているところよ。
それが満たされれば余計な考えは起こさないでしょうし、
張勲も袁術ちゃんが幸せなら余計なことはしないでしょう。」
「ふむ、確かに張勲は袁術に対して異常な執着を見せることがあるが、
基本は姉や母親の様なものだからな、袁術が幸せなら余計なことはすまい。」
「正直、複雑な心境なんだけどね・・・・
今まで、散々嫌がらせを受けてきた相手の幸せを願わなきゃいけないなんて。」
「だがそれが今の我らの状況だ。」
「そうなのよね・・・ハァ、世の中ままならないわね。
願わくばシャオか明命が喜媚ちゃんを骨抜きにしてくれることを願うばかりね。」
「そ、そんな、骨抜きなんて・・・」
「この様子ではなぁ・・・ふむ、明命、少し房事の事を学んでいくと良い。
何も知らぬ娘に仕込むのも男の楽しみというが、
本当に何も知らぬのではそれはそれで困る。」
「そうね、シャオや蓮華には孫家の娘として教育してあるけど、
明命はそういう教育をあまり受けたことはなかったわね。
この際だから、少し勉強していきなさい。」
「え、ええぇぇ~!?」


こうして、この日は深夜まで、雪蓮さまと冥琳さまに房事の事を学んだお陰で、
翌朝、喜媚さまの顔をまともに見ることができませんでした。




--喜媚--


翌朝、周泰ちゃんの様子が変だったが、孫策さんに何か吹きこまれたんだろうか?
・・・それとも・・・まさか昨晩の桂花の声が漏れてた?
周泰ちゃんは隠密だから耳が良いのかもしれない・・・コレは改築案に、
壁をもっと厚くして、防音対策をしてもらうようお願いしておこう。


朝食後、曹操さん達と美羽ちゃん達は、会議のため宮殿に向かい、
私はいつも通りの掃除と開店準備や食事の買い出し等を行う。


そんな時、恋さんが音々ちゃんと一緒にやってきた。


「恋さん、音々ちゃんいらっしゃい。」
「・・・ん。」
「恋殿と一緒にわざわざ来てやったのですぞ!」
「なんかあったの? 音々ちゃんは。
機嫌悪そうだけど。」
「機嫌は悪くないですけど、せっかく恋殿と一緒に休みが取れたのに、
詠の馬鹿たれが余計な仕事押し付けていったのです。
ほら、コレを喜媚に渡すように言われたんですよ。」
「でも、喜媚の所にお菓子食べに来ようとしてた。」
「それでも、休みの日に何か頼まれると嫌なものなのです!」
「はいはい、お疲れ様でしたね。
何か美味しいもの出すから機嫌直して。
とりあえずどこか空いてるとこに座っててよ。」


私は二人にお茶と、後で食べようと思って、
仕込みだけしておいたホットケーキを全部焼いて、
恋さんの前に積み重ねる。


「はいどうぞ。」
「ありがとう。」
「恋殿、音々にも一枚分けて欲しいですぞ。」
「・・・ん。」


そう言って恋さんは五枚ほど音々ちゃんのお皿に積む。


「い、一枚で・・・・恋殿がせっかく分けて下さったんですから、
コレは食べ切らないと!!」
「音々ちゃん無理はやめて、食べられなかったら恋さんに食べてもらいなよ。」


私はそう言いながら椅子に座って、音々ちゃんから預かった書簡を読んでみる。

書簡に書いてあった内容は、、
『明日、馬超さんと会う時間を午後に作るから、
昼食食べたら劉花様連れて一緒に来い。』
と言う内容だった、と言うかそう書いてあった。


「賈詡さんも、もう少し書面の書き方というモノが・・・・
まぁ、わかりやすくていいけど。」
「なんて書いてあったんですか?」
「ん? 明日の午後に馬孟起さんに会う予定を作ったから、
ついでに劉花ちゃん連れて宮殿に来いってさ。」
「あ~、なるほど。
馬超は音々も会ったですが・・・変な娘だったのです。」
「変な娘?」
「えぇ、普段はそんなでも無いのですが、喜媚の話をしだすと急に真っ赤になったり、
喜媚がどんな男か聞いてきたり、汜水関での話を聞いてきたりするのですが、
そこに馬岱が茶々を入れるものですから、
顔を真赤にしたと思ったら真っ青になったり、
安心したかと思ったら、涙目になったりと実に見てて面し・・・表情豊かなのです。」
「へ、へぇ~。」


私の知る馬超さんは、確かに感情表現が激しいところはあったけど、
そんな音々ちゃんに不審がられるほどだっただろうか?
まさか私の知らない所でバタフライ効果で馬超さんに何か有ったとか?


その理由を私が知るのは翌日、彼女と出会った時だった。


  1. 2012/09/29(土) 18:39:00|
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六十七話


洛陽




霞さん華雄さん、それに桂花達参加の宴会が終わり、
この日は霞さん達は家に泊まっていったが、
当初言った通り、彼女達には、いつも賈詡さんが使っている部屋を使ってもらった。
しかし、私と一緒に寝たがっていた霞さんが不機嫌なのは理解できるが、
華雄さんまで、私と桂花を見て面白くなさそうな表情をしていたのはなぜだろうか?

私は華雄さんの頬を引っ叩いたり説教したので、
逆に恨まれる位の事は覚悟していたのだが、
どうも華雄さんには、前以上に気を使ってもらっている。


(・・・・まさか華雄さんも桂花と同じくドMな人!?)

「喜媚なに変な顔してるのよ、ほら部屋に入るわよ。」
「あ、うん、今行くよ。」


こうして慌ただしい一日は終わりを迎え、
翌日、朝からいつものように曹操さん達が出かけていった。

そしてこの日は張譲の公開処刑の日だ。
謁見の間で協ちゃんが張譲の処刑を決定してから、
高札が立てられ、処刑台の建設が始まった。
そして先日処刑台が完成し、すべての準備が整ったので、
今日、反董卓連合の主犯の一人として張譲は公開処刑される事になる。

私はそういうものを好き好んで見る趣味はないのだが、
あの戦に参加した者として、戦で散っていった者達の代わりとして、
この処刑を民の目線から見ていた。

張譲は猿轡を掛けられるその瞬間まで、自分勝手な釈明を繰り返し、
最後には斬首台の上に四つん這いに固定され、
兵の手によって首が切り落とされた。

その瞬間、歓喜に沸き立つ民や、ようやくこの戦に結末がついたと安堵する民や兵士。
斬首の瞬間を見て気分を悪くした民や、子供には見せないように目隠しする母親。
無表情で見つめる月ちゃんや賈詡さん達など、
様々な状況だったが、とにかくコレで反董卓連合の件に、
わかりやすい形で一区切り打つ事ができ、
洛陽で暮らす皆にも安心してもらう事が出来たようだ。


そうして張譲の処刑が終わり、宮殿前の広場にはすでに片付けが兵によって開始され、
見に来ていた人達もそれぞれの生活に戻り、
私達も店の開店準備を済ませて、店を営業していた時、
意外な事に賈詡さんがやってきた。


「おはよう、喜媚居る?」
「おはようございます賈詡さん。
どうぞ中に、今お茶を出しますから。」
「悪いわね。」


私は賈詡さんを奥の個室に案内し、お茶を用意して賈詡さんの向かいに座る。


「いいんですかこんな時に来て? 
・・・何か私に緊急の用事ですか・・・って! 思い出した!!
賈詡さん、なんで美羽ちゃん達の逗留を認めたんですか!?」
「その話か・・・しょうがないじゃない、
曹操は認めて袁術を認めないわけには行かないでしょう?
たまたまその逗留場所があんたの店になったという事だけど、
よくよく考えたら、一箇所に集めて見張りを増強したほうが、効率的だし。
それに曹操は劉花様に手を出すつもりはないようだし、
袁術も気がついていないのならば、劉花様の防衛を強化して、
屯所の人員配備を増やして、見張る場所を一箇所にしたほうがいいと思ったのよ。」
「本当ですか? あれだけ劉花様の事がバレるのを心配していた賈詡さんが、
いきなり美羽ちゃん達の逗留を許すなんて、
何か裏があるとしか思えないんですけど。」
「逆に聞くけど何の裏があるのよ?
今は特に各諸侯が洛陽に居るから、警備の人員がギリギリなの。
兵と警備隊では質が違うから、兵を警備隊に回せばいいというものでもないのよ?
一箇所に纏めて警備隊の守備を固められるなら、
そのほうが効率的だと判断したのよ。」
「むぅ・・・」
「聞きたい事はそれだけ?
じゃあこっちの話をさせてもらうわよ?」


なんかいつもの賈詡さんにしては話の持って行き方が、強引な印象を受けるんだよな、
何か隠してそうなんだけど、それが何か皆目検討がつかない。
しょうがないので、この話はここまでにしておくことにした。


「錦馬超、馬孟起どっちかの名前は聞いた事ある?」
「知ってますよ、馬寿成さんの娘さんですよね。
その馬上の武、錦の如き美しさ。 って言う奴ですね。」
「そうそう良く知ってたわね。 だけどその話、馬超本人の前でしないでね。
本人そう呼ばれるのすごく恥ずかしがってるから。」
「分かりました。 で、その馬孟起さんがどうしたんですか?」
「そろそろ宮中も落ち着いてきたし、張譲の件も片がついた。
仕事も一段落ついてきたから、貴方に会わせようと思って。
ほら、馬騰の病気の治療の件、アレでお礼がいいたいそうよ。
なんでもお礼の品も持ってきてるらしいけど、
それらしい物は見当たらなかったし、西涼だから名馬かしらね。
騎馬隊の馬の中には、かなりいい馬が揃っていたから。」
「私が馬をもらっても困るんですけどね・・・
でも、たまには馬で洛陽周辺を駆けるっていうのもいいですね。
昔、訓練の時に馬には乗りましたけど、慣れると気持ちいいモノですし。」
「そうね、それに鞍や鐙もあるし、
無くても乗れたのなら、落馬の心配もそうないでしょう。
だけどアンタ一人で出ていくんじゃないわよ。
必ず屯所の兵に声をかけて護衛を連れて行くのよ。」
「なんで? 私はただの茶店の店主なのに。
それに最近洛陽周辺はかなり安全になったって聞いてるよ?」
「あんた・・・自分の立場を少しは考えなさい!
陛下の最も信頼出来る友人っていうのが、
この国において、どれだけの地位に匹敵するか、よく考えなさい!」
「・・・それ本当なの? 昨日霞さんに、報奨の話と一緒に言われたけど。」
「霞が報奨の話をしたの? なら話は早いわね。
喜媚には陛下や月からかなりの報奨が与えられるから、覚悟しておきなさい。
本当は官職を与えたいんだけど、あんた嫌だし受け取らないでしょ?」
「流石に官職は・・・劉花ちゃんの事もあるし。」
「だから物や金銭になるんだけど、
今あんたが使っている屋敷とは別に別邸を用意するって話があったんだけど、
それだと色々問題があるから、隣の屋敷と繋げて拡張工事をすることになったわ。」
「え? それだと隣の人は?」
「今回の戦の立役者の一人であるあんたの屋敷を拡張するって話したら、
喜んで移ってくれるそうよ。
もちろん転居後の屋敷はそれに相応しい屋敷を用意したし、
転居の費用はこちらで持つわ。
ちょうど宦官達の不動産が余ってて、処理に困ってるのよね。」
「・・・コレ以上家を広くしてどうするの?」
「・・・お風呂が少し狭いと思わない? ソレに酒蔵も作れるし。
ソレにあんたが率いてた黒猫隊?
その構成員が是非、喜媚と劉花様の護衛をしたいって志願してるのよ。
だから、その中から女だけ選んで護衛兼従業員として宿舎が必要だしね。
男の隊員は、向かいの屯所に常駐して護衛をする事になってるわ。」
「お風呂とお酒が本来の目的じゃないの?
まぁ、劉花ちゃんの護衛が増えるのはいいけど、
従業員がそんなに増えてもなぁ・・・この際だから少し事業を拡張しようかな。
紙の生産とか、持ち帰り用のお菓子の販売とか考えていたし。
そうでないと従業員の給金の支払いも困っちゃうし。」
「生活費や護衛要員の経費はこちらで出すわよ?」
「そういうわけにも行かないでしょう。
国内が落ち着いたら兵を退役する人だって出てくるんだから、
その時そのままウチで雇ってあげれたらいいと思わない?」


賈詡さんは一度メガネを外して拭き、かけ直す。


「そうね・・・これからは、未来の事も考えていかなと駄目なのよね。」
「そうそう、戦後処理で今は大変だけど、
コレが終わったらこの国を良い国にしないといけないから、
賈詡さん達はもっと忙しくなるよ。」
「嫌な事言わないでよね・・・でも、今ままでの苦労と比べたらずっといいわね。」
「そうだね、少なくとも国が良くなり民の暮らしも良くなる仕事だからね。
戦争で命の奪い合いする策練るよりよっぽどいいよ。
孫子も言ってるしね。
戦争を起こさなきゃいけない状況になるのは、最悪の策だって。」
「そうね・・・・そうだ、前も言ったけど、
曹操達が帰ったら私が泊まるって話だけど。」
「うん? いいけど、賈詡さんはそんなのお構い無しに、
いっつも泊まりにくるじゃない。」
「普段とは別なのよ、大事な話があるから、あのお酒とお風呂用意しといて。
手間かけて悪いんだけど。」
「了解・・・だけどコレは屋敷増設の時に本当に酒蔵作る羽目になりそうだね。」
「すでに設計段階では酒蔵あるわよ。」
「私の家のはずなのに、私が一切関与してない件について・・・」
「諦めなさい、あんたは劉花様をお預かりしている時点で、
屋敷の防衛上、あんたの希望を受け入れる余裕は殆ど無いのよ。」
「あ、でも厨房は少し広くしてよ、
人が増えるなら、それだけ厨房周りも広くしないと駄目だから。」
「それは大丈夫よ、こっちでも考えてあるから。」
「なら、私からは特に無いよ。」
「じゃあ、そう言う事で。
馬超との正式な面会日が決まったら、また連絡するわ。」
「よろしく、しかし馬か・・・どうしようかな?」
「そんなに難しく考えなくてもいいわよ、
ウチの厩舎で面倒は見てあげるから。」
「その時はお願いするよ。」
「はいはい。 じゃあ私は行くわ。」
「ん、表まで送るよ。」


そして賈詡さんは宮殿に帰っていった。

その後私は美羽ちゃん達が泊まる部屋を皆で掃除したり、
食材を追加で買いに行ったりして過ごしていた。


そんな時、店に居るお客さんの中で、
『店主を呼んでくれ、左慈が来た、と言えば分かる。』
と言って、わざわざ、私の店まで左慈君がやってきた。

その表情はいつも通りだが、どこか今まで有った暗さというか、
鬱屈した感情のようなモノを感じることはなく、
清々しい清涼な風のような雰囲気を醸し出していた。
元がイケメンなだけに、今のこの様子なら街ではモテモテだろう。

私が行くと左慈くんは机を トントン と叩いた。
コレは私に座れ、と言うのと同時に、
周りの人に私達の会話を聞かれないような術を使った証拠だ。


「ほら、コレを受け取れ。」


左慈君はそう言って、机に上に大きな重そうな袋を置くが、
袋から何やら剣のようなものもはみ出しているし、
置いた時の音が、『ガチャリ』 といったので金属類が入っていると思われる。


「左慈君コレ何?」
「ん・・・コレはだな、その、なんというかアレだ。
俺からのプレゼントというか・・・そう、褒美だ! 褒美。」
「・・・褒美?」
「あぁ、あの忌々しい北郷一刀に一泡吹かせてくれたからな。
クックック・・・思い出しただけで胸が空く思いだ。
それをやってくれた貴様への俺からの褒美だ。
全部オマエのモノだ、好きにするといい。
全て売れば、普通に生活するには一生困らない程度の金にはなるはずだし、
中々の宝剣や呪力のある宝石みたいなのもあったな。
どんな効果かは知らんが、まぁ、害は無さそうだったから入れておいた。
心配なようだったら、後日、俺が鑑定してやる。」
「・・・はぁっ!?」
「今日の用事はそれだけだ、じゃあな。
・・・クックック、もう一度、北郷一刀の今の様子でも見てやるか?
くっくっく・・・アハハハハッ!」


そう言っていきなりやってきた左慈君はとんでもないモノを置いて、
言いたいことだけ言って帰っていった。

とりあえず、左慈君が帰った後、従業員の皆に頼んで、
左慈君の持ってきた荷物を、倉庫に片付けてもらった。

後で賈詡さんに頼んで鑑定人に鑑定してもらったら。
無くなったはずのどこぞの王家血筋の家の秘宝や、
一部の地方で逸話になっているような宝剣や短刀。
異民族の間で恐れられてる宝石等、
鑑定人や賈詡さんもびっくりのお宝の山だったそうで、
その後しばらく、私共に是非とも譲って欲しいと言う蒐集家が後を絶たなかった。


午後になり、引き続き掃除等をしていた所で、美羽ちゃん達がやってきた。


「喜媚来たのじゃ!」
「お世話になります。」
「なんで私がこんな目に・・・」
「喜媚殿、こんにちは。」
「お世話になります!」


そこにはなぜかこの世界にあるリュックサックを背負った美羽ちゃんと、
ボストンバックのようなカバンを持った張勲さん、
手ぶらの周瑜さんに周泰ちゃん、
そして、おそらく孫家メンバー全員分の荷物を担いでいる、孫策さんがいた。


「皆さんこんにちは、部屋の準備はもう少しかかるので、
荷物は個室の方にでも置いておいてください。
・・・それで、孫策さんなんでそんなに大量の荷物持ってるんですか?」
「・・・負けたのよ。」
「は?」
「道中でな、明命が喜媚殿に教わった遊びで、
『じゃんけん』 と言うものがあるという話を聞いてな、
雪蓮が負けたものが荷物を全部持つという条件で勝負しようと言い出したので、
やったら見事に雪蓮の一人負けだったのだ。」
「あの、私はすこしは持つといったのですが・・・」
「雪蓮が言い出した勝負だ、遠慮することはないぞ明命。」
「は、はぁ・・・」
「と、とにかく早く荷物を下ろしたいから、喜媚ちゃん個室の扉開けて。」
「あ、はい!」


孫策さん達を連れて個室へと行き、荷物を下ろしてから、
店でお茶を出してゆっくりし貰う。


「それにしてもじゃんけんなんてやるんじゃなかったわ。
勝てそうな予感がしてたのに。」
「そういう勘は雪蓮でも外れるんだな。
今度から、なにかあったらじゃんけんで決める事にしようか?」
「もう二度とやらないわよ!」
「あの・・・一応、皆さんに部屋割りの説明をしたいんですけど、いいですか?」
「あぁ、構わないぞ。」
「美羽ちゃんと七乃さんは一緒の部屋で、孫策さん達は三人で一緒の部屋です。
孫策さん達は三人ですが広い部屋ですし、
寝台も四つほどあるので大丈夫だと思います。」
「わかったわ、無理を言ったのは袁術ちゃんなんだから、
部屋割りはそれでいいわよ。」
「すいません、こっちも曹操さん達もいますし、
従業員の皆も住み込みで働いてもらってるので、
個室を用意はできないもので。」
「無理を言ったのは美羽様なんですから、いいですよ。
それに私も、もともと美羽様と同じ部屋に泊まる予定でしたから。」
「そう言ってもらえると助かります。」
「夕食は曹操さん達やウチの従業員も一緒に食べますが、いいですか?」
「良いわよ、皆で食べたほうが美味しいですもの。」
「私達も大丈夫ですよ。」
「妾は喜媚と一緒に食べるのじゃ!」
「はいはい、喜媚さん机の配置はそのようにお願いできますか?」
「それくらいならいいですよ。」
「では早速、喜媚のお菓子を注文するのじゃ!」
「それは駄目ですよ美羽様、
今お菓子を食べたら夕食が食べられなくなるじゃないですか。」
「む~・・・しかしせっかく喜媚の店に来たのに・・・」
「美羽ちゃん今はお菓子の準備はできてないから、頼まれても作れないよ。
夕食の準備をしているんだから。」
「むぅ・・・じゃあ、あの蜂蜜が入った飲み物を・・・」
「・・・じゃあ、一杯だけですよ。」
「うむ!」
「すいません喜媚さん。」
「これくらいはいいですよ、すぐ作ってきますので。」


とりあえず全員分の蜂果水(スポーツドリンク)を作って、持っていくと、
美羽ちゃんと七乃さん、孫策さん達に別れて、別々の机でくつろいでいる。

みんなに蜂果水を配りながら話を聞いていると、
孫策さん達は、一息ついたら洛陽の町を視察に行くそうで。
美羽ちゃん達はこのまま夕食まで店でのんびりしているそうだ。


その後は話していた通りに孫策さん達は出かけて行き、
美羽ちゃんは七乃さんと一緒に私に付いて回って、
掃除や部屋の準備の様子を眺めたり、
時折、手伝ってくれたりして夕食まで過ごしていた。

夕食の少し前に曹操さん達と、孫策さん達が帰ってきて、皆で夕食となった。


「いただきますなのじゃ!」
「どうぞ、おかわりはあるからゆっくり食べてね。」
「うむ!」


意外なことに美羽ちゃんは、食事の作法はしっかりしていて、綺麗に食べている。
そういうところはきちんと躾されていたのだろう。

私の右横に美羽ちゃん、七乃さんと座り、
左横には桂花、周泰ちゃん、向かえに劉花ちゃんが座り、
曹操さん達は、孫策さん達と何やら色々話している。
時折聞こえる話の内容から、洛陽の事を話しているようだ。


「うむ、喜媚はお菓子も美味いが、料理もうまいの。
妾と一緒に来て専属の調理人にならぬか?」
「ごめんね、私もこのお店のことがあるから、美羽ちゃんと一緒には行けないよ。」
「どうしても駄目かのう?」
「美羽様、あまりしつこく誘うと喜媚さんも困ってしまいますよ。」
「そうか・・・残念じゃのう、じゃあ、菓子職人としてならばどうじゃ?」
「同じじゃない・・・
しばらく私は洛陽を離れる訳にはいかないから駄目だよ、美羽ちゃん。
でも家に来てくれたらいつでもお菓子や料理は出すから、
仕事で来た時は寄っていってね。」
「うむ! 必ず寄るのじゃ!」


孫策さんは美羽ちゃんの事を、
寿春では不機嫌で意地の悪い事を偶にする、と評していたが、
この聞き分けの良さは信頼の証と取っていいのだろうか?
時折、我儘は言うものの、美羽ちゃんは私には聞き分けが良いので助かっている。

桂花の方も美羽ちゃん相手に嫉妬して私の足を踏みつけるという事もなく、
おとなしく食事をし、偶に会話などもして和気藹々と夕食は進んでいく。

そして夕食も終わり、お風呂の準備をしていると。


「喜媚の家には風呂もあるのかえ?
寿春では一緒に入れなんだから、喜媚、一緒に入ろう!」
「「「駄目(よ!)ですよ。」」」
「むぅ・・・三人して言わずともよいではないか。」
「美羽ちゃんは女の子なんだから、男と一緒にお風呂に入るなんて、
結婚した旦那様でもない限り駄目だよ。」
「そうですよ、それにさっき見てきましたけど、
私と一緒に入ったら一杯なっちゃいますよ。」
「そういう事だから諦めなさい。」
「むぅ・・・・」
「お風呂から上がった後に蜂果水を用意しておいてあげるからそれで我慢してね。」
「わかったのじゃ!」


美羽ちゃんには納得してもらえたようで、
七乃さんに言って劉花ちゃんとお付きの侍女さんの次にお風呂に入ってきてもらう。


夕食の片付け等や布団の準備をしながら皆がお風呂に入るのを待ち、
最後に男の私がお風呂に入り、
この日は桂花と一緒に就寝する事にしようとしたのだが、
曹操さんと孫策さんが湯上りに一杯飲みたいと言い出したので、
お酒と水と漬物をだけを用意し、私は桂花と一緒に部屋へと戻っていった。


  1. 2012/09/29(土) 18:37:56|
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六十六話


洛陽




美羽ちゃんが私の家に飛び込んでくるなり、
いきなり、賈詡さんが美羽ちゃんに私の家に泊まる事を許可したと言い出した。

あ…ありのまま 今、起こった事を話すよ。
私は美羽ちゃんはこの家に泊まるのは止めるように、
賈詡さんに説得してもらっていたと思ったら、
いつの間にか賈詡さん自身が許可を出していた。
な・・・何をいってるのか、わからないと思うけど
私も何を言われたのかわからなかった。

・・・なんて事はないけど、曹操さんの前例がある以上、
いずれこうなる事は避けられなかったか。


「あ、あの美羽ちゃん?
賈詡さんがいいって言っても私の方にも準備とか色々あるんだけど?」
「・・・妾が来ると迷惑なのかや?」


美羽ちゃんが上目で涙目になって私を見つめてくる。
彼女の場合、純粋に自分が拒否されたのではないか?
という思いから来ているから質が悪い。


「あのね、別に美羽ちゃんが迷惑とかそういう話じゃなくてね。
美羽ちゃんが泊まる部屋とか準備できてないし、
食事の用意とかもしないといけないから、今日は諦めてくれないかな?」
「別に妾と七乃は喜媚と同じ部屋で良いぞ?
前一緒に寝たみたいに、また三人で一緒に寝よう!
孫策達は押入れにでも放り込んでおけば良いのじゃ。」
「なんですって!?
どういうことよ喜媚!?」


なんで桂花はこういう時の反応だけは、恐ろしく早いのか。


「・・・桂花、お願いだから 『今は』 少し黙ってて。
後でちゃんと説明するから。」
「・・・ちゃんと私が 『納得』 行くように説明しなさいよ。」
「な、七乃さん、孫策さん達も一緒に泊まるの?」
「本当は私達だけのつもりだったんですけど、
その話をしていた時、たまたま一緒にいた孫策さんが、
『じゃあ私も~。』 といった風に賈詡さんに言い出しまして。
・・・さすがに人数が多すぎましたか?」
「・・・へ、部屋はあるんですけど、
何分、人をそんなに泊めることを想定してないので、
掃除もしてないし、布団もそのままなんですよ。
それに食材もそんなに用意してませんし。」
「のう、喜媚。 駄目なのか?」
「くっ・・・あ、明日、明日ならいいから。
明日には掃除して布団も干して準備しておくから。」
「本当か!? 明日なら喜媚の家に泊まってもいいのか?」
「い、いいよ、そのかわり私と一緒に寝るとかそういうのは駄目だよ。」
「なぜじゃ?」
「な、なんでって言われても・・・ほ、ほら年頃の嫁入り前の女の子が、
男と一緒に寝るなんて駄目でしょ?」
「でも今は桂花、ウチの荀彧と一緒に寝てるわよねぇ?」


曹操さんが面白がって場を引っ掻き回そうとしてきた。


「曹操さんは黙っててください!!」
「なんと! 荀彧は良くて妾は駄目なのか?」
「ソレはその・・・桂花はほら、なんと言うか・・・」


曹操さんがこちらを見てニヤニヤと笑っている。
お茶屋や桂花が軍師になった時の仕返しのつもりだろうか?
それとも単純に場をひっかきまわして楽しんでいるだけなのかわからないが、
あの表情はイラつく・・・・いつか泣かしてやる!


「桂花はその 「私と喜媚は男と女の仲だからいいのよ!」 何言ってんの桂花!」
「こういう事は、はっきりさせたほうがいいのよ!
特に今回は賈詡が絡んでるんだから。」
「あらあら、まぁ♪」
「面白くなっていたわね♪」
「ククッ・・・っと失礼、私は笑ってないぞ?」
「・・・フフフ。」


どうも、何日か前に賈詡さんと個室で話してから、
桂花は賈詡さんを異様に敵視するようになっている。
今回はソレが悪い方向で出たか・・・
桂花は真っ赤になって半分混乱状態になっている。

周りの皆は完全に面白がっているが、劉花ちゃんだけがニコニコと微笑んでいる。
・・・アレはまずい時の笑顔だ、この後が大変そうだ・・・


「・・・・? 男と女の仲とはどういうことじゃ喜媚?」
「どういう事って・・・あの、七乃さん何か上手い説明を・・・」
「美羽様、喜媚さんと荀彧さんは閨房の仲と言うことですよ。」
「なんで七乃さんは、おもいっきり、そのまま言うんですか!?」
「おぉ、そういう事か。
なんじゃ、荀彧は喜媚の子を生むのか。
・・・羨ましいのう、七乃、妾も喜媚の子が欲しいのじゃ!」


美羽ちゃんのこの一言で、場が一瞬で凍りついた。


「・・・七乃さん、美羽ちゃんは普段、
いったいどういう教育を受けているんですか?」
「袁家の女として相応しい教育ですよ♪」
「・・・もういいです。」


桂花も荀桂さんに余計なことを吹きこまれていたが、
美羽ちゃんも袁家の女として、跡継ぎを生むことは、仕事のようなものだ。
その関係で、房事の教育を受けたのだろう。
その内容までは知りたくないが、教育係が七乃さんだ。
美羽ちゃんのためにならない事は教えてないだろうが、
面白がって、ろくな事を教えてない可能性も否定出来ない・・・


「駄目だからね、美羽ちゃん。
家柄や格式と言うものがあるんだから。
袁家のご息女が農家の息子の子を生んだなんてなったら怒られるし、
私が手討ちとかになっちゃう可能性もあるよ?」
「うむぅ、そうか・・・ままならんのう。」
「えっ?」


なんでかわからないが、今回は美羽ちゃんは意外なほど素直に引いてくれた。
七乃さんはこの件に関しては、きちんと教育してくれていたのだろうか?

そんな時七乃さんが私のそばに来て、
美羽ちゃんに聞かれないようにこっそりと話しだす。


(喜媚さん、喜媚さん。)
(何ですか七乃さん?)
(私は美羽様には袁家の娘として、世継ぎを生むというのは大切なお仕事だと、
私と美羽様のご両親とで、何度も何度もしっかり教えてますけど、
具体的にどうするかなどは、まだ早いと思って教えていません。
それと、家柄や格式などについてはご両親から良く注意されてましたので、
それを出されると美羽様も怒られるのが嫌で素直に引いてくれます。
かなり家柄に付いてはしつこく注意されていましたから。
あと、喜媚さんの方でも美羽様から変な誘いを掛けられても、
応じないようにおねがいしますよ。)
(分かってますよ・・・流石に美羽ちゃんをどうこうしようとは思ってませんよ。
今回は桂花がなぜか暴走気味なのでこんな話になりましたが、
私だって、美羽ちゃんや七乃さんと一緒に寝る事だって、
まずい事だという事くらい分かってますから。)
(よろしくおねがいしますね。)
「と、とにかく、泊まるなら明日からにしてね。
ソレまでに部屋を準備しておくから、あと部屋は七乃さんと一緒の部屋だからね。」
「うむ・・・わかったのじゃ。」


美羽ちゃんは少し落ち込んだ様子だが、
一応、明日からなら泊まれると言う事で納得はしてくれたようだ。

それにしても曹操さん達と、美羽ちゃんと孫策さん・・・
一体この店はどうなってしまうんだろうか?


この日、美羽ちゃんは少し私の家で遊んでいった後、
七乃さんに連れられて宮殿まで帰っていったが、
その際にしつこく、 「明日は泊まってもいいんじゃな?」 と念押しされたので、
コレはもう逃げられないだろう。

今日は孫策さん達は来なかったが、
明日から美羽ちゃん達と一緒にこの店に泊まるようなので、
劉花ちゃん周りの警護の人には気をつけてもらい、
向かいの屯所の人員も増やしたほうがいいかもしれない。
その辺は賈詡さんがやっているかも知れないが、
そもそも、なんで賈詡さんは美羽ちゃん達のこの店への逗留を許したんだろうか?
どうも美羽ちゃんや七乃さんからの話を聞いていると、
渋々と言うよりかは、昨日は拒否したのに、
今日はむしろ求められたから許可を出した・・・
いや、率先して許可を出した。と言う印象を受ける。

曹操さん達が冗談で賈詡さんが私を好きだとか言っていたが、
嫌われてはいないと思うが、男と女として好きか?
と言われたら頭を傾げる。
月ちゃん第一主義の賈詡さんが、私を好きになる要素はそんなに多くあっただろうか?
曹操さんが言ったからとはいえ、そう考えるのは私の自意識過剰だろうか?
いくら考えても現段階では答えはでそうにないので、
頭を切り替え、今夜の食事の用意や、明日美羽ちゃん達が泊まる為の準備を進める。


さて、美羽ちゃん達が帰って、私達が夕食の準備や掃除をしていると、
お酒を持った霞さんと華雄さんが店にやってきた。


「お~い 喜媚居るかぁ?」
「邪魔をするぞ。」
「霞さん、華雄さんいらっしゃい。」
「・・・あら? 貴女は虎牢関で騎馬隊を率いていた張遼と、
汜水関を守っていた華雄じゃない?」
「ん? 誰やこの金髪の娘は?」
「こうして対面するのは初めてね、でも私は貴女と会ったことあるのよ?
私は曹孟徳、曹操でいいわよ。」
「ウチは張文遠、張遼でええで。
せやけど、どこで会ったことあるんや?」
「貴女連合の戦が始まるまえに汜水関で見張りをしていた時に、
私に向かって手を振ってきたじゃない。」
「あ~! あの時のおもろい奴らか!
思い出したわ、なるほどあれが曹操やったんか。」


霞さんと曹操さんが話をしている間に、
こちらでは華雄さんと夏侯淵さん達が挨拶をしている。


「私は華雄だ。」
「私は華琳様に使えている、夏侯妙才だ、夏侯淵で結構だ。」
「私は荀文若よ、荀彧でいいわ。」
「あ~っ! このちんまいのが、喜媚がよう言っていた荀彧か!?」
「だ、誰がちんまいのよ!」
「ハハハすまんすまん、しかし噂通りきっつい性格みたいやな。」
「喜媚! あんたどんな話をしたのよ!?」
「別に変な話はしてないよ、許昌でも昔話を幾つかしただけだよ。」
「だったらなんで張遼が、いきなり私の性格をキツイ性格だなんて言うのよ!」
「それは・・・ほら、例の男の子三人組を泣かした話とか色々と。」
「そんな話はしなくてもいいのよ・・・まったく。」
「それで、張遼さんは今日はどんな御用なんですか?」
「おぉ、それや!
ようやく華雄と一緒にココに来る休みを取れたからな、
汜水関や、前やった簡単なものじゃなくて、
今日はちゃんとした真名を交わしたお祝いをちゃんとやろうと思ったんや。
今回はちゃんと酒もツマミも大量に持参してきたで。」
「・・・あんた汜水関で、張遼と真名を交わしたの?」
「まぁ、色々有ってね・・・ってその話はもうしたじゃない。」
「そうだったわね、ふぅん・・・
(この女、張遼も華雄も・・・デカイわね。 これは敵ね!)」
「曹操達が喜媚の店に泊まってたのは賈詡から聞いてたんやけど、
どや? 曹操達もウチらの宴会に参加するか?
それとも、汜水関でいいようにやられた、
連合に与していた諸侯としては、おもしろないか?」
「フフフ、そんな軽い挑発に乗るような私じゃないわよ。
でも宴会は面白そうね、参加させてもらうわ。」
「ほな早速、喜媚ぃ~、あのお酒とオツマミ作ってぇ~。」
「・・・ハァ、まぁ、今回はいいですけど、
いつもいつもそんなに簡単に店でお酒が出しませんからね。」
「そうは口でいうても 身体は正直な喜媚だった、っちゅうてな♪」
「何処でそんなセリフ覚えてくるんですか!?」
「ん? この間、立ち読みした艶本でやで。」
「張遼・・・女ならもう少し恥じらいを持て。」
「ふふん♪ そんな事言うてると色々と置いて行かれるで?
賈詡っちも最近怪しいし、何よりココには荀彧がおるんやで?」
「わ、私は武人だ、そんな色恋沙汰など無縁だ!」
「ウチは色恋沙汰なんて言うてないで?」
「くっ・・うるさい!」


何やら霞さんと華雄さんが話しているが、
最近の華雄さんの私に対する態度は少しおかしいので、
そこをからかわれているのだろうか?

二人は、少し大きい机に曹操さん達と一緒に移動し、
昔の武勇や汜水関での戦の時の話に花を咲かせている。

私は急遽、張遼さん達が来た事で、夕食が宴会用の食事に変わってしまったので、
皆と一緒に急いで料理を仕上げて、
ツマミができ次第、霞さん達の机に持っていくのだが、
次々と霞さんが持ってきたお酒とともに消費されていくので、
何時まで経っても料理が終わらない状況だった。


「お~い喜媚、そろそろこっち来いや。
杯三つと例の酒持ってきてな~。」
「はいはい・・・」


一時的に皆に料理を任せて、
霞さんの指示通りに杯三つと私の自作の日本酒を持って、
皆が居る机に移動する。

私も席に座り、杯にお酒を注ぎ、霞さん、華雄さん、私でそれぞれ杯を持って、
それを掲げて乾杯をする。


「それじゃあ、堅苦しい挨拶は抜きや。
ウチらの友誼とこれからも、もっと仲良うなれるように、願い、誓って、乾杯~!」
「「乾杯!」」
「私達も一応祝福させてもらうわ。」
「乾杯。」
「む~・・・かんぱい。」


こうして宴会も進み、酔った霞さんが私に抱きついてきたり、
華雄さんは曹操さんの勧誘を受けたり、
夏侯淵さんは黙々と静かにお酒を楽しみつつ、
曹操さんの器にお酒やツマミが無くなっては補充している。
桂花は、私と霞さんの間に潜り込んで、 『あんたは離れなさい、張遼!』 等と、
私と霞さんの間に椅子を持ってきて座り込んで、
霞さんを警戒している。
劉花ちゃんは桂花とは反対側の私の隣に座り、自分のペースで料理を楽しんでいる。


そして話は汜水関の挑発行為の話になり、
それを止めるために私達がどれほど苦労したかや、
その後、華雄さんに演説させるために、私が影に隠れていたことなどを話して、
私が桂花に叱られたり、その時に霞さんと真名を交換した話や、
さり気なく曹操さんが火薬の話を聞き出そうとしてきたが、
そこは話せないの一点張りで逃げ、宴会は夜まで続いていった。


「なぁ~なぁ~喜媚ぃ~、今日泊まって行ったらあかん?」
「いいですけど部屋は今掃除してある部屋がないので、
いつも賈詡さんが使ってる部屋を華雄さんと使ってくださいよ。」
「え~それやと狭いし~ ウチと喜媚が一緒に寝たらええやん。」
「ダメよ!!」
「張遼! 何を考えているんだ!?
嫁入り前の娘が、は、はしたない!」
「駄目です。 それに部屋には、
ちゃんと寝台は二つありますから普通に一つづつ使えますよ。」
「え~、でもウチと一緒に寝たら、少しくらいなら触ってもええで?」
「張遼さんは魅力的なんですけど、少し恥じらいを持ってくださいね。
女性が素っ裸で居るよりも少し隠したり、
少し恥じらいを持った方が男はグッと来るもんですよ。」
「む~、難しいなぁ。」


皆お酒が入っているので、かなりぶっちゃけた話になっているが、
最近、張遼さんはなぜか私に胸を押し付けてきては、
耳元で、 『当ててるんやで?』 とか言ってきたり、
汜水関や虎牢関でも、今回みたいに一緒に寝ようと言ってくる。
真名を交わしたことで、親しくなったと思うが、その方向性が少々問題があると思う。

私には桂花が居るし、桂花本人がいる前で、
『じゃあ一緒に寝ましょうか♪』 なんて言ったら、
私は明日の朝日は拝めないだろう。


「霞さんはなんで私と一緒に寝たがるんですか・・・まったく。」
「喜媚は抱き心地がええんや、
それにウチが子を生むとしたら今は喜媚の子しか考えられへんしなぁ。」
「「「・・ブフゥっ!?」」」
「ゲホッ ゲホッ ちょ、張遼あんた何言ってるのよ!?」
「そうだぞ! いきなり何を言い出すのだ! 貴様酔っているのか!」
「霞さん・・・異性相手にそんな事言うと、
人によっては冗談ではすみませんよ?」
「え~ほんまやし~。
戦場で一緒に命をかけて、
汜水関で、ウチでも止められへんかった華雄を止めてくれた時、
あぁ、喜媚も見た目はこんなんやけど、男なんやなぁ。 って思うてん。
ウチもそろそろええ年やし、
子供作るなら喜媚の子がええなぁって思ったっておかしないやろ?
ウチ喜媚好っきやし。」
「ダメよ! 駄目! 絶対ダメよ!」
「なんで荀彧がそんなに反対するねん。
ええやん、恋愛は個人の自由で、ウチと喜媚の問題やで?」
「とにかくダメなものは駄目なのよ!!
喜媚が許しても私が許さないわよ!」
「霞さんも酔ってるとは言え少し落ち着いてくださいね。
私を好きと言ってくれるのは嬉しいですけど、
その・・・私は桂花がいますので。」
「喜媚・・・」
「・・・・む。」


桂花が私の方を見て目をギラつかせているが、
華雄さんは何か面白くなさそうな感じだ。


「そんなんどうでもええやん、
正妻は誰になるか後で決めたらええけど何人嫁もろうても問題無いやん。」
「問題あるでしょう・・・私はただの農家の一人息子ですよ?
そんな身分の者が何人も妾や側室侍らせてたら問題あるでしょう・・・」
「あれ? 喜媚知らへんの?
喜媚は今回の戦功や前の件と合わせて、かなり偉い官職貰えるんやで?
それを断ったとしても、かなりの額の報奨金が出たり、
陛下から洛陽での土地を持つ権利や税の免除等かなりの報奨が出て、
そこらの豪族より力が強くなるんやで?
それに皇帝陛下の友人として謁見の間でも、
陛下の横に武器を携帯して立つことが許されとるんやで?
ヘタしたら月っちよりも影響力あるで?
それに西涼の馬騰、名代のあの錦馬超が喜媚に是非お礼をしたいって言って、
馬岱ちゅう娘と一緒に来とるで、
その内、詠から話があるけど、なんでも大層なお礼を用意してるとかなんとか。」
「・・・・報奨なんて初耳ですよ。
それに馬孟起さん帰ってなかったんですね・・・」
「詠が喜媚には何が何でも報奨を受け取らせるって言っとったで。」
「賈詡さぁぁん!!! なんてことしてくれるんですか!?」
「詠は今おらんがな。
ともかく、そんな喜媚やから妾や側室何人侍らしてもだれも文句言わへんで。
むしろ家の娘をどうか娶ってください! って、
これからどんどん見合い話が来るで?」
「・・・賈詡さん・・・なんて事をしてくれたんだ。」


私がそううなだれていると、曹操さんが横から話しかけてきた。


「・・・そう賈詡を責めるものでもないわよ。」
「曹操さん・・・・」
「喜媚、貴方自身が自分をどう評価してるかわからないけど、
今回の戦功や、陛下との信頼関係、董卓軍との繋がり、あと桂花や私、
袁術、孫策との繋がり等を考えても、貴方の立場はすでにただの農民などではなく、
その辺の弱小諸侯よりもはるかに上の権力を持っているのよ?」
「そんな・・・私はただ・・・」
「まぁ、貴方が農家の息子や、この店の店主であることは違いないけど、
この国に対する影響力はある意味、董卓以上なんだから、
そろそろその辺を自覚したほうがいいわよ。」
「そんなぁ・・・・」


霞さんの爆弾発言と共に、私は知らない間に、
とんでもない地位に登りつめてしまったようで、
私の目標である、のんびりした平和な生活からは、
どんどんかけ離れていくのだった。


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六十五話


洛陽




曹操さん達が私の家に泊まるようになって三日目、
今日も曹操さん達は朝から宮殿へ出かけていったが、
今回の戦での戦後処理の話し合いが未だうまくいってないらしい。

それというのも、最大勢力でも有り、金銭的にも最も裕福だった、
袁紹さんの勢力が、領地と私財の没収で離脱。
美羽ちゃんは、孫策さんの張譲捕縛による功績で免除され、
これで莫大な戦後の補償費用を、残りのすべての諸侯で分担しなければいけない。
曹操さんも当初から董卓さんと内通していた事と、
情報を提供したことで免除されているが、
彼女の場合、曹操さん主導で戦後補償の話し合いを進め、
他の諸侯と合同で、袁紹さんの元領地を一旦平定しなくてはならない。
曹操さんはこれから精神的にキツイ仕事が待っている。

中には董卓さんに取り入ろうとする者が現れたりすることだろう。
そう言った諸侯には厳正に対処する方針のようだ。

更に、曹操さん主導で連合に参加した諸侯全員で、袁紹さんの領地を平定し、
その後一旦協ちゃんに返上し、その上で、領地運営を誰にさせるのか?
平定時の働きや、自領運営の様子を見て
再度協ちゃんが指定するという運びになっている。

袁紹さん本人は粛々と協ちゃんの裁定を受け入れるつもりのようで、
用意された部屋でおとなしくしているのだが、
その他の袁紹さんの配下の者が素直に受け入れるとは思えない。
中には、独自で勢力を立ち上げるような者も出てくるだろう。
それらの者達を、連合の諸侯達で同士討ちさせる。

コレが賈詡さんの連合を疲弊させるための策だ。
少なくともこの交渉がうまくいかない事で、
最初の段階の連合同士の不和を煽ることには成功している

そしてそんな不毛な話し合いが日々が続くので、曹操さんにしては
珍しく憂鬱な顔をして今日も朝から宮殿に出かけていった。


今回の戦で被害者を多数出したとはいえ、
政治的な視点で見れば最も得をしたのは、もちろん董卓さんの陣営だ。

袁紹さんの持つ莫大な領地に溜め込んだ資産や、私財を、
没収という形で得ることができ、
最大勢力である袁紹さんを自らの手を汚すこと無く、潰すことが出来、
名実共に洛陽では悪政など行なっていないことが証明され、
戦争で使った費用は、連合軍側の諸侯が負担してくれる。
そのため、戦争で散っていった兵達の家族への見舞金などもかなり厚遇され、
少なくとも遺族が路頭に迷うという事は無いようにしている。

更に、没収した私財を元に、まずは董卓領内だけで試験的に行われる、
塩を各城内である程度商用に備蓄し塩の引換券、
いわゆる塩引と呼ばれる手形を発行し、
塩をわざわざ運んで流通させなくても手形を持って城に行けば、
それに応じた塩と交換してくれる手形や、
インフレが起きている状態の五銖銭をきちんと管理し、
領内においては一定の品質管理をし、
偽造には最悪、関係者、一族郎党皆死罪と言うキツイ罰則を設け、
更に銀で作った百倍の価値のある貨幣等を発行する計画の、
初期段階の資金に当てるようだ。
コレらを、董卓領内から徐々に国内でも流通させていき、
重い五銖銭の束を持ち歩かなくてもいいようにし、
商品や金銭の流通等を促し、経済を回していこうと言う狙いである。
コレは長期計画なので、賈詡さんもゆっくり確実にやっていくつもりのようだが、
そのための初動資金として、
袁紹さんの資産や私財を没収できた事は、間違いなく追い風になっているだろう。


こうして賈詡さん達も、汜水関、虎牢関、の復旧工事計画や、
使った武器等の発注等の事務処理に追われ、
忙しい日々を送っている・・・はずなのだが、
彼女は今こうして私の目の前で、竹簡を読みながらお茶を飲んでいる。


「賈詡さん、私が言うのも何だけど、宮殿に戻らなくてもいの?
まだ昼にもなってないのに、こんな所でのんびりしてていいの?」
「だったらあんたがもう一度客将・・・いいえ、
ボクの専属の文官になってボクの仕事手伝いなさいよ。
こっちは昨日の夜も月や音々と一緒に深夜まで仕事してたのよ?
キリが着いた時くらい、ゆっくりしたっていいじゃない。
あと、あの新式の算盤、追加で幾つか作ってちょうだい、費用はこちらで出すから。
ようやくあれを使える者が何人か出てきたわ。
これから更に追加注文すると思うから、そのつもりでいてちょうだい。」
「それはいいけど・・・まぁ、身体を壊さないように気をつけてね。」
「ありがと。 気を使ってくれるなら、
ボクの仕事手伝ってくれたほうが 『はるかに』 いいんだけどね。」
「さすがにそれは・・・劉花ちゃんの件もあるし。」
「わかってるわよ、言ってみただけよ。
あ、それで思い出したけど、あんた、袁術の件どうするの?
劉花様がいるから、できたらココにこれ以上人を集めたくないんだけど。」
「どうしようか・・・正直私もどうしていいものか・・・
断ろうにも曹操さんの事がバレたら、
『曹操は良いのになぜ妾は駄目なのじゃ!』 とか言いそうだし。」
「ボクも昨日は、一応駄目だって言っといたけど、アレはまったく諦めてないわよ。
今日も又ココに来るだろうし、ボクのところにも来るだろうけど、
曹操とココで鉢合わせしようものなら、ボクも断り切れないわよ?
劉花様の事は秘密だから言えないし・・・
今となっては、曹操に市中に宿をとって良いなんて言わなければよかったわ。」
「しょうがないよ。
私もまさか曹操さんが家に泊まるなんて言い出すと思わなかったし。
洛陽にはもっと良い旅館がたくさんあるのに、
なんでわざわざ宿でもないウチを選んだのか。」
「・・・ごまかすのはやめなさい、あんただって察しがついてるんでしょ?」
「まぁ、ね。
私狙いと、最近、桂花に不満がたまってたみたいだから、
それの発散が目的だろうね。」
「あんたもホント厄介事ばかり巻き込まれるわね。」
「昔は普通に農家かココよりも小さなお店で、
のんびりできたらそれでよかったんだけど。
・・・今はそうも言ってられないしね。」
「そうね・・・なんとか反董卓連合は阻止したけど、
ここからは私達文官が、本腰を入れて国内を変えて行かないといけないんだから、
人材はいくら有っても困らないわ、あんた何かいい人材知らない?」
「そうだな~・・・劉備さんとこの諸葛亮ちゃんと鳳統ちゃん辺りは?
一応、将来的に国営の塾を設立する前段階として、
董卓さん運営の塾で講師をしてもらう予定らしいけど、
ある程度、為人を見極めて変な野心を持たないようなら手伝ってもらったら?
彼女達を塾の講師で使い潰すのは正直もったいないよ?」
「ボクはそれほど詳しく話した事はないけど、
黄巾の乱の時の活躍と領地運営を見るに、相当できそうな感じね。
・・・だけど、あそこは本当に運が悪かったわね。
もらった領地が袁紹のすぐ隣で、領内を把握してさぁこれからと言う時に、
連合の檄文ですものね・・・逆らいようがなかったでしょうに。
それに追い打ちを掛けるように天の御遣いだっけ?
アレがまずかったわね、アレがなければ領地没収までせずに済んだのに。」
「言い出した賈詡さんがよく言うよ。」
「仕方ないじゃない、
月の為にも危うい芽は早い内に摘んでおく必要があったんだから。
あの劉備を見て、コイツは早い内に潰さないと、まずい事になると思ったんだもの。
アレは認めたくないけど、月以上に人を引き付ける魅力がある。
だけど細作の調査の報告を見たところだと、まだ主君としての中身が伴ってないから、
今の内に潰して、下手に新興勢力なんか作れられないように、
手の内に置いて飼い慣らしておく必要があるのよ。」
「そういう意図があったんだ。
あの時はいきなり天の御遣いの話なんかしだすから、何事かと思ったよ。」
「今回の連合で、危うい芽はあらかた摘んでおきたかったからね。
ただ、曹操はどうしようもなかったわね、
調査記録と月との面識、どちらか欠けていれば何とかできたのに・・・
あんたが余計な矢文を射ってくれたし!」
「そ、ソレはしょうがないんじゃない?
董卓さんにあの時、曹操さんと面識がないなんて嘘つかせるわけにも行かないし、
そういう娘じゃないでしょ?
だから賈詡さんも董卓さんが好きなんじゃないの?」
「そ、それはそうだけど・・・っ!?
ボ、ボクは別に曹操みたいに同性愛者じゃないからね!
ちゃんと異性愛者だからそこの所は勘違いしないでよ!!
いい! 私はちゃんと男が好きなんだからね!!」
「え? えぇ? わ、わかったよ、分かりました。」


なぜか異性愛者と言うところを妙に強調してくる賈詡さん。
そんな事、私は言った事もないし、
そんな噂も立ってないのになんでそんなに食いついてきたのだろうか?
確かに賈詡さんと董卓さんは仲が良すぎるくらいに仲が良いが、
彼女達の場合は見てて微笑ましいといった感じだから、
宮中で聞く噂も、実は腹違いの姉妹何じゃないか? とかそんな噂ばかりだし、
それほど気にする必要もないと思うのだが・・・


「まったく、変な事言い出さないでよね!
ボクと月はそんなんじゃないんだから。」
「わかりましたって。」


一度賈詡さんはお茶を飲み、一息つけてから今後の事を話しだす。


「とりあえず、後四~五日中に話が決まらないようだったら、私が介入するわ。
曹操もそれを待っているようだし、それまでには張譲の公開処刑も終えて、
連合の諸侯を洛陽に逗留させておく理由もないしね。
とりあえずそれまでは、何とかして劉花様の事を悟られないようにしなさいよ。」
「わかってるけど、曹操さんは完全に気がついてそうなんだよね。
劉花ちゃんに対して明らかに態度が違うし。
その上で、見逃してると言う感じなんだよ。」
「・・・やっぱり曹操を市中に出したのは失敗だったわね。
だからどうっていう事は無いんだけどね・・・劉花様が『怪我』をしたのは事実だし、
そのせいで政務執行不可能になったのも事実なんだから。
治療先は劉花様の最も信頼出来る者のところで治療していると言えばいい事だし。」
「心の怪我・・・ね。」
「ボク達には想像も出来ないけど、
あの誘拐事件がある前まではかなりご苦労されてたみたいだし。
劉協様からも偶に聞かされるわ。
『姉様は、妾の為に身を粉にして、
妾が安心して生活できるように守ってくれた』 って。
だから今度は自分が、劉花様が幸せに暮らせるように頑張るんですって・・・
皇帝陛下って言ってもそういうところはボク達と変わらないのよね。
・・・・あっ、コレは別に侮辱したとか不敬だとか言うのじゃないわよ?」
「わかってるよ、そんな事いちいち言わないよ。
だけど私もそう思うよ・・・なんだかんだ言っても皇家に生まれただけで、
人としての本質は変わらないって、だから私とも友達になれたし、
洛陽の民を見て幸せに暮らしているって感じるんだよ。
人の心が無くて本当に私達とは違い天人だとでも言うのだったら、
もっと価値観とかが違ってもいいはずだしね。」
「そうね・・・今のこの洛陽、月の領土の状況がこのまま長く続くといいわね。
民が飢えなくて人並な生活が送れて、明るい未来が見えるこの状況が・・・」
「そうだね・・・」


少し、しんみりした所で、私も賈詡さんも無言になる。
しばらくした所で、賈詡さんが残ったお茶を一気に飲み、席を立とうとする。


「さて、ボクはもう行くわ。」
「うん、仕事がんばってね。」
「あんたもね・・・そうだ、曹操達が洛陽を出ていった後、
少しあんたの店で世話になるかもしれないから、部屋の用意しておいて。
ボクも落ち着いた所で少し休みがほしいし、
・・・あ、あんたに話したいこともあるし。」
「ん、わかったよ。 用意しておくよ。」
「じゃ、じゃあね!」


そして賈詡さんは店から出ていったが、
陽の関係だろうか、賈詡さんの顔が少し赤く染まっていたような気がした。

賈詡さんと入れ違いになるように、曹操さん達が帰ってきたのだが、
桂花の様子が明らかにおかしく、不機嫌な様子だった。


「おかえり皆さん、今日は早いんですね。」
「えぇ、今日は昼食を食べてから回ろうと思ってね。
洛陽で出ている食事どころは何店か回ったんだけど、
どこも陳留でも食べられるような料理が多くて、
喜媚のところなら偶に変わった料理が出てくるから、
どうせ食べるなら陳留では食べられないようなものがいいでしょう?」
「そういうものですか?
私は普通に作ってるつもりなんですけどね・・・
ウチの母さんが舌が肥えてる割に飽きっぽいから、
同じ料理を頻繁に出すと文句言うんですよね。
それで作れる料理の品数が増えることになったんですけど。」
「良いお母様じゃない。」
「作る方からしたら良くないですよ、面倒ったらありゃしないし。」
「とにかく昼食を用意してもらえるかしら?
今日は急だったから少しくらい時間がかかってもいいけど、
明日からは毎日ココで昼食を食べるから、そのつもりでいてちょうだい。」
「はいはい、分かりました。」


桂花が不機嫌なのが少し気になったが、
下手に話しかけて地雷を踏むといけないので、
今回は敢えてスルーしようと思ったのだが・・・・


「しかし、さっき賈詡と会った時は面白かったわね秋蘭。」
「そうですね華琳様。
賈詡と桂花はあんなにも合わないものなのですかね?
目が合った瞬間に睨み合って、賈詡が桂花の耳元でなにか言ったかと思ったら、
烈火のごとく怒りだしたのには、私もびっくりしました。」
「私は同族嫌悪だと思うわよ、所々似てるとこあるもの。
ねぇ、桂花? さっき貴女、賈詡に何を言われたの?」
「なんでもありません! ごく個人的な事です。」
「私はそれを聞きたいのだけど?
部下の精神管理も主の仕事の内よ。」
「・・・お答えできかねます。」
「あらら、どうしましょうか秋蘭?」
「そうですね、賈詡殿に聞いても無駄でしょうし、
桂花に答えさせるしか無いのでは無いでしょうか?」


曹操さんも夏侯淵ニヤニヤと笑いながら話しているので、
無理に聞き出そうとは思ってなさそうだが、
桂花をからかう気は満々のようだ。

私は藪を突いて蛇を出すわけにも行かないので、
厨房で何も聞かなかったふりをしながら、料理を作る。


「桂花がアレほど怒るなんて、よっぽどの事よね~、
何が原因だと思う? 秋蘭?」
「そうですね、仕事で男に触れられた時等に嫌な顔をする事がありますが、
女に触れられて嫌な顔をしたということはありませんので、
やはり男関係でしょうか?」
「桂花の周りの男って言ったら、部下の文官か伝令や兵よね、
だけどどれも賈詡とは無関係だわ。
賈詡と桂花、双方に関係ある男と言ったら・・・あの子よねぇ。」
「あの者ですねぇ。」


桂花の表情がこわばってきて、私も心中穏やかではない。
いつ話がこっちに飛び火するかわかったものではない。


「アレかしら? 賈詡は結構喜媚と仲がいいわよね。
確か、連合が組まれる前は頻繁にこの店に出入りしてて、
泊まっていった事も数知れずとか?」
「そのような噂を聞いていますね。
この店には董卓軍の者達が頻繁に出入りしていますが、
その中でも賈詡が最も多く、その次が、同行する陳宮や、
酒を飲みに来る張遼のようですが、
賈詡が圧倒的に多いようです。」
「へ~そうなの? だけど他にも従業員が居るとはいえ、
女が男の所に出入りするなんて、ただ事ではないかもねぇ。」
「・・・くっ!」
「ん? 桂花、何か言いたい事でもあるのか?
あるのならば華琳様に申し上げてみたらどうだ?」
「・・・なにも、ありません!」
「フフフ、案外賈詡も喜媚に・・・・惚れてたりしてね?」
「そうですね、女が男の所に通い詰めるなんて早々あるものではないですから、
しかしそれを受け入れている喜媚も実はまんざらではない・・・それどころか
じつはすでにそういう関係なのでは?」

「そんな事あり得ないわよ!!」

「フフフ♪」 「フフン♪」
「・・・・あ。」


曹操さんと夏侯淵さんい桂花がいいようにからかわれて、
席を立ち上がって、顔が真っ赤になった桂花は座りなおして縮こまっている。


そんな時である、店の中に美羽ちゃんが飛び込んできたと思ったら、
とんでもない事を言い出した。


「喜媚! 賈詡が妾達がココに泊まっても良いと、許可を出してくれたぞ!!」

「・・なんですって! 賈詡め・・あの雌狐、やってくれたわね!!」


美羽ちゃんの第一声に反応したのは、
意外にも桂花で、しかもどうやら賈詡さんに何かされたような物言いだ。
一体彼女達の間で何があったのだろうか・・・




--賈詡--


(フフフ、劉花様の件があったから、
袁術を喜媚の所に泊めるのは危険があったのだけど、
曹操での前例がある限り袁術達に強く出れないわ。
ならばいっそコレを利用して、
荀彧と喜媚が二人っきりになるのを邪魔する事に利用すれば・・・
フフフ、この賈文和、狙った獲物は逃さないし、
荀彧だけにいい思いはさせないわよ!)


  1. 2012/09/27(木) 18:16:35|
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六十四話


洛陽




貂蝉さんが帰って、劉花ちゃんや店の皆に色々心配されたが、
あの人の見た目はともかく、中身は良い人だという事と、
昔お世話になった事があるという説明で、皆に納得してもらった。

昼食を食べ午後になり、おやつの支度や、今夜の夕食の材料買い出し、
仕込みの準備をしていると、
いきなり店に金髪の女の子がやって来て私を見つけるなり、
私の胸に飛び込んできて、反射的に抱きしめてしまった。
その後、その娘を追うように次々と女性が何人も店に飛び込んでくる。


「喜媚ぃ~~! 探したのじゃ!!」
「美羽ちゃん!?」


店に最初に飛び込んできたのは美羽ちゃんで、
その後に七乃さん、孫策さん達が入ってきた。


「美羽ちゃんどうしてココに?」
「孫策が昨日、市中で喜媚に会ったという話をしたので、
今日面倒な話が終わった後、すぐに飛んできたのじゃ!」
「すいません喜媚さん美羽様にはもう少し落ち着くように言ったんですけど、
会議が終わった途端、孫策さんを捕まえて飛び出して行きまして・・・」
「私は昨晩、喜媚ちゃんに会ったって話をしただけなんだけど、
夜の内に連れて行けって何度も言って聞かなくて・・・
なんとか今まで待ってもらったんだけど、袁術ちゃんの勢いに押されちゃってね。」
「妾はてっきり喜媚は宮中におると思って、探しまわっておったのじゃぞ?
市中に居るなら居ると教えてくれても良いじゃろう!?」
「美羽ちゃん・・・書簡で、私のお店が洛陽にあるって書いてあったでしょ?
たしか、場所も一緒に書いたはずだよ? 良かったら遊びに来てねって。
・・・・・・七乃さん、探しまわって困り果てる美羽ちゃんが可愛いからって、
ワザと黙ってましたね?」


私が七乃さんの方を見ると、七乃さんはすぐに目を逸らした。


「さ、さぁ? 私も全ての書簡の内容を覚えているわけでもないので。」
「七乃っ!?」
「まったく・・・しょうがないですね。
書簡でも書いてあった通り、ここが私のお店なんだよ。
今はちょっと訳あって店を閉めてるけど、
普段はお茶や軽食、お菓子を出してるんだよ。」
「お菓子とな! この店では喜媚の手作りのお菓子が食べられるのか!?」
「そうだよ、せっかく美羽ちゃんが来てくれたことだし、なにか作ろうか?
ちょうど開店準備で、仕込みを済ませてあるお菓子もあるし、
おやつに皆で食べようと思ってたお菓子もあるから。
七乃さんと孫策さん達もどうですか?」
「良いのですか? ではせっかくですのでご馳走になりましょうか、美羽様。」
「うむ!」
「じゃあ、私達もご馳走になりましょうか♪」
「あまり喜媚殿に迷惑をかけるんじゃないぞ雪蓮?」
「わ、私もいいんですかね?」
「もちろん、周泰ちゃん達も食べていって。」
「ご馳走になります!」


美羽ちゃん達と孫策さん達は別の机に別れて座り、
私は、厨房でおやつように仕込んでおいた、
ホットケーキを焼いて、低温加熱殺菌した牛乳と一緒に出す。


「はい、おまちどうさま。
コレは前美羽ちゃんと一緒に作ったやつよりも、柔らかくてふかふかで甘いよ。」
「おぉぉ~アレよりも更に柔らかくてふかふかで甘いのか!」
「上に乗ってる黄色いバターって言うんだけど、
ソレが溶けてくるから塗り拡げて、蜂蜜をかけて、一口大に切って食べてね。
こんな風に・・・」


私は見本のため、ヘラでバターと蜂蜜を塗り拡げて、
小さめの包丁で切り分けて一口大にして食べて見せる。


「なるほどそうやって食べるのじゃな、どれ・・・・ふぉ!
こ、これはっ!? う~ま~い~の~じゃ~~!」


美羽ちゃんはいきなり椅子の上に立ち上がって叫びだした。
心なしか口から光が溢れだしているような気もする。


「美羽様! はしたないですよ。
それにしても確かに肉まんの皮みたいにふかふかですけど、
甘くておいしいですねぇ。」
「う~ん美味しいけど、お酒には合いそうにないわね、
この白い飲み物はよく合うんだけど。」
「雪蓮様、冥琳様、それは牛の乳ですよ。」
「本当か明命?」
「はい、私も前に喜媚さまにごちそうになったのですが、
牛の乳を軽く熱で温めてから冷ました物のはずですよ。」
「へ~、牛の乳ってこんな味なのね、
この・・・喜媚ちゃんなんていうのこの食べ物?」
「遥か西の方では、ホットケーキ、またはパンケーキって言うそうです。
この国では牛の乳はあまり良い飲み物とはされていませんが、
遥か西や西南の方では一般的な飲み物で、
加工した物も・・・その国で言えば皇帝に当たる人でも普通に口にするそうですよ。
栄養価も高く、新鮮な物なら加熱処理しなくてもそのまま飲めますよ。」
「なるほど、遥か西というと羌や氐のあたりか?」
「そこでもヤギの乳などを飲みますが、私の言う遥か西はもっと向こうですよ。
私もそこから来た行商人の話を又聞きした物を、
何度か実験して食べれるようにしただけですから。」
「なるほど、羌や氐が住んでいる辺りよりも、
遥か西にはまだ大地が広がっているのか。
そういえば昔、張騫と言う者が武帝の命を受けて西方に赴いたと言う話もあったな。
なんでも我々とはまったく違った文化を持つ国を見たとか。」
「そうらしいですよ・・・・今は交通は遮断されていますが、
その当時の記録書などが残っていたり、西方との交流がある董卓さんなどは
結構西の方の事情に詳しくて、経済交流も最初は苦労したみたいですが、
今は少しずつうまく行っているそうですよ。
ですから今、漢の国内で内乱紛いの事なんかしている場合じゃないんですよね。
五胡以外にも、外の世界には色んな人種の人が居るんですから。」
「・・・そうか五胡以外にも・・・そんなに大地は広がっているのか。」


周瑜さんは何かを考えるように顎に手を添えて考えにふけっている。


「喜媚! 難しい話はいいから、コレのおかわりはないのかの?」
「後何枚か焼けますよ、ちょっと待って下さいね。」
「うむ、こんなおいしいものがあるなら、
西の異民族と仲良うするのも良いかもしれぬな!
そして遙か西のもっと美味しい物の作り方を聞いて、喜媚に作ってもらうのじゃ!」
「あらあら美羽様ったら。」


こういうところが美羽ちゃんのすごい所なんだよね。
こだわりが無く純粋だからこそ、本質を突けるというか・・・
本人はただ単純に美味しい物が食べたいだけなんだけど、
そのためには西の異民族と仲良くしようという器の広さがある。
美羽ちゃんも確かに袁家の血筋を引いているのだと確認させられる。

・・・単純に、美味しいお菓子に目が眩んだという可能性も高いのだが。


ひと通り食べ終わった後、
美羽ちゃんが私が普段どんな生活をしているのか気になるというので、
七乃さんと一緒に、厨房の方へ回ってい見たり、
他の部屋を見たりしてすごしていた所で、ふと思い出したのだが、
このままだと、そろそろ曹操さん達が帰ってくる。
曹操さん達がココに宿をとっていると知ったら、
美羽ちゃんも確実に泊まると言い出すだろうし、
そうなったら配下の孫策さんも泊まることになってしまうので、
それはまずいと思った私は、それとなく美羽ちゃんに、
今日は宮殿に帰るように話をする。


「そうだ七乃さん、七乃さん達もお仕事が忙しいから、
そろそろ宮殿に帰らないとまずいんじゃないですか?」
「そうですねぇ・・・あまり外を出歩いていると、
董卓さん・・・と言うか賈詡さんに怒られてしまうので、
そろそろ戻らないとまずいかもしれませんね。」
「そうなんだって美羽ちゃん。
私はココに住んでるから、また明日遊びに来るといいよ。
店は休みだけど美羽ちゃなら、
少しくらいだったらいつ遊びに来ても相手できると思うから。」
「む~もう帰らんとならんのか?
・・・そうじゃ! 妾がココに泊まるというのはどうじゃ!?」
「美羽様!?」
「多分賈詡さんが怒ると思うよ?
そうだな・・・もし賈詡さんを説得できたらその時は私も考えるよ。
美羽ちゃんが泊まるとなったら準備も大変だしね。
今すぐ、というのは流石に無理だよ。」
「よし、本当じゃな?
ならば七乃! すぐに宮殿に戻り、
賈詡に喜媚の家に泊まっていいか聞いてくるのじゃ!」
「はい美羽さま!」


そう言っ美羽ちゃんと七乃さんはすぐにを店出ていった。
後に残された孫策さん達は美羽ちゃん達の行動力と、その速さにあっけに取られ、
机で食後のお茶を飲みながら、彼女達を見送っていた。


「しかし、袁術ちゃんも寿春に居る時とは随分雰囲気が違うのね。」
「そうだな、普段はつまらなさそうに、ぶすっとした表情でいるか、
意地の悪そうな笑みを浮かべて、部下を困らすかどちらかなのだが、
あの様子を見ると本当にただの子供のようだな。」
「アレが私の知る美羽ちゃんなんですけどね。
そんなに寿春では酷いんですか?」
「まぁな、私達も色々と困らされているのだが・・・
おっと、コレは張勲には内緒で頼む。」
「分かってますよ、店での愚痴を他所に漏らしたりしたら、
お客が寄ってこなくなっちゃいます。
良い店の店員は、お客の話は聞くけど口は硬いものですからね。
確か何かでそんなようなことを聞きました。」
「そう言ってくれるとありがたい。
細かくは話せないが・・・まぁ大変なのだ。」
「色々とお疲れ様です。」


そうして私と周瑜さんが話していると、曹操さん達が帰ってきて、
また、昨日のように、曹操さん達と孫策さん達が、色んな情報を交換しながら、
陽が落ちる少し前まで、国政の話などをした後、孫策さん達は宮殿に帰っていった。

夕食を皆で食べている時に、ふと桂花から美羽ちゃんが来たことについて尋ねられた。


「そう言えば、今日袁術が来たんですって?」
「あぁ、来たよ美羽ちゃん。
私を探すために宮殿の中を探しまわってたんだけど、
孫策さんにこの店の事聞いて来たんだって。」
「あの娘・・・相変わらずなのね。」


その話を聞いていた曹操さんが話に加わってくる。


「なに? 貴女、袁術と真名交わしてたの?」
「まぁ、色々有りまして、
文通・・・書簡のやり取りをしていたらいつの間にか好かれまして、
桂花と寿春に言った折に真名を預かったんです。」
「へ~、あの袁術がねぇ。
甘いお菓子で釣ったのかしら。」
「・・・あながち間違いでもないんですけどね。
彼女、家柄や役職の関係で同年代の友人とか、ほとんどいないんですよ。
だから余計に年齢が近くて、話相手にできる私に、
親近感が湧くんじゃないですかね?」
「ウチもそうだけど、袁家に生まれると色々ついて回るでしょうしねぇ。
そういえば、連合の時もあの娘 『喜媚を助けに行くのじゃ!』
と事ある毎に騒いでいたわね。
だから知り合いだとは思っていたけど、真名を交わしていたとは驚きだわ。
麗羽の馬鹿の檄文を真に受けて、
友達を助けに行こうだなんて、なかなか可愛い所あるじゃない。
ただ、領主としてはどうかと思うけど。」
「その辺は彼女にも色々事情あるんですよ。」
「大凡察しはつくわ。」
「それにしても良く今日はおとなしく帰ったわね。
袁術の事だから、泊まっていくくらい言い出しそうな感じだけど?」
「いや、実際言ったんだよ・・・泊まっていくって。
だから賈詡さんに許可もらってきてからならいいよって、
言っておいたから大丈夫だとは思うんだけど。」
「ほんとうに大丈夫なの?」
「賈詡さんも、そう簡単には許可は出さないでしょう。
美羽ちゃんには悪いと思うけど、曹操さん達が居て美羽ちゃんと七乃さんが居て、
そうすると下手すると孫策さん達もこの店に泊まるとなったら、
正直どうなるかわからないから。
人手も足りなくなる可能性もあるし。」
「まぁ、大騒ぎになる可能性は高いわよね・・・確かに来なくていいわ。
夕食や晩酌くらいゆっくりしたいし。
孫策のところの周瑜だけだったらいいのだけど。」
「あら、桂花は喜媚との時間を邪魔されるのが、嫌なだけなんじゃないの?」
「か、華琳様!!」
「事実じゃない、ねぇ、秋蘭?」
「そうですね、夕食後の話し合いの時なども、
上の空・・・とまでは言いませんが、
家事をしている喜媚の事をたまに目で追っていますし。」
「秋蘭まで! 余計な事は言わなくてもいのよ!」
「あらあら、照れた桂花も可愛いらしいわね。
コレはますます、喜媚と一緒に私のモノにしてあげないと。
・・・それにしても周喩ね。
あの褐色の肌は触ったらどんなかんじなのかしらね?
それに気の強そうなあの女が、閨でどんな声で鳴くのかすごく興味がわくわ。
・・・周瑜だけ泊めてあげたらどうかしら?」
「そういう話は食事中には止めてください!」


曹操さんは本当に綺麗な人ならなんでもいいんのかな?
英雄、色を好みすぎじゃないだろうか?


「コ、コホン、だけどいいの喜媚?
賈詡がもし許可を出したら本当に袁術が転がり込んでくるわよ?」
「さっきも言ったけど、そんな簡単に賈詡さんも許可を出したりしないでしょ。
(劉花ちゃんの事もあるし、
本当は曹操さん達だって追い出したいと思っているみたいだし。)」
「だといいけどね・・・」
「そうだ、喜媚。 食後に少し飲みたいから、
あのお酒と何かツマミを作ってくれない?
あとお風呂にも入りたいわ。」
「・・・・曹操さん、ココはあなたの家じゃないんですよ?」
「でもお客じゃない、ちゃんと宿代は払うわよ。
それに貴女、お風呂の開発にウチの真桜を使ってるでしょ?
それを黙認してあげてるんだから、これくらいの要求はしても当然じゃない。」
「・・・ハァ、はいはい、わかりましたよ。
そのかわり又何か李典さんに頼む時は融通効かせてくださいよ。」
「真桜の趣味の範囲で、軍事的な物じゃないなら邪魔しないわよ。
貴女のお陰でウチでもお風呂に入る回数増やしても、
侍女達の負担にならなくなって、
皆がお風呂に入れる様になって感謝してるくらいなんだし。」
「それは良かったです。
お風呂に入ると幸せな気分になれますしね。」
「真桜も変なものばかり作るんじゃなくて、
もっとこういう役に立つモノを作ってくれないかしら?
役に立つものは、すごく役に立つのだけれど、
それ以外の物は本当に、何の役にも立たないのだから困ったものだわ。」
「真桜に好き勝手作らせていたらろくな物を作りませんからね・・・
この間なんか・・・ゴホン、なんでもないわ。」


桂花の顔が急に真っ赤になっているが、いったいどうしたのだろうか?
李典さんに何を作ってもらったのだろうか気になるが、
聞いたらすごい剣幕で怒って来る事が想像できたので聞くのは止めておいた。


こうして今日も一日、皆と穏やかに過ごすことができた。
こんな生活を送っていると、私の目標も実現可能なのではないかと思える。
決して不可能ではない、劉備さんではないが、皆分かり合えると信じられる。
この国の未来を必ず明るいものにしていこうと、改めて心に誓った。


  1. 2012/09/27(木) 18:15:32|
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六十三話


洛陽




曹操さん達と孫策さん達が食事と会話を楽しんでいるが、
食事の話から、徐々にまじめな国政の話に変わったり、
お互いの領内での黄巾の乱の後の賊の動きなどの情報交換に変わっていく。

私は、厨房で食事を作ったり、劉花ちゃんと食器を洗ったりしていたのだが、
陽も大分陰ってきたので、孫策さん達にその事を伝えようと、孫策さん達の方に行く。


「孫策さん、大分陽も落ちてきたみたいですし、
そろそろ宮殿か宿に戻らないと駄目なんじゃないですか?」
「あら? もうそんなに経ったの?
まだ、大丈夫だと思ったのだけど。」
「私達はココが宿だから別にいいんだけど、
孫策、貴女達は戻らないと駄目なんじゃないの?
賈詡がまたうるさいわよ。」
「え~、私もココに泊まりたいなぁ~。 駄目? 喜媚ちゃん?」
「駄目です。 そもそも急にそんな事言われても、布団も食事も用意できませんよ。
今用意してるのは、私達と曹操さん達の分だけなんですから。」
「ちぇ~、残念ね。 まぁ、今日はおとなしく帰るわ。
戻ったら賈詡に私達も外に宿をとっていいか聞いてみましょう。」
「雪蓮・・・喜媚殿に迷惑を掛けるのは止めろよ。」
「別に迷惑じゃないわよね?
明命も宮殿の用意された部屋に押し込められるより、
喜媚ちゃんと一緒のほうが楽しくていいわよね?」
「そ、それはその・・・いいんでしょうか、喜媚さま?」
「周泰ちゃんと周喩さんだけ、だったらいつでも歓迎ですよ。」
「なんで私は駄目なのよ!?」
「夜遅くまで、酒盛りとかしそうだからです。」
「ぶ~、喜媚ちゃんは私の扱いが悪くない?」
「私と孫策さんの初対面の時の事をよく思い出してください。」
「まぁ、しょうがないな、あのザマでは。」
「しょうが無いですよね。」
「うぅ・・・皆が冷たい。」


そう言って孫策さんが机に突っ伏す。


「孫策、貴女何やったのよ?」
「別に何もしてないわよ? いつも通りよ。」
「そうだな、いつも通り、仕事をほっぽり出して、逃げ出そうとして、私に捕まって、
髪の毛を引っ張られながら、喜媚殿の前にひきずり連れだされて、
その夜の宴席では、客人である喜媚殿達が席に付く前に、
料理や酒を祭殿と楽しんでいたな。
喜媚殿達を歓迎する宴席なのにもかかわらずな。」
「・・・それは、しょうがないと思うわよ。」
「曹操にまで見捨てられた!?」


場の全ての人に見捨てられ、落ち込む孫策さんだが、
周瑜さんと周泰ちゃんが席を立ち上がり、帰ろうとすると、
まるで親について行く子犬のように、孫策さんも周瑜さん達について行く。
なんかその時の孫策さんはすごくかわいい感じがした。
きっと周瑜さんも、普段の孫策さんもそうだが、
ああいう感じの孫策さんも好きなんだろう。
普段は大人の魅力満載の孫策さんが、あんな子犬みたいに周瑜さんについて回る姿は、
ギャップがあってとても可愛らしい。


「それでは喜媚殿、ご馳走になりました。
また明日来ますが、その時はもしかしたら袁術様も一緒に来るかもしれないので、
その時はよろしくお願いします。」
「あ、はい。 わかりました。」
「喜媚さま、また明日お会いしましょう!」
「周泰ちゃんまたね~。」
「喜媚ちゃんまた明日ね。」
「はい、孫策さんもまた明日。
あんまり周瑜さん達に迷惑かけないでくださいよ。」
「はいはい、程々にしておくわね♪」


こうして孫策さん達が洛陽の宮殿の用意された部屋に帰り、
店には私達と曹操さん達が残った。


「それじゃあ、片付けた後、夕食にしましょうか。」
「そうね、そうして頂戴。」
「あ、喜媚。 今日は『お酒』とおつまみも出してね。
どうせあんたの事だから、持ってきてるんでしょ。」
「アレは私達の分だから、できたら出したくないんだけど・・・」
「いいから出しなさいよ、蜂果水飲んだら久しぶりに飲みたくなったのよ。」
「はいはい。」
「あぁ、あのお酒! 思い出したわ、何本か送ってもらったけど、
まだ製法は教えてもらってなかったわね。
今日こそ聞けるのかしら?」
「そ、その辺はご容赦を、あまりこのお酒は世に出すつもりはないですし、
製法を教えても、材料が曹操さんでは用意できない物があるんですよ。
酵母菌というのですが、コレは私が何年もかかって作り上げたものなので、
よこせと言われて、はいそうですかと言って渡すわけにも・・・」
「そう、技術の結晶というのならば、ただでよこせというのは確かに不条理ね。
じゃあ 『今は』 勘弁してあげるけど、お酒は定期的にちゃんと送って来なさいよ。
代金はちゃんと払うから。」
「は、はい・・・分かりました。」


曹操さんのところにも定期的に送ることになってしまい、
母さんが怒るのが目に浮かぶ・・・なんとか洛陽での生産を確立しないと。

そして結局夕食時に、お酒も一緒に出したのだが、
曹操さん達には今日一日だけで二升ほど飲まれてしまった。
庭で作っている樽はまだ完成まで時間が掛かるし、
なんとか、お湯割りや、熱燗などでかさ増ししたりして、
酔うのを早くして控えてもらい、私達の分を確保しておかないと・・・

この戦でのストレスも有ったのだろうか、桂花はかなりのハイペースで飲んでいた。
この日は夜遅くまで飲んだ桂花が、
寝室で酔っ払った状態で私に絡んでくると言う一幕もあったが、
桂花は酔った時の事も覚えている方なので、
翌朝、私の顔を見た時、桂花はバツの悪そうな表情で、
挨拶だけして、しばらく無言だった。

酔った勢いとはいえ、二人っきりになった途端、
猫が甘えるように頬を擦りつけて来たり、いきなり服を脱いで、
裸で私に抱きついて来たりしたのを覚えていたらしょうがないだろう。


朝食後、戦後処理の会議のために曹操さん達は宮殿に行き、
私もいつものように店の掃除や仕入れ等をしていたのだが、
そんな午前中のある時、店に貂嬋さんが現れた。

貂嬋さんはいつものような覇気は無く、少し気落ちした様子で、
卑弥呼さん達は連れてこずに、一人で私の店に現れた。


「喜媚ちゃんお久しぶりねぇん。」
「貂蝉さんお久しぶりです。」


貂蝉さんを見た従業員の皆や、劉花ちゃんは一瞬身構えたが、
私の知人という事で、とりあえず武器を出すのは止めてもらい、
少し離れた所から様子を窺っている。

私は貂蝉さんにお茶とお菓子を出し、向かいの椅子に座る。
そうすると貂蝉さんは人差し指をくるりと回して、また手を元の位置に戻した。
左慈くんも偶にやるが、周りの人に話を聞かれないようにする術だろう。
と言う事は聞かれたくない話・・・一刀君関係だろうか。


「今日はわざわざどうしたんですか?
なんか元気もないみたいだし・・・やっぱり一刀君の事ですか?」
「えぇ、そうなのよん。
今回の反董卓連合で、連合が負けた事で、
ご主人様の立ち位置が、かなり問題視されていてね。」
「・・・それについては一部、申し訳ないと思いますけど、
私も洛陽や許昌の皆を守るためにやった事ですから、謝りませんよ。
一刀君の事情は知恵袋や原作知識で知っているので気の毒だとは思いますが、
私も洛陽や許昌の皆を守るために、譲るわけにも行かなかったので。」
「私も別に喜媚ちゃんを責めに来たわけじゃないの。
喜媚ちゃんの事情も知ってるから、私にはどうしようもなくてね・・・」
「・・・今回の事は、私も一刀君も巻き込まれたような物ですからね。
張譲や橋瑁が何処かで諦めるか、袁紹さんが張譲達の話に乗らなかったら・・・
一刀君達と董卓さんは、うまくやれたと思うんですが。」
「そうね・・・私も、反董卓連合が始まるまでは、それを期待していたわん。
・・・でも、起きてしまった。」
「・・・えぇ。」
「そこで、ご主人様のこれからの事なんだけど・・・
元の世界に戻そうかという話が出てきてるのよ。」
「戻れるんですか!?」
「悪いけど、喜媚ちゃんは無理よ。」
「いや、さすがに私もここまで来て戻ろうとは思ってませんけど、
一刀君は戻れるんですか・・・」
「えぇ、ある場所に行って、私達の力を使えば戻すことができるわ・・・羨ましい?」
「・・・以前の私ならそう思ったでしょうね。
でも、今はこっちに大切な人達がいますから。」
「そう・・・それはそれで良かったわ。
喜媚ちゃんが、この世界で生きる事を望んでくれて、管理する私達としても嬉しいわ。
・・・それで、ご主人様一人なら私一人だと少しキツイけど、
左慈や于吉、卑弥呼が協力してくれるらしいから四人でなら何の問題も無く戻せるし、
その後の外史の管理活動にも問題はないわ。」
「・・・後は本人が望むかどうかですか。」
「そうね・・だからご主人様を説得する時に、
悪いけど喜媚ちゃんの事を少し話すつもりよ。
この外史の事は喜媚ちゃんに任せて、
ご主人様は、この外史で経験した事を糧にしてもらって、
元の世界でしっかり生きて欲しい、そういう感じで説得するつもりよ。」
「そうですか・・・だけど、よく左慈君が協力する気になりましたね?」
「コレはむしろ左慈が言い出した事なのよ。」
「・・・本当ですか?
何か裏があるとか無いでしょうね?」
「左慈にしてみれば、ご主人様を合法的(?)に排除するいい機会ですもの。
こういう時のあの子のご主人様への執着はかなり強いから・・・」
「なるほど、左慈君らしいですね・・・」
「私達としても、ご主人様が殺されるわけではないし、
このままこの外史にご主人様がいると、誰に利用されるかわからないわ。
それにご主人様が一人で生きるには、色々なモノが足りなさすぎる。
すでに、劉備ちゃん、曹操ちゃん、孫策ちゃんは力を貸さないし、貸せないでしょう。
ご主人様は天の御遣いを名乗ったとして、皇帝陛下から目をつけられている。
わざわざ、陛下に目をつけられるような人材を、
登用しようとは誰も思わないでしょう?
かと言って、このまま放っておいたら、他の誰に利用されるかも分からないし、
むしろ、何処かで野垂れ死にになる可能性が高いわ。
ご主人様は喜媚ちゃんのように、
最低限生きていける武を身につけているわけでは無いし
この世界の常識や旅の仕方をほとんど知らない。
元々部活で剣道をやっている程度では、複数の賊に襲われたらそれで終わりよ。
それに、私もそれは望むところではないわん。」
「・・・そうですね。
私のように十何年もかけてこの世界に慣れて言ったわけでは無いですしね。
劉備さん達にすぐ拾われたようですから、
旅での水や食料、路銀の調達の仕方も覚える暇はなかったでしょうし。」
「私達が一緒にご主人様と旅をして覚えさせる、と言うのも考えられるのだけど、
そうすると数年後、下手をしたら誰かにご主人様の知識を利用されて、
新たな争いの火種になる可能性も高い。
ならば、この外史は喜媚ちゃんに任せて、
ご主人様にはこの外史に渡ってきた元の時間の世界に戻ってもらい、
この外史での経験を糧にして、元の世界で幸せに暮らして欲しい。
私は、そう思っているのよ。」
「そうですか・・・だけどなんでそれをわざわざ私に教えに来たんですか?」
「喜媚ちゃんの事だから、ご主人様の今後の事を心配してると思ってね。」
「・・・そうですね。
気にはなっているんですよ、私が関わったおかげで、
私の知る外史とは流れが変わってしまった・・・
私にできるのは、一刀君の名を、この国に合う偽名に変えてもらって、
私の畑で雇ってあげるくらいしか出来ませんし。」
「それも有りかとも思ったけど、黄巾の乱を経験して、
反董卓連合を経験したご主人様が、これからのこの国の行く末を見ていて、
畑で農作業して満足するかというと・・・ね。
ご主人様は結構正義感が強いと言うか、根が善人だから・・・
だからこそ劉備ちゃんに協力して義勇軍を率いる事になったのだし。」
「そうですね、いつか我慢できなくなって飛び出してしまうかもしれませんし。
なんだかんだ言って彼は善人ですから、困っている人を放っておけない。」
「だったら、喜媚ちゃんの事を話して、
この外史は喜媚ちゃんが、いい方向に持って行こうとしている。
と安心させて、外史に関与できない、元の世界に戻したほうがいいと思ってね。
喜媚ちゃんの事を話せば、政治の中枢にすでに入り込んでいて、
皇帝陛下とも懇意で、今回の反董卓連合を最も流れる血の量が少ない形で収め、
これからも、戦ではない方法でこの国を変えようとしていると話せば、
ご主人様も素直に喜媚ちゃんに後の事を任せて、
元の世界に帰ろうと思ってくれると思うの。
最もすぐには無理だから、しばらく私達と旅をしながら様子を見て、
と言う事になるだろうけど。」


ここで一回貂蝉さんはお茶を口に含み喉を潤す。


「私が言うのも何ですが、一刀君の事、よろしくお願いします。
私も最初は彼に何とかしてもらえばいいや、なんて軽く考えてましたけど、
協ちゃん達を助けた時に、逃れられない選択を突き付けられる立場になって、
賈詡さんや音々ちゃん、董卓さんと政治の話や内政の話、
それに軍事の話をして実際に戦に参加して・・・
実に都合のいい事を彼に押し付けていたんだと実感して、反省もしています。
願わくば、彼が向こうの世界に戻って、この世界での経験を生かして、
充実した人生を送れるように願っています。
私は戻れませんし、もう戻る気もありませんが、
この世界で・・・せめて私の手の届く範囲の人が、
戦のない平和な生活を送れるようにしたいと思いますので、
彼の事、よろしくお願いします。」
「わかったわん、ご主人様の事は私達にまかせて。
喜媚ちゃんは喜媚ちゃんの望むように生きてね。
私達も微力ながら応援してるしサポートもするから。」
「はい、ありがとうございます。」
「じゃあ、私はもう行くわ。
たまには洛陽の私の店にも来てちょうだいね♪」
「そ、その内伺わせてもらいます。」
「じゃあね、喜媚ちゃん。」


貂蝉さんが店から出ていき、
従業員や、劉花ちゃん達はほっとしたような表情で、
みんな床に座り込んでいる。

まぁ、最初に貂蝉さんを見たら、大体皆あんな感じになるだろう。
原作では、あの曹操さんだって、取り乱すくらいだ。

だが、一刀くんのこの先が心配だったが、
貂蝉さん達が一緒なら安心して任せられるだろう。
なんだかんだ言っても、あの人達は 『中身は』 すごく良い人なのだから。


・・・ただ、一緒に旅をしてる間に一刀君が変な趣味に目覚めなければいいのだが。


  1. 2012/09/27(木) 18:14:29|
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六十二話


洛陽




桂花と賈詡さんが一緒に個室に入っていって、
なにか揉めた後、食事をして帰っていったのだが、
それ以降、何度か賈詡さんに、その話を聞いてみたが、
仕事の話をしただけだと言って、はぐらかされてしまった。

その日の午後は、桂花達は町の視察に出ていき、
私は買い出しや、店の掃除などをしてすごし、
桂花達は夕食前に帰ってきたので、一緒に夕食を食べ、就寝。

昨日は、ひたすら私に詰問したり怒るだけだった桂花が、
今日は妙に優しく、それどころか、顔を真赤にして房事を誘って来たのは、
何か有ったのだろうか・・・どう考えてみても賈詡さんと部屋に二人で篭ってから、
桂花の様子がおかしくなったので、全く関係ないとは思わないのだが、
その事を桂花に聞いても、 『あんたには関係ないわよ!』 と言われるだけで、
まったく要領を得ない状態だ。


さて、翌日も曹操さん達は戦後処理の話し合いの為に、朝から宮殿に行き、
私は、店の開店準備を進めるのだが、
ここに来て気がついたのだが、曹操さん達が居る間は、
店を開くのは、やめておいたほうがいいかもしれない。
曹操さんが積極的に揉め事を起こすとは思わないが、
揉め事が起きたら、曹操さんや桂花に不利になるので、しばらくは準備だけにして、
曹操さん達が帰ったら店を開くようにしたほうがいいと思った。


そんな事を考えながら過ごしていたら、
いつの間にか昼になったようなので、昼食を作り劉花ちゃん達と一緒に食べ、
午後は霞さん達の希望で作らされた、酒蔵の様子でも見ようかな、
と考えていたら、その霞さんと華雄さんが一緒にやってきた。


「邪魔するでぇ。」
「邪魔するぞ。」
「いらっしゃい、霞さんに華雄さん。」
「喜媚、元気やったか?」
「元気も何も、一昨日会ったばかりじゃないですか。」
「そうやったっけ?
ウチは戦後処理の書簡が溜まってて、それ片付けるのに忙しかったから、
随分会ってないような気がしてたわ。
あの竹簡の山はほんま、悪夢としか思えへんで・・・」
「ご苦労さまです。
私は兵数は少なかったので、すぐに終わりましたよ。
お陰で、客将としての仕事も、
もう殆ど終わって後は、時々呼び出されて報告するくらいで、
こうして店の準備ができます。」
「喜媚はえ~な~、ウチもこの間の戦で武人として、ひと通り満足したから、
喜媚と一緒に茶店でもやろうかな? ・・・いや、酒屋にしよか。
それやったら毎日飲んでられるし。」
「また馬鹿な事を言い出した・・・」
「毎日商品飲んでたらどうやって儲けるんですか・・・
それに今は、戦が終わったばかりで、少し気が抜けてるだけですよ。
霞さんだったらまた、すぐに身体を動かしたくなりますよ
それで? 今日は一体何の用ですか?」
「あ~、まだ仕事は終わってないんやけど一段落ついたからな、
まだウチらだけではやってなかった、
汜水関での勝利のお祝いでもしようと思ってな、酒も持ってきたで。
まだ仕事が残ってるから本格的には飲めんから一杯だけやけど、
汜水関での勝利は、ウチら三人でもぎ取った勝利やからな。
それに真名を交わしたお祝いもしたかったから、
気分転換がてら、城を抜けだしてきたわ♪」
「しょうがないですね・・・」
「まぁまぁ、そう言わんと、杯三つ用意してや。」
「はいはい、じゃあ一杯だけですよ。」


霞さんの、あの時のお祝いをしたいという気持ちは、
私も少しはわかるので、ココはおとなしく霞さんの言う通りにしておく。


「すまんな、張遼が私の部屋まで来て、どうしてもと言うものだから。」
「華雄かてノリノリやったやんか。」
「せっかくの祝だ、水を差すのも悪いと思ったんだ。」


そうして、私が持ってきた杯に霞さんがお酒を注いで、
三人でそれぞれ杯を持った。


「それじゃあ汜水関の勝利と、ウチらの友誼が深まった事と、
国を守るために散っていった、同胞と、この国の明るい未来の為に!」
「「「乾杯!」」」


私達はお酒を一気に飲み干し、机の上に杯を置く。


「ぷは~、やっぱこういう時に飲む酒は一味ちゃうな。
急いで買うてきたから、そんなにええ酒でもないけど、これはコレで悪うないで。」
「そうだな・・・汜水関での戦いは私も色々と考えさせられた。
結果的には関を連合に通過させたが、
それも策の内、アレは間違いなく我々の完全勝利で、
散っていった仲間も、今の洛陽や、これからのこの国を見れば、
草葉の陰から、安心して見ていられるはずだ。」
「そうですね・・・決して少ない被害じゃなかったですけど、
本来、お互いが潰し合う戦よりは被害者もかなり少なく済みましたし、
洛陽の民も兵を除いて傷つかずに済みました。
後になったら、あの時こうしていれば・・・と思うこともあるかもしれませんが
今は、やれる事は全部やりきった感じがします。」
「これだけの戦果を上げて、ここまで被害も抑えたんや。
喜媚も、もう少し胸を張っていかんと、部下や、散っていった者達が浮かばれんで。
ウチらはあの連合の大軍から、味方の被害も最小限で、洛陽も無傷で守ったんや、
何処に出しても恥ずかしくない戦果やで。」
「そうですね・・・私はあまり戦果を誇る気にはなれませんけど、
私達が落ち込んでいたら、散っていったみんなに顔向け出来ませんよね。」
「そうだぞ。 散っていった兵達は決して無駄死なんかじゃない、
アイツらはアイツらで、洛陽に住む民や、
董卓様、陛下、そしてこの国の未来の礎となったんだ。
今後は我らも散っていった者達に恥ずかしくないように、
この国を、より良い国にしていかんとな。」
「・・・オマエ誰や!? 華雄がそんなまともな事言うなんて・・・
明日は槍が降ってくるんか?」
「失礼な事を言うな! 私とて汜水関では学ぶことが多かったんだ。」
「・・・そうか、喜媚に引っ叩かれて調教されてたもんな。」
「張遼っ!!」


華雄さんが真っ赤な顔になって霞さんに掴みかかろうとするが、
予想していたのか、すぐに霞さんは椅子から立って一歩下がる。


「冗談や、冗談。」
「ふん・・・・だけどアレは効いたな。
私も武術の師匠や、両親に叱られた事など腐るほどあったが、
それは幼少時や修行時代の話だ・・・
董卓様に仕官して、少しいい気になっていた所で、
喜媚に叱られたからな、アレがなければ私は汜水関で私の部隊だけで突撃して、
犬死していただろう。
・・・もう一度言わせてくれ、あの時の事、感謝する。」
「い、いいえ、どういたしまし・・・て?
あの時は私も必死だっただけですよ。
そこまで深く考えて行動したわけじゃないんです・・・ただ必死だっただけで。」
「だが、お陰で私は命拾いし、
私が進む道を再確認する事ができた。感謝している。」
「はぁ~ほんま、華雄は変わったなぁ・・・・」
「私の知ってる孫策さんのとこの人の言葉にこういうのがありますよ。
『士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべし。』 っていうのがあります。
華雄さんほど優れた武人なら、
ほんの僅かなきっかけで一気に成長することもありますよ。」
「そんなもんかな~。」
「ふむ、良い言葉だな、・・・今なら呂布にでも勝てそうだ!」
「それは無いで。」 「も、もう少し頑張りましょうね。」
「何だ貴様ら! よしわかった!
午後の分の書簡を終わらせたら、
今日こそ呂布から一本取ってやるからよく見ておけ!」


そう言って華雄さんは店から出ていってしまった。


「まぁ、成長はしてますけど、まだまだ伸びしろがあると言う事で。」
「せやな、じゃあウチは治療の手配でもしておくかな。」


この日、華雄さんは仕事を一気に終わらせ、恋ちゃんに挑戦したそうなのだが、
やはり、やられてしまったそうだ・・・・が、
恋ちゃん曰く、 『・・今日の華雄はなんか少し強かった。』 そうだ。


華雄さんと霞さんが帰って行き、私も仕事の続きをしていたのだが、
その時に又新たな来客があった。
今日は店を開いているわけでもないのに、お客の多い日だな、
と思って応対に出ると、そこにいたのは周泰ちゃんと孫策さんに周瑜さんだった。


「お久しぶりです喜媚さま!」
「元気だった?」
「久しぶりだな・・ふむ、壮健そうで何よりだ。」
「周泰ちゃんに孫策さん、周喩さん・・・
お久しぶりです、今日はわざわざどうしてココに?」
「本当は昨日来るつもりだったんだけど、袁術ちゃんを巻くのに大変でね。
袁術ちゃん、昨日も今日も宮殿の中で貴方を探しまわってるわよ?」
「・・・それはまたなんと返事していいか困ってしまいますね。」
「とりあえず、私達は外を探すという名目で来たんだけど、
何の成果も無く見つかりませんでした、じゃ問題だから、
袁術ちゃんにこの店の場所教えてもいい?」
「それはかまいませんけど、あまり大事にしないでくださいね。
私にも、近所の評判というモノあるんですから。」
「ありがと♪
それと今回は悪かったわね、
私は袁術ちゃんの部下扱いだから袁術ちゃんが行くって言ったら止められなくて。」
「それはいいですよ・・・お互い被害は出ましたけど、誤解は解けたようですし、
悪いのは張譲や橋瑁の様な人達、
それに乗せられた袁紹さんのような、権力を己が手中に収めたい人達ですから。」


色々知っている私からしたら孫策さんも、
今回の反董卓連合では名声や功績、袁術ちゃんの弱体化等の狙いがあったようだが、
それを言って下手に勘ぐられるのもまずいし、
彼女達だって、呉や揚州の民の為に立ち上がった人達だ。
政治の世界は特に、綺麗事だけで済む世界ではないから、
敢えてこの場で空気を悪くするような事を言うのは止めておく。


「喜媚殿。」
「はい、何ですか周瑜さん?」


周瑜さんは私の名を呼ぶと、身を正してから礼を取って私に頭を下げる。


「先日、医者を手配してくれた件、誠にありがとうございます。
今だから言うが、私は以前から体調が少し思わしくなくてな、
華佗が言うには肝臓がどうとか・・・
私もそれほど医学に詳しいわけではないので説明はできんが
身体の中の臓器が悪かったらしい。
だが華佗の針の治療を受けた事で、
今では、以前からあった倦怠感や、時折来る腹部の痛みも収まり、
健康な身体を取り戻すことができた。 本当に有難う。」
「いや、別にいいですよ。
私は、華佗に診てもらうようにお願いしただけですから。」
「華佗も言っていたが、初見では私の不調がわからなかったらしく、
診察してようやく私の身体の不調に気がついたようだ。
どうして喜媚殿が一目でわかったのか不思議そうにしていたぞ。」
「そ、そんな大したことじゃないですよ。
ただなんとなく、そう思っただけですから、本当に勘みたいなもので!」
「何にしても、お陰で健康な体を取り戻すことができたのだ、感謝している。」
「冥琳も言ってくれたら私が医者を手配したのに、
私には何にも言ってくれなかったのよ? どう思う?」
「私も一応自分で何人か医者に当たったのだが、
飲み過ぎだとか、仕事のし過ぎとい言われるだけで、要領を得なかったのだ。
だが、喜媚殿が一目で見抜き、
華佗殿の適切な針の治療で、以前あった身体の不調も取れた。」
「何にしても良かったです!
冥琳さまに何かあったら一大事ですから!」
「そうね、冥琳が死んじゃったら、大喬も小喬も心配するし、
私、後追い自殺しちゃうかも♪」
「かも♪ なんて軽く言われても説得力が無い。
今日私達がココに来たのはその礼をするためだと言うのと、
喜媚殿には今回の戦で、迷惑をかけたから、その謝罪のためだ。」
「そうね、今後何かあったら、私達が力になるからなんでも言ってね。
冥琳は私には家族のようなモノだから、家族の恩人は私の恩人でもあるんだから、
何か困ったらいつでも言ってね♪」
「私もできうる限り、力になるつもりだ。」
「喜媚さま、私にも困った時はいつでも言ってくださいね!」
「ありがとうございます。
何もないのが一番いいですが、何かあったら皆さんにご相談しますね。」
「そうして頂戴。」
「あ、そうだ。 立ち話も何ですから、お茶でも飲んでいってください。
私、ココでお茶屋軽食やお菓子を出す店をやっているんです。
今、はまだ開店準備中ですけど、
お茶とお菓子位なら出せますから、食べていってください。」
「そう? 悪いわね、じゃあ少しお邪魔しようかしら。」


そうして、孫策さん達を机に案内してから、
飲茶を出してもてなし、今まで会ってなかった頃の話をしながら過ごしていたら、
ちょうどその時、曹操さん達が帰ってきた。


「ただいま・・・あら? 孫策?」
「なんで曹操がここに? あんたも喜媚の知り合いだったの?」
「そうよ、私と喜媚は 『今は』 友人だもの。
将来的には私のモノにする予定よ。」
(・・・ここでこういう事を平気で言ってのけるのが、曹操さんだよね。)
「あら? 喜媚ちゃんはウチでも狙ってるんだけど?」
「貴女達はまず袁術から独立してから言う事ね。
喜媚の才は袁術の配下のそのまた配下では、生かされないわよ。」
「・・・言ってくれるわね。」
「事実ですもの。」


曹操さんと孫策さんの間に剣呑な雰囲気になったので、私が間に入る。


「そ、曹操さんは、お早い帰りでしたね?」
「そう? 昨日と同じくらいの陽の高さだと思うけど?」
「そ、そうですか・・・桂花もお帰り。」
「ただいま、喉がかわいたから何かもらえる?
アレがあったら飲みたいのだけど。」
「いいよ、席に座って待ってて。」
「桂花、アレとは何よ? お茶じゃないの?」
「はい、華琳様。 水に蜂蜜、塩、果実の汁等を混ぜたもので、
汗をかいた時などに飲むと良い飲み物です。」
「そう・・・面白そうね、喜媚、私と秋蘭も桂花と同じ物を出してちょうだい。」
「はい、分かりました。」
「曹操、貴女達さっきから、さも当然のように喜媚ちゃんを使ってるけど、
友人じゃなかったの?」
「友人よ、でも今は客でもあるの。
私達はこの店に宿を取ってるのよ、つまりコレは料理を注文したのと同じ事なの。」
「え? 喜媚ちゃんのお店って食事を出すところじゃないの?」
「部屋が沢山余ってるのをいい事に、曹操さんが宿代わりにしてるんですよ。」
「あら、失礼ね。 まるで私が我儘言ってるみたいじゃない。
桂花といつも一緒に 「そ、曹操さんは是非ウチでゆっくりしていってねっ!!」
・・・そう言う事よ。」
「・・・喜媚ちゃん、何か弱みでも握られてるの?」
「何も無いですよ!」
「失礼ね、私は友人思いでもあるし、部下思いでもあるのよ。
感謝されこそすれ、恨まれるような事は何もして無いわよ。」
「・・・本当でしょうね?」
「天地神明に誓って本当よ♪」


曹操さんは何事もなかったように、優雅に注文を待っているが、
孫策さんや、周泰ちゃんが怪しい物でも見るように、
曹操さんの様子を窺っている。


「はい、注文の 『アレ』 です。」
「ありがと、どうでもいいけどあんたまだ、名前決めてなかったの?」
「店の商品として出してるものじゃないからね、
人によっては変な呼び方する人も居るんだけど、
私は蜂蜜と果物の汁が入ってるから、蜂蜜果実水でいいかなと思ったんだけど、
思いの外皆に不評で。」
「長いし呼びにくいわよ、縮めて蜂果水(ほうかすい)でいいじゃない。」
「それもいいね。 まぁ、商品として出すものじゃないし。」
「見た目は少し色のついた水なのね、
少し甘い匂いがするのは蜂蜜と果物の汁のせいかしら。」
「そうですね。 桂花の説明だと変なものは入ってないようなので、
大丈夫だと思いますが。」
「飲んでみてください、以外に飲みやすくて、運動の後などにはいいですよ。」
「そう? じゃあ・・・」


そう言って曹操さんと夏侯淵さんが湯のみに口を付けて飲む。
桂花の方は、飲み慣れているので、普通に飲んでいる。


「あら? 思ったより甘さが控えめで飲みやすいのね。」
「そうですね、コレだったらたしかに武術の訓練の後などにはよさそうです。
訓練後は水や塩分、甘味が欲しくなりますから。」
「汗をかくと、身体の塩分が汗と一緒に流れるんですよ。
だから夏場なんかには水だけじゃなくて、塩も少し舐めたほうがいいですよ。」
「確か桂花が少し前にそんな献策を出していたかしら。
理由が良くわからなかったから、詳しい話を聞くまで保留してあったのだけど。
夏場や暑い地方での行軍では、少し気をつけようかしら。」
「ねぇねぇ、喜媚ちゃん私もそれ頂戴♪
明命と冥琳の分も一緒にお願~い。」
「いいですよ、周泰ちゃんは家に来た時にもう何回も飲んだことあるよね。」
「はい! 美味しいですよ雪蓮様。」
「えぇ~、ずるい~。」
「ずるいって言われましても・・・」
「馬鹿者、明命だって仕事で各地を回ってるんだ。
少しくらい各地で美味しい物を食べたって良いではないか。
仕事上の役得というやつだ。」
「え~じゃあ、冥琳! 今度、私も明命と一緒に・・・」
「どうやら雪蓮は、仕事量が足りないと見える。
帰ったら仕事の量を倍に増やしてやろう。」
「・・・ごめんなさい。」
「ハハハ・・・。」


こうして、なんとか穏やかな雰囲気に変えることができたのだが。
こうやって周りを見回すと、この外史ではこの先どうなるかわからないが、
別の外史の魏と呉の王様が一緒に食事を楽しむ様子は、
この国の明るい未来を感じさせるモノだった。

いつかこうして平時でも所属が違う諸侯同士でも、
穏やかに会話をしながら食事を楽しめる国になったらいいものだ。


  1. 2012/09/27(木) 18:13:27|
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六十一話


洛陽




現在、洛陽の宮殿内部、謁見間では、
反董卓連合に参加した諸侯にそれぞれ判決が下されている。

おおまかに言えば、袁紹さんは配下の将官も含めて領地、官職、私財の全て没収の上、
正式な手続きの後、荒野に一人放り出される事になる。
細かい話になるが、一応最低限の旅費や旅に必要な道具類は支給される。
コレは何も与えずに放逐して、いきなり賊になられても困るからだ。

その他の諸侯は曹操さん、美羽ちゃん、劉備さんの陣営を除いて、
今回の戦で被った董卓軍の被害を金銭等で補填し、
曹操さん主導で反董卓連合に参加した諸侯全てで、
袁紹さんの治めていた領地の内乱等を平定した後、
功績によってそれぞれの諸侯に分配され、領地運営を任せると言うものだ。

一刀君と劉備さんの領地であった徐州には、
董卓軍から一時的に領地運営をする者が選ばれ、
先行して統治の引き継ぎを行い、然るべき者に領地運営を任せるそうだ。

曹操さん、美羽ちゃん達は、基本的にお咎め無し。
しかし、やむを得ない事情や、張譲捕縛の功績があったとしても、
皇帝に弓を引いたのは事実なので、罰は無いが報奨も無い。


現在、細かい部分などを賈詡さんが説明している。
賈詡さんは抜け目がないし、
音々ちゃんや董卓さんと一緒に深夜まで何度も議論していたので、
抜け道を使って補償額を減らしたりといった事は出来ないだろう。

曹操さんも、無表情で聞いているので、あまり面白くない結果なのだろう。
あの人は弱みは見せないが、うれしい時は結構顔に出るので、
無表情の時や、意味もなくニコニコと微笑んでいる時は、機嫌が悪いと思われる。


しかし、コレでこの外史はこの先どうなるのか、
まったく予想がつかないものになってしまった。
北郷一刀くんは制服を没収された上に董卓領内から追放だ。
逆に劉備さん達は、洛陽での期限付きの強制労働が待っている。
私が聞いている話だと、新しく洛陽で識字率を上げるため、私塾ではなく、
公営の塾を開くので、そこの講師として働かせ、
武官の者は一般の警備隊員として働かせるそうだ。

その後、様子を見て使えるようなら、恩に着せる形でうまく使えるだろう、
と賈詡さんは話していた・・・あの陣営で使えない将は一人もいないだろうから、
少なくとも、今後何らかの形で民のために働くことになるだろう。

鉱山労働とかでなくてホッとしたが、洛陽から出る事はできないので、
一刀くんと会う事は、しばらくは不可能だろう。


この後、賈詡さんの細かい説明が終わった後、諸侯には宮殿内に部屋が用意され、
袁紹領内平定において、どの州や県を誰が担当するのか。
それと罰金などの支払い分配をどうするのか?
そう言った話し合いが行われるそうだ。

その話し合いには、賈詡さんなども出席するが、
曹操さん主導で行われるので、口はあまり出さない方針だそうだ。


こうして、私はようやく自分の家とも言える店に帰ることが出来、
洛陽の皆を守ることが出来、いつもの日常生活に帰ってくることができた。
・・・と思っていたのだが、劉花ちゃんと警備の皆と一緒に店に帰り、
店の事を任せていた従業員の皆の歓迎を受けて、
お茶会を開いていたのだが、お昼もすぎた頃、思いがけない来客があった。


「お邪魔するわよ。」
「・・・・・・邪魔するわよ。」
「失礼する。」
「え? ・・・なんで、曹操さん達が?」


私が帰ってくるまで店の営業はせずに、
維持管理だけさせていたので、店は開いてないのだが、
曹操さん達は、お構い無しとばかりに、堂々と店に入ってきた。


「私達は麗羽の領地の今後の事を話し合うまで、洛陽に居る必要があるのだけど、
賈詡と話して、私達と袁術達は、洛陽から出たり騒ぎを起こさなければ、
外に宿をとって良いという事になったのよ。
そこで喜媚、私達は貴方の所で宿を取ろうと思って、こうして訪ねてきたのよ。」
「賈詡さんは・・なんて事を・・・・」
「袁紹や他の諸侯は見張り付きで軟禁されているけど、
今回の件で、お咎め無しの私達を牢にぶち込んだり、軟禁できないでしょう?」


そう言うと曹操さんは私の方に歩み寄ってきて、
妖艶に微笑みながら、私の頬を撫でまわす。


「・・・それにしても、貴方も汜水関や虎牢関ではやってくれたわよねぇ。
それに最後の陛下を引っ張りだしてきたの、貴方の発案でしょう?
董卓達に思いつくとは思えないし、仮に思いついても実行するなんて不可能でしょう。
そんな突拍子もない発想ができて、
陛下に直接頼める立場の人間なんて、貴方くらいしかいないものねぇ?」
「さ、さぁ? 何の事でしょうか?
(バレてる、完全にバレてるよ・・・)」
「こんな事になるってわかっていたのなら、
あの時、私の身体を使ってでも、
貴方を引き止めておくべきだったのかもしれないわね。
どう? 今ならあの時の条件、飲んであげてもいいわよ?」
「そ、曹操さんも私をからかっているんですよね?
それにあんな事もう二度とごめんですよ。
夏侯惇さんはいないけど、夏侯淵さんがいますし、桂花もいますし。」


私が桂花の真名を呼ぶと、今まで私の目を見ようとしなかった桂花が、
急に顔を上げて、私の顔を見てきた。


「・・・・・まだ、私の真名を呼んでくれるのね。」
「・・・桂花?」


桂花はそう言うと、涙目で私の元に走ってきて襟を掴んで締めあげてくる。


「あんたは! ・・・・あんたは何、馬鹿な事ばっかりやってるのよ!!
心配したじゃない! 汜水関に出てくるなんて、流れ矢でも当たったらどうするのよ!
おまけに私達の策を尽く、ぶち壊しにしてくれて!
あんた本当に私と一緒になるつもりあるの!?
何がどうなったら、あんたが皇帝陛下の命の恩人になって、
董卓軍の将官として戦場に出てくる事になるのよ!?
一瞬、私の事嫌いになったかと思ったじゃない!!」


桂花は私の服の襟を掴んで締めあげて私に詰め寄る。


「け、桂花・・・落ち、落ち着いて!」
「コレが落ち着いてられるわけ無いでしょう!?
人がどれだけ心配したと思ってんのよ!
おまけに謁見の間では陛下と一緒に出てくるし、
あんた何がしたいの? この国を乗っ取るつもりなの!?」
「話す、ちゃんと後で経緯を話すから今は手を離して、く、苦しいから。」
「聞くわよ? いくらでも好きなだけ聞いてやるわよ!
時間はたっぷりあるわ、納得行くまできっちり話を聞かせてもらうわよ!」


そんな私達の様子を、いつの間にか椅子に座り、
お茶を飲んでいた曹操さんが涼しげに見つめ。


「さて、桂花も喜媚もこう言ってるし、
私達がここに逗留するのは問題無いわよね?」
「え? そ、それは賈詡さんに・・・」
「賈詡は洛陽から出なければ、何処に泊まっても良いと言ったわよ。」
(賈詡さぁ~ん!!
・・・そうか賈詡さんは曹操さんと私の間であった事知らないから!)
「とりあえず、部屋は前と同じで、桂花は喜媚と一緒の部屋でいいし、
私と秋蘭も一緒の部屋でいいわ、そういう事で後はよろしく。
あっ! 後久しぶりにお風呂にも入りたいわね。
戦場では身体を拭くのがやっとだから、さっぱりしたいわ。
お風呂の準備もお願いね。」
「・・・もう好きにしてください。」


私は曹操さんに抗うのを諦めた。


こうしてなぜか、曹操さん達も家に泊まることになってしまい、
劉花ちゃんがすごくいい笑顔で私を見つめているが、
コレは、曹操さん達が帰ったら、ご機嫌を取るのが大変だな・・・と思った。


結局この日は、曹操さんには店でゆっくりしてもらっている間に、
寝具の準備や食料などの買い出しをしたり、
お風呂の準備をしたりと忙しく動きまわり。

夜は夜で食後、お風呂から上がった後、
少しお酒の入った桂花に強引に私の部屋に連れ込まれ、
深夜まで協ちゃん達との出会い、洛陽での事件、
その時に桂花と一緒に生きるためと、
やむを得ない事情で董卓さんに協力する事になった事。
反董卓連合が結成されたことで一時的に客将として参加した事。
その時に真名を交わした人が何人か出た事等を事細かに問ただされ、
真名を交わした人達と浮気してないかと疑われたが、
誠心誠意説得する事で、なんとか信じてはもらえた。

劉花ちゃんの正体や、火薬の事については一切教えなかったが、
火薬の事は今までも何度も聞かれても教えなかったので、
董卓さんに渡してないと言う事だけ念入りに説明したら、
最後に念を押されて、その後は火薬についての追求は一旦諦めたようだ。
劉花ちゃんの事については、話さなかったのだが、
大凡、桂花達も察しがついたのか、翌日から・・・と言うよりも
劉花ちゃん会った時から、劉花ちゃんに対する曹操さん達の態度が
民や従業員に対する態度ではなかったのだが、
ここで皇帝にするような特別扱いするわけにも行かないので、
微妙な態度で接するようになった。


翌日、朝食をとった桂花達は、会議のために宮殿に向かい、
私達は、店の営業のために色々と準備をしていたのだが、
昼食後、しばらくしたら賈詡さんがウチの店に護衛と一緒にやってきた。
護衛の人は、すぐに向かいの屯所で待機し、
賈詡さんだけがウチの店に入ってくる。


「あ~まったく!
喜媚悪いけど、何か飲み物と軽く食べられる物出してくれない?
ボクまだ昼食、食べれてないのよ。」
「いらっしゃい。
それはいいけど話し合いがうまくいってないの?」
「うまくいくも何もないわよ!
予想通り、責任と保証の押し付け合いに終始して、話しなんかまったく進まないわ。
この様子だと、本当に死ぬまで終わりそうにないから、
キリがいいところで私達が介入して、
それぞれ収める金銭や兵糧等をこっちで算出して決めさせるわ。
曹操も話をまとめるのは諦めて、それぞれの諸侯の言い分を聞いてるだけだし!
あいつ絶対わざとやってるわよ!」


賈詡さんが愚痴っていると、店の入口から数人の見慣れた人達が入ってきた。


「あら? まとめる気はあるわよ?
だけど、まずお互い、言いたい事を言わせないと、どうしようもないもの。」
「曹操! ・・・なんであんたがここにいるのよ!?」
「なんでって、私達がココを宿にして逗留しているからよ?」
「喜媚の店は宿屋じゃないわよ!」
「私と喜媚は 『お友達』 だもの。
信頼出来る友人の家に泊まったって何も問題はないでしょう?
洛陽で問題も起こしてないし、
そこらの宿よりも喜媚の店の方が快適だし、私自身喜媚の方が信用できるわ。」
「くっ・・・・」
「それよりも貴女はどうしてここにいるのよ?
まだこの店は営業していないはずだけど?」
「ボクは喜媚の 『個人的な友人』 だからココにいてもおかしくはないわよ。
それに、この店はお茶も料理も美味しいって洛陽では有名なのよ?
ボクがいてもおかしくはないわ。」


その時、桂花が私を睨みつけたが、すぐさま私は首を横に振って、
浮気などしていないとアイコンタクトで桂花に伝える。


「あらそうなの?
董卓軍の軍師が懇意にしてる店なのね?
なら洛陽でもかなりいい店のようね。
そんなにいい店なら、私達が利用しても不思議ではないわよね?
いい店には自然と人が集まるものですもの。」
「喜媚!」
「は、はい!」
「あんたはどうなのよ!?」
「い、いや、桂花とは真名を交わした仲だし、
その主であり、官職を持っている曹操さんが言うのだったら、
私は別にいいんだけど・・」
「あら、私とは友達じゃないの?
名を呼び合う仲じゃない。」


曹操さんは賈詡さんが、なぜか今回の事で絡んでくる事を面白がっているのか、
賈詡さんを挑発するような言い方をするが、巻き込まれる方はたまったものではない。

劉花ちゃんの件もあるので、
賈詡さんが曹操さんをココに泊めたくないのはわかるのだが、
その事を言うわけにも行かないので、どうしても矛先が私に向いてしまう。

この後も何度か言い合いをしたが、
賈詡さんが最初に洛陽を出なければ、ある程度自由にしていいと言ってしまったので、
結局賈詡さんが折れ、 (劉花様の事だけは気をつけなさい!) と釘を刺された事で、
曹操さんが家に泊まるのは黙認する形になった。

曹操さん達が一つの大きめの机に集まって座り、従業員の娘達がお茶を出し、
少しはなれた所で、賈詡さんが座って食事を待っていたのだが、
賈詡さんが桂花を睨んだ後、
『荀彧、個人的な話があるからちょっとこっちに来なさい。』 と言って、
桂花と一緒に、奥の個室に行ってしまった。

この場合、私はできた食事を何処に持っていけばいいのだろうか?




--荀彧--


賈詡に話があると呼ばれたため、店の奥の個室に連れて行かれ、
とりあえず賈詡と対面で椅子に座る。
私は賈詡に今聞くような話は無いのだが、連合の後始末の事で何かあるのかしら?


「・・・・・」
「・・・」
「・・・・・」
「・・・なにか話があったんじゃないの?」
「う、うるさいわね! わかってるわよ、色々とボクにも事情があるのよ!」


そう賈詡は頬を赤く染めて怒鳴っていたが、コレは完全に直感だが、この瞬間、
この女に無駄に大きい乳は無いが、コイツは陸遜以上の強敵だと私の本能が告げた。


「・・・コホンッ あんた相手に変に策を弄しても、
無駄に時間を使うだけだから、単刀直入に言うわ。
あんたと喜媚の仲は察しているつもりだけど、
ボクは喜媚が好きよ、もちろん女としてね!」
「・・・なん・・・ですって!?」
「月・・・董卓軍にも必要な人材だし、私にとっても必要な子だから、
喜媚にはずっと洛陽にいてもらいたいのだけど、荀彧・・・貴女の事がある。」
「ちっ・・・あの馬鹿、やっぱり!」

この女の意図がいまいちわからないが、
なぜ喜媚が好きだという事をわざわざ私に言う必要があるのだろうか?
普通に考えれば、私達が洛陽を去った時に喜媚を口説くなりすればいいのに、
なぜ、この女は今、私にわざわざその事を伝えてきた?
普通に考えたら余計な警戒心を煽るだけなのに・・・


「そんな事いちいち私に言う必要が有るの?」
「あるのよ。 喜媚を仕官させたいという気持ちもあるわ。
士官の話だけだったら、わざわざ貴女だけ呼んでこんな話しない。
だけどボクはあの子の知も欲しいけど、一人の女として喜媚が欲しいのよ。」
「・・・っ!」
「あんたが洛陽に来ると聞いてから、ずっと考えていたわ・・・
不意打ちで荀彧、あんたが洛陽から去った後に、
喜媚に私の気持ちを伝えるのもいいかと思ったけど、
それだと、きっとあの子はあんたに義理立てしてボクを拒否する。
だから、あんたとは一度、腹を割って話す必要があるのよ。
喜媚とあんたの関係は大凡察してるけど、
ボクには・・・ボクと月にはそれでもあの子は必要なのよ。」
「・・・どうしてあんたと董卓に喜媚が必要なのよ?
男なんて、あんた達ならよりどりみどりで、好きな男を選べるじゃない!
どこからでも好きな男を選んで取ってくればいいじゃない!
なんで・・・なんで喜媚なのよ!!」


最後の方で思わず大声で喋ってしまったが、
ココが個室で良かった。壁も厚そうだし。


「あんたが何処までボク達の事を知っているのかわからないけど、
ボク達は、当初望んでこの地位に着いたわけじゃない。
だけど当時はこの選択以外に他に選択肢は無かった。
月・・・董卓は本当に優しい子で、
あの子は家族や自分の周りの人間が、幸せで居てくれればそれで良かった。
あの娘はそういう娘なのよ。
だけど、運命は月に洛陽の君主として、
陛下を補佐する相国としての立場に月を押し上げてしまった。
そして喜媚も同じよ・・・
同じ志を持ちながら、同じように運命に翻弄されて、
何処にも逃げられない立場になってしまった・・・月と喜媚にはお互いが必要なのよ。
ボクが見ていてもわかる・・・月はみんなの前でよく笑うけど、
本当に本心の月を見られるのは、
月と同じ志を持つ喜媚と、昔からの付き合いのボクの前でだけなのよ・・・」
「・・・・」
「それに、ボクも最初は喜媚の知識が目当てだった。
あの子自身、そうは思ってないみたいだけど、荀彧、あんたならわかるでしょう?
あの子の持つ知識が、何物にも代えがたい素晴らしい宝だという事が。」
「あの馬鹿は・・・」


私や郭嘉、華琳様やコイツのような一定以上の知のある者には、
喜媚の持つ知識や、根底に一定以上の知がある上での、あの独自の発想は、
何者にも代えがたい宝に見える・・・見えてしまう。
コイツも最初はそれに釣られて喜媚に近づいたのだ。


「そうやって喜媚に近づいて喜媚と接している内に、
この子は月と同じ志を持っている事に気がついた。
いつも華雄や霞や恋の訓練から逃げ出そうとして・・・しょうが無いヘタレだけど、
ホントどうしようもないヘタレ・・・・だけど、あの子は優しいのよ。
いつもボク達の事を気遣ってくれて、
友人や知人のためには、その知も武も惜しまない。
本当はやりたくもなくて、逃げ出したいはずなのに、
ボク達や洛陽の民のために今回の戦に、私達と一緒に参加してくれた・・・
そんな男だもの・・・見てくれが多少 『アレ』 でも、
女なら惚れてもしかたがないわよ。」
「賈詡・・・貴女本気なの? 真名も交わしてないのに。」
「ボクは本気よ、真名を交わしてないのは機会に恵まれなかっただけだもの。
今日だってあんたらがいなかったら、
泊まっていって、その時に喜媚と真名を交わすつもりだったもの。
そのためにわざわざ今日の予定を空けてきたんだから。」
「・・・・あの馬鹿は本当! ろくな事をしない!!」


私は頭を抱え込んだ、あの馬鹿はちょっと目を離すとすぐコレだ。
厄介事を巻き起こすか、余計な女を引っ掛けてくる。


「だけど好きなんでしょ? あんたも。」
「う、うるさいわね!!」
「あの喜媚があんたを選んであそこまで義理立てするんだもの、
あんたがどういう女か察しはつくわ、でも私も喜媚を諦めつるもりはない!」


そう言って賈詡は立ち上がって私に向かって指を突きつけて宣言する。


「荀文若! コレは宣戦布告よ! 喜媚はボクが、ボク達が貰う!」


私も反射的に立ち上がって、賈詡に宣言する。


「ふざけんじゃないわよ! 絶対喜媚は渡さない!
私にはあの子しか・・・あの子しかいないのよ!!」
「あんたと喜媚に何があったのか、今は聞かないわ。
でもそこまで言うのだったら、ボク達が正室の座についたら、
妾くらいは考えてやってもいいわよ?
喜媚はただの洛陽の茶店の主で終わる人間じゃない。
今回の戦の事だけでも、その戦功は素晴らしいもので、
その報奨もいずれ与えられるわ。
そしたらボクは陛下に直訴して、喜媚に上位の官職を与えるか、然るべき報奨を与えて
正室の他にも側室を持っても問題無い立場にするわ。
その後、月が正室になるかボクかはわからないけど、
あんたもウチに来るなら、入れてあげなくもないわよ?
あの子の血は何としても後世に残さなきゃいけないし。」
「ふざけんじゃないわよ!
見てらっしゃい、華琳様を私が補佐して、あんた達を叩き潰してやるわ、
その時にどうしてもって言うのなら、
私が正室であんたらを喜媚の性欲処理の妾くらいにはしてあげるわよ!?」
「だったらこっちはあんたを喜媚の性奴隷としてなら認めてあげてもいいわよ!」
「ふざけんじゃないわよ! あんた達がそうなるのよ!」

「「・・・ハァハァ・・ハァ。」」

「と、とにかく伝えたわよ。 喜媚はボク達が貰う!」
「絶対に渡さないわ!」
「でも貴女、もうすぐ帰るんでしょう?」
「くっ・・・だったら今のウチに私の魅力で喜媚を骨抜きにしてやるわ!
大体、賈詡あんた喜媚に だ、抱かれた事無いでしょ?」
「くっ!? ・・・そこまで進んでたの!?
・・・い、良いわよ! あんたがいない内に、
ボクだって・・・だ、だ、抱かれてやるわよ!!」
「そんなの許さないわよ!」
「許しなさいよそれくらい! あんたは抱かれてるんでしょ!」
「私は喜媚とはそういう関係だもの!」
「でも、婚約も婚姻も済ませてないじゃない!」
「くっ・・・こっちも色々事情があるのよ!」
「妻のいる男を取ったら問題だけど、
独身の男だったらなんの問題もないわ!」
「っ・・・減らず口を!」
「あんたは先に喜媚に会えただけ。 運が良かっただけじゃない!
それに婚約もしていない男に抱かれるなんてはしたないわよ。」
「私は、喜媚に命を救われたのよ!
命の恩人に身を捧げて何が悪いのよ。」
「だったらボクもそうじゃない!
今回の洛陽の戦では喜媚がいなかったら負けてたんだから、
命を救われたのはボクも同じよ!」
「あんたは、その他大勢のウチの一部じゃない。」
「救われた事には変わらないわよ!」

「「・・・フー フー フー・・はぁ、止めましょう。」」
「「・・・そうね。」」


そうしてお互い椅子に座り直す。


「ともかくコレは宣戦布告よ。 ボク達は本気で喜媚を落とす。」
「やれるものならやってみなさい、
私が喜媚と結ばれるのに、どれだけ苦労したか知らないあんたが、
何処まで出来るか楽しみだわ。」
「言質は取ったわよ。」
「くっ・・・す、好きにすればいいじゃない。
遊びだったらあんたや喜媚を殺してでも止めるけど・・・本気なんでしょ?」
「あんたに喜媚しかいないように、ボク達にも喜媚しかいないんだよ・・・
月が笑ってくれて、ボクが惚れて、
みんなで笑って暮らし行くためには、喜媚しかいないのよ・・・」
「・・・ふん。
話はそれだけ? じゃあ私はもう行くわよ。
・・・あ、あと今日この店に泊まるのはやめといたほうがいいわよ、
私と喜媚の閨事を聞きたいなんて、悪趣味な事したくないならね。」
「・・・・くっ!」


賈詡は悔しそうに机を叩いていたが
私は賈詡を個室に残して部屋から退出し、
華琳様の所に戻る時に少し離れたところで華琳様と話していた喜媚の横を通り一言。


(あんた 『浮気』 したら殺すわよ。)
(なっ!? いきなり何っ!? し、しないよ!)


そう言って華琳様の元へと戻った。


賈詡がまさか・・・まさかあんな事を言い出すとは思ってなかったし、
本当は絶対に・・・絶対に! 死ぬほど許したくないけど・・・


(あんな泣きそうな顔で自分には喜媚しかいないなんて言われたらどうすりゃいのよ!
本当あの馬鹿は、少し目を離すと余計な所で余計な事をしでかすんだから!
引っ掛ける女は、稟も愛紗も皆良い奴ばかり!
遊びで近づく女ならなんとでもなるけど、
あんな・・・賈詡みたいな国の重職に立つような立場の者が、
あそこまでなりふり構わず言ってきたら、私は一体どうすればいいのよ!)


この日、結局賈詡は食事だけして帰っていったが、
私に強力な恋敵が現れた瞬間だった。
どこか私に似た、共感を覚える部分もあるが・・・


(・・・それでも喜媚は、喜媚だけは誰にも渡さないわよ!!)


  1. 2012/09/27(木) 18:12:24|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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雑記


こんにちは。


ちょっと私生活のほうでゴタゴタして、投稿できませんでした。
すいません。
五十六話~六十話まで投稿しておきました。

>>和尚さん
わざわざ、こんな辺境までお疲れ様です。
追っかけてきてくれてありがとうございます。
完結目指して頑張りますので、よろしくお願いします。


たいち

  1. 2012/09/26(水) 17:54:32|
  2. 雑記
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六十話


洛陽




董卓さんの指示により、
反董卓連合の兵は、虎牢関より東に一時的に駐屯する事が許され、
虎牢関を攻める時に使っていた野営地をそのまま使う事で、
協ちゃんの裁定が終わるまで待機することになる。
それぞれの諸侯から選ばれた代表者は、
主に主君と軍師や参謀役の者、数名で選ばれ、
袁紹さんは文醜さんと顔良さん、美羽ちゃんはもちろん七乃さん、
公孫賛さんは本人のみ、曹操さんは桂花と夏侯淵さん、
劉備さんは一刀君と諸葛孔明ちゃんそれに愛紗ちゃん、
それに孫策さんが周瑜さんと周泰ちゃん達数名の者を連れ、
是非董卓さんに引き会わせたいと言う事で、
話を聞いたのだが、張譲本人を生け捕りにしたと言う事なので、
特別に協ちゃんへの謁見を許されている。
それ以外の諸侯も大体、君主と軍師と言う組み合わせだ。

この話を聞いていた曹操さんは表情にこそ出なかったが、
明らかにその様子は、怒気を放っていた。


こうして、反董卓連合の代表者を伴ない、
董卓の軍に同行して洛陽の町へと帰ったのだが、
洛陽の町に協ちゃんや董卓さんが入ると同時に、
すごい歓声で向かえられ、皆董卓軍の勝利に喜び、
洛陽の民を守るためにと、皇帝自ら出陣した協ちゃんの洛陽での支持は、
うなぎ登りとなった。

連合の諸侯は洛陽の町の様子を見て驚く者や、自らが行った行為に落胆する者、
これからどんな裁定が下されるのかと恐怖に慄く者や
一部、洛陽の発展の秘密を探ろうと目を光らせている者など、様々な様子を見せた。

宮殿に帰り、各諸侯達に部屋を宛てがい、
私達は、宮中の奥の、劉花ちゃんが待つ部屋に向かって移動していたが、
途中で、私達の帰りを聞きつけた劉花ちゃんが
私の顔を見るなり涙目で走ってきて、私に抱きついてきた。

この日は、会議室に移動した後、皆と汜水関、虎牢関、
そしてその先の平原で何があったのか、
皆で情報交換をして、汜水関での出来事で、華雄さんが白い目で見られたり、
虎牢関での橋瑁を討った時の様子を誇らしげに語る音々ちゃん。
平原で反董卓連合の皆に一泡吹かせてやった時の事を、
協ちゃんが面白おかしく話したりと、
ひと通り話した後、今後の反董卓連合の裁定を行い、
協ちゃんの裁量でどういう結末にするのか、
事前に決めていた案と現状を比べて、深夜まで話し合いをおこなった。


翌日、朝食を摂った後、謁見の間に董卓軍の将官、
反董卓連合の代表者達を集めて、
協ちゃんにより裁定し、今回の戦の戦後処理をどうするのか?
その事が協ちゃん、皇帝陛下から諸侯に下される事になった。


すでに謁見の間には必要な者は、協ちゃんと私以外全員揃っている。
そして最後に、皇帝陛下の登場となるのだが、
なぜか、私もその時に一緒に登場し、協ちゃんの側に控える事になってしまった。
これは、協ちゃんが昨晩、不安だから付いていて欲しいと、
駄々をこねた結果であるが、
協ちゃんも皇帝としての謁見は山ほどこなしたが、
今回のような裁定はそう経験がないだろうから、不安なのだろう。
董卓さんや賈詡さん辺りも、その辺のことがわかっているのか、
結局私は、協ちゃんの護衛役として、協ちゃんの側につくことになった。

また、謁見の間には入らないが、皇帝の控え室で劉花ちゃんも、
様子を伺うことになっており。
正装の上、杖を持って待機している。
コレは一応、万が一に劉弁として、出なくてはいけなくなった時の予防策である。


「皇帝陛下がお出でになります。
皆、伏して待つように。」


董卓さんがそう言うと、奥から協ちゃんと私が謁見の間に現れる。
皆は伏しているので、私達の顔を見ることは出来ないが、
一部の人達は護衛を連れているにしては足音が少ない事に違和感を感じたようだ。

協ちゃんが椅子に座ると、私はその横で立ったまま少し下がって控える。


「うむ、皆の者面を上げよ。」


協ちゃんのその一言で、皆が顔を上げるが、
その時に桂花や、一部の人達が私の顔を見てびっくりしたようで、
美羽ちゃんなどは、 『喜媚ぃ! モガモガ』 と私の名前を叫びだして、
七乃さんに取り押さえられると言う状況になっている。
桂花は凄い目付きで睨んできたかと思ったら、
訳がわからないといったような表情に変わったり、
なかなか見れないいろんな表情を見せてくれている。
・・・だが、桂花も怪我も無く、元気そうでよかった。


「本日は、コレより先の騒乱について陛下に裁定をしていただき、
此度の件の始末を付けたいと思います。」


董卓さんのその一言で、場の空気が一気に緊張し、少し冷え込んだような気がした。


「まずは袁本初、斯様な檄文を各諸侯に放ち、此度の反董卓連合なるモノを結成し、
陛下の収めるこの国内で、このような騒乱を起こした理由を説明せよ!」
「は、はい。 今回は、張譲さんや橋瑁さんから話を聞き、
董仲穎様が洛陽にて、陛下を軟禁し、怪しげな者を使い、
非道な行いを行なっているという話を聞きましたので、
陛下や洛陽の民を助けようと思いまして、諸侯に呼びかけ、
連合を組む事になったのでございますわ。」
「ふむ、その檄文、妾も読んだが、賛同しないものは敵と見なす。
とも書かれておったのぅ、コレは袁紹、脅迫とも取れるのではないか?
それに董卓が洛陽で非道を働いたという証拠は、
張譲や橋瑁の証言以外で、何か証拠が有ってのものか?」
「そ、それは・・・」
「・・・何も無いであろう?
そもそも董卓は、何進や一部の宦官の暴走で衰退していたこの国や洛陽を復興させ、
洛陽からこの国を良くしようと、日々誠実に職務についておる。
お主らも洛陽の街並みは見たであろう?
アレの何処に非道が有った?
民は嘆き悲しんでおったか?
それに、張譲は先の何進暗殺の首謀者じゃぞ?
董卓は袁紹、其方に書簡を出して、張譲と橋瑁を引き渡せと、
再三にわたって要求したはずだが、
なにゆえ庇い立てしたのじゃ?」
「そ、それは・・・その。」
「妾が幼いから何も知らぬとでも思っておるのか? ・・・このたわけが!!
其方が洛陽と妾を手中にし、権力を握るために張譲と結託した事を、
妾が知らぬとでも思うたか!」
「へ、陛下! 恐れながら申し上げますが、そのような事は決して!」
「ならばなぜ何進暗殺、姉様と妾の誘拐の主犯と協力者であった、
張譲と橋瑁をすぐに引き渡さなかった!
其方に送った書簡ではその証拠の一部も同封されておったはずだぞ!」
「そ、それは・・・・」


袁紹さんがどう答えていいか混乱する中、協ちゃんの様子が悲しげなものに変わった。


「・・・袁紹よ、それに袁術よ、妾はな、本心から其方らに感謝しておったのじゃ。」
「へ、陛下?」 「わ、妾もかえ?」
「何進が暗殺されたのは悲しい出来事じゃったが、
その後、お主らが何進暗殺の共謀犯である、
一部の悪政を働く宦官を始末してくれたおかげで、
宮殿は血で汚れてしまったが、この国は確実に良い方向に向かうはずだったのじゃ。
その後、董卓達の奮闘により、誘拐されかけた、姉様と妾が救出され、
姉様は怪我のため政務執行不可能になってしまい、
妾が皇帝を継ぎ、董卓に徹底的に悪政の元を断ち、
この国を良い方向に持って行ってもらおうと思ったのじゃ。
きっと袁紹、お主達も協力してくれて、
この国が良い方向に行くと信じておったのに・・・
袁紹がこんなくだらん檄文をばらまき、連合などを組んだおかげで、
危うく、この国が・・・いや、国など良い。
この国に住まう民が、より不幸になるところじゃったのだぞ!」
「陛下・・・」
「民無くして国など無い!
権力に妄執し、民を蔑ろにする者など真の為政者では無い!
なぜ、その事が分からぬのじゃ袁紹!!」


協ちゃんの悲痛な叫びにも近い問いかけに、
袁紹さんはすでにいつもの様子はなく、完全に落ち込んでしまい、
自分が何をしでかしたのか、噛み締めている様子だ。


「次に、袁術よ。」
「はいっ!」
「お主は配下の孫伯符が張譲を捕えたそうだが、なにゆえ張譲を捕えたのじゃ?
連合に参加したのならば、張譲を捕えるのはおかしいのではないか?」
「それについては私から説明をさせて頂きます。」
「ふむ、お主は?」
「張勲ともうします、袁公路の元で政務を取り仕切っております。」
「ふむ、許す、申せ。」
「私達は今回の連合に関して色々と疑問に思うところがありました。
私達の個人的な知り合いの胡喜媚殿から、洛陽での生活の事を聞いておりましたが、
檄文に書かれているような悪政で困っている様子はなく、
日々穏やかに暮らしていると書かれておりました。
そのため、孫伯符に命じて調査をさせ、その結果、
この連合が偽りの名目で仕組まれた事だとわかりました。
張譲を捕えたのは孫伯符の独断でしたが、英断だとも思っております。
彼女がいち早く行動を起こさなければ、
張譲に逃げられていた可能性が高かったと思っております。」
「ふむ、孫伯符よ、どうじゃ? 何か言う事はあるか?」
「・・・何もございません、張勲様のおっしゃるとおりでございます。」


この辺りは七乃さんの上手いところだな。
私は原作知識や彼女との面識もある事で、
美羽ちゃんが何も指示を出していない事は想像がつくが、
ただ自分達が全部指示した、と言っていたら孫策さんは否定しただろう。

しかし、孫策さんの英断が有ったからこそ張譲を捉えられた、と言う事にしておけば、
もしかしたら孫策さんも話を聞くかもしれない、と踏んだか・・・

それに孫策さんも独断で張譲を捕えはしたが、他に何か証拠などがあったとしても、
美羽ちゃんに報告せずに独断で動いたとなれば、美羽ちゃんへの叛意が疑われる。
先ほど協ちゃんは美羽ちゃんに 『感謝している』 と謝辞を述べた。
その美羽ちゃんに叛意有り、となっては都合も悪いだろうから、
直前でやむなく七乃さんの案を飲んだのだろう。

博打に近いが、こうでもしないと美羽ちゃんを守れない。
この対価は孫家の独立と援助、そんな所だろう。
それを孫策さんが聞くのかどうかわからないが・・・まず無理だろう。
孫策さんの性格上、表面上は聞いておいて油断させ、
このすぐ後で弱り切った袁術軍を潰す気だろう。


「ふむ、喜媚よ、お主袁術とは知り合いなのか?」
「はい、袁公路様とは真名を交わす仲で、書簡を通じて数年来の付き合いです。」
「そういえば、そんな話も聞いたような・・・あぁ、蜂蜜の好きな娘か!」
「そうですね。」


これは、協ちゃんの何気ない問だったが、
私が最後に打てるんじゃないかと思った布石だ。

協ちゃんと懇意の私が、真名を交わした美羽ちゃんなら、
孫策さんも、おいそれと討つ訳にはいかないだろうとう狙いだ。
そのために私は、協ちゃんに度々美羽ちゃんの事を話しておいた。


「恐れながら陛下、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「なんじゃ張勲、申してみよ。」
「陛下の横に控えておられるのは胡喜媚様でございますよね?
陛下とは一体どういった御関係なのでしょうか?
私の知る胡喜媚様は農家の出身でしたので、事情がよくわからないのですが。」


七乃さんのこの質問に、曹操さんと桂花、愛紗ちゃん、
美羽ちゃん、周泰ちゃんの目付きが代わる。


「ふむ、妾と喜媚の関係か・・・どう言えば良いのか。
そうだな、お主らと同じで、
数年来の友人で妾と姉様の命の恩人の内の一人といえばよいか。
喜媚とは幼少の頃、妾が身分を隠しておった時に偶然知りおうてな。
それ以来の付き合いじゃが、妾と姉様が最も信頼する者でもある。
妾は命を救ってくれた友に、平伏せよ、などと言うつもりはない。
故にこの場でも立たせておるし、今回は妾の警護についてもらっておる。
武器の携帯も許しておる。
今回はこのような事があった故、市井で暮らしておった喜媚も義によって立ち上がり、
董卓軍に所属して将官として戦ったが、普段は、洛陽で店を開いておる。
ココに居る者達はこの事は口外する事無きようにな。
喜媚本人が、市井の民としての暮らしを望んでおるゆえ、周りで騒ぎ立てぬように。
もし喜媚に何か危害が加われば、それは妾に向かって行った事と同じと知るが良い。」
「かしこまりました。」


「さて・・・他に何か、おぉ、確か曹操よ、お主が提出した書簡の件があったな。」
「はっ。」
「さて、お主が提出した書簡や、董卓の話によれば、
曹操と董卓は知己であったというが、それは真か?」
「確かに董仲穎様とは以前から面識があり、私は洛陽の様子を知っておりました。」
「では、なにゆえ連合軍に参加した?
董卓と知己で洛陽の様子を知っておったのなら、
逆に董卓に味方をするのが義ではないのか?」
「確かに陛下のおっしゃる通りではありますが、
檄文には参加しない者は敵とみなすと言う一文が入っておりました。
私が陛下から管理を任されています陳留は、地理的に連合軍の通り道に当たります。
私の任期がまだ浅いという事や、私の不徳の致す所で、
袁本初様を敵に回すと、領土と領民を守ることができません。
私は陛下からお預かりした陳留を治める刺史としての本分を通す事を優先し、
それでありながら、連合内部から連合の腐敗の証拠や、
出来ましたら、袁紹、張譲、橋瑁を捕えたかったのですが、
それは孫伯符が行ったようなので、
私は今まで調査した書簡を提出するのみとなりました。
しかし、汜水関では、私の策に董卓軍も呼応してくれたので、
双方被害も少なく、ほぼ資材を消費したのみで終わらせることが出来、
その事で董仲穎様に私に敵意は無いと通じたと認識しております。
実際、汜水関では胡喜媚殿より矢文で連合内で不和を起こすよう、
指示も受けております。」
「ふむ、確かに董卓に味方することも義ならば、妾の命を守るのも義か。」
「董卓、どうじゃ? 何か曹操の言い分に言いたい事はあるか?」


その時、董卓さんは曹操さんの方を、ひと目見た後。


「何もございません。」


ただ一言、そう言った。
コレで曹操さんは董卓さんに消極的ながら、借りを作った事になる。
董卓さんがそんな事は知りません。
と一言言えば、曹操さんの立場は一気に悪くなっただろうが、
これで、彼女の立場は天と地ほどの差ができた。
少なくとも、連合参加の件で罰せられる事は無くなったのだから。


「ふむ、ならば他になにか言いたい者はおるか?」
「恐れながら陛下! 我らもこの連合には脅迫まがいで参加させられ、
おかしいモノを感じておりました!」
「ほう、ならばお主は何かしたのか?」
「・・・な、何かと申しましても。」
「・・・このたわけが! 妾を子供と思って侮ったか?
そういえば許されるとでも思うたか?
筋が通っておらぬ戯言など聞く耳持たぬわ!!」
「は、ははぁ~!」


その男の人はすぐに平伏し、協ちゃんの許しを請うたが、
何処の諸侯の人だろうか?
私には見たことがない顔だった。


「ふむ、他に何か無いか?
公孫賛よ、何か言い分でも無いか?」
「いいえ陛下、全ては私の不徳の致すところ、何も有りません。
ただ一言許されるのならば、檄文の内容が全て嘘で良かったです。
少なくとも、陛下は無事で、悪政に苦しむ民はいないのですから。」
「ふむ、なかなか殊勝な心がけじゃな。
・・・さて、コレで何も無いのなら此度の始末を付けようと思うが?
何もないか?」


協ちゃんの問いかけに、連合の諸侯は沈黙を守る。
先ほどの私の確認できない諸侯の件で、迂闊な事を言えば、
協ちゃんの怒りを買うと思ったのだろうか・・・

そんな中、ここでは意外な人物である賈詡さんが協ちゃんに発言の許可を求めた。


「恐れながら陛下、今回の連合とは関係ありませんが、一つ懸念事項がございます。」
「賈詡か、なんじゃ申してみよ。」
「そこに、おられる劉備殿が連れている男の事でございます。」


賈詡さんがそう言った時、劉備さん達が全員挙動不審になった。


「あの男がどうかしたのか?
珍しい服を着ておるようだが それだけではないか?」
「はい、あの男ですが、巷で噂の天の御遣いを名乗っております。
陛下は天の御遣いの噂は耳にした事はございますか?」
「知らぬのぅ・・・・何処かの誰かがなかなか市井の視察をさせてくれんからのう。」
「全ては陛下の警備のためです。
さて、簡単に申し上げますと、管路と言う占い師が、
世が荒れた時に天から流星が降ってきて、
それに乗った者がこの世を乱世から救い平定する、と言う噂です。」
「それがどうかしたのか? ただの噂ではないか。」
「あの男、天の御遣いを名乗っておりますが、
この国において天とは天子様、皇帝陛下以外におりませぬ。
その御使いと言う事は、かの男は陛下の威光を借りる者。
しかしそのような事実などはまったく無く、ただ民を惑わす怪しい者でございます。
そしてその様な者が諸侯となり、領地を賜るなど決して有ってはならない事です。
そのような者が天子様の威光を借りて義勇軍など率い、
黄巾の乱で功績を上げ領地を賜ったのですが、
ボクは速やかに、この領地を取り上げるべきだと進言いたします。」
「ふむ、確かに人心を乱す者なら捨て置けぬが、領地没収は罰として最適なのか?」
「本来なら天を騙ったのですから、死罪か杖叩き五十回以上ですが、
黄巾の乱での功績や、ボクの調査では領地運営は良好で、
私欲に走った形跡も見られませんでした、今回の連合参加の件も含めて、
劉備と合わせて領地没収の上、
北郷はあの怪しい服を没収し、我が董卓軍の治める領内からの追放及び、
今後二度と天の御遣いなどという虚言を吐かない事と、
そのような者を祭り上げ、世を乱した劉備軍の将官には、
強制労働がよろしいかと思います。」


その時の劉備さんや一刀くんは顔面蒼白で、
愛紗ちゃんはがっくりと肩を落としたが、諸葛亮ちゃんだけは、
何かおかしなものでも見るような表情だった。
おそらく天を騙ったにして罰があまりにも軽いと思ったのだろう。

私は特に一刀くんにこの場でなにか言うつもりもなかったが、
賈詡さんが言うには、彼をほうっておくと、
彼を旗頭に又新たな争いの種を撒き散らしかねない。
根は善良なようなので、今回は諸事情のため見逃すが、
二度とこんな真似を起こさないようにきっちりと釘を差しておく必要があると言われ、
私もそれに大きく反対する事は出来なかった。
それにそもそも、劉花ちゃんを預かり、董卓さんの味方をすると決めた時点で、
彼とは敵対する事はわかっていたのだ。
戦争での決着ではなく、こういう形ではあるが、
今は穏便にすんだことで良かったとしよう。


「うむ、ならばそのように取り計らうがよい。」
「はっ。」
「よし、張譲を連れてまいれ、最後に皆に判決を下す。」
「「はっ」」


二人の兵士が謁見の間から出ていき、
しばらくすると、猿轡を噛ませれた張譲が引きずって連れて来られる。


「では此度の判決を下す。」


この私より少し幼い協ちゃんより発せられた声で、
場の緊張感が一気に高まる。

その後、賈詡さんより判決文が読み上げられる。


「張譲、死罪。」
「ん~っ! んう゛~~~っ!!」
「ふむ、何か言いたい事でもあるのか?
張譲を喋れるようにしてやれ。」
「はっ!」


張譲さんの猿轡が外され開口一言。


「貴様達、劉一族は、お飾り何も出来なかったくせに、恩を仇で返しおって!
それに貴様がその椅子に座っていられるのも我らの策があっての事では無いか!!」
「なにを言い出すかと思えばくだらぬ事を・・・
貴様ら一部の宦官が、今まで権力を笠に着て好き放題やったせいで、
この国がここまで荒れたのではないか。」
「この国を治めてやったのだ、それくらいの利益を得て何が悪い!」
「言うに事欠いて開きなおるとは・・・どこまでも腐った畜生よ。」
「っは、何を言うか! 貴様とてどさくさに紛れて姉を追い落とし、
皇帝の座に着いたのではないか!?
大方あの時に殺して何処かに捨ておいたのではないか?」
「妾が姉様を殺すなどありえるはずがないわ!
それに姉様は今この宮殿に来ておるわ!」


協ちゃんの言葉と共に、奥の控え室から杖を着いた劉花ちゃん・・・
いや、先帝少帝弁が現れ、協ちゃんのそばで膝を着く。


「劉弁・・・?」
「姉様! この場は妾に任せて姉様は控えておいてくれれば良いのじゃ!」
「そうも行かないでしょう?
いい機会だから、ココではっきりさせておきましょう。
私はそこの張譲を起こした策謀により『怪我』をしてしまい、
皇帝職を全うできなくなってしまったので、
今の陛下、劉協様に皇帝を継いでいただきました。
コレには何の意図もなく、私が職務実行不可能になってしまっただけですので、
今後おかしな噂などを吹聴してくださらないように願いします。
何度も言いますが、私はそこの張譲と橋瑁の策略により、
『怪我』をしてしまったのです。」
「・・・そんな、生きていたのか。」
「コレではっきりしたな、妾は姉様を害してはおらぬし、
皇位継承は本人の意思の上で行われたのじゃ。
すぐに張譲を引っ立てぃ!
処刑は数日内に、民に今回の主犯として説明し公開の上で斬首じゃ!
その後、一族郎党尽く捉え同じく死罪とする!」
「「はっ!」」


そうして理由の解らないことを喚く張譲さんは謁見の間から引きずり出され、
引き続き、賈詡さんより判決が言い渡される。


「さて、少し問題が有ったけど続けるわよ。
袁紹並びに配下の将官の者は・・・」


謁見の間に沈黙が訪れるが、誰かが唾を飲み込む音が聞こえた気がした。


「領地、及び官職、私財の没収!」
「「「・・・・え?」」」


コレに反応したのは袁紹さんと文醜さん、顔良さんだ。


「静かに、陛下の御前である。」
「は、はっ!!」
「続けるわよ。 その他連合に参加した者は曹操、袁術、
それと領地等を没収した劉備を除いて、
一定額の罰金の他、今回の戦でかかった我軍の経費を分担して支払い、
汜水関、虎牢関の修繕費用も分担して払う事とする。
そして袁紹の領地で今現在も起こっている 『内乱等』 は、
曹操を主導として連合各諸侯で速やかに治め、
その後、陛下に報告後、参加諸侯の各人の功績によって領地を分配するものとする。
ただし、各諸侯、自領を含めた領地運営に、あまりにも問題があるようなら、
陛下から追って指示があるので、その時は素直に従うように。」

「「「「「はっ!」」」」」

「・・・・・っ!」


この一見、甘いように見える罰則こそが・・・
賈詡さん達の考えた最良にして・・・最悪の策だ。

袁紹さんの陣営が、袁紹さんの威光を笠に着て好き放題やっているのは周知の事実だ。
その事は、賈詡さんの細作が徹底的に調べ上げている。
その袁紹さん配下の者達が、
このまま領地と私財を没収されるとわかっていて黙っているはずがない。
必ず反乱を起こすか、独自で旗揚げ、武装蜂起をする者が多数現れる。
それを連合軍に参加した諸侯に鎮圧させ、
ある程度落ち着いた所で、参加諸侯の良心的な領地運営をする者に、管理させる。
おそらく殆ど曹操さんが持っていくだろう。
曹操さんは袁紹さんの領地も近いし兵力も余裕がある。
公孫伯珪さんは烏桓対策のため、あまり積極的には動けないだろうが、
袁紹さんの支配していた領土は、肥沃な土地のため、
少しは欲しいだろうから、もしかしたら動くかもしれない。
他の諸侯にしても袁紹領に近い諸侯は、皆欲しがるだろう。
なんと言っても陛下公認で肥沃な領地を武力で増やす事ができる、
絶好のチャンスなのだから。

しかし当然、連合軍の諸侯、全員が積極的に参加するわけがない。
自領からあまりにも遠く、飛び地になりそうな諸侯などは、
適当な言い訳を付けて金か兵糧で済ませようとするだろう、
だが今回の戦での罰則金の支払いや保証の支払いがあるので、
その支払もしなくてはいけないので、かなり難しい領地運営になる。
しかし、支払いを滞らせようものなら、
下手をしたら朝敵として認定されてしまうので、
支払いを滞らせる訳にもいかない、
かと言って自分達の領内で民から必要以上に税を取ったりすれば、
領地運営に問題有り、として、陛下からの介入があり、最悪領地没収なので、
真っ当な領地運営に力を入れざるを得ない。


賈詡さんは長期的に国内の一部で、作為的に諸侯に同士討ちや、
余裕のない領地運営をさせて消耗させ。
その間に董卓領内の内政改革を徹底的に進めて、確固たる地位と、
今後、絶対に董卓軍を敵に回せない軍事力を確保する状況を作り出すつもりなのだ。
そしてその後、手法は状況によるが、
恒久的に続く事ができる政治体制へと移行していく。
董卓さんが天下を取ると言う方法もあるし、私が董卓さんに献策している案もある。
董卓さんがどの方法を選ぶか、今はまだ分からない・・・

当然、一時的とはいえ 袁紹さんの治めていた州の領民が苦しむこんな政策には、
私は反対したのだが、避難民は董卓領内で極力受け入れる方針だし、
下手に諸侯が力を維持できるような状況を放置しておくと、
今後ろくな事にならないし、戦乱の種を残しておくことになる。
なので、連合に参加した諸侯同士で消耗させ、
余計な騒乱を起こせないように疲弊させる。

私の思想では到底看過できないが、七を活かすために三を切ると思って、
董卓軍も最大限被害を抑える方向で協力するという事で、
賈詡さんに説得され、やむなくこの案に妥協して賛成した。


コレが、桂花の見ている世界の現実なのだろう。
私もいつの間にか、その世界まで押し上げられてしまったのか?
今までは切り捨てられる側の視点でモノを見ていたが、
私はいつの間にか切り捨てる側に立ってしまった・・・

切り捨てられる者を全てとは言わないが、
せめて私の手の届く範囲内で、できるだけ救う事で、何とかしたいと思った。




そして袁紹さんは、この度の事件に関わったすべての者の恨みを買い、
一人、生きて行かねばならない。

おそらく文醜さんと顔良さんは最後まで袁紹さんに付いて行くだろうが、
彼女達は、これから、この全てが敵に回った世界で生きて行く事ができるだろうか?


  1. 2012/09/26(水) 17:50:22|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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五十九話


虎牢関




虎牢関での戦いが消化試合の様相を呈してきた頃、
音々ちゃんに賈詡さんから早馬で書簡が届き、
賈詡さんの方の準備が出来、洛陽を出陣したとの連絡を貰った。

現在、虎牢関では連合軍による、24時間休みを与えずに攻めつづけ、
こちら側を休ませないと言う戦法が取られているが、
汜水関の時と同様に、
想定内の戦術なので汜水関よりも部隊数 兵数共に多い虎牢関での防衛は、
連合軍側が消極的なせいで、比較的楽に防衛できているが、
音々ちゃんとも話したのだが、このまま防衛しきってしまうと、
連合軍が瓦解してしまう可能性が濃厚なので、
こちらも手を抜いて、弱っている振りをする必要があるとの事で、
兵達にはそのように指示し、戦ってもらっている。

命がかかった戦場で、 『防衛に徹して攻撃は手を抜け。』
と言う命令は不条理なモノなのだが、
皆、この戦の後に必ず平和な洛陽が訪れると信じて、
音々ちゃんや私達の作戦指示を聞いてくれている。

こうして、お互い消極的な戦闘を数日繰り返した所で、北西の方から砂塵が確認でき、
とうとう、賈詡さん達の部隊が到着し、
野営地で天幕を張り最後の作戦の準備を開始する。


「待たせたわね、皆大丈夫なの?」
「詠ですか、ようやく来たですね。
こっちは連合軍が撤退しないか気が気でならない状態でしたよ。
兵の被害ですが戦果に対して、かなり軽微に抑えられました。」
「そう、こちらの方はあまり時間をかけていられないから、
天幕を張って、陣形を整えたら、すぐにでも作戦を開始したいのだけど。」
「では、明日から早速虎牢関を開放する準備をするのです。
資材の搬出を開始するので数日ほど掛りますが、それくらいならば大丈夫でしょう」
「汜水関で空城の計に火計を重ねて被害を与えていたから、
虎牢関が空でも、いきなり突っ込んではこないと思う。
関の内部を入念に調べてからくるだろうから、
こちらが陣形を整える時間くらいは稼げるはずだよ。
音々ちゃんどうですか?」
「問題ないのです。」
「わかったわ、私は野営地に戻って月の手伝いをしてくるわ。
月一人じゃ色々キツイみたいだから。」
「わかったのです。」
「しかし本当にココ戦場なの?
なんでこんなに関の中の雰囲気が落ち着いているのよ。」
「今は連合も私達も矢を撃ち合って騒いでいるだけですから。
連合の戦術で、昼夜問わず攻撃を仕掛けて、
私達を眠らせないようにするのが目的のようです。
向こうは部隊数も兵数も多いですから。」
「事前に対策を取っていたあの策ね。
汜水関、虎牢関の両方の関は堅牢だから、少しくらい防衛力が落ちても大丈夫だし、
やることがわかっていれば、対策も楽に取れるわよね。
だけど、他の場所からの侵入だけには気をつけるのよ?
「わかっているのです、それには細心の注意を払っているのです。」
「ならいいわ。
・・・そういえば、貴方達、真名を交わしたのね。
喜媚は前まで音々の真名呼んでなかったわよね?」
「えぇ、今回の戦では色々有りまして。
華雄さんは一族の掟があるので、真名を教えられないのですが、
それ以外の霞さん、恋さん、音々ちゃんとは真名を交わしました。」
「霞や呂布も!? ・・・コホン。
そ、そう? まぁ、一緒に戦場に立てば色々親交も深まるわよね。」
「「?」」


いきなりの賈詡さんの態度の変化に私と音々ちゃんは驚くが、
賈詡さんはすぐに、いつものように落ち着く。


「どうしたんですか詠?」
「なんでもないわ。
・・・そうね、この戦が終わったら一度、喜媚の家に遊びに行くわ。
あんた達がいない間、通常の政務をするのに手一杯で、
新しい政策の話も出来なかったし、
一度時間を取って、今後の事をゆっくり話し合いましょう。」
「それはいいけど・・・」
「それじゃあ、音々も恋殿と一緒に行くのです。」
「あんたはこなくていいわよ。
あんた達は洛陽に戻ったら溜まった仕事が山ほどあるから覚悟しなさい。」
「そ、そんなぁ・・・」
「じゃあ、そういう事で、ボクは戻る事にするわ。」
「それじゃあ、下まで送ります。」
「そう、お願いするわ。」


こうして賈詡さんは一緒に来ていた護衛と一緒に、野営地へと帰っていったが、
何か様子がおかしかったが、私の気のせいだろうか?


賈詡さん達が戻り、私達は虎牢関からの撤収準備を始めた。


数日かかって虎牢関の内部に、
連合に渡って困るような資材や書簡を全部引き上げて、西門を取り外し、
一応、通路に油だけ撒いて、汜水関の時のような火計を警戒させ、
時間をかせぐようにしておき。
私達は、連合軍の部隊交代の時期に合わせて、虎牢関から撤退した。




--荀彧--


先ほど攻撃要員の交代で公孫賛の部隊が出ていったのだが、
その様子を見に行かせていた斥候が戻ってきて、おかしな報告をしてきた。


「敵の反抗が全く無いですって!?」
「はっ、先ほど我々に変わり、公孫賛の部隊が攻撃を引き継いだのですが、
その際に敵からの攻撃の矢が一切飛んでこずに、
おかしいと思った公孫賛が、門前まで斥候を飛ばして確認したのですが、
門は閉められているのですが、攻撃をしても梯子を掛けても一切反応がありません。」
「どういうこと? このまま守り続ければ、
連合は勝手に自滅したのに、わざわざ虎牢関を捨てるなんて・・・
汜水関の時は空城の計と火計で兵を削ったり、
虎牢関、汜水関の間に連合軍を閉じ込め、挟撃すると言う作戦もあったけど、
わざわざ、勝てる戦を捨ててまで虎牢関を捨てるのはどういう事かしら?
ともかく華琳様の所に報告に行くわよ!」
「はっ!」


現在、私は曹操軍に割り当てられた戦闘(?)を終了し、
その後処理をしつつ、休憩を取っていたのだが、
その時に他の軍を見張らせていた斥候から、緊急の報告がやってきて、
報告を聞いた後、華琳様に報告に向かった。


「そう、わかったわ。
そこの者は下がっていいわよ、桂花は残って頂戴。」
「それでは、失礼します。」


一緒に報告に着ていた兵は、華琳様の天幕から出ていき、
天幕の中には、華琳様と私、それと秋蘭が残っている。


「さて、どういうことかしらね?
まさか本気で洛陽を開場して、
自分は悪政など行なっていないと言う証明でもする気かしら?」
「さすがにそれはどうでしょうか? 危険性が高すぎます、賈詡が止めるでしょう。
それに、そのまま攻めこまれ、陛下を連れ去られでもしたら話にもなりませんし、
袁紹はともかく、張譲はそれくらいやりかねませんよ?」
「だけど、それ以外に、今この段階で虎牢関を捨てる意味は何が考えられるか・・・
汜水関を捨てるのは、その為の布石と橋瑁を討つためと考えれば、
理解できなくもないけど、
わざわざ敵軍を本拠地まで誘うほど、董卓はお人好しかしら?
それはそれで、別の意味で覚悟があるとは評価できるけど、あまりにも愚策、
人を善く考えすぎじゃないかしら?」
「単純に野戦で決着を付けるというのは?
こちらは士気がガタ落ちですし、
虎牢関の西門を閉められないように取り外しておけば籠城も出来ません。
虎牢関を通れる兵数は限られますから、
矢の集中攻撃でもうけたら一方的にやられます。」
「それだったら素直に虎牢関と汜水関の間で挟撃のほうが良くないかしら?
そもそも董卓に連合軍を潰す気があるの?
今までの戦いでそんな気配は全くなかったけど。
橋瑁を討つ時に不意を突いたとはいえ、アレだけ見事な戦をしたのよ。
本気で連合軍を潰す気なら、もっと攻撃が苛烈になってもいいのに、
まるでこちらに合わせるように、消極的に防衛するのみ。
おまけに汜水関に罠を張ったとはいえ、戦果としては対価が少なすぎる。」
「・・・今手元にある情報では、どうにも判断がつきません。
まさか、あの火薬を使って虎牢関を通ろうとした連合を、
虎牢関ごとまとめて連合の兵を吹き飛ばすとか・・・
北郷によれば、火薬の量の調整次第で不可能ではないそうですし。」
「それをやられたらどうしようもないわよね。
まぁ、ここで私達が考えてもしょうがないわ。
ココは麗羽に汜水関同様、虎牢関を抜いた名声をあげるから、
先陣を切れと言いくるめるか。
麗羽もそこまで馬鹿じゃないから、
今度はちゃんと調査してから関を抜けるでしょう。」
「そうですね、それが良いかと。」
「それと・・・どうにも嫌な予感がするわ。
そろそろ張譲をウチで確保しておこうかしら?
この状況で決戦になったら、間違いなくあの男は逃げ出すわよ。
連合軍はもうガタガタなんですもの。」
「分かりました、準備しておくように指示しておきます。」
「頼んだわよ。」


こうして公孫賛の報告で、虎牢関がもぬけの殻だということがわかり、
新たに軍議を開いて、袁紹の部隊と火薬の知識がある北郷の部隊で綿密に調査し、
虎牢関を抜ける事にした。

この時、私は軍議の席で、
火薬について知らないふりをしておいた事を素直に過去の自分に感謝した。
流石に虎牢関ごと火薬で吹き飛ばされる可能性がある調査なんてやりたくない。
喜媚の性格からして、その可能性は殆ど無いが、賈詡や陳宮ならやりかねない。
うまく喜媚を諭して実行させる可能性が、全くないとは言えない。


虎牢関の調査が終わり、汜水関同様 通路に油が撒かれていたが、
人っ子一人いない、完全な空という事だったのだが、
その時 城壁から西の方を監視していた斥候から、
董卓軍と思われる大軍が西の平原で陣を敷いている事が発覚し、
あわてて連合軍も虎牢関で籠城しようとしたのだが、
予想通り西側の門は取り外されていたので、籠城することも出来ない。
やむなく、油の処置だけ急いでして、虎牢関の調査が終わった後、
速やかに虎牢関を抜け連合軍側も陣を敷く。

その間、董卓軍側はこちらを攻めるでもなく、
ただ、私達連合軍が陣を敷く間じっと待つのみであった。


軍を率いて陣を敷いて戦闘準備は万全にもかかわらず、
すべての牙門旗を下ろしているのが、私には不吉なモノに見えた。




--孫策--


軍議が終わり、袁紹と北郷の部隊で虎牢関の安全を確認している間、
私はものすごく嫌な予感が感じていた。

それは今まで感じたことのないほどのモノで、
今動かないと身の破滅どころか、
孫家の復興の望みが完全に絶たれてしまうほどの胸騒ぎだった。


「冥琳!!」
「どうした雪蓮?
まだ虎牢関の調査は終わっていないが、何かあったのか?」
「今すぐ明命を呼んできて!」
「なんだ急に、虎牢関の調査は袁紹と北郷に任せるのではなかったのか?」
「いいから早く!!」
「ふむ、分かった。」


冥琳は私の慌てた様子を見てなにか悟ったようで、
すぐに天幕の外に出て、明命を呼びに行った。


「連れてきたぞ雪蓮。」
「ありがとう冥琳、明命も急に呼んで悪かったわね。」
「いいえ、何か緊急のお呼び出しとか?」
「えぇ、実は今すぐ張譲を捕えて来て欲しいの、それも急いで。」
「何っ!?」 「今からですか!?」
「えぇ、すごく嫌な予感がするのよ。
今までなかったような悪い予感がするわ、孫家の存亡に関わるくらいに。」
「・・・普段だったら馬鹿にするが、雪蓮の勘は当たりすぎるからな。
ともかく、どちらにしてもそろそろ張譲が逃げ出しそうだったので、
捕縛しようと思っていたところだ。
明命、行けるか?」
「大丈夫です、指示さえいただけたら今すぐにでも取り掛かります。」
「じゃあ、お願い。
必ず生かして捕縛してちょうだいね、生きていれば後はどうでもいいから。
多少荒事になってもこの際構わないわ、必ず生かして張譲を捕えてくるのよ!」
「・・・分かりました。
必ず逃がしません。」
「頼んだわよ、明命。」
「はっ!」


こうして明命は部隊を率いて張譲を捕縛に向かった。




--北郷--


俺達は袁紹に半ば脅迫気味に脅され、
虎牢関内に汜水関のように火薬が仕掛けられてないか、
調査をさせられることになってしまった。
現在は桃香と朱里、雛里、それと護衛に鈴々は天幕で待機してもらい、
敵が潜んでいた時の対策のため、袁紹の工作部隊と、
俺と星、愛紗と数十名の工作兵で虎牢関の調査を行った。

とりあえず俺は思い出せる火薬の形状を部下に教えて、
発見しても絶対に触らないようにと言う事と、
怪しい場所にはまず水を掛けてから調査するように指示した。


「すまないな皆、俺のせいでこんな危険な事に巻き込んでしまって。」
「何、仮に 『ばくはつ』 ですか?
それが起こっても戦場で流れ矢が飛んでくるような物です。
武官ならば、戦場での死はすぐ隣に常にあるもの。
出来るならば、武名高い武将との一騎打ちで散るのが良いのですが、
部下や他の兵を守るために斥候をして散るのも一興。
ご主人様の気になさることではありませぬ。」
「そうですよ、今回、我らにはできる事があまりにも少なすぎた・・・
ココで散るのならば、それも我らの運命でしょう。」
「星、愛紗、ありがとう。
とにかく、今はやれる事をやろう。
火薬が仕掛けられているのか、それとも何もないのか。
時間はいくらでもかかっていいから、慎重に少しずつ確実に調べていこう。」
「「はっ!」」


そして俺達は、分担して虎牢関の内部を徹底的に調べたが、
結局通路に油が撒いてあっただけで、それ以外には何も仕掛けられていなかった。

この調査で一気に老けた気がする・・・戦場を見た事はあるが、
実際に戦場に立つ兵の気持ちはいつもこんな感じなんだろうか?
死が常に隣にある、この緊張感はできたら二度と味わいたくないものだ。




--喜媚--


現在、連合軍が虎牢関から次々と出てきて急いで陣形を整えている。
私達はその様子を眺めるだけで、特に何も行動しない。
敵から口上なり戦端を開かせるのが今回の目的だからだ。

そうして数時間ほどで敵の陣形が整い、
敵の総大将の袁紹さんとその護衛が騎馬で前に出てきて、口上を述べるようだ。

こちらはそのまま誰も前に行かずに、ただ袁紹さんの口上を待つ。


「オーッホッホッホ! 関に篭ってばかりかと思ったら、
こうして野戦で華麗に勝負を決めようとは、少しは見直しましたわ。
この私率いる連合軍が、貴方達を完膚なきまでに叩き潰して上げますわ!!」


袁紹さんのその口上を聞いた途端、
私達の牙門旗と、洛陽から駆けつけた馬超さん達の牙門旗も合わせて一気に掲げられ、
更に皇帝が出陣する時の蚩尤旗も立てられる。
中央の一番守備が多い部隊が左右に動き、
後ろから、日除けの布がかかった屋根付きの黄屋車(皇帝が乗る車)
に乗った人物が前に出てきた。
連合軍は董卓さんだと思うだろう・・・だがそこに乗っていた人物は。


「ほぅ、妾を叩き潰すとな?
それはすなわち、お主は自分が朝敵であると名乗ったと言う事で良いな?」


前方に進んだ黄屋車にかかっていた日除けの布が開かれ、
中から出てきたのは武装した献帝陛下、協ちゃんだ。

その黄屋車を援護する部隊の旗は 「蚩尤旗」、
前漢時代の皇帝劉邦が使用していた軍旗、
すなわち皇帝陛下の軍、禁軍だ。


「どうした袁紹? 妾を叩き潰すのであろう?
ならば妾に弓を引いたと見てもよいな?」
「な、な、な・・・・へ、陛下・・・ですの?」


突然予想だにもしなかった人物の登場で、さすがの袁紹さんも混乱状態だ。
反董卓連合の兵士や諸侯達も、
今自分の目の前で起こっている状況に理解が追いついていないようで、
あの、曹操さんでさえ、面白い顔を晒している。

連合軍の誰も、想像にもしなかっただろう、
この場に鎧を着て武装した皇帝陛下本人が現れるなんて事。
だが、この戦を平和的に収める最もいい方法は、
皇帝本人を連れてきて、本人の口から悪政等無く、
軟禁もされていないという事を証明する事だ。
しかし、皇帝陛下を洛陽の宮殿から戦場に出すなど、本来有り得ない策だろう。
それに皇帝陛下に万が一の事があるといけないので、長時間出すわけにも行かないし、
連合を追い詰めすぎて戦端を開かせるわけにも行かない。
ある程度士気を落として、この状況で戦端を開くことが、どれだけ愚かなことなのか、
思考できる程度には心理的余裕を持たせて置かなければならない。
しかし、コレでこの戦はこれ以上の死傷者を出さずに終える事ができる。

賈詡さんや音々ちゃん、董卓さん達では絶対思いつかない。
この世界の常識に囚われずに、且つ、協ちゃんに直接戦場に立つことをお願いできる、
私にしか献策できない、戦闘を平和的に収めることができる策だ。


「妾が劉協じゃ。
袁紹、そもそもお主とは何回か面識があろう?
それとも漢の忠臣を謳っておった割に、妾の顔も忘れおったのか?」
「い、いいえそんな! 滅相もございません!」
「うむ、妾も其方が張譲、橋瑁らと結託して出した檄文は読んだが、
あえて今一度問おう。
其方ら、何用で妾が住み、民の笑顔で溢れておる洛陽を攻めた?」
「そ、それは・・・董卓さんの暴政を止め、陛下をお助けするために・・・」
「ほう? ならば袁紹よ、お主が言うには、妾は軟禁されておるらしいが、
こうしてココに居る妾は董卓に軟禁されておるのか?
妾は以前とは違い、護衛付きではあるが、
宮殿内ならどこでも好きなように行く事ができるぞ?
それに洛陽の町にも出た事もある。
望めば董卓はどこへでも好きな所へ妾を連れて行くだろう・・・
護衛付きではあるがの。
それに、お主らの言うように董卓が暴政を働くのならば、
洛陽の民はさぞ苦しんでおるだろうな。
だが、妾がココに来るまでに見た洛陽の町は民の笑顔で溢れておったぞ?」
「そ、それは・・・・」


協ちゃんの問に、袁紹さんは挙動不審になり、何も返答できなくなる。
しかしおかしいのは、袁紹さんの横にいるはずの張譲がいない事だ。
まさか異様な気配を察知して逃げられたかと思い、
賈詡さんはすぐに部下に捜索の指示を出している。


「袁紹よ! それにこの連合に集まった諸侯も聞くが良い!
今から各諸侯の代表者を数名選出し、洛陽の宮殿まで来るのじゃ!
その場にて、其方らの言い分を聞こう!
連合の兵についての仔細は董卓、お主に一任する。
洛陽の民が怯えぬように細心の注意を払うようにな。」
「かしこまりました。」


こうして反董卓連合の戦闘は、思いもかけない皇帝陛下本人の登場により終了し、
反董卓連合対董卓軍の戦闘は終了し、戦後処理へと状況が移行した。


  1. 2012/09/26(水) 17:48:40|
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五十八話


虎牢関




「皆おかえり!」
「はぁ~、ただいま喜媚! やっと、ウチらしい仕事ができたで、
まぁ、主役は呂布で、ウチらは脇役やったけどな。」
「そう言うな、呂布にとって、今回の戦は義母の仇討ちだったんだ。
虎牢関防衛の任もあるが、我らは友として手伝ったのだからな。
主役が呂布なのも当然だろう。」
「恋殿が主役なのは当然なのです!
恋殿がこの虎牢関の主将であり、音々の主なのですから!
「取り敢えず虎牢関防衛の部隊以外の人達には休憩をとってもらってるから、
皆も食堂で飲み物と軽い食事を用意してあるから、
食べれる人は食べていって。
呂布さんも、今日はいつもの野営の食事とは違って、
お米を炊いたから久しぶりにおいしいご飯が食べられるよ。」
「・・・白いお米。」


虎牢関での橋瑁を討ち取る作戦が成功し、
兵に損害が出てしまったが、無事連合軍の武将であり、
呂布さんの義母さんの仇である橋瑁を討つ事ができた。

コレで董卓さんが呂布さんと約束した約定は、達成されたことになるだろう。
そんな中、呂布さんが思いもがけないことを言い出した。


「・・・皆ありがとう、これからは恋でいい。」
「恋殿!?」
「皆、恋達の為に命をかけて頑張ってくれた。
・・・恋にはコレ以上に返すものが無い。」
「恋殿・・・ならば音々も、恋殿のついでというわけでは無いですが、
音々達のために命がけで助けてくれた皆に音々の真名を預けたいです!」
「ええんやないか?
もともと呂布はウチらの仲間やったけど、
これからは真名を交わし合ったもっと深い意味での仲間やな。」
「私は一族の風習上、呂布達の真名を呼ぶわけにはいかんが、魂と心は共にある。
そのつもりで居てもらって結構だ。」
「私は誰かに聞いたかもしれませんが、
真名がないのですがそれでいいのなら、
これからはお二人の真名を呼ばせてもらおうと思います。」
「それでいい。」
「音々もいいのですぞ!。」
「恋の真名は、恋。 これからもよろしく。」
「音々の真名は音々音です、「音々音」ですけど、音々でいいのです。」
「ウチは霞や、よろしくな。」
「これからもよろしく頼む。
共に董卓様や、陛下をお守りしていこう。」
「私もよろしくお願いします。」


こうして、呂布さん改め、恋さん達は董卓軍の皆と真名を交わし、
本当の意味で仲間になった。


この日は連合の方でも混乱があり、昼夜問わずの攻撃は行って来なかったので、
警戒している兵以外はゆっくりと休みを取ることができ、
私は城壁の上で今日の戦いで散っていった兵達を弔う。。
私以外の皆もそれぞれの方法で弔っているようで、
勝利を共に喜んだ宴会時をすぎれば、虎牢関は静かな夜の闇に包まれていた。




--荀彧--


今、連合軍内部では、ある噂で持ちきりになっている。
この反董卓連合に大義は無く、袁紹、張譲、橋瑁の一派による、
権力闘争で、我々はそれに巻き込まれただけではないのか? と言う内容である。
・・・喜媚の依頼で私が細作を使って流したのだけど。

以前、汜水関で夜戦を行なっていた時、一通の矢文が曹操軍に向かって放たれた。
その矢文にはある暗号、と言うか私にしかわからないような内容が書かれてあった。
『華は実をつけ種を落とす、土に必要な分量の栄養があれば新たな実をつけるだろう。
土に栄養が足りなければ、堆肥を撒いてはどうだろうか?』
と言う内容だ。

つまりコレは喜媚が私宛に射った矢文で、
汜水関で華、華雄が不和の種、連合に向けての演説をしたので、
連合内部で今回の連合について栄養、
この場合不信感があれば放っておいても不和の芽は出るが、
袁紹に求心力があり、不信感が足りないようなら、堆肥を撒く、
私達に不信感を煽るよう陽動しろ。
という事になる。


董卓に対する風評は、元々二分化されていた。
民を愛し素晴らしい治世を敷く名君、民を弾圧し専横政治を敷く暗君
参加諸侯の間では、袁紹の圧力でやむなく参加した諸侯も多い。
そんな中、汜水関での華雄の演説、
そして今回の呂布の激昂と橋瑁を討ち取った際の名乗りで、
本当に、当初袁紹達より説明された通り、
呂布は義母を暗殺して董卓に身を寄せたのか?
そもそも、董卓は本当に悪政を働いているのか?
陛下は、袁紹達の言うように軟禁されて政治の場から排除されているのか?
と言う疑問が払拭できないでいた。


「まぁ、麗羽に大義なんて始めっから欠片ほどもなかったんだけど、
これで後は虎牢関で連合が瓦解するまで防衛されて終わり。
その後 陛下が勅命で、それぞれ連合に参加した諸侯を呼び出して、
詰問して朝敵として罰を与え討伐令が出て終わりかしらね。」
「そうなれば大手を振って、連合に参加した 我ら以外 の諸侯を潰して回れますね。
大義もあるので、先制攻撃を仕掛けても風評に影響はありません。
むしろ朝敵を討つのですから、華琳様の風評は上がることでしょう。」
「だけどそれも張譲を捕えない事にはなんとも行かないわ。」
「華琳様は元々、董卓とは面識もおありでしたし、
戦場では双方共、芝居のような小競り合い程度でごまかしていました。
私が喜媚から受け取った矢文もあります。
しかし、唯一の不安は、それでも董卓が、
『そんな事知りません。』 と言えばそれまでですが・・・」
「まぁ、あの董卓がそう言うとは思えないけど、
そんな事を言うようだったら、私の目をも欺く名演技ね。
それはそれで、私の敵として申し分ないわ。
どちらにしろ、この連合の後は乱れるわよ・・・」
「華琳様・・・そのような悠長なことを言っている状況では・・・」
「わかってるわ、だから最悪、張譲を捕えられなかった場合でも、
董卓軍寄りの立場を維持できるように、連合軍の不正の証拠を、桂花、
貴女に集めさせているのでしょう?」
「はい、連合内部での袁紹の横暴な振る舞いや、
飛ばした細作による諜報等で、
袁紹と張譲、橋瑁の会話を聞いて書簡にしたためてあります。
それに橋瑁が討たれた事で、橋瑁の天幕に侵入し、
証拠となるものがないか捜索し、色々と怪しい書簡などが出てきました。
どうやら橋瑁は小心者の上、まわりをまったく信用していないようで、
わざわざ、戦場にまで様々な書簡を持ち込んでいました。
自分が領地に居ないことで、
他の者に自分の裏の面を調べられるのがよほど都合が悪かったのでしょう。」
「ご苦労様、引き続き麗羽や張譲の方も頼むわよ。」
「はっ。」


私は自分の天幕に戻り、
橋瑁の天幕から間諜に奪わせた書簡の確認作業を続けることにした。


(それにしてもあの馬鹿! 火薬はもう無いとか言ってまだあるじゃない!
私にまで隠していたなんて・・・
でも、アレだけの武器ならしょうがないとも思うけど、
私にくらい話してくれたっていいじゃない!
まったく・・・本当にしょうがない奴なんだから。)




--関羽--


今日の戦いで、連合内にとどまらず、
我らの兵にも今回の反董卓連合への不信感が高まってきている中、
桃香様やご主人様は、兵を慰撫して回っている。

今日の戦いは、呂布の言う通りなら、
図らずとも呂布の義母の仇討ちを私達が邪魔した事になる。
軍議の上では我らの立場は弱いので、袁紹に近い者に頼まれては我らは断る術がない。
それにこんな所でご主人様の天の御遣いと言う名を使われるとは・・・
以前、桂花殿から忠告されていたのに・・・コレならばやはり義勇軍を編成し、
黄巾の乱を治め、領地を賜った時点で、その呼び名は取り下げさせるべきだった。
・・・しかし、領地を賜ったとはいえ私達は当時・・・
コレは今もだが弱小勢力だったために、
人を集め、人心を落ち着けさせるために、ご主人様の名を使わざるをえないと言う、
朱里達の意見に反論できなかったのも、また事実。
私自身も当時、楽な方に逃げてしまった・・・
もはやこうなってはどうしようもない・・・
唯一、逃れる手段は我らで張譲を捕縛し、董卓に恩赦を願い出るのみ。


私や朱里、雛里達は、今日の戦闘での被害報告の竹簡を片付けながら、
眠れない夜を過ごす。


「・・・・この先、どうすればいいのでしょうか?」
「雛里?」
「私達は、今回の反董卓連合・・・
この連合には逆らえない形で強制的に参加させられました。
汜水関での華雄さんの演説、虎牢関での呂布さんの名乗り、
それ以外にも細かい所でおかしい所はいくつもあったんです。
連合に参加してからも、細作を飛ばして報告を集めてますが、
おそらく袁紹さん達が流したと思われますが、
董卓さんが悪政を働いて言うのは噂以外では、証拠が全くないんです。
逆に洛陽に近づいて、情報を集めるほど、
董卓さんが善政を行なっているという情報や証拠が集まってくるんです。
この虎牢関や汜水関の道でもそうです。
以前は荒れて補修もおぼつかなかったそうですが、
汜水関、虎牢関の改善工事の時に道も補修したそうです。
それに洛陽の畑では、新しい農法・・・関羽さんが許昌で学んだという農法が、
一部で使用され始めているようです。
戦時中のため、外部の人間は内部にはなかなか入ることはできませんが、
働いている人達はきちんと管理され、明るく元気に働いているそうです。」
「喜媚殿の農法が・・・」
「もはや私達には引くことも進むことも出来ず、流れに身を任せるしかありません、
流れの中でどう舵を切るのかが問題なんです。
せめて・・・董卓さんか、董卓さんに近い方とお話出来る機会でもあれば、
私達の事情を知ってもらい、
董卓さんの言い分を聞いて判断することもできるのですが・・・」
「雛里ちゃん・・・」
「雛里・・・」
「私達には情報が少なすぎる・・・」
「・・・」
「・・・」


雛里の言うことはもっともな事で、
私達は、望んでこの反董卓連合に参加したわけではない。
領地の平定をしていた時に、檄文がいきなり飛び込んできて、
領民を守るためには参加せざるを得なかった立場だ。
その中で、董卓が悪政を働いているかを見極め、
悪政を働いていない事がはっきりと分かった時は、
せめて董卓や、近隣の者達を助けようというのが、桃香様やご主人様の願いだった。

しかし、それも今となっては虚しい・・・
董卓を救うどころか、私達の勢力の存亡の危機でもある。

この連合が、虎牢関を攻めきれずに瓦解してしまったら、董卓はどう出るだろうか?
当然、私達連合をほうっておくはずはない。
何とか言い逃れする事が出来ればいいが、最悪、
朝敵として認定されることにもなりかねない。

朱里や雛里もどうすればいいか判断するための材料を集めるために、
今は睡眠時間を削り休みも取らずにひたすら情報を集めている。

私達にもう少し、後1年でいいので時間があれば・・・
もう少し洛陽の事や、周辺で起きている政争について調べていれば・・・
今はそう思わざるをえない。


「とにかく今は目の前の仕事を片付けて、少しでも情報を集めましょう。
今の私達には情報や手札が少なすぎる。
それと、最悪、張譲の居場所を把握しておいて私達で捕縛をして、
董卓さんに恩赦を願い出る事で
望みをつなぐしかありません。」
「そうだな。」
「そうだね、朱里ちゃん。」


こうして私達は夜通しで今日の戦闘の処理を行い、
一つでも多くの情報と、張譲の居場所などの情報を集めようと奮闘を続けた。




--周泰--


私は今、張譲が袁紹と宴会を開いているため、
外の警備しか居ない張譲の天幕に忍び込み、
捕縛のための下準備や、何か孫家にとって使える情報がないか調べている。
しかし出てくるものは、袁紹の部隊の部隊編成の内容や、
張譲の血縁者や知人、
連合に参加した諸侯に対しても援助や保護を求める書状等が多く、
汜水関で華雄が言ったような、何進さま暗殺や皇帝陛下誘拐の証拠は出てこない。


(保護を求める書状では証拠として弱い・・・
やはりココは時期を見て本人を捕えるしか無いですね、)


私はそう判断し、警備に見つからないように天幕を抜け出して、雪蓮様に報告に向かう


「雪蓮さま冥琳さま、只今戻りました。」
「お疲れさま明命、まずは水でも飲んで喉を潤してちょうだい。」
「ありがとうございます。」


雪蓮さまは机の上に用意されていた湯のみに水差しで水を注ぎ、私に手渡してくれる。
私はその水を飲んで一息つけてから 二人に報告をする


「さて、今はどんな状況なのかしら?」
「張譲の天幕を確認してきましたが、使えそうな書簡などは見つかりませんでした。
ですが張譲がこの連合から逃げ出そうとして、
色んな知人や各諸侯に接触をしようとしているのは確認できました。
この連合が解体してしまえば、
袁家を抜けだして何処かに雲隠れしてしまうやもしれません。」
「そうか、ならばやはりこの戦の間になんとしても捕えんとな。」
「はい、そのために仕込みをしておきました。
ただ警備の状況と、張譲自身が肥満なため、
張譲を運び出すには数人が必要だと思います。」
「なら、その人選をしておいて頂戴。
近い内に私達で張譲を拐うわ。
その後、董卓に連絡して張譲を引渡し、私達の立場を説明して、
少なくとも朝敵にされてしまうのはなんとしても避けるのよ。
出来れば私達が単独で動いたという方向で、
袁術ちゃんだけ立場が悪くなるのがいいけど、
張勲も馬鹿じゃないから、
袁術ちゃんと合同でやった事にされてしまうかもしれないけど、
まぁ、それも今のウチよ。
今回の連合の戦で、袁術軍の兵もかなりの損害を受けているわ。
寿春に着く直前か、着いた直後の気が抜けた時期にしかければ、
たやすく落とせるはずよ。」
「そうだな、そうすればようやく、我らの悲願も叶い、
呉を取り戻し、揚州を得て、孫堅様に顔向けができるというものだ。」
「そうね、長かったけどココで終わらせるわよ。
明命、そのためにも張譲の身柄は必ずウチで確保しないと行けないわ。
人員は任せるから、確実に張譲を捉えなさい。」
「はっ!」


この後、私は自分の天幕に戻り、張譲を確保する際の人員の選別をし、
今日から張譲を昼夜問わず、常時監視するように部下に伝えた。




--喜媚--


呂布さんが義母さんの仇を討った戦いから数日ほど経っているが、
連合の戦闘方法は汜水関の時と変わらない、
それどころか、より消極的になっていて。

衝車を門前まで持ってきたり梯子を城壁にかけるどころか、
適当に矢を射って騒ぐのみで、完全に消化試合の様相を呈してきた。


そんな中、とうとう音々ちゃんに賈詡さんから早馬で伝令が来て、
最後の仕上げの部隊が洛陽を発って行軍中だという連絡が入った。

とうとうこのくだらない、権力闘争も終わり、
過去と完全に決別し本当の意味で、この国の未来の第一歩が始まる。


連合の諸侯皆には悪いが、こんなくだらない戦争で兵やその家族を悲しませ、
洛陽や許昌の私の知り合いの皆に不安な思いをさせたのだ。
その報いは受けてもらい、この国の明るい未来への礎となってもらう。


  1. 2012/09/26(水) 17:48:08|
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五十七話


虎牢関




陳宮ちゃんの策で先日行った、敵が野営の準備をしている段階での強襲によって、
連合軍の野営地が、当初の位置より東に下がり、
更に連合軍に一定の被害を与え、混乱させることに成功した。

今日は敵も警戒しつつ野営の準備を継続している。
本来ならアレだけの大部隊でも、すでに天幕を張り終わり、
戦闘準備をしているのだろうが、
先日の強襲に加え、私の部隊で夜襲を何度かかけているので、
態勢を立て直したり、被害の復旧、夜襲への警戒、更に連日の行軍での疲労、
兵数が多く、張る天幕の量も多い事もあり、
反董卓連合軍は、今日になってようやく、野営地での天幕の建設等が終わり、
戦闘可能になったのだが疲労のため、今日は攻めてくる様子はない。

そこに追い打ちを掛けるように、
昼間時折、銅鑼を鳴らしては張遼さんと呂布さんが騎馬隊で出撃し、
軽く一当してすぐに撤収するという行為を繰り返し、
夜には、昼に休んでいた私の部隊と陳宮ちゃんの部隊の一部で、
嫌がらせの夜襲も行ったり、
夜中に連合の野営地の近くでただ銅鑼を鳴らすだけで、
何もしない等の嫌がらせを行い、
連合軍に休ませる隙を与えないようにしていた。




--荀彧--


「キーーッ! まったく忌々しい人達ですわ!
ちまちまと嫌がらせのようにやってきてはすぐ帰る。
いったい何が目的なんですの!?」
(こちらの兵を休ませずに、あんたをそうやって苛つかせることでしょうが・・・)


虎牢関から少し離れた場所を野営地とし、
数日間、敵によるコチラの兵を休ませないための攻撃を受けていたが、
ようやく連合も戦闘態勢が整ったので、明日から戦闘に移ることになったのだが、
数日前に張遼と呂布に強襲を受けて以来、
袁紹はずっとこのザマで、まともに軍議にもならない。
周りの諸侯も 余計な事を言って、変な言いがかりを付けられたり、
虎牢関への先陣を切らされたくないのか、
ただ袁紹の好きなように喚かせているだけでだ。


「それでなにか良い策は無いのですの!?」
「連合軍の総大将は貴女なんだから、
そういう貴女がまず最初に何か策を出しなさいよ。」
「ならば、美しく華麗に 「もういいわ。」 なんなんですの華琳さん!」
「何も無いようならしばらくは汜水関と同じように、
昼夜問わずの交替制での戦闘になるけどいいかしら?
まずこちらの兵を交代で休ませつつ、敵の兵を疲労させないと、
まともに戦闘したら、今はこちらが圧倒的に不利よ。
なによりもまずは兵に休息をとらせないと。」
(正直我軍にとってはそのほうがありがたいのよね。
夜番になれば兵の損耗も殆ど無いし、騒いでるだけでいいし。)
「私達もそれでいいと思います。
汜水関は実際それで抜けてこれたことですし。」
「下手に攻勢に出てまた衝車を破壊した、あの変な兵器を使われても厄介だからな。
いいんじゃないか?」
「妾は一刻も早く洛陽に行かねば 「はい、美羽様はすこ~し静かにしましょうね。」
・・・モガモガ!」
「いいんじゃない? 特にそれ以上いい案はないんでしょう?
一応 虎牢関に侵入できないか試しては見るけど、
汜水関では警備がきつくて無理だったんだから、虎牢関も当てには出来ないわよね。」
「・・・少しよろしいですかな?」
「なんですの橋瑁さん?」
「実は私めに一つ試してみたい案があるのですが。」
「言ってみなさいな。」
「汜水関で劉備殿や孫策がやったような挑発で敵を誘い出す策なのですが、
アレをもう一度試して見ませんかな?」
「やるのはいいけど、華雄は出てきそうにないわよ?」
「いいえ、華雄ではなく呂布を相手にです。」
「呂布? なんで呂布なのかしら?
確かに董卓軍において最強の武を誇る呂布を討てれば、
かなり戦力と士気を下げる事ができるけど、
貴方に呂布を引っ張り出す事ができるの?」
「えぇ、先日の強襲で確認しました。
呂布は私を見て明らかに激高しておりましたので、
私ならばかなりの確率で呂布をおびき出すことができるでしょう、
ですので、その後、呂布を討ち取るための兵を皆様で用意していただきたい。」
(それって暗に、自分が丁原を暗殺したって自白したようなものじゃない・・・
コイツその事に気がついてるのかしら?
だけど、コレは使えるわね・・・連合の兵を動揺させるのに使おう。)
「ふ~ん・・・・・かと言ってあまり多数で待ち構えてたら警戒されるし、
まとまっている所にあの衝車を破壊した武器を使われても厄介だから、
そんなに兵は出せないわよ。」
「頭に血が上った呂布を討ち取るだけですので、
それほど多くの兵は必要ないでしょう。
ただ、さすがに呂布相手に単騎で一騎打ちというわけにはまいりません。
そこで、私に策がございます。
兵に命じて、地元の漁師から、投網と人員を借りてきましたので、
一斉にそれを投げて呂布の動きを封じ、矢を射掛けてやればよいかと。」
「ふ~ん・・・まぁ、それで貴方に呂布を討てるというのならいいんじゃない?
じゃあ、私達の誰かが弓隊を編成して準備してればいいのね?」
「お願いできますかな?」
「それくらいならいいわよ。
一隊は私達が引き受けるわ、秋蘭、いいわね?」
「はっ。」
「それに・・・劉備殿の部隊でもお願いできますかな?」
「私達・・・ですか?」
「はい、劉備殿の部隊は黄巾の乱では大層ご活躍した様子。
それに兵の数は少ないですが、そこは汜水関の時のように、
袁紹殿にお願いして、少し兵を融通してもらい、兵数を確保すればいい話。
劉備殿の部隊には様々な武勇伝をお持ちの武将が揃っておられる。
それに何より名高い天の御遣い殿がおられるのです。
兵数、武名の高い武将、天の加護、これだけ揃っているならば、
呂布など恐るるに足りぬはず。」
「っ・・・・・・・では、私達も弓隊として参加させて頂きます。
朱里ちゃんお願いね。」
「かしこまりました。」
「では、私達は午後の攻撃に備えて、休憩させてもらいますわ。」
「モガ~ッ!」
「はいはい、袁術ちゃん、蜂蜜水でも飲んで落ち着いててね。」


こうしてこの後打ち合わせをして この日の軍議は終わり、翌朝に橋瑁の策を試し、
駄目だったら、汜水関でやった昼夜問わず交代で責め立てる策で、
様子を見ることになった。

軍議が終わった後、天幕への帰り道。


「華琳様よろしいのですか?」
「いいわよ、汜水関では華雄を抑えられて、
先日は橋瑁の目の前まで呂布が来ていたのに、呂布は討たずに帰ったのよ?
橋瑁が少し挑発したくらいで呂布が出てくるとは思えないわ。
だけど華雄によると 橋瑁は一応呂布の義母の仇みたいだから、
・・・あのクズは手痛い目に会うかもしれないわね。」
「手痛い目にあって済めばいいですが、
万が一討たれでもしたら厄介な事になるのでは?」
「だからその可能性を下げるために私がわざわざ引き受けたのよ。
捕らえるにしても秋蘭なら呂布の手か足だけを狙い射つ事ができる。
兵には適当に呂布に当てないように指示しておけばいい。
それに、呂布の義母の仇討ちを邪魔したなんてなったら、
張譲を捉えても印象は悪くなるわ。
今のままなら 連合軍を内部から操るための埋伏の毒で済むけど、
呂布の仇討ちを邪魔したとなったら、
張譲を捉えても保身に走ったという印象になりかねないわ。
まぁ、だけど、出てきた場合 呂布を討つつもりはないけど、
捕えるくらいはいいわよね?
この国最強と謳われる武・・・・興味あるわ。
それに生かして捕えたとなれば、董卓が勝った時借りにできるし、
連合が勝った時は呂布は私のモノよ。
秋蘭、殺してはダメよ、
なんとか貴女が手か足でも射ってウチの部隊で捕えなさい。」
「はっ。」
「そういうことでしたら・・・」


こうして、私達は天幕へと戻り、翌日の戦闘に備えた。




--喜媚--


連合軍への嫌がらせを数日繰り返しながら時間を稼いでいた所、
とうとう連合軍が本格的な戦闘行動に移るようで、
今日は朝から、連合軍側の兵士が慌ただしく動き回っていた。
後はしばらく様子を見て、橋瑁の部隊の順番が来るのを確認して、
陳宮ちゃんの策で一気に橋瑁を討てばいい。

そんな中、私は夜襲が終わったので仮眠を取ろうとしていたのだが、
陳宮ちゃんから急の呼び出しを受けたので、急いで城壁の上へと向かった


「何? 連合に何か動きでもあったの?」
「橋瑁が先陣で出てきたんですよ!
しかも自分の部隊だけで突出してきて、
その背後に曹操と劉備の部隊を率いてきてます。」
「ちょっと待ってね。」


私は望遠鏡を取り出し、橋瑁の部隊の様子を見る。
すると先頭には橋瑁とおもわれる痩せた男。
その背後に部隊を率いているが、一部武装がおかしい部隊がいた。
武器を持たずに何やら紐の束・・投網か?
そんなような物を持っている。

それにその背後の曹操さんと、劉備さんの部隊は、弓兵が多めに配備されている。
弓兵が多めに居るのはおかしくないのだが、
橋瑁の部隊の投網のような物を見た後では、
なにをするつもりなのか容易に想像できる。

そうこうしている内に、橋瑁が通常の弓の射程範囲ギリギリまで近づいてきて、
あの小さな体から良くもアレだけの声が出るものだと言うくらいの大声で叫びだす。


「親殺しの呂奉先よ!
貴様そのような非道な事をしてまで董卓に取り入り、父祖に恥ずかしくないのか!?」

「なんと!?」
「なるほどね、陳宮ちゃんこれで橋瑁の部隊を見てみて。」


私は陳宮ちゃんに望遠鏡を貸して、橋瑁の部隊を見てもらい、
その中に居る投網のような物を持つ部隊と、後背に控える弓兵を見てもらう。


「ね、呂布さんをおびき出して、投網で捉え、弓で射る気なんだよ。」
「なんとも悪辣な奴です!
自分で丁原様の暗殺を指示しておいて、その罪を恋殿に被せたばかりか、
それを挑発のネタにするなど・・・
恋殿を呼んできて、この場から弓で撃ち殺してやるです!
恋殿の弓なら十分射程範囲内です!」
「待って待って、さすがに呂布さんでもこの距離だと外すかもしれないよ?
流石に一発勝負はできない、
橋瑁に警戒されて出て来なくなったら目も当てられないよ。
それに こうなると迂闊に出ることも出来ないんだけど・・・」


私がそう思っていると、陳宮ちゃんは目を瞑って深い思考に入ったと思ったら、
急に目を見開いて私に掴みかかってきた。


「・・・・・・いや、コレは絶好の機会です!
恋殿ならば、投網が来るとわかっていれば、なんとでも対応できるのです!
今 橋瑁が出てきた。 この機会を逃す手はないですよ!」
「ふむ・・・待って、それだったらいっそ、全軍で出よう。
敵は呂布さんだけが出てくると思ってる。
だけどそれ以外の部隊まで一気に出てきたら・・・・?」
「それはいいですね・・・・ならば、張遼の部隊で先陣を切り、
橋瑁の予想を裏切ることで動揺させて、
橋瑁に逃げられないように橋瑁の部隊のやや後方側面に回りこんで、
側面から橋瑁の背後に兵を押し込むです。
そうすれば自分の兵が邪魔になって、容易に背後に引くことはできなくなるはずです。
張遼の騎馬隊なら、意表をつけばこの距離なら十分可能です。
その後 恋殿の部隊で真っ直ぐ橋瑁まで突撃を掛け、一気に橋瑁を討つです。
そしてその後、華雄隊と音々の部隊を出して、
張遼と恋殿の部隊を回収する時間を稼ぐです。」
「じゃあ、私は城壁の上から弓隊を指揮するよ。
敵が霞さんや呂布さんを追ってきた時の足止めに。
それに私なら最悪、矢に火薬を結びつけて射って使えば敵の足止めができる。」
「それならばすぐに恋殿達に出てもらわないといけ無いです!
急ぐですよ喜媚!!」
「うん!」


こうして私と陳宮ちゃんは手分けして、呂布さん、霞さん、華雄さんに連絡し、
呂布さんの仇討ちの作戦を伝え兵の準備を整えてもらう。

そうしている間も橋瑁の呂布さんを罵倒する挑発は続く。
あの小柄な体からよくコレほどの大声が出るものだと感心するが、
そんな事を感心している暇は無い。

部隊編成後、張遼さんはすでに虎牢関東門のすぐ内側に騎馬隊を率いて準備している。
呂布さん、華雄さん、陳宮ちゃんの部隊も全部隊準備を完了し、
私が指揮する各部隊から引き抜いてきた弓隊は、
すでに城壁の上で伏して待機している。


「じゃあ、城門を開けるですよ!」
「張遼隊ええな! 今日は呂布の仇討ちの日やで! 
きっちり橋瑁を足止めするんやで!!」
「「「「「おうっ!」」」」」
「・・・・橋瑁を今日こそ討つ!」
「「「「「・・・応っ!」」」」」
「華雄隊、今日は呂布達の援護と退路の確保だ!
だが友が義母の仇を討つ戦いだ、気合を入れろよ!!」
「「「「「おぉぉぉ~!!!」」」」」
「陳宮隊、お世話になった丁原様の仇討ちですぞ!
だが、いつも通りきっちり仕事をするのですぞ!」
「「「「「はっ!!」」」」」
「よし、開門ですっ!!」


こうして、虎牢関の門が開かれそれと同時に一気に張遼さんが橋瑁の部隊に突っ込み、
直前で二手に分かれて橋瑁の部隊を左右から中央に押し込んでいく。

呂布さんが出てくるものだと思っていた橋瑁は、張遼さんが出てきたことに驚いて、
一瞬兵が乱れ、その隙に張遼さんの騎馬隊が、
左右に分かれて橋瑁の部隊を押し込んでいく。

そのすぐ後、呂布さんの騎馬隊が、
呂布さんを先頭にして橋瑁に真っ直ぐ突っ込んでいく。


「橋瑁ぉ~~っ!!」


戦闘中の戦場でありながら、
虎牢関の城兵の上の私の所まで聞こえてくる呂布さんの怒声。
それを真正面から叩きつけられた橋瑁はたまったものではないだろう。
一目散に逃げようとするが背後の曹操さんの部隊、
劉備さんの部隊が邪魔だというのと、
張遼さんの騎馬隊による突撃で、
兵が橋瑁のいる場所の背後に押し込まれているので、
うまく逃げることもかなわない。

その後すぐに曹操さん 劉備さんの弓隊が弓を射ってくるが、
味方の橋瑁さんの部隊に当たらないようにするために、
近くに射てないのと、呂布さんの騎馬隊の突撃が早すぎて、
すでに呂布さんが通過した場所にほとんどの矢が突き刺さる
一部、正確に呂布さんの部隊を狙って弓が射られるが、
それでも呂布さんは矢を方天画戟で打ち落とし、止まらない。

その後 華雄さんと、陳宮ちゃんの盾と戈を持った歩兵部隊が、
張遼さん達の退路を確保するように左右に別れて動く。

この時点で、ようやく連合軍の他の部隊が救援に駆けつけようとするが、
橋瑁、曹操さん、劉備さんの部隊が邪魔になって前線まで上がってこれない。
左右に回り込もうとするがそこには華雄さんと、
陳宮ちゃんの歩兵部隊が道を塞いでいるのと、
汜水関の時と同じように 事前に掘ってあった浅い塹壕のせいで、
うまく前進できない。

そんな中とうとう、呂布さんの声が戦場に響く。


「私の義母さんの仇、橋瑁の頸、討ちとったぁ!!」

「「「「「おおぉぉぉぉ~!!!」」」」」


その鬨の声が上がると同時に、
呂布さんの部隊はすぐに転身し虎牢関へと撤退していく。
左右から呂布さんの背後を守るように張遼さんの騎馬隊が移動し、
更にそれを守るように華雄さんと陳宮ちゃんの歩兵部隊が中央に集まってくる。

そのままの形で徐々に虎牢関を通って撤退していき、
とうとう城壁からの弓の射程範囲に入った所で・・・


「弓隊! 敵陣に一斉射!
矢を惜しむな! ありったけ射ち込んでやれ!」
「「「「「はっ!」」」」」


城壁の上の弓隊が敵陣に矢の雨を振らせ、敵の前進を阻む。
その間にもすでに張遼さんの騎馬隊も撤収し、
今は華雄さん、陳宮ちゃんの歩兵部隊が徐々に交代しながら撤収している。

しかし、敵もこの機会を逃すまいと、矢の雨の中、強引に突っ込んでくる。


「しかたがない・・使うか。
合図の銅鑼を!!」


私は矢に火薬が入った小さい袋を結びつけた矢を持ち、
導火線に火をつけて敵陣中央に数発射ち込む。
華雄さんや陳宮ちゃんの部隊には事前に打ち合わせしておいたので、
耐衝撃姿勢を取ってくれているはずだ。

すると打ち込んだ先から爆発し、その爆発音と光と衝撃波で驚き、敵の進軍が止まる。
その間に一気に撤退の銅鑼を打ち鳴らして、
華雄さんと陳宮ちゃんの部隊を虎牢関の中へと撤退させる。


「閉門~~っ!!」
「弓隊! 油壺投擲後 火矢を射ち込んでやれ!」
「「「「「はっ!」」」」」


火薬の爆発で、足が止まった敵部隊に油壺と火矢を撃ち込み火計を行い、
城壁に近づいてきた敵を攻撃する。

先ほどの爆発と火計で敵が撤退を開始し 矢の射程範囲から外れるまで、
矢を打ち続け、敵兵の数を減らす。


こうして、連合軍の兵が、矢の射程範囲から外れ、
完全に野営地まで下がったのを確認し。この日の戦闘は終了。

呂布さんは無事に義母である、丁原さんの仇を討つことに成功した。


  1. 2012/09/26(水) 17:47:05|
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五十六話


虎牢関




汜水関での火計、粉塵爆破で連合軍に被害を与えた後、
私達は無事に虎牢関まで逃げてくることが出来た。
馬にはかなり無理をさせたので、しっかり休んでもらおう。

虎牢関に入った時に、張遼さんがいきなり抱きついてきた・・と言うよりも、
身長差があるので私の顔が張遼さんの胸に埋まるという事態になり、
華雄さんに救出されなかったら、張遼さんの胸で窒息死していただろう。


「オマエは何をやっているんだ!!」
「喜媚が無事に帰ってこれたから嬉しかっただけやん。」
「少しは自重しろ! 危うくお前のせいで喜媚が窒息死するところだっただろう!」
「男の夢みたいな死に方でええやん。」
「・・・・・」


華雄さんが無言で金剛爆斧を構える。


「冗談やって! 冗談!!」
「次、くだらん冗談を言ったら、すぐさま斬り捨てるぞ。」
「まったく、華雄は汜水関で喜媚に調教されてから喜媚にメロメロやなぁ。」


すぐさま華雄さんが金剛爆斧を張遼さんの首めがけて振りぬくが、
張遼さんがしゃがんで躱す。


「い、今ホンマに殺ろうとしたやろ!!」
「次は無い、と言ったはずだ。」
「・・・華雄調教されたの?」
「されておらん!!」
「くだらないこと言ってないでさっさと関の中に入るですよ、
連合軍が来る前に戦闘準備を整えないといけないんですから!」
「う、うむ。」 「・・せやな。」 「そうですね。」


私達は 虎牢関の中に入り、すぐに門を閉め、閂を三重にかける。


「汜水関で火計をおこなって、少し時間を稼げると思う。
連合は大軍での行軍なので行軍速度がどうしても、
遅くなるし、野営地の撤収の必要もありますから、、
連合が虎牢関にたどり着くまで三日から五日は余裕があると思います。
一応、賈詡さんの黄河を下って回りこんで汜水関を閉めて、
虎牢関と汜水関の間に閉じ込めるという案もあったんですけどね。
多分、連合もそこまで馬鹿じゃないだろうという事ですが、
一応偵察だけ出すそうです。」
「策は何重にも張って隙の無いようにするのは基本ですよ。
万が一にも橋瑁を逃がすわけには行かないのです。」
「・・・逃さない。」
「そうですね。
それと、馬騰さんの所の馬超さんが洛陽防衛に着てるらしいですけど、
今どうしてるか、何かあれから聞いてますか?」
「伝令では何も言ってきてないですね。
定刻の連絡も来ているので、そのまま洛陽防衛してるのではないですか。」
「そうですか。 ならば後は予定通り、この関で橋瑁を討ち、後は止めですね。」
「そうなのです! 音々の策で恋殿が橋瑁を必ず仕留めるのです!!」
「それですが、連合は汜水関で昼夜問わず交代で攻めるという戦法を使ってきたので、
虎牢関でも使ってくる可能性が高いです、
ですので、虎牢関防衛は呂布さんは外して、
いつでも出られるように待機だけしてもらって、
橋瑁の指揮する部隊が出てきた時、陳宮さんの策で動くということでいいですか?」
「問題無いです、予定通りなのです。」


こうして この日は、汜水関での戦闘の様子などを話しながら、
無事に第一段階の任務を完了できたことを祝って祝杯を上げ、
明日以降に備えて、早めの休息を取ることにした。

翌日は、敵が来る様子もなく、
私は張遼さんと望遠鏡を持って虎牢関の城壁の上で日向ぼっこをしている。
呂布さんは華雄さんと訓練をして、橋瑁との戦闘を最高の状態で行えるように調整し、
陳宮ちゃんは策に抜けがないか、私達が持ってきた汜水関での敵の情報から、
再度、策を検討し直している。

こうして五日ほどだった時、東から砂塵と斥候の兵が見えてき始めた。


「お、ようやくお出ましやな。」
「そうですね、こっちは十分休憩を取って体力的にも万全です。」
「私も呂布の方も仕上がりは十分だ。」
「ほんならウチは早速出陣準備に入るで、ようやくウチの本格的な出番やな。」


そう言って張遼さんは下に降りていき、華雄さんも一緒に降りていった。


張遼さんが騎馬隊を準備し、華雄さんが盾と戈で武装した歩兵隊を準備、
城壁の上にも陳宮さんの弓隊がずらりと並び、
皆の牙門旗が、虎牢関の城壁の上でたなびく中、
連合軍が少し離れた所で野営地に天幕を張り始めた時、
私が合図の銅鑼を鳴らし、この連合軍の戦いにおいて、
初のこちらからの本格的な攻撃を仕掛ける。


「よっしゃ! 行くでお前ら!
ウチのケツにきっちりついて遅れんなや、神速の張文遠、突撃や~!!」
「華雄隊! 張遼隊が帰ってくるまで、門前で待機、
敵を一人たりとも近づけるな!」
「陳宮隊、敵が近づいてきたら弓矢で一斉攻撃ですよ!」
「・・・・呂布隊、橋瑁を討つ。
だけど今回は深追いはダメ。」


こうして張遼さんと呂布さんの騎馬隊が野営地で天幕を組み立てる連合軍を強襲する。


汜水関では、呑気に敵の野営地の組立を待ったり、こちらから攻撃に出なかったのは、
こちらが専守防衛だと思わせるためであり、
口上はすでに汜水関で済ませてあるので、この奇襲で風評も下がることはない。


そして騎馬では三国でもトップクラスの二人の部隊に奇襲を掛けられるのだ、
連合軍の被害は相当なものになるだろう。


私は望遠鏡で戦況を確認しているが、
曹操さんや孫策さん、劉備さん、公孫賛さん以外の部隊は完全に無防備だったので、
張遼さんと呂布さんは、その部隊を巧みに狙って敵に被害を与えていっている。
今回、呂布さんには、張遼さんにピッタリとくっついていくように、
陳宮ちゃんから指示されているので、
橋瑁を討つかどうかの判断は、比較的冷静な張遼さんに任されている。
呂布さんも、董卓さんや他の皆とのコレまでの付き合いで、
暴走して味方に被害を及ぼすような事は、見ている限り無いようだ。




--荀彧--


今まで敵から攻撃してきたことはなかったので、
虎牢関で天幕を張るこの瞬間は危ないと、私も荀諶も華琳様も警戒してはいたが、
予想通りに、この隙を狙って董卓軍が騎兵で突撃を仕掛けてきた。


「防衛に徹しなさい!
こちらは行軍と天幕の建設でまともに戦闘態勢がとれていない!
防衛だけを考えなさい!!」
「くそ! ここまでいいように蹂躙されるとは!」
「姉者! ココは華琳様を守ることだけを考えろ、
敵も我らと相対するよりも、他の無防備な部隊を狙っている、
こちらから手を出さない限り、余計な被害を受ける事もないだろう。」
「しかし! クソッ!」
「あんた達何やってるの! 春蘭! すぐに袁紹の部隊の救援に向かいなさい!
袁紹のアホが無駄に豪華な天幕を組んでいたせいで、
完全に無防備になっていて集中攻撃を受けてるわよ!
さすがにココで総大将が討たれるのはまずいわ!!」
「くっ、しょうがない! 秋蘭! 華琳様は頼んだ!!」
「任せろ姉者!」


--周泰--


「っち、嫌な予感はしていたけど・・・コレはいい機会ね♪ 冥琳!!」
「わかっている、我が隊は防衛しながら後方へ下がるぞ!
袁術の部隊に敵を押し付けろ!」
「汜水関からこちらの士気を下げる事ばかりやってきていたが、
やはりこの瞬間を狙ってきおったか。」
「祭様! のんきに言ってる場合ではありません。
万が一にでも蓮華様に何か有ってはまずいのですから。」
「分かっておるわ。」
「あら? じゃあ私はどうでもいいのかしら?」
「雪蓮様はほうっておいても大丈夫ですから~、
ホラ亞莎ちゃん、貴女の部隊もう少しこっちにこないと危ないですよ。」
「は、はい!」


董卓軍の騎馬隊による、
突然の強襲で天幕の準備をしていた連合軍は完全に不意を突かれた形になっている。
そんな中でも予想していた私達や一部の部隊は防衛に徹して、
被害を少しでも抑えようとしている。


「明命!」
「はっ!」
「いい機会だからちょっとこの混乱の中で、
袁紹の陣から張譲が何処に居るか調べてきてくれないかしら?
なんだったら拐ってきてもいいわよ。
さすがに袁術ちゃんをこの機会に討つのは、
貴女の姿を見られる可能性が高すぎてダメだけど、
張譲なら行けるかもしれないわ。
今回は拐えなくてもいいから、居場所と人相風体だけきっちり確認してきて。」
「はっ!!」


雪蓮さまの指示で私は張譲の天幕の位置と、
人相風体を確認するために隠密行動を開始した。




--関羽--


董卓軍の強襲の中、なんとか我が隊はしのいでいるが、
他の部隊の被害はかなり大きそうだ。
そんな中、ご主人様から指示が着た。


「皆聞いてくれ! 呂布の部隊が攻めて来ている!
絶対に呂布とは一対一で戦わないように!
最悪でも二人か三人で当たるようにして、防衛に徹するんだ。
いいか、呂布とは絶対に一人では当たるな!」
「っく、分かりましたが、呂布とはそんなに強いのですか?」
「俺の知る通りの呂布なら、その強さはこの国で最強だ、
悪いが愛紗や鈴々、星でも一人で当たったらまずいことになる。
せめて呂布の武がどれほどのものなのか確認できるまでは、
必ず一人では当たるのは禁止する、コレは命令だ!」
「っ、分かりました。」
「わかったのだ!」
「命令とあれば 仕方ありませんな。
それほどの武を持つものなら是非一手、手合わせしたいのですが。」
「今回だけは聞いてくれ。」
「分かっております。
それよりもご主人様は桃香様達を連れてお下がりください。」
「分かった、桃香、朱里、雛里、行こう。
ココにいたら皆の邪魔になる。」
「「「は、はい!」」」




--張遼--


「どけどけぇ! 張遼様のお通りやで!!」
「・・邪魔!」


ウチらが連合軍に騎馬隊で強襲をかけたが、
曹操達一部の部隊以外は、まったく手応えがない雑魚ばっかりや、
いっそこのまま袁紹の首とったろかと思うくらいやけど、
それは喜媚達から禁止されとるから、殺らんように気をつけんとな。


「・・橋瑁!!」
「なに? 呂布、橋瑁がおったんか!?」


呂布の視線の方向を見たら、
やせ細った嫌らしそうな顔の男が兵を率いて下がっているのを見つけた。


「アレが橋瑁か!?」
「・・・橋瑁ぉぉ~っ!!」
「ひっ、りょ、呂布か!?」
「橋瑁!! 義母さんの仇!!」
「ひっ、貴様ら私を守らぬか!!」


呂布が橋瑁を見つけた瞬間、単騎で突撃しようとする。
その勢いは噂で聞く黄巾の軍三万人を相手に単騎で戦ったという噂が、
本当ではないのか? と思わせるだけの説得力のある 武力だったが、
しかし、幾ら呂布でも今橋瑁のいる位置まで、単騎で突撃するにはきつい位置だった。


「呂布! 単騎では無理や! まだ味方がウチらに追いついてきてない、
このまま突っ込んだら孤立してまうで!」
「だけど橋瑁が!!」
「呂布!! 今ココでつっこんで橋瑁を討てても、その後はどないすんねん!!
お前の家族や陳宮はどうなるんや!!」
「くっ! だけど!?」
「コレ以上は聞かんで! どうしても行くっちゅうんならウチも行くけど、
そん時はウチら一緒に犬死やで!」
「くっ・・分かった・・・引く。 橋瑁! お前は恋が必ず討つ!!」
「よっしゃ! そろそろ引くで!!
きっちりウチについてこいや!!」

「「「「「おうっ!!」」」」」


そしてウチらは周りの敵をひと通り蹂躙した後、
虎牢関まで撤退しそのまま虎牢関の門に突っ込んでいく。
ウチらの背後には追跡してきた連合の騎馬隊が居たが、
華雄の部隊と陳宮の弓隊で防衛し、
敵の虎牢関への侵入は阻止できた。




--喜媚--


「張遼さん呂布さん、皆さん、お疲れ様でした、
そこに水と簡単な食事が用意してありますので、疲れを癒してください。」
「おう、すまんな喜媚。」
「恋殿ぉぉ~~!! ご無事でしたか!?」
「・・・大丈夫、でも・・・橋瑁が居た。」
「なんと!」
「ちょっと距離があったから 橋瑁を討てんかったけど、
呂布はなんとかウチが説得して引っ張ってきたわ。」
「そうですか・・・お疲れ様でした。」
「そうでもないで、汜水関での華雄よりかよっぽどマシや、
呂布は話聞いてくれるからな、それに比べて汜水関での華雄は・・・」
「な、ちゃんと私は言うことを聞いただろう!」
「よう言うわ、喜媚にひっぱたかれて、
ウチと喜媚が首までかけてようやく止まったくせに。
あん時はほんま、死んだかと思ったで。」
「くっ・・・あ、あの時は・・・その、まだ私も未熟だったんだ。
次は二度とああいう事は無い。」
「ほんまか? 月を馬鹿にされても挑発に乗らんって言えるか?」
「それとコレとは別だ、董卓様を馬鹿にするような奴がいたら即刻切り捨ててやる!」
「・・・ほらコレや。
怒りの矛先が変わっただけちゃうんか?」
「そうでもないですよ、董卓さんが望んでなかったら勝手に暴走しませんよね?」
「む・・・・董卓様がそうお望みになるなら・・・しょうがない。
しかし突出しないだけで、そんな輩は必ず私が討つ!」
「・・・・まぁ、少しはましになったん・・かな?」
「でも橋瑁を目の前に、よく呂布さんを説得できましたね。」
「・・・恋が勝手に死ぬと音々とセキト達が悲しむ。」
「恋殿ぉぉ!!」


呂布さんの真名を叫びながら陳宮さんが呂布さんの胸に飛び込む。


「恋殿だけ逝かせませぬぞ!
その時は音々も一緒ですぞ!!」
「・・・じゃあ、恋は死なない。」
「恋殿ぉぉぉぉぉ~!!」
「まぁ、アレは放っ置いてええやろ。」
「そうですね。」
「そうだな。」


こうして、虎牢関での敵の出鼻を挫く作戦は成功し、
張遼隊、呂布隊、双方に若干の被害者を出してしまったが、
それ以上に連合軍に兵、士気共に大打撃を与えることができた。


(こうして、人の命を数字で計算するのは嫌だな・・・)


戦争をしている以上しかたがないのだが、
こうして戦果を数字で計算するような事は できればもう二度としたくないと思った。


  1. 2012/09/26(水) 17:45:57|
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五十五話


汜水関




--荀彧--


先の喜媚の火薬騒動の後、連合軍の軍議で劉備の軍師から提案された、
昼夜問わず交代で汜水関を攻め立て、
敵兵の疲労を誘うと言う作戦が可決され、
今夜は私達が汜水関に夜襲を掛ける順番なのだが・・・


「「「「「わぁぁ~~!!」」」」」

「「「「「うおぉおぉ~~!!」」」」」

「・・・か、華琳様、さすがにコレはやりすぎなのでは?」
「こんな月明かりも何もない状況で戦の状況なんて確認しようがないわよ。
適当に声出して、やってる振りをすればいいのよ。
それに他の諸侯、特に文句を言いそうな麗羽は寝てるか宴会でもしてるわよ。
大体、この献策は桂花が言い出したんでしょう?」
「いや、そうなんですけど・・・
まさか董卓軍もこうも素直に乗ってくるとは思わなかったので・・・」


そうなのだ、私達が弓の射程外から声を上げて、
偶に剣を等を打ち鳴らして威嚇してるだけなのだが、
敵が弓でも射ってくるのかと思ったら、
敵も同じように声を出して威嚇するだけで何もしてこないのだ。


「桂花と喜媚の愛のなせるわざかしら?」
「華琳様!!」
「まぁ、私達は兵に損害が出ないし、
これで向こうには私達が敵でない事が伝わったろうから、
私達が戦をする時は、ほどほどに手を抜いてもらえるでしょう。
あんな火薬なんてモノ出されたら コチラにどんな被害が出るか・・・
それにこの連合はもうお終いよ。
麗羽も気の毒にね、ヤブを突いて毒蛇を出し、
猫のしっぽを踏んだと思ったら虎だったなんて。
後は私達で張譲と橋瑁を捕えて突き出せば・・・・
フフフ、大した損害もなく一気に領土を広げられるわ。」
「・・・・」
「貴女には喜媚を捕えてあげられなくて残念だけど、
しばらくは董卓とウチの間で戦は起こら無いだろうから、
その内会う機会も作ってあげるわ。
袁紹の領土を治めるまでの間、
一時的に同盟を組むか不可侵条約結ぶのもいいかもしれないわね。
どちらにしろ現状、董卓を相手にした状態で、
同時に麗羽の領土を治めるのは難しいでしょうから、
しばらく董卓と事を構えるつもりはないわ。
・・・やるとしたら董卓は最後よ」
「わかりました。」




--喜媚--


私は今夜も夜襲を掛けようとしたのだが、
今夜は曹操さんの部隊が出てくるため夜襲をかけるのを一旦止め、
汜水関の様子見をしているのだが、曹操さんは攻めっ気を見せずに騒いでるだけ。
なので、こちらも騒ぐだけで済ませている。

今回の事で曹操さんが董卓さんの敵では無い可能性が濃厚になってきた。
もっとも、曹操さんの事なので 全てを信用できるわけではないが、
利害で考えれば、曹操さんにはどちらが勝っても利益を得られる計算があるのだろう。
例えば張譲や橋瑁を捕えるとか、連合の内部にそういった不和の種を植えこむのも、
華雄さんの演説では狙いだったのだが、
曹操さんの部隊にはあまり効果は無いかも知れないと予想していたが、
今回の事で、曹操さんがこちら側に着く可能性が高まったため、
桂花なら、読めば分かるような矢文を射って、
連合内部で不和を煽ってもらうように依頼した。
曹操さんと桂花なら、うまくやる可能性が高いので、コレはコレでいいだろう。

こうして24時間昼夜を問わず、連合軍は攻撃をしてくるのだが、
どの諸侯も思い切った攻撃をしてこないので、
こちらも交代要員だけで抑えられている。

そんな中 賈詡さんからの伝令で、
汜水関をそろそろ放棄しても良い、との連絡が来た。
更に馬超さんの部隊が遅ればせながら到着したとの事なので、
洛陽防衛の心配が薄くなったのもあり、準備が順調に進んでいるようだ。


「詠はもう汜水関から撤収してええって?」
「はい、予定よりだいぶ早いですね。」
「だが、予定より連合の士気が落ちすぎている、
ここらがいい機会なのかもしれんぞ?」
「・・・オマエ誰や!! 華雄ちゃうやろ!?」
「何を言っているんだ? 私は私以外、何者でもないだろう。」
「華雄、オマエ前から変わりすぎなんや!
喜媚にひっぱたかれて頭おかしなったか?」
「失礼な事を言うな! 私は何処もおかしくなってなどおらん。
ただ・・私が守るべきものや、
私の背後で安心して私を見てくれているお方に、気がついただけだ。」
「・・・ほんま何があったんや。」
「さぁ? でもいいんじゃないですか?
今のほうがいいですよ、武人! って感じじゃないですか。
かっこいいですよ華雄さん。」
「ん? お、おぅ、そのなんだ・・・あ、ありがとぅ・・・」
「・・・コレは華雄にも春がきたか、それとも強敵になるか・・・」
「ともかく、賈詡さんから連絡が着たので、近日中に汜水関から撤退します。
今から徐々に抵抗を弱めていって、コチラの資材が尽きたように見せかけます。
その後 汜水関から撤退し、
敵を汜水関に誘い込んでから私の部隊で空城の計を弄った火計を行い、
敵の出鼻をくじいている間に、本体は虎牢関まで撤収。
虎牢関で呂布さん達と合流し、橋瑁を討つ準備をします。」
「了解や。」 「うむ、問題ない。」


こうしてこの日から四日ほどかけて、徐々にコチラが資材不足に陥ったように見せて、
その間に野営地の天幕などを撤去し、
撤収準備を整え、敵に調子付かせてから汜水関から撤収することになった。




--荀彧--


「オーッホッホッホ! 私の見事な策でとうとう敵の資材が尽きかけたようですわよ!
偉そうなことを言ってた割にだらしが無いですこと!
このまま一気に押し切って、美しく華麗に前進ですわ!」
「劉備の所の策でしょうに・・・」
「・・・ハァ」


いま諸侯が集まって軍議を開くための天幕では、相変わらず袁紹が馬鹿騒ぎしている。
それにしてもおかしい、汜水関の防衛戦は明らかに董卓軍が勝っていたし、
昼夜問わずの攻撃は喜媚は想定していたはずだ。
実際私もそういう話を幼い頃に聞いた。
それにアレ以降、火薬をまったく使ってこない。
偶に見せかけで油壷を投げて火を放つことはあったが、
火薬の使用は最初の衝車破壊の一回きり。
なのになぜ、抵抗が弱まったのか?
私ならば洛陽から資材を運ばせて、このまま汜水関で粘れば、
連合軍の兵糧は尽きて防衛できるのに。

ここで敢えて兵を引く理由があるとしたら・・・
まさか、虎牢関と汜水関の間に連合軍を閉じ込めて一気に殲滅するつもり!
洛陽からなら孟津港からなら船を出して連合軍の裏に回り込めば、
虎牢関と汜水関の間に閉じ込めることができる。
後は防衛しきれば兵糧が尽きて私達は終わる。


(華琳様、お話が・・・)
(なによ?)
(実は・・・)


私はこの現状最悪の状況になりかねない考えを華琳様に伝え、
万が一汜水関を抜くことができても、
汜水関には防衛の兵を置くように、袁紹に釘を刺す必要があると伝えた。


(そう、わかったわ。 麗羽!」
「な、なんですの華琳さん、私の見事な戦術になにか言いたいことでも有りますの?」
「あんたの戦術はどうでもいいけど、
この後汜水関を抜いた後は、当然、
最低限汜水関を防衛できる兵は残していくんでしょうね?」
「はぁ? そんな事必要ありませんわ、全軍で華麗に前進ですわ!」
「あんた馬鹿なの? 汜水関を抜いた後、董卓達に黄河を使って裏に回られたら、
私達は虎牢関と汜水関の間に挟まれで閉じ込められるでしょう?」
「そうなんですの 斗詩さん?」
「そうですよ麗羽様!
っていうか兵を置いていくつもりだったんじゃないですか!?」
「・・・も、もちろんそのつもりでしたわよ!」
「嘘つくのじゃ! 完全に忘れておったであろう!」
「何を言うんですの美羽さん、私がその辺りのことを考えてないとお思いですか?」

(((((絶対考えてなかったな。)))))

「そういうわけで、ウチの 「待ちなさい麗羽。」 なんですの華琳さん。」
「その部隊、ウチから出すわ、
麗羽は美しく華麗に洛陽ヘ乗り込まなきゃいけないのに、
こんな所で兵を割く訳にはいかないでしょう?
それとも貴女美しくも華麗でもない、落ちた関の防衛なんかやりたいの?」
「えぇ、もちろん美しくもない落ちた関の防衛なんかやってられませんわ!
そういう地味な仕事は華琳さんがお似合いですわ。
では、華琳さん関の防衛はお願いしましたわよ。」

(((((うまい!)))))

「ええ任されたわ。それじゃあ、私は部隊編成があるから先に失礼するわ。」


そう言って華琳様はさっさと席を立ち、天幕から出ていく。
私や春蘭達もそれに続く。


「華琳様お見事でした。」
「麗羽とは付き合いが長いんですもの、アレくらい軽いわ。
それに私達の部隊で汜水関を抑えておけば、
万が一張譲や橋瑁に逃げられても、汜水関で取り押さえられる。
奴らは絶対に私達で捕まえるわよ。
それと桂花、例の袁紹達の不正の証拠集めもやっているわね?
麗羽は、コレが終わった時には、すべてが敵に回るようにしてやるわ。」
「もちろんです華琳様、橋瑁が連合の兵糧を少しずつ水増しして要求し、
不正に蓄えていましたので、その証拠を掴んで有ります。」
「いい子ね、引き続き頼んだわよ。」
「はい!」


この日の軍議はこれで終わり、
私達が抜けた後は、近日中に汜水関に対して大規模攻勢をかけ、
一気に攻め落とすという方針に決まったようだが、
その役目は袁紹が自らやるそうだ。
大方、汜水関突破の功績と名声が欲しいのだろうが、
他の諸侯は袁紹以外、皆あの火薬を恐れて攻勢をかけるのには消極的だった。




--喜媚--


夜明け間近、汜水関の撤収準備もほぼ完了し、
後は今関に残っている部隊と私の工作部隊を撤収させるだけとなった。
今は、汜水関の中に余分な資材が残っていないか最終チェックをしているところだ。


「喜媚、こっちは大丈夫や。」
「こちらも問題ない、全て搬出済みだ。」
「ありがとうございます、それでは次の連合軍の攻撃部隊が交代するのに合わせて、
こちらも撤収します。
張遼さんは西門の閂をきっちりかけていってください。
私達は予定通り、火計をかけた後、縄梯子で汜水関から脱出し、撤収します。」
「了解や、ほんなら次は虎牢関でな。
ちゃんと無事虎牢関まで来るんやで。」
「はい。」


この後、連合軍は朝に今の攻撃部隊が引き、
次の攻撃部隊に変わる時に、
張遼さんと華雄さんは最後の防衛部隊の撤収を開始し、
汜水関の洛陽側の西門を閉めて、虎牢関に撤収していった。

その間に、私と工作部隊で汜水関の兵が通る通路の奥の方に油を撒き、
二階部分に上がり、二階に上がる通路の扉をきっちり閉めて、
閂をかけ、擬似的な密閉状態を作り、
後は敵の部隊が通路を通る時に小麦粉と粉末状の火薬を撒いて火を放ち、
粉塵爆破を起こさせてから撤収するだけだ。
油が燃えてる間は汜水関を抜けることは出来ないので、
消火して通り抜けられるようになり、罠が無いか調査をする数時間か数日は、
連合軍を汜水関に足止めできるだろう。


こうして連合軍は次の攻撃部隊に変わり、
汜水関の攻撃を開始したのだが、私達の牙門旗が降ろされたのを確認したのか、
すぐに汜水関の東門を攻撃する音が聞こえてきて、
しばらくすると衝車も出されたようで、
東門を破壊する音が聞こえる。

そうして一時間ほどした時、とうとう東門が破壊されて、
連合軍、鎧の色や形状から袁紹さんの部隊が、汜水関に突入してきた。


(準備はいい?)
(おっけーです。)


私が部隊の人間だけに教えたOKやNO等の英語を使い、
お互いの意思疎通を図る。

その間にも連合の袁紹さんの兵は通路内に侵入し、
敵が居ないか索敵している。

(スタンバーイ・・・スタンバーイ・・・ゴゥッ!」
「「「投下!」」」


私の合図と共に、増築時に作られた覗き穴から小麦粉が投げ入れられ、
敵兵はいきなり視界全体が小麦粉や木炭の粉で霧がかかったようになってしまい、
混乱状態に陥る。
そこへ私が粉末状の火薬を少量撒いて、
少し置いてから最後に松明を投げ入れて、すぐに覗き穴に蓋をする。
するとすぐに轟音とともに、一瞬で通路全体が火に包まれ、
通路に撒いた油にもうまく火が着いたようだ。


「あちっ、あっつい!」
「隊長! 予想以上に火の勢いが強いです!」
「す、すぐに逃げるよ!
撤収~ 撤収~~!!」
「「「撤収~~!」」」


こうして私達はすぐに上に登って行き、
城壁の上に仕掛けてあった縄梯子で下に降りて、
馬で虎牢関に向けて撤収する。




--愛紗--


汜水関の反撃が一切ない状態で、最初はなにかの罠かと思ったが、
袁紹達の兵が汜水関の門に攻撃を仕掛けても何もしてこないので、
敵が汜水関から撤収したと判断した袁紹は、
残った衝車を持ちだして門を破り、兵を突入させ、
内部に敵が残っていないか確認させていた時、
轟音と共に、汜水関の破壊した門から火が吹き出してきた。


「ご、御主人しゃま、アレも ばくだん とか かやく でしゅか?
あぅ噛んじゃった・・・」
「朱里落ち着いて、アレは火薬かもしれないけど、少し様子が変だ。
アレは普通に油を撒いたかなんかじゃないかな?
それか・・たしか粉塵爆発だったかな?
火薬じゃなくて、何か燃える粉のようなもの・・・
炭を削ったものとか木屑とか小麦粉とか、
そんなような物を撒いて火を放ったんじゃないかな。
炎も一瞬で収まったし、今も燃えているのは一部だけだから、
油と一緒に撒いたのかもしれない。
この敵はかなり詳しく科学、
俺のいた世界の知識に近い知識を持っているに違いない。」
「ご主人様の居た世界の知識ですか・・・」
「俺がこの世界に来たんだ、俺以外にも誰か来ていてもおかしくはないだろ?」
「・・・確かにそうなんですが。
そうなると天の御遣いは二人か、それ以上居るという事に・・・?」
「俺が名乗っているのだって、皆に言われてそう名乗ってるだけだからな。
向こうが本物なのか、それとも天の御遣いなんてただの噂でしか無いのか。
・・・何れにしても、
俺がこの世界のために何かしたいっていう気持ちに変わりはないよ。」
「ご主人様・・・」


ご主人様がこの国のため、信念を持ってくださるのは嬉しいが、
私はこの時妙な違和感を感じていた。
私達が知らない知識を持ち、それを使いこなしている人物・・・
そして今洛陽に居る人物といえば、私の知る中では一人しか居ない。


(喜媚殿・・・まさか貴方なのですか?)


  1. 2012/09/22(土) 17:00:13|
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五十四話


汜水関




--荀彧--


(やってくれたわねあの馬鹿!!)


私は逸る気持ちを抑え、小走りで華琳様の野営する天幕へと向かう。

私が華琳様の天幕についた時には華琳様は武装して、
春蘭、秋蘭を連れて陣の外に出ていたが、
その表情は何が起きたのか確認しようと警戒の色が濃厚に現れていた。


「桂花・・何があったの?
こんな清天に雷が落ちるなんて聞いたことないし、
衝車の駆動音にしては大きすぎるわ。
敵襲で凪辺りが気弾で応戦でもしたの?」
「その事についてご報告に来ました、まずは宿舎内に・・・
他の者に聞かれたくありません。」
「・・・わかったわ。」


華琳様は私の表情や態度を見て 敵襲ではないと悟ったようで、
すぐに私の願いを聞き 宿舎内へと戻っていった。


「それで何があったの?」
「まず ご報告をすると袁紹が汜水関の門を破壊しようとして使用した衝車が・・・
一撃で破壊されました。」
「・・・凪のような気の使い手でも居たの?
でも いくら凪でも一撃で衝車を破壊するのは無理かしら・・・」
「いいえ、おそらくあの馬鹿・・コホン 喜媚の仕業です。」
「喜媚? 胡喜媚が汜水関に居るの?
それにしても胡喜媚がそんな武を持つとは聞いていないわよ?」
「武ではありません。
私も一度だけ見たことがあるだけですが、喜媚が火薬と呼んでいる物で、
火を使い雷の様な轟音と光を発生させ、
周囲に甚大な被害を与える武器のようなモノです。
それを使って衝車を破壊したのだと思います。」
「火薬ねぇ・・・しかし、それだけで胡喜媚が汜水関に居る証拠になるの?」
「いいえ、そもそも昨晩からおかしいとは思っていたのです。
汜水関に立っている牙門旗は華と張、それと黒い妙な形の旗。
最初は連絡用に使う旗だと思ったのですが、おそらくアレが喜媚の旗です。
それと戦術です。
華雄、張遼、共に武勇で有名な武将ですが、汜水関には軍略を使う軍師が居ません。
なのに 昨晩のいやらしい夜襲や、
先日の猪武者との噂とはまったく違う華雄の見事な演説。
そして汜水関で使われている戦術の幾つかは、
私が喜媚から聞いた事がある物が採用されています。
そして火薬。 アレは私がどんなに頼んでも、
製法も入手法もまったく教えなかった物です。
私の知る限りアレを持っているのは喜媚だけです。
しかし、それを董卓に与えたとは思えません、
あの子の性格上 使うなら本人が自分で使うはずです。
そして喜媚は内政で董卓に知恵を貸しているので、
軍事で協力していても何ら不思議ではありません。
その事から考えて汜水関には喜媚が居ると思われます。」
「・・・なるほど。
その火薬というものは見てすぐに分かる物なの?」
「私が見たことがあるのは小さい・・・拳くらいの大きさの袋に入った物です。
そこから伸びた紐のようなものに火を付けて投擲してしばらく後、
雷が落ちたよな大きな音と光、煙を発生させ、
周囲にあるものを吹き飛ばし、破壊します。」
「そんな小さい物でそんな威力があるの?」
「わかりませんが、おそらく袋の中に入っている火薬の量を調節して、
破壊力を調節できるのではないでしょうか?
そうでないと一撃で衝車が破壊され、ここまで音が聞こえてきた理由がつきません。
私が見たものは、人や馬を吹き飛ばすくらいの威力で、
凪の全力の気弾くらいの威力でした。」
「そう、世の中にはそんな物が存在するのね・・・興味深いわ。
桂花、その火薬 手に入らないかしら?」
「私もあれから調べはしましたが、
喜媚以外に持ってる者がいるという情報はありませんでした。
そもそも火薬なんて名前も効果のある物も、
あの子の口からしか聞いたことがありません。」
「となると やはり胡喜媚か・・・
フフフ、面白い子だとは思っていたけど、
まだまだ私の知らない事があの子にはありそうね。
汜水関に来ているなら敵兵として捕縛しても・・・何の問題無いわね?」
「問題は無いですが、そもそも出てくるかどうか・・・
あの馬鹿はヘタレなので、自分から戦場に出てくる人間ではありません。
おそらく裏でこそこそと動き回っているので、戦場で捕縛するのは難しいかと・・・」
「そうね・・・やらないけど、もし桂花を人質にしたらどう?」
「・・・おそらく出て来ません。
私が連合に与していることを知っているにもかかわらず、
汜水関に出てきたということは・・・そういう事でしょう。
仮に私が逆の立場でも出ません。」
「そう、あなた達お互いのことがよくわかってるのね。
そういう友人は大切よ? 大事になさい・・・桂花の場合恋人かしら?」
「か、華琳様!!」
「ならば胡喜媚を捕えるには董卓に勝つしか無いわけだけど、
それも難しくなったわね・・・桂花、もう一つの案の準備をしておきなさい。」
「はっ!」
「・・・・ふぅ、しかしあの時にあの子を逃したのは失敗だったかしら?
私の身体であの子や、さっき使われた火薬、
董卓軍で使われている、まだ見ぬ未知の知識が手に入るのだったら、
それも良かったのかしらね?」
「「「華琳様!!」」」
「フフ、冗談よ。
でもあの子はいずれ必ず手に入れるわ。」
「はっ、必ず華琳様の元に引っ張りだして見せます!」
「期待してるは春蘭。」
「はい!」


華琳様への報告が終わり、私は宿舎を出る。


(あの馬鹿・・・あんたは戦場に出てくるような子じゃないでしょうに・・・
おとなしく畑を耕してればいいのに・・・馬鹿・・・)




--関羽--


「なんで爆弾がこの世界にあるんだ・・・」


先ほどの大きな落雷の様な音と光を見た後、ご主人様の様子がおかしい。


「ばく だん・・ですか?」
「あぁ・・・アレは俺がいた世界にあった兵器なんだ。
酷い物だとそれ一つで数千から数万の命を一瞬で奪うこともできる。」
「「そんな!?」」
「そんな物があったら私達の戦術なんて・・」
「いや、さすがにそれはココには無いと思うけど、
あの威力を見ても手榴弾くらいの威力はあるものが存在してそうだ。
本来ならこの時代には、まだ存在しないはずなのに・・・」
「それはどういった物なんですか?」
「俺も詳しくは知らないが、片手で投げられる程度の大きさで、
中に火薬が詰まってるんだ。
え~っと火薬っていうのは、
すごく良く燃える炭や油のようなものだと考えてもらっていいと思う。
それが詰まった物を投げて、爆発。
さっきのような大きな音と光を出して周囲の物を破壊する兵器だ。
本来この世界にはまだあるはずがないんだが・・・」
「それはご主人様に作れますか?」
「無理だ。 俺には火薬の作り方すらわからない。
そもそも俺がいた世界では、個人で持つことは、
原則的に法で禁止されていて、一部の人間しか扱えない物だから。」
「そうですか・・」
「だけど朱里、あんなもの使わない方がいい。
アレは使い方を間違うと敵味方関係なく吹き飛ばす。
うまく使えば汜水関攻略が楽になるのは確かだけど、
失敗すれば味方に甚大な被害を出す。
数が用意できなかったのか、敵が最低限良心的なのか・・・
昨晩の夜襲の時に使われていたら、
昨日の内に戦闘が終わっていた・・・俺達の敗北で。
それも最悪全滅に近い形で。」
「・・・・これだけの兵が居てもダメなんですか?」
「用意できる火薬の量によるな。
衝車の破壊にだけしか使わなかったのは、
持ってる量が少ないのか、敵が最低限良心的なのか・・
とにかく、皆汜水関を攻める時はできるだけ城壁に近づかないように。
しばらくは様子を見よう、敵が本気でコチラを潰す気なら、
あの爆弾をどんどん使うはずだ。
その気がないか、良心的な敵・・・と言ったらおかしいけど、
そういう敵だったら攻城兵器にしか使ってこないだろう。
しばらくはウチは様子見をしよう。」
「「「「「「はい。」」」」」」


こうして我々の方針は、しばらくは様子を見るということで決定した。
確かにあのご主人様が ばくだん と呼んでいた物を多用されては、
いくら我らの武が優れていたとて、どうしようもないだろう。
さすがの私も、衝車を一撃で破壊などは無理だ。
そんな事を可能にする武器が敵にあるのならば、最大限警戒し無くてはならない。




--喜媚--


今日の戦が終わり、今は夜中の内に敵兵に、
昼間破壊した衝車の瓦礫を撤去させないように、
交代で番をしながら敵の牽制をしている。
コレは瓦礫を撤去させなければ、次の衝車を使うことが出来ないからで、
時間を稼ぐのに持って来いの方法だからだ。

しかし、昼間の衝車を一撃で破壊した火薬の威力に恐れて、
連合軍は近づいてくることは無いようで、
戦場だというのに静かな夜を迎えている。


しかし私にとって、その静かな夜は色々な事を考えさせられる。
本当にアレでよかったのか?
火薬を使用してよかったのか?
コレがまだ個室ではなく、誰かと一緒にいられたなら少しは気が紛れるのだが、
・・・今は私一人だ。


そうして私が眠れない夜を過ごしていると、
不意に扉の向こうから声を掛けられる。


「喜媚、起きてるか?」
「・・・・はい。」


私が寝台から立ち上がって扉を開けると、
そこには燭台と壷のような物を持った華雄さんが居た。


「華雄さん?」
「あぁ、見てわからんか・・・お前大丈夫か?
顔色が悪いぞ?」
「あぁ、大丈夫です、体調がどうこうと言うわけではないので。」
「昼間の事か・・・」
「・・・・ビクッ」
「やはりな。
昨日はほとんど舌戦だけだったし 本格的な戦闘は今日が初めてだったからな。
様子を見に来たんだ。」
「すいません、気を使わせて。」
「いいさ、お前には借りもあるしな。
とにかく部屋に入れてくれ、立ち話もなんだしな。」
「あ、はい。 どうぞ。」


そうして華雄さんを部屋の中に招いて、
椅子に座り、茶碗に水を入れて華雄さんに出す。


「さすがにお茶は用意できないので 水で勘弁して下さい。」
「ここは戦場だからな、それくらい構わんさ。
さて、喜媚は人を殺めたことは・・・
たしかあったな、賊を狩っていた事もあるとか?」
「えぇ・・・」
「戦場も見たことはあるが、実際に参加して戦場で兵を殺すのは初めてか?」
「・・・はい。」
「そうか。
まぁ、口下手な私がなにか言っても効果があるかわからないが、
今回の戦に限って言えば、奴らは賊と同じだ。
董卓様の持つ権力を妬み、奪おうとする。
賊が食料や金を奪おうとする事と本質的にはかわらん。」
「・・・指揮官はそうでしょう、でも指揮される兵は・・・」
「そうだな、兵は指示されただけだ。
だが、奴らを討たねば我らが守るべき民や董卓様や陛下の身が危険に晒される。
お前もそれはわかっているから、
今回の戦に参加したし、昼間もアレを使ったんだろう?」
「・・・・はい。」
「ならば、お前が討った兵の事を忘れろ・・・とは言わんが、
考えるならお前が守った味方や、民の事を考えろ。」
「守った味方・・・ですか?」
「そうだ、衝車一機破壊するのに一体どれだけの損害が出ると思う?
数十人か? 数百人か?
私は計算は得意じゃないからな、張遼ならもう少し細かい数字を出せるんだろうし、
お前のほうが詳しいと思うが 少なくともお前はそれだけの味方の命を救ったんだ。
今日お前が火薬だったか? アレを使わなければ、
衝車を破壊するのに何十人、何百人が死ぬはずだった。
無いとは思うが、門を破られたかもしれない。
その味方を救ったんだから何も敵の事を考えてお前が怯える事は無い。
胸を張れ・・・とは言わんが、怯えたり落ち込むのはやめろ。」
「・・・華雄さん。」
「戦場で兵が死ぬのは当たり前だ。
だが味方を守った者が怯えたり落ち込んだら、他の兵がどうしていいかわかなくなる。
お前も数十人の小さな部隊とはいえ指揮官となったなら、
兵の前で怯えた顔を見せるのは止めるんだぞ・・・その、まぁ、なんだ。
私で良かったら愚痴くらいは聞いてやる。
同じ指揮官同士だから少しくらい愚痴ったって構わんだろう。」
「華雄さん・・・ありがとうございます。」
「うむ、まぁ、お前には昨日、私や張遼も助けられたからな。
私は死なずに済んだし、張遼は味方殺しをしなくて済んだ。
私達で良かったらいつでも力になるから、いつでも頼るといい。」
「ありがとうございます。」
「うむ、まぁ それだけだ。
邪魔したな。 あ、後コレ酒だ、飲めば少しは気が紛れるだろう。」
「はい、すこし飲ませてもらいます。」
「う、うむ、じゃあな。」


そうして華雄さんは部屋から出て自分の部屋へと帰っていった。
去り際に蝋燭の明かりのせいか、
華雄さんの顔がほんのりと赤かった気がするが まぁ、言わぬが花だろう。


その後、華雄さんの持ってきてくれたお酒を少し飲んで、
私は寝台に入り、少しだが眠って体と心を休ませることが出来た。


翌朝からしばらく連合軍の攻撃は遠距離から弓を射るばかりで、
積極的に、前に出て戦おうとする物は現れなかった。

時折、懲りずに華雄さんを挑発する部隊や、
張遼さんを挑発する部隊もあったが、
そういう時は、華雄さんと張遼さんが城壁の上で酒盛りを初めて
逆に相手を挑発したりしていた。


こうして私達の連合の士気を下げ、
時間をかせぐ作戦は成功し、後は賈詡さんの連絡待ちだ。


そして数日ほど経った時、敵の攻撃方法に変化が現れた。
兵や部隊の多さを利用した24時間昼夜問わず攻撃し、コチラの疲労を狙う作戦だ。

しかしコレも私の原作知識でわかっていたので、
コチラもそれ用の部隊編成に変更し、
休憩しながら対応していた。
それができるのも、衝車を一撃で破壊した火薬の印象が、
連合軍の中に根強く残っているため、
積極的に攻めることが出来ないからだ。

時折油壺を投げて火を付けてやるだけで、
兵が怯えて逃げ出すので、
コチラも損害を軽微に抑えながら楽に汜水関の守備をすることが出来た。

こうしてしばらくは汜水関での防衛戦はお互い兵糧攻めに近い、
消極的な時間稼ぎに終始した。


  1. 2012/09/22(土) 16:58:07|
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五十三話


汜水関




--荀彧--


私達は華琳様と一緒に、劉備達がどういう戦い方をするのか見ていたが、
アレは完全にしてやられた感じだ。
その証拠に劉備、孫策陣営の士気は著しく低下し、
袁紹は怒り狂って大騒ぎした後 自身の野営地に戻っていった。
張譲と橋瑁も表情が優れ無かったので、内心穏やかではないだろう。
自分達の犯した罪が白日の下に晒されたのだから。


「アハハッ、面白いわね!
事前に聞いていた話だと華雄は猪突猛進な猪武者と言う話だけど、
まったく違うわね、あんな面白い娘が董卓の元に居たなんて私も見逃していたわ。
春蘭! 秋蘭!」
「「はっ!」」
「もし華雄と戦う事になったら華雄が欲しいわ、
生かして捕えなさい!」
「「御意!」」


しかし、本当に事前の情報だと猪武者のはずだったのに、
あの見事な舌戦はどうだ?
連合の兵の士気は今のでかなり低下した。
私達の兵はまだマシだが、劉備と孫策の所の兵はかなり士気が低下しただろうから、
しばらくはまともに能力を発揮できないだろう。
そして何より、董卓の正当性と陛下が背後に居ることを主張したことにより、
連合に不和の楔を打ち込むことが出来た。
これからしばらくは兵達がこの連合の正当性について疑心暗鬼になり、
下手をしたら、逃げ出すものも出てくるだろう。


「すごかったね~、私華雄さんとこ行って洛陽見てこようかな、
喜媚ちゃんに会えるし。」
「あんた何馬鹿な事言ってるのよ!!」
「冗談だよ、冗談。
でも今のでそう思う兵も出てきちゃったね。」
「そうね、劉備達はしてやられたという所ね。
今夜は兵の慰撫で大変でしょうよ。」




--関羽--


朱里達やご主人様の提案で、華雄を挑発し、関から出させ、
コレを討つ と言う作戦は、華雄の見事な舌戦によって失敗に終わった。

兵達もあの演説を聞いて動揺しているようで、
今は鈴々が護衛に付き 桃香様やご主人様が兵の慰撫に回っている。


「ふむ、愛紗よ、どう見る?」
「どう見る、とは?」
「わかっているだろう、今日の華雄の演説だ。
華雄とて勇猛果敢で名の知れた武将。
まぁ、猪突猛進と言う噂も絶えないが、
それでも武に誇りを持っているという噂の絶えない武将だ。
その武将がアレだけ自信満々に演説をしてのけたのだ。
董卓の噂、どうやら色々と怪しくなってきたな。」
「・・・そうだとしても我らのやることに変わりはない。
連合に与した以上、今ココで離反でもしようものなら即刻背後から討たれるし、
万が一領地に帰れたとしても 袁紹に潰されるだろう。
我らは未だ弱小勢力のため領民のためにも選択の余地はない。」
「確かにそうなのだが、それだけでいいのだろうか?
私にもいい案があるわけではないが、
何かやれることがないか 考えてみるのも良いのではないか?
董卓が善政を敷いていた場合について何かやれる事・・・
そう、例えば張譲や橋瑁の様子をうかがい、
いつでも捕縛できるように・・・とかな。」
「星・・・。」
「一度朱里と雛里に提案してみるのも良いと思うぞ?
保険くらいにはなる。
やむを得ない事情で連合に参加はしたが、
内部からこの戦いの本質を見極めるため情報収集をした結果、
董卓殿に義有りと見たので、張譲や橋瑁を捕縛いたしました。
コレならば、董卓に義が有り、連合が負けても我らがお咎めを受けるのを抑えられる。
その保険くらいかけておくべきではないか?」
「・・・・朱里達に話してみよう。」
「そうだな。」


この連合、最初からきな臭いものだとは思っていたが、
私達はどうやらとんでもない策謀に巻き込まれているようだ。




--周泰--


「ふ~、今回は完全にしてやられたわね、
最初は行けそうな予感がしてたんだけど、
途中からすごい嫌な感じがしたのよね~。」
「どうやら、私達が知っている華雄ではないようだな。
孫堅様との事で成長したという事か。」


今雪蓮さまと冥琳さまが天幕内で、
今日の作戦の件で反省会のようなものを開いているが、
私の目から見ても、あの華雄という武将から、
自分の信じる者の為に殉じる覚悟のようなモノを感じ、
将官とは斯くあるべき者だと改めて勉強になりました!


「さて、こうなってくると困ったわね。
どうもこの連合、最初から胡散臭いとはわかってたけど、
かなりやばそうね、今でもすごく嫌な予感しかしないわ。」
「お前がそういうのは止めてくれ、ただでさえお前の勘は当たるのだから。」
「そんな事言ったってしょうがないじゃない、嫌な予感がするんだもの。」
「・・・ハァ、雪蓮の勘は置いておくとして、
ならば我らはどうするか? それが問題だ。」
「手っ取り早く張譲か橋瑁とっ捕まえて董卓に突き出して、
『許してね♪』 って言ってみる?」
「・・・それもいいが時期を見極める必要がある。
士気が落ちたとはいえ、兵数に動きがあったわけではない。
未だ連合のほうが兵数は上だ、董卓の勝ちが見えているのならそれもいいが、
今はまだはっきりと動くのはよしたほうがいいだろう・・・ただし明命。」
「はっ!」
「張譲と橋瑁、それに袁紹、この三名をいつでも捕えられるように、
常に居場所は把握しておいてくれ。
逃げようとしたら即刻捕縛するんだ。」
「わかりました!」
「コレでいいな雪蓮。」
「そうね、いいと思うわよ。
それと蓮華、今回の華雄の舌戦は見ていたわね。」
「はい 姉様。」
「アレは敵の私から見ても見事なものだったわ、
参考にしておきなさい、貴女もいずれ呉の民を背負って生きる者。
舌戦をする事もあるでしょうし、兵を鼓舞するときもあるでしょう。
そういった時の参考にしておきなさい。」
「はい!」




--喜媚--


「っ・・・くちゅん!」
「「え!?」」
「すまん、くしゃみが出た。」
(何いまの可愛いくしゃみ? 華雄さん?)
(ウチはしてへんからそうやろ? 本人もそう言ってるし。)
「誰か変な噂でもしてるのだろうか?」
「そうですか? 一応華雄さんに身体を壊されるといけませんので、
今夜は暖かくして寝てくださいね。」
「あぁ、分かった。」
「?」


なにかがおかしい・・・華雄さんはこんなに聞き分けがいい人だっただろうか?
いつもだったら 「余計なお世話だ!
私がこれくらいで病になどかかるか!」 とか言いそうなのに、
今はすごく素直に聞いてくれた。


「じゃ、じゃあ、私は夜襲の部隊を指揮してきます。
華雄さんの演説で士気が落ちているので、
ここでだめ押しして敵の士気を下げてきます。」
「気をつけてな~。」
「喜媚、お前も風邪を引くといけないから暖かくしていけよ。」
「あ・・・・はい。」


なんだ? 何が起きたんだ?
華雄さんが急に私の心配をするなんて・・・
某国のマフィアは、これから殺す相手に贈り物をするというけど、
この国では、これから殺す相手には まず優しくするのか?

なにか非常に違和感のある華雄さんの態度に納得が行かないが、
とにかく今はやるべき事をやらないといけないので、
私は部隊を待たせてある場所に行き、夜襲の指揮を取る。

私の部隊は、少人数で五十人程の部隊だが、
賈詡さんが選び抜いた精鋭・・・ではあるのだが、一つ重要な理由がある。
それは『私』の事を知っていると言う事と、ウチの従業員が何人か混じっている事だ。
私の事を知っているという事はすなわち、
私と今の皇帝陛下である協ちゃん達誘拐の事件を知っていて、
口止めされている、賈詡さんの腹心の部下だ。

皇帝陛下の命を助けたと言う事は、この国を助けたという事に等しいらしく、
それを知っている彼らや彼女達は、
私の部隊へ配属された事に喜び、私自身への傾倒振りが凄まじく、
そして私が張遼さんや華雄さんと一緒に、
協ちゃんと劉花ちゃんを助けた事も知っているので、
ぽっと出の客将である私の指示も、事細やかに聞いてくれて士気も忠誠心も高い。
戦功にならない連合への嫌がらせの仕事も、
文句の一つも言わず嬉々としてやってくれる。
実に素晴らしい兵達なのだが・・・
なんか変に私が英雄視されているので、非常にやりにくい。


さて、夜襲といってもそんな大規模なモノではなく、
数人編成で森や渓谷の上から近づいて、
火矢を何本か連合の野営地に打ち込むだけだ。
これだけでも心理的に追い込むことができる。
自分に矢が当たるかもしれないし、天幕に火が燃え移るかもしれない、
それにココは敵地だという事を認識させることができる。
こうしてこの日は何回か夜襲を行い、
何か連合軍では士気を上げるために宴会をしているようだったので、
そこに対して執拗に嫌がらせをした。


翌日、連合軍は夜襲であまり眠れなかったようで、
望遠鏡で見ていたが、動きが鈍い。
そんな中でも、曹操、孫策、劉備、公孫賛の兵はキビキビと動いていたので、
よく訓練された兵だというのがわかる。

私が夜襲から戻り、仮眠を取ろうと私の個室に戻ろうとした時、
外から鬨の声が上がり、戦闘音が聞こえてきた。

その音を聞いてすぐさま、城壁で指揮をしていると思われる、
張遼さんの下に行く。


「張遼さん!」
「ん? なんや喜媚か、寝とったらええのに・・・っと危ないで?」


私が城壁の上で張遼さんに駆け寄って状況を聞こうとした時、
ちょうど飛んできた流れ矢を張遼さんが叩き落す。


「喜媚は夜襲で疲れとるやろ?
寝とってもええで?」
「こんな状況で寝てられるほど戦場に慣れてませんよ・・・」
「まぁ、その内嫌でも慣れるで。」
「状況はどうですか?」
「まぁ、様子見ってとこやな。
適当に矢を撃ち合ってるだけや。
お、歩兵が近づいてきてるな、梯子持ってるようやし。
おい! 例の丸太と戈持って来いや!」
「はっ!」
「しばらくはこんな感じやから、喜媚はホンマに寝とってええで。
予定通り衝車が来たら起こしたるから。」
「・・・しばらく様子見てていいですか?」
「ええけど、喜媚にはあんま楽しいもんでもないで?」
「コレでも一応戦場には何回か参加してますから大丈夫です。
でも自分の策でどういう結果になるのかは見ておきたいんです。」
「・・・そんなんばっかやってたら、いつか潰れてまうで?」
「でも、見ておきたいんです、見ておかなきゃいけない気がして。
自分が何をして 誰が犠牲になっているのか。」
「・・・喜媚は優しすぎるで。
まぁ、見たいなら好きにしいや、ウチが守ったるからな。」
「本来は私がそう言うべきなんでしょうけどね。」
「ははっ、今でも喜媚はウチを守ってくれとるで?
昨日かて、あん時ウチは最悪、華雄斬るつもりやったけど、
喜媚のお陰で斬らずにすんだ、味方殺しの汚名を受けずに済んだ。」
「アレは・・ただ必死だっただけですよ。」
「それでもウチは助かったで?
そや! 今からウチの事は霞でええで。
戦場ではいつ死ぬかわからんからな、こんな状況やなかったら、
祝に一杯やりたいとこやけどな。」
「いいんですか? 知ってると思いますけど私真名ありませんし・・・・」
「ウチが真名で呼ばれたいんや。
もちろん喜媚が嫌やなかったらやけどな。」
「嫌なんて事無いですよ!」
「ほんなら今からは真名で呼んでや。
こんな色気もなんも無いとこやなくて、洛陽に帰ったら一緒に飲もうや。」
「えぇ、私が作ったお酒で乾杯しましょう。」
「ええなそれ! 約束やで?」
「約束です。」


そうして張遼さん・・・いや、霞さんと話しながらも戦闘は続いてく、
矢が当たって治療のために引く兵や、
梯子をかけて登ってくる兵に対して、
丸太を落としたり、戈で突き刺して落としていく。

下では矢を受けた敵兵や、
丸太や戈で落とされた兵を連れ戻すために何人かで抱えて運んだりしている。
この時初めてわかったのだが、戦っている相手は袁紹さんの兵だった。
あの袁紹さんがこの時期に先陣に出てくるなんて・・・
もしかして昨晩、連合の野営地で宴会を開いていたのは袁紹さんの部隊だったのか?
その宴会の席に しつこく火矢を打ち込んだのだが、
それがよっぽど頭にきたのだろうか?

そんな中、敵軍が中央を開けるのが見え、その中央からは衝車が見えた。


「もう衝車か! なんや昨日と違うてえらい敵の展開が早いな!!」
「霞さん 私は部屋に戻って荷物を取ってきます!」
「おう!」


私は霞さんの横にいた兵から矢よけ用の盾を受け取って城壁を駆け抜け、
部屋に戻り火薬を取ってくる。
汜水関での戦闘での私の切り札。
こんなに早くこの手札を切ることになるとは思わなかったけど、
コレは好機でもある。
昨日の華雄さんの舌戦、私の夜襲、そしてダメ押しに火薬で衝車を破壊してやれば、
連合の士気は一気に下がるだろう。


部屋に戻り火薬と火口箱を取って急いで城壁に戻ると、
すでに衝車は城門のすぐ近くまで移動してきていた。


「霞さん!」
「おう、喜媚か!」
「すぐに衝車を破壊します!
手はず通り、私の合図で耳をふさいで口を開けてください。」
「分かった! おい! 喜媚がアレをヤルで!!」
「「「「はっ」」」」


私は火薬の詰められた袋と火の着いた松明を手にする・・・


(事ココにいたってはヤルしか無い。
連合の士気を削ぐため、董卓さんの統治で平穏な方法でこの国を改革するため、
洛陽や許昌の皆を守るため、この国の未来をより良くするため、
・・・そして桂花との平穏な生活を手にするために、
私がココで手を汚す事を忌避する訳にはいかない!
そして確実に敵の心理に楔を打ち込むために、衝車を確実に破壊する!)


私は袋に小分けした火薬から伸びた導火線に火を付け
衝車に向かって袋を投げつける。


「耐衝撃体勢!!」
「「「「はっ!」」」」


私の指示で城壁の全員が耳を塞いで、口を開けて、壁面にしゃがみこむ、
しばらくすると、すぐそばに雷でも落ちたような爆発音の後、
連合軍の攻撃が止み、戦闘音や怒声が聞こえなくなった。

すぐに衝車の様子を確認すると、衝車は主軸の丸太だけが原型を残し、
それ以外は瓦礫になっていた。
衝車の周辺にいた兵は身体の一部が吹き飛んだり、
衝撃で体ごと吹き飛ばされたりしたようで、
かなり凄惨な状態になっている。


連合軍の兵は一体何が起こったのかまったくわからないようで、
攻撃が止み呆然と立ち尽くしている。


「霞さん!」
「おう!
見よ!! 貴様ら連合の悪しき行いに天も怒っているぞ!!
董卓軍の兵士よ! 天が我らに味方してくれている!
この戦、勝利は確実やで!!」

「「「「「「おおぉぉぉ~~~~!!!」」」」」」


張遼さんの口上と、鬨の声で連合軍の兵は一気に瓦解し、
呆然と立ち尽くす者や逃げ出す者で戦場は混乱し、
もはや戦線を立直すことも出来ずにこの日の戦闘は終結した。


「一撃で衝車を破壊して驚かせる必要があったから奮発したけど・・・
火薬の量間違えたかな。」
「訓練場で実験は見たけど、
何回見てもこれは酷いな・・・こんなんやられたらウチらどうしようもないで?」
「私も多用するつもりはありませんし、
基本衝車の破壊以外に使うつもりもありません。
でも、これで確実に連合の士気は下がったはずです。」
「せやけどやりすぎちゃうか?
コレで連合軍が引いたら策がぶち壊しになるで?」
「・・・ちょっと やりすぎたかもしれません。」


私と霞さんが話していると、階段の方から華雄さんが走ってきた。


「な、何事だ!?
何があった!?」
「何がって・・・・衝車が出てきたから喜媚が例のアレを使ったんや。」
「なに、もう衝車が出てきたのか?
で、どうだった?」
「自分の目でたしかめぇや。」


華雄さんと私が一緒に下を確認するとそこには破壊された衝車と、
爆発の巻き添えを食った兵士の残骸が散らばっている。


(しょうがないとはいえ、アレを私がやったんだよな・・・)
「すごいな・・・衝車が一撃か・・・」


私達は確認した後すぐに城壁の壁に隠れる。


「わかってても衝撃的やけど、連合の奴らは肝を冷やしたやろな。」
「・・・それはそうだろう、攻城兵器を一撃で粉砕するようなモノを使われたら、
攻城戦ではどうしようもないぞ。」
「とにかくコレで十分敵の士気は下がったはずです。
後は賈詡さん達の準備ができるまで 時間をかせぐだけです。」
「せやな。」
「あぁ、後は賈詡の連絡待ちだな。
だがその前にコチラから早馬を出して状況を連絡しないとな。」
「せ、せやな、忘れとったわ。」
「そ、そうですね。」


本当に華雄さんはどうしたんだ?
あの猪突猛進な華雄さんは何処へ言ってしまったんだろうか・・・


  1. 2012/09/22(土) 16:57:05|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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五十二話


汜水関




連合軍の斥候部隊が確認されたので、
すぐに兵に対して警戒態勢を取るように指示し、
私の部隊を渓谷や森に潜ませて連合軍の様子を探らせる。

私は望遠鏡で部隊の様子を確認しているが、
一番に斥候を飛ばしてきたのは曹操さんの部隊のようで、
兵の鎧から判別している。


「やっぱり一番最初に着いたのは曹操さんですね。
陳留は近いですし兵の練度も高いから行軍速度も早い。
一番いい野営地を確保しつつ、情報収集をするつもりでしょう。」
「やっぱ、連合で一番油断ならんのは曹操やな。
いいとこ取りしようとするだけのことはあるで。」
「ただそれをやられても面白く無いですが、
今は曹操さんを警戒するより、なるべく最低限の被害で連合を抑えて、
二度とこんなくだらない連合を組ませないことです。」
「せやな、そのためにも張譲と橋瑁は必ず始末したる。」
「橋瑁は呂布さんに任せないとダメですよ。
義理とはいえ母親の仇ですから。」
「わかってるって。
それより華雄は何しとるんや?」
「自分の部隊に気合入れてますよ。
交戦までまだどんなに早くても数日はありそうなんですがね・・・」
「まぁ、ほっとき、それで気が済むなら暴れられるよりマシや。
下手に刺激すると、今の内に曹操を潰そうとか言い出しかねん。」
「・・・・ハァ。」


そうして私と張遼さんで城壁の上から望遠鏡で監視していると、
数頭の馬に乗った人達が私達が普通に視認できる位置までやってきた。

よく見ると馬に乗っているのは先頭に曹操さん、
その後ろに夏侯姉妹と桂花、それに護衛が十騎ほどだ。


「はぁ~根性あるなぁ、これから戦闘しようっちゅうのに
護衛連れてここまで近づいてくるか。」
「ギリギリ矢が届かない位置ですね。
しっかりしてますよ。」
「呂布やったら殺れるのになぁ、あいつの弓は普通の弓とはちゃうから、
あの距離なら十分射程範囲内やな。」
「向こうも夏侯惇さんが居るから盾になるか打ち落とされますよ。」


私はバレたらまずいので壁面の矢を射る隙間から覗いている。

すると張遼さんが壁面の上に立ち手を降っている。


「な、なにしてるんですか!!」
「なにって挨拶やん、せっかくこうしてここまで来てくれたんや、
縮こまって隠れてどないすんねん。
大義は我にあり やで? 堂々としとったらええんや。」


そうして見ていると、曹操さんは口を手で抑えているので 笑っているのだろう。
その後 片手を軽く振って張遼さんに答える。


「っは、面白いやっちゃな。
頭来て矢でも射ってくるかと思ったのに、
のんきに返事返してよったで?」
「曹操さんはそういう人なんですよ。」
「おもろいやっちゃ、こんなくだらん連合やなかったら、
一度思いっきりやってみたいなぁ。」
「やるなら、一人でやってください。
兵を巻き込むんじゃなくて。」
「喜媚はそういうとこつまらんなぁ。」
「兵にも家族がいるんですから、武を競いたいなら個人でどうぞ。
それなら止めませんから。」
「まぁ、それ言われるとウチも辛いな。
さすがに兵やその家族を巻き込んでまで競いたいとは思わんで。」
「安心しました。
それでも曹操さんと戦争やりたいとか言うなら、張遼さんを軽蔑するところでした。」
「ウチもそこまでクズやないで?
でも おもいっきり自分の武を活かしたいと思うのは武人の性や、
コレは否定できん。」
「・・・そういうの、少しならわかります。
桂花がそうですから、彼女は自分の知を十全に活かしたいと思ってますから。」
「喜媚はそういうのないんか?」
「私は・・・自分の才を活かす場と家族や友人なら後者を選びます。」
「まぁ、ウチにもその気持わかるわ。
両方活かせたら最高なんやけどな。」
「今日からしばらくは両方活かせますよ。
張遼さんの武で洛陽の民、董卓さんの領民、この国の未来、自分の主君、皇帝陛下。
全てを守るために思う存分武を奮えますから。」
「せやな・・・今この瞬間こそが、
おそらくウチの人生で最高に武を活かせる機会なんやな。
守るべき民や主君だけやない、皇帝陛下までウチの後ろにおるんやからな。」
「私には援護しか出来ませんけど・・・死ぬな とは言いませんよ?
おもいっきり全力でがんばってくださいね。」
「・・・・ハハッ、喜媚はようわかっとるな!
ちょっと惚れてしまいそうやで?」
「私には桂花が居ますよ?」
「なら奪い取るか、一緒に愛でるかや。」
「・・・そうでしたね、張遼さん両方いけるんでしたね。」


その後、曹操さんが帰るまで私達は城壁の上で待機しながらいろんな話をしていた。


そうして数日ほどかけて、徐々に連合の兵が集まってきて、
視界いっぱい、隙間に無いくらいに兵や野営地を展開していた。
これだけ広範囲なら、夜襲の時は適当に火矢を放つだけで、
確実に何かに当たりそうだ。

今はまだ敵方の口上を聞いていないし、
コチラは専守防衛なので連合からせめて来ない限り手を出すことは、
董卓さんから許されていないが、
華雄さんじゃないけど 今攻めたら連合大混乱にできるよな・・
なんて考えながら敵の出方を見ていた。




--荀彧--


今私達は、反董卓連合野営地内で軍議を開くために作られた、
天幕の中で軍議を開いているのだが、
その議題はともかく話の内容がなんともくだらない・・・誰を総大将にするか?
と言う内容なのだが、明らかに袁紹がやりたがっているのだが、
そのくせ自分から言い出さないし、誰も推薦した責任を負いたくないので、
皆黙って袁紹のくだらない演説を聞かされている。

そんな中、遅れてやってきた劉備達が袁紹に総大将をやるように進めたのだが、
そのせいで最初の命令として、袁紹から劉備達に先陣を切るように命令が下った。
戦術は袁紹の元で働いた者ならわかる、皆のお馴染みの『美しく華麗に前進!』だ。

劉備や愛紗と一緒にいた北郷とか言う天の御遣いを名乗る男が、
うまく袁紹に取り行って兵を借り受けていたが、
焼け石に水だと思うのだが、どうするつもりなのか。
愛紗の選んだ主のお手並み拝見といくとしよう。


「袁紹様 変わってなかったねぇ。」
「誰も変えようとしないんだから変わり様がないわよ・・・って、
なんであんたがここにいるのよ荀諶!」
「なんでって、私とお姉ちゃんの天幕が同じだからだよ。」
「聞いてないわよ!」
「さっき決まったんだもん、当たり前じゃん。」
「クッ・・・この娘は・・・
華琳様のところに呼んでやったと思ったらなんで私の部下扱いになるのよ・・・
華琳様もこの件にはまったく聞く耳を持ってくださらないし。」
「それよりも喜媚ちゃんどうするの? 洛陽に居るんでしょ?」
「あんたも聞いてるでしょ、董卓が負けるなら強制的に連れて帰るわよ。
勝つなら張譲を捕まえて董卓に差し出して恩賞を狙うのよ。
その時は・・・・現状維持よ。」
「まったく。 お姉ちゃんが喜媚ちゃんに抱かれたんだから 少しは考え方変えて、
喜媚ちゃんと一緒にいるかと思ったから曹操様の所に来たのに、
肝心の喜媚ちゃんが居ないんだもんなぁ~。
お姉ちゃんホントダメだね。」
「うるさいわね! あんたに関係無いでしょ!」
「関係あるよ、私が喜媚ちゃんのお妾さんになれるかどうかなんだから。」
「絶対にあんたを喜媚の妾になんかしないわよ!
特にあんただけはダメよ!」
「・・・そんなに私に喜媚ちゃん取られるのが怖い?」
「この馬鹿娘がっ!!」
「きゃ~! お姉ちゃんにぶたれるぅ。」


私達が騒いでいると華琳様が、やってきた。


「あなた達! 外にまで聞こえるから少し静かになさい!
ウチの品位が疑われるわ。」
「す、すいません。」 「ごめんなさ~い。」
「桂花、荀諶、これから劉備の手並みを見に行くからいらっしゃい。」
「「はい。」」


そうして私達が戦場を見られる所まで行くと、
劉備だけではなく孫策達も一緒に居る。
何やら考えがあるようだが、どうするのだろうか?




--喜媚--


連合軍の動きが慌ただしくなり、
私達も対応するために、兵を配置につかせている所で、
袁紹さんが前に出てきて、好き勝手な口上を述べる。

内容は殆ど檄文に書かれてあるとおりの内容で、
洛陽で陛下を蔑ろにして暴政を働く董卓を討ち、陛下をお救いする。 と言う内容だ。
張遼さんによると、袁紹さんの両脇に居る男の内、
太ったほうが張譲で、痩せたほうが橋瑁だそうだ。


「恋が居ったらここから弓射って終わりやったのになぁ。」
「口上述べてる時に攻撃したら風評が悪くなりますよ。
董卓さんの統治には、特に風評が大事なんですから。
ところで・・・華雄さんは?」
「とりあえず関の中で休ませてある、
夜襲に備えて交代で番をするって言ってな。
まぁ、幾ら華雄でも、この口上で兵を動かさんやろ。」
「そうですね。」


そうして袁紹さんが引いた後に、劉の牙門旗と孫の牙門旗の部隊が前進してきた。


「まずいな。」 「まずいですね。」
「ウチ、すぐに華雄の所にいってくるわ!」
「お願いします。」


コレは事前に私が原作知識を元に賈詡さんに献策し、華雄さんに確認をとったのだが、
私達の予想通りならこの後に来るのは、華雄さん個人をねらった挑発行為だろう。

劉備さんと孫策さんの部隊がある程度関に近づいた所で、
すぐさま華雄さんを狙った罵声が聞こえ始める。
その内容は、関に篭ったままの卑怯者だとか、悪政を働く董卓さんの犬だとか、
まぁ、酷い内容だった。
そしてそんな中、罵声がある程度収まったと思ったら、
孫策さんの声が聞こえ始める。

華雄さんが孫堅さんに負けた事や、
その華雄さんが相手なら戦うまでも無い、
さっさと関を開けて逃げ出すがいいとか、そんな内容だ。


「孫策ぅ~~!!!」


関の中から華雄さんの怒声が聞こえ始め、
まずいと思った私は、すぐに華雄さんの元に走っていく。


「張遼さん!」
「コラ! 華雄! 予めこうなることはわかってたやろ!!
お前が今出て行ったら詠の策が台無しになるやろうが!」
「ならば貴様は孫策にああまで私の武や部下を馬鹿にされて、
黙って聞いていろというのか!!」
「そうや!! この戦には月だけやない、
この国の未来が懸かってるんや!!
お前一人罵られたからって策を台無しにされてまるかい!!」
「私だけではない、私の部下や董卓様まで貶されて黙って居られるか!
張遼! 貴様 我等が主が馬鹿にされて黙っているのか!? それでも武人か!?」
「腹が立つのはウチかて同じや!
せやけどココで出て行ったら全て台無しになるやろうが!」
「貴様 そこまで腑抜けたか張遼!」
「なんやて!?
腑抜けはお前やろうが華雄! 事前にこうなるとわかってるのに、
頭に血ぃ登らせて突っ込んでいって、勝てる戦棒に振って何が武人や!」
「私が孫策を討ち取ればいイイ事だ!
それで我等の勝ちが完全なモノとなり、董卓様や私の汚名もすすがれる!!」
「そんな頭に血ぃ登らせた状態で突っ込んでいっても、
一騎打ちに持ち込む前に袋叩きにあって潰されるのがオチや!
劉備や孫策の兵が手ぐすね引いてお前が出てくるのを待っとるわ!」


華雄さんは相当頭にきているのか張遼さんの説得を聞く様子はない、
このままでは遅かれ早かれ、華雄さんは飛び出ていこうとして、
張遼さんに斬られるだろう。
私の知る原作とは違い、張遼さんは心底董卓さんに忠義を誓っているし、
皇帝陛下の信頼もある。
賈詡さんと皆で考えた策が潰されるくらいなら、
張遼さんは迷わず華雄さんを斬るだろう。
そんな事になればせっかく兵の士気が高く 勝てる戦なのに、
敗北の可能性が高まってしまう。

私は歯を噛み締め、華雄さんの元へ向かう。


「華雄さん・・・」
「なんだ喜媚! まさか貴様も私を止める気ではないだろうな!?」
「華雄っ!!」


私は棒立ちの状態から、なるべく意を悟られないようにしながら、
華雄さんの頬を思いっきりひっぱたく。


「くっ・・・喜媚、貴様何のつ 「華雄っ!!」 ・・・貴様、どういうつもりだ?」
「情けない・・・普段は圧倒的に武に劣っている私の攻撃を、
躱すどころか防御する事もできず、
まともに受けるような状態の貴女が、今出ていってなんの役に立つ!
犬死するのがオチだ!
今の貴女は孫策が言うように犬以下だ!」
「喜媚、貴様まで私を愚弄するか!?」
「あぁ、しますね。
何が武人だ! 貴女の武は一体なんのためにある!
貴女の名のためか? 功績のためか? 名誉のためか?
違うでしょう! 民と主君、そして国と陛下のためでしょう!!
今のろくに武も発揮できない貴女が出ていってなんになる!?
賈詡さんや陳宮ちゃん達文官の皆がせっかく必勝の策を練ってくれたのに、
それを台無しにするだけでしょうが!!
そんな愚か者を犬以下だと言って何が悪い!!」
「貴様ぁ!!」
「頭にきたか? 犬畜生以下の華雄?
ならばその斧で私の首を切って勝手に犬死してこい!
どうせ貴女のせいでこの策はぶち壊しになって、董卓さんも賈詡さんも皆死ぬんだ。
私が先に逝っても何の問題もないでしょう?
さぁ、切るがいい、そしてあの世で後悔を胸に抱いて、
董卓さんと陛下に永遠に詫び続けろ!!」
「くっ!」


そう言って私は華雄さんに背中を向け、その場に座り込む。


「さぁ、どうした!
貴様の武を馬鹿にした者は狂犬のように噛み付いて切り捨てるんだろう?
コレではたりないか? 孫堅に負けた負け犬華雄。
あの世で今の貴様を見て孫堅も大笑いしているだろうよ!」
「ぐぐぐっ・・・・っ!」
「孫堅に負けた負け犬華雄、切るならウチも切りや!
ウチも先に逝って無様に負ける、お前をあの世から笑って見てやるわ!」


そう言って張遼さんも私の横に座り込む。


「ぐっ・・・・があぁぁぁっ!!」


そうして華雄さんの叫びの後、通路では破壊音がなり響き、
華雄さんの金剛爆斧が半分ほど壁に埋まっている。

私達の首は・・・繋がったままだ。


「くそっ!! ならば私はどうすればいいのだ・・・
ああまで、孫策に馬鹿にされて、部下や董卓様、私の武を貶され私は・・・」


華雄さんはそう言いながら座り込んで地面を殴りつける。


「華雄さん・・・そもそも華雄さんの武は一切汚されていませんよ?」
「なんだと? ああまで孫策にいいように言われて、
汚されてないなどと戯言を抜かすな!
貴様は武人じゃないからわからんのだ!」
「華雄さん、私だって幼少の頃から、毎日嫌って言うほど武術を訓練してきました。
今でも華雄さん達に偶にボコボコにされてますが、
そんな私に華雄さんの気持ちがわからないと本気で思うんですか?」
「・・・だ、だがっ貴様に私の何がわかる!?」
「わかりますよ。
少なくとも華雄さんの武は何一つ汚れなく輝いているという事くらい。」
「なん・・・だと?」
「華雄さんの武を光り輝かせるのはなんですか?
功績ですか? 名声ですか? 勝利ですか?
違うでしょう? 武人として主に忠誠を誓った華雄さんの武を最も輝かせられるのは、
ほかならぬ董卓さんと皇帝陛下でしょう?
董卓さんか陛下、どちらかが華雄さんの武を貶しましたか?
華雄さんの武を信じて、この汜水関での先陣を任せてくれたんじゃないですか?」
「・・・・」
「孫策が何をしましたか?
汜水関の堅牢さに恐れおののいて、
何とかしようと、小賢しくも親の威光に縋って、
華雄さんを口汚く罵ることしか出来ない負け犬ですよ?
そもそも孫策は袁術の子飼いの犬ですよ?
争いは同列の者だからこそ起こるんです。
華雄さんは董卓さんの子飼いの犬何ですか?」
「違う! 私は・・・私は董卓様に忠誠を誓ったんだ。
行く所もなく家柄に恵まれず 武しかなかった私を董卓様が召抱えて下さったんだ。
私はあのお方の優しさに・・・この国の未来を見たんだっ!!」
「ならば何を怒る必要があるのですか?
董卓さんは華雄さんを信じて先陣を任せてくれた。
董卓軍の一番槍は、親の威光に縋る事しか出来ない、
袁術の子飼いの犬と同等の価値があるのですか?」
「あるわけがない!!」
「じゃあ負け犬の遠吠えなど放っておきましょうよ。
華雄さんの後ろでは、董卓さんと陛下が安心して笑って見ていてくれるんですよ?
コレ以上の名誉が何処にあるというのですか?」
「・・・・・そう、か、
私の後ろには、董卓様と陛下が居てくださるんだな。」
「さぁ、立ってください。
董卓軍の一番槍にそんな姿は似合いませんよ。」


そうして私達三人は立ち上がりお互いの顔を見合う、
華雄さんの目には先程までの怒りの様子はなく、
澄んだ瞳をしている。
張遼さんの方を見ると静かに頷いている、この様子ならもう大丈夫だろう。


「・・・・さて、でも、言われっぱなしって言うのもムカつきますよね?
私達も少し言ってやりましょうか?」
「・・・? どうするんだ?」
「華雄さん、それに華雄隊の皆さんも私に付いてきてください、
城壁の上まで行きます。
そこで私が言うとおりに連合の犬どもに言ってやってください。
自分達がどれほど愚かな生き物なのかという事を。」
「城壁? ・・・も、もしかして、わ、私が舌戦をするのか!?」
「そうですよ、華雄さんは私の言う事を、
そのまま連合の兵に向かって言うだけでいいですよ。」
「それじゃあ、張遼さん後は任せました。」
「あぁ、行ってこいや! 守備はまかせときぃ。」
「あ、ちょっと待て、喜媚!」


私は華雄さんの腕を取り、城壁の上まで行き、
私は壁に隠れえて下からは見えない位置で待機する。

華雄さんが城壁に出てきた事で、
一時的に罵声も大きくなるが、
華雄さんがどこ吹く風で聞き流しているので、何かおかしいと思ったのか、
しばらくすると罵声が止む。

実際は華雄さんは表情には出していないが、
怒りで拳に力を込めて握りすぎたせいで 血が流れているのだが、
下からは見えないのでいいだろう。


(いいですか、私の言うとおりに言ってくださいね。)
(お、おう。)

『聞け! 愚かなる連合の者共よ!!
卑しくもくだらぬ謀で陛下のお住みになられるこの地を騒がす愚か者共よ!
我等が何も知らぬと思っているのか!?
そこに居る張譲は、
恐れ多くも先代の大将軍何進様を暗殺した首謀者でありながら橋瑁と結託し、
先代皇帝陛下、少帝弁様を誘拐し、
傷つけるなどと言う恐れ多い愚行を犯した犯罪者だ!
更に橋瑁は張譲の策謀に気づき、
阻止せんと橋瑁の兵を命懸けで阻止した丁原様を暗殺した首謀者だぞ!
その犯罪者の口車に乗り我が主、
董仲穎様が悪政を働くなどという愚かな噂に踊らされ、
洛陽に攻め入ろうとは、貴様らそれでも陛下に忠誠を誓った漢の臣民か!!

恥を知れ!!

我が主が洛陽に置いてどれほど民に慕われているか、
この堅牢な汜水関や洛陽を見れば一目瞭然ではないか!
民が悪政で苦しんでいるのなら、
どうして民はこのような堅牢な関を作る事ができようか!?
そうしてコレほど整備された道が作られようか!?

孫策! 今の貴様を見たら我が宿敵、孫堅も嘆き悲しむぞ!!
民が汗水流し作り、我が守るこの関に!
恐れおののき、口汚く罵声を浴びせることしか出来ぬなど、
今の貴様こそ犬畜生と同じではないか!

今一度聞け! 連合の愚かなる者共よ!
真に民を思い、皇帝陛下に忠誠を誓い、己が信念に一切の曇がないというのならば!
直ちに武装を解除し、我らに恭順せよ!!
さすれば真の洛陽の姿を見せてやろう!
我が主、董仲穎様が復興させ、民の笑顔が溢れ、陛下が安心して暮らす洛陽を!
そして、洛陽からこの国全土に広がる、
この国の明るい未来の姿を貴様らに見せてやろう!!』

(みんな今です! 鬨の声を!)


「「「「「「おおぉぉぉぉ~~~~!!!!」」」」」」


私の合図で、華雄隊の皆が鬨の声を上げる。
その声量は連合軍を圧倒し、汜水関やこの大地、
国が揺れているかのような、どこまでも通る大声で、
華雄さんの演説と華雄隊の鬨の声で圧倒された連合軍は、
そのまま黙りこんでしまう。

こうしてひと通り鬨の声をあげた後、
華雄さんは下がり、戦場が静寂に包まれる。


「やりましたね、華雄さん!」
「すごかったやん華雄!!」
「お、おぅ・・なんかすごかったな。
わ、私がやったんだよな?」
「そうですよ、どうですか少しはすっきりしましたか?」
「あ、あぁ、なんか今でも実感がわかないけど、
あれ? 私が舌戦をやったんだよな?」


華雄さんは自分が行った演説に実感が持てないようで、
不思議そうな顔をしているが、
紛れもなくアレは華雄さんが行った演説だ。

正直私もここまでハマるとは思ってなかったが、
案外華雄さんはこういう才能が有るのかもしれない。
華雄さん自身、部下からの信頼が厚い姉御肌な所があるし、
鍛えぬいた武からくるカリスマの様なものもある。
案外はまり役なのかもしれない。


こうして、反董卓連合の初戦は舌戦となったが、
間違いなく私達の勝利だろう。


  1. 2012/09/22(土) 16:56:06|
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五十一話


洛陽




私達は洛陽の宮殿内にある作戦会議をする部屋で、
董卓軍の皆と集まっている。

そしてその中央の机に上には、袁紹さん、張譲、
橋瑁の連名で書かれた檄文が置かれている。


「さて、ボク達の努力も虚しく、とうとう最悪の事態になってしまったわ。
・・・袁紹のバカが、そんなに権力の座が欲しいのかしら。」
「・・・詠ちゃん、もう 避けられないの?」
「月ごめん、もう無理なのよ、この檄文が撒かれた以上、袁紹は引く気はないわ。
私達が生き残り、私達の領民を守るには、連合に勝つしか無いの。」
「・・・・わかった。 ならば賈文和! 全権を貴女に授けるから必ず勝利を収め、
この洛陽と、私達の民と、そしてこの国の未来を守りぬきなさい!」
「はっ!」


部屋に入った当初の董卓さんの気落ちした表情とは打って変わり、
今は武人と見間違うくらいのしっかりした眼光に、
王としての覇気を放ちながらしっかりとした号令を出す。


「・・・・へぅ~、こんな感じでいいかな?」
「最後のがなければ最高だったわね、月。」
「いやいや、こっちのほうが月らしいで。」
「董卓様、ご立派でした!」
「・・月は今の方がいい。」
「恋殿の言うとおりですぞ! なれない事はするものじゃないです。」
「董卓さんカッコ良かったよ。」
「へ、へぅ~。」


だがそれも束の間、長くは持たないようで、
すぐにいつも通りの董卓さんに戻ってしまう。

いつもの董卓さんに戻った所で、部屋の空気が張り詰めたものから、
穏やかな空気へと変わっていく、コレも彼女の持つ魅力の一つなのだろう。

こうして賈詡さんの元、引き続き防衛策を練ることになる。


「まず敵が何処から攻めてくるか?
だけど、コレは予定通り東、汜水関の向こうからと言う可能性が最も高いわ。
最大勢力であり、呼びかけ人である袁紹が連合の指揮を取る可能性が高い。
それ以外の諸侯にしても北に黄河に邙山、南に伏牛山があり、
攻めるなら東か西、または黄河を上がってくることだけど、
コレは考えなくていいわ、
大規模の軍勢が移動出来るだけの船を用意できるとは思えない。
小規模の兵が上がってきたとしても孟津港の防衛隊で阻止できるはずよ。
最悪足りなくても洛陽から予備兵を出せる。
西は馬騰か劉焉が攻めて来る場合だけど、
馬騰は皇帝陛下に忠誠を誓っているし、昔からの付き合いもある。
献帝様に書簡を書いてもらったので敵に回るよりも、
むしろ味方になってくれる可能性が高いわ。
悪くても敵には回らず金と兵糧だけ出して日和見ね。
劉焉は身内の跡目争いで内紛を起こしているから、参加する余裕があるとは思えない、
劉焉の子の内 誰かが功を上げるために参加して来るかもしれないけど、
単独で出せる兵数で函谷関を抜けられないから、
やはり参加するとしても東の本体と合流するはずよ。
参加しそうな諸侯で目立った所は、袁紹、橋瑁、袁術、曹操、
後は細かい所が幾つか集まってくると思うわ、目立つ所では黄巾の乱で手柄をあげ、
天の御遣いを擁していると言う、劉備や公孫賛当たりかしら。
どちらもそれほど問題にするほどではないわ。
連合の兵数は五万から多くて八万ほど、
コチラは汜水関の防衛で出せて三万虎牢関で一万、洛陽防衛で二万よ。
敵が八万の場合、最大兵数では二万の差があるけど、
汜水関では三万で抑えてもらう事になる。
そもそも関にそれだけの人員が入らないので、
汜水関の西側で、野営をしてもらい、交戦時に交代で休息をとってもらう形になるわ。
敵も同じで一気に八万の兵を相手にするわけではないから、
汜水関で時間を稼ぎつつ、喜媚の策の準備をするわ。」
「細かい事は賈詡に任せるが、先鋒はもちろん私だろうな?」
「華雄には虎牢関で防衛をしてもらう、先鋒は霞、恋、音々、喜媚よ。
「なぜだ! こんな大戦で董卓軍の一番槍の私が先鋒でないのはなぜだ!?」
「貴女のその性格が問題だからよ。
霞に頼んで矯正してもらおうとしたけど結局治らなかった。
貴女が敵の挑発に乗って、汜水関から飛び出したら、
全てが水の泡になる可能性があるのよ?
そんな危険を犯せるはずがない。」
「敵の挑発に乗らなければいいだけだろう!
私とてこの一戦がどれほど大切なモノかくらい承知している!」
「・・・その言葉本当でしょうね?
本当に貴女、この戦がどれほど大切なモノなのか分かってるの?
洛陽の民、私達の領民、月に献帝様、それにこの国の未来がかかってるのよ?」
「わかっている!!」


賈詡さんと華雄さんがお互いを無言で睨む。
しばらく時間が経った所で、賈詡さんが息を吐き、
やれやれといったような表情で折れた・・・・がコレは実は演技だ。
最初から華雄さんを先鋒から外せるとは思っていない。
華雄さんの性格だ、
賈詡さんも華雄さんを先鋒から外したら、
虎牢関で彼女がまともに指揮ができるとは思っていない。
そのために敢えてこんな演技を挟んで、
華雄さんに絶対に挑発に乗るなという釘を刺しているのだ。


「ふ~、わかったわ、先鋒は指揮官が霞、華雄、喜媚の三人でいってもらう。
虎牢関は恋と音々、ただし華雄、絶対に挑発に乗って勝手な行動を取らない事。
勝手な行動をとった場合 最悪・・・霞に貴女を斬らせるわ。
それでいいわね?」
「構わん!」


その華雄さんの様子を見て、賈詡さんは私と張遼さんの目を見る。
その視線からは (心配だけど後は任せたわ) (任せとけ。)
(やれやれ、やっぱりこうなるか。)
と言った、お互いの心境が読み取れた。


「恋、音々悪いけど虎牢関に下がってもらうわ、
そのかわり必ず橋瑁は貴女の前まで引っ張ってくるから、我慢してちょうだい。」
「・・・・・わかった。」
「分かったです。」
「後の防衛方法や策は以前 喜媚が話した策を主軸にしていくわ。
・・・こんな策は前代未聞だけど、本人が納得している以上、問題無いでしょう。」
「汜水関でなるべく敵兵を減らしながら時間を稼ぎ、
敵の士気を下げつつ撤退はさせない。
ココで敵兵を減らしておけば、
今後こんな馬鹿な事をしでかさないように諸侯の力を削ぐことができる。」
「・・・・・それしか無いか。」
「悪いわね、喜媚。
あんたの気持ちもわかるけど・・でもこうなった以上、敵兵に掛ける情けはないのよ。
そうでないと私達の守るべき領民が死ぬ事になる。」
「・・・わかってるよ。
私も全てが救えるとは思って無い。
私には手の中に収まる人しか救えないし、
それが董卓さんや協ちゃんでも変わるとは思ってない。」
「そして時期を見て汜水関を放棄して虎牢関まで下がり、
時期を合わせて虎牢関を開放、そして最後の切り札で連合に止めを刺す。」
「曹操さんの件はどうするの?」
「一応連絡を取って連合の内紛を誘いつつ、
張譲と橋瑁が逃亡しないように見張らせておくくらいでいいわ、
それ以上何か頼むと借りを作る事になる。
あの女に余計な借りを作っておきたくないわ。
どうせならしくじって連合内部で潰されて欲しいけど・・・ごめん、
あんたの前で言う事じゃなかったわね。」
「いいよ・・・曹操さんが厄介なのは私もよく知ってるし、
桂花の事は心配だけど、この連合の暴挙を許すと洛陽の多くの皆が苦しむ。
・・・・桂花一人と洛陽の皆では秤にかけられない。
桂花は怒るかもしれないけど、
連合が組まれる可能性については事前に話しておいたからわかってくれると思う。
もちろん策の事は何も言ってないし 言うつもりもないよ。」
「そこは信用してるわ。
私達も曹操がコチラを潰す気が無い内は、
コチラから潰すこともないから、喜媚は自分の仕事を全うすることだけを考えてね。」
「うん。」
「それと馬騰の件だけど、この会議の少し前に早馬が来て、
少し遅れてコチラの応援に来るそうよ。
洛陽の警備の為に洛陽周辺での野営の許可を申し入れてきたわ。」
「それは良かったね、馬騰さんが敵に回らなくて。」
「えぇ、それと馬騰自身はまだ体力が回復していないし、
西の羌族のこともあるので、娘の馬超と姪の馬岱が来るそうよ。
あと、この戦の後、月と喜媚に会いたいそうよ。
是非お礼を言いたいのと、お礼の品を用意しているそうよ。」
「分かりました、では戦の後に面会の予定を取りましょう。
陛下にも是非会っていただかないといけないですし。」
「じゃあ、その日がわかったら教えてね。
私も店の事があるし。」
「えぇ、そういえばあんたの店といえば劉花様だけど・・・」
「劉花ちゃんは一応納得してくれたよ、戦の時は董卓さん達と一緒に宮殿居るって。
大分不信感も溶けてきたみたいだから、もう少ししたら大丈夫かもね。」
「そう、良かったわ。」


こうしてこの日の軍議は一旦ココで終了し、
武官や私の部隊を再編成し、武器や資材などを確認してから、
再度軍議を開き、私は連合への破壊工作の為に先行して汜水関へと兵を進めた。




--??--


(はぁ・・ボクって嫌な女だな・・・あの時 喜媚が悲しむのを知ってても
曹操・・それより荀彧に潰れて欲しいと思ってしまった。
そうしたら喜媚がボクを見てくれるんじゃないか?
落ち込んだ喜媚をボクが慰めれば、と考えてしまった。
今までは月だけが居ればそれでよかったのに、今は・・・・
喜媚の知に触れ興味が湧き、優しさに触れて惹かれて、
民・・ボク達の為に荀彧よりも ボク達を選んでくれた事が本当に嬉しかった。
この戦が無事に終わったら・・・ボクは女として荀彧から喜媚を奪ってやるわ!)




--喜媚--


私達は輜重隊を伴ない、先行して汜水関へと移動していく。
連合が汜水関に辿り着く前に、やれる準備をするためだ。

汜水関に着いた私達はまず敵の移動速度を少しでも抑える為に、
主要道路脇に深さの浅い塹壕を掘って行く。

次に輜重隊の馬車に乗せた資材を組み立てる。
組み立てるといっても汜水関の関の上に、
予め置いてある丸太に鎖をつなぎ設置するだけだ。
コレは梯子で上がってくる敵兵を叩き落すための仕掛けだ。
それと大きな布と長い棒をきつく紐で結んで置く、
コレは火計時には水に濡らして消火し、
平時は敵の矢を回収し再利用するための仕掛けだ。
関に篭っての籠城戦なので、再利用できる矢は貴重だ。
関所の壁や盾に刺さってしまっては再利用は難しいが、
布に刺さったものや、はたき落としたものは再利用が容易にできる。
後は食料としても武器としても使える油壷や小麦粉などを、
輜重隊の馬車から下ろして、倉庫に運び込む。
私の士官用の個室には、火薬の入った壺を厳重に保管しておく。
兵に使うつもりはないが、衝車を破壊するのと、敵を混乱させるには最適だろう。
・・・実験で皆に見せた時に賈詡さんに追求されたのが怖かったが、
今は時間が無いという事でごまかしてきたので、
この戦が終わった後の追求は逃れられないだろうが、
製法を教えるわけにはいかないので、なんとか追及をかわす方法を考えておこう。

後続の華雄さんと張遼さんの部隊はもっと大量の武器や食料を運んでくるので、
倉庫の整理も今の内にして、何処に何があるのかわかりやすいように、
リストを作っておく。

更に私の工作部隊・・・なぜか皆 私と同じ黒い上着に猫耳頭巾なのだが、
私の部隊に周囲の地形を覚えさせ、
連合に夜襲を駆ける時に優位な状況を作り上げておく。
この夜襲は、火矢を何本か撃つだけの 戦果はまったく期待できないものだが、
敵が夜中に安心して眠れない状況を作り出すにはこれで十分だ。
夜襲の警戒のドラが毎晩鳴れば、兵は睡眠不足になるだろう。


幾つか他にも準備をしながら 張遼さん達の到着を待っていたが、
数日後、汜水関防衛の本体が到着した。
呂布さん達はしばらくした後に、
追加の物資を積んだ輜重隊と一緒にやってくる予定だ。
汜水関の西側では野営の準備が進められている。

私の案で日持ちの良い漬物などを持ち込んでいるので、
通常の戦時の野営よりも食生活はかなりいい。
コチラには大義があり、食事も良い、
敵よりも事前に到着し準備を進めているので、
休息する時間もあり体力的にも問題無い。
味方の兵達の士気もかなり高く維持できるだろう。

それに引き換え、敵軍はここまでの長期の行軍で疲労しているし、
賈詡さんが事前に流した董卓さんの善政の噂と、
袁紹さん達が流した悪政の噂の両方で悩むことになる。
舌戦でその部分を指摘してやれば敵の兵の士気はさらに落ちるだろう。


「よう喜媚、どんな様子や?」
「こっちは何も問題ありません。
順調に準備が進んでます。
敵兵もまだ斥候すら見えて来ません。」
「そか、ならしばらくは休憩やな。
ここまでの行軍で兵も疲れてるから、いい骨休めになるやろ。」
「そうですね。
・・・・華雄さんの様子はどうですか?」
「・・・最悪や、やる気満々、ほっといたらすぐにでも飛び出していきそうや。」
「抑えられそうですか?」
「抑えるしか無いやろ、どんな手を使ってもな。
どんな戦でもそうやけど、この戦には負けは許されへん。
・・・たとえウチが華雄を斬ることになってもな。」
「そうならないように私も最善を尽くしますよ。
ただ、以前もいいましたが、孫策さん、孫堅さんの娘さんなんですが、
この人が出てきた時は注意してください。
他の兵の挑発は我慢できても、この人の挑発は我慢出来ないかもしれません。」
「華雄と孫堅の因縁か・・・」
「ええ。
華雄さんは孫策さんの母親の孫堅さんに一度負けてますから、
その娘で雪辱を晴らそうと考えてもおかしくありませんので。」
「分かった、孫策が出た時は華雄から目を離さんようにしとくわ。」
「お願いします、力では私では抑えられないので。」


この日から数日、初日は華雄さんは 「敵はまだか~!」
と 大騒ぎをしていたが、
さすがに数日も経つと落ち着いて来たようで、
おとなしく身体を解すだけの訓練をして時間を潰している。

張遼さんは汜水関の城壁の上で私と日向ぼっこをしながら、
敵軍の斥候がいつ来てもいいように眺めている。
すでに城壁の上には、華と張の牙門旗が立っており、
隅っこの方に私の急ごしらえの真っ黒で四角い旗に、
猫耳を模した意匠が施された小さい旗も立っている。
私は要らないと言ったのだが、
賈詡さんに無理やり用意されて、
私の部隊の人達も気に入っているようなので 私も諦めて旗を立たせてある。
賈詡さんが言うには胡の文字を入れるか 猫と入れるか迷ったせいで時間がなくなり、
無地になってしまったそうだ。
正直言わせてもらえれば、余計な事は止めていただきたい。


こうして更に数日後、敵軍の斥候が発見され、
とうとう歴史に名を残す反董卓連合、汜水関の戦いが始まってしまった。


  1. 2012/09/22(土) 16:55:07|
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五十話


洛陽




夕方の日が沈む少し前、
店じまいをする私の所へ 神妙な顔をした賈詡さんがやってきた。

私が店じまいの準備を終えるまで、賈詡さんは椅子に座り無言でお茶を飲んでいたが、
店じまいが終ると机をトントンと叩いて私に座るように促してきた。


「・・・・橋瑁が見つかったわ、ついでに逃げ出した十常侍の一人張譲もね。」
「・・・呂布さんには?」
「もちろん伝えたわ。
でも今はどうするこ事もできないとも伝えた。」
「どういうことなの?」


賈詡さんは一度深呼吸をした後、語り出した。


「まず、結論だけ言うと、橋瑁は張譲と共謀していた。
そして今は袁紹の所に逃げ込んでいる。」
「・・・なんでまた。」
「私の調べたところでは、両陛下の誘拐を主導したのは十常侍、張譲よ。
そして兵を派遣してきたのは協力者の橋瑁。
何進様を暗殺し両陛下を誘拐した後に、
劉弁様の指示だと言って橋瑁が今の私達の立場に付く予定だったらしいわ。
それに気がついた丁原様が橋瑁の軍を抑えていた。
そして橋瑁の邪魔をした丁原様は橋瑁に暗殺され、
橋瑁は兵を率いて袁紹の所に逃げ込んだらしいわ。」
「・・・わからないな、なんで橋瑁が袁紹さんの所に逃げ込むの?
袁紹さんは宦官誅殺の実行者だよ?」
「その宦官誅殺の際、張譲が全ての宦官を裏切って袁紹に取り入ったのよ。
自分は悪くない、奴らに脅されたのだ、その証拠に奴らの居場所を教える。
取り調べの結果をまとめると こういう事になったわ。
南皮にいる細作からの報告では、橋瑁の兵が目撃されたわ。」
「・・・・最悪の組み合わせだ。」
「そうね、一応、今後証拠を固めて、
橋瑁と張譲の引渡しを袁紹に要求するつもりだけど、
聞くかどうか・・・」
「・・・次に彼らがどう動くと思う?」
「あんたの予測した最悪の筋書きね。
袁紹を炊きつけて反董卓連合・・・」
「陳宮ちゃんも同意見?」
「ええ、時期は未定だけど、袁紹と橋瑁の軍では私達の兵数を上回れない。
ならばどうするか?」
「・・・かき集めればいい。」


私と賈詡さんは一度お茶を口に含み、ゆっくりと喉を潤す。


「汜水関の工事状況は?」
「虎牢関と合わせてあと半年と言うところかしら?」
「よくまそこまで短期間で出来たね。」
「もともと堅牢な関よ、工事自体もそれほど大規模なものじゃなかった。
その分 函谷関が遅れているけど、
馬騰は僕達に友好的だから西から攻めてくることはないと思う。
仮に攻められても函谷関で十分守りきれるけど、
兵が割かれるのが痛いわね。」
「華佗は間に合わなかったの?」
「細作の報告だと間に合ったそうよ、今治療中ですって。
少し時間がかかるらしいわよ。
その内 月かあんた宛てに感謝の書簡と贈り物が届くでしょうよ。」
「それはどうでもいいんだけど、馬騰さんが参加しなければいいんだけど。」
「一度 陛下からも書状を書いてもらうわ。
洛陽は平穏で民は皆生き生きしている、
病がなおったら一度顔を見せろと言う感じで。」
「そう。
間に合って洛陽を見てもらえれば向こうに着くことはないか。」
「曹操はどう出ると思う?」
「多分袁紹さんに乗るだろうね、その上で私達と連合を秤にかけて、
勝ち馬に乗ろうとするでしょう。」
「抜け目の無い・・・」
「曹操さんの性格もあるけど、地理的にもしょうがないよ。
連合に乗らなかったら最初に攻撃されるのは曹操さんだもの。」
「そうね。
私が袁紹でも最初に陳留を攻めるわ。」
「違うよ、洛陽までの通り道にあって邪魔だから潰せ、
こんな感じだよ、きっと。」
「そんなバカな・・・」
「袁紹さんはそういう人なんだよ。
美しく華麗に前進! ってな感じでね。」
「それで、蹂躙される民はたまったものではないわ!」
「上のほうで暮らしていると足元は見えないんだよ・・・
でも足元の人間には上がよく見える、雲の上までは見えないけどね。」
「それ、あんたの実感?」
「実感半分知識半分、私は農家の出だからね。
桂花と一旦別れて陳留を離れたのもそれが原因の一つだよ。」
「悪いわね、変なこと思い出させて。」
「ん、別にいいよ。 今ではお互い道は同じ方向を向いている、
後は交われば・・・・」
「・・・そう・・貴方荀彧の事・・・・」
「・・なに?」
「いや、なんでもない。
・・忘れて。」
「そう?」


忘れろとは言ったが、賈詡さんの悲しそうな顔を見たら忘れられない。
一体 彼女は私に何を聞こうとしたのか・・・


こうしてこの後、反董卓連合が組まれた場合に備えて、
今何ができるのか? 何が必要なのか? という事をこの日は深夜まで話し合った。

翌朝、賈詡さんは宮殿に戻り、この事について他の武将や文官とも話合うそうだが、
一つだけ決定していることは、橋瑁は呂布さんに討たせる、という事だけだった。


この日から宮殿内は更に慌ただしくなり、
細作の報告や軍部の訓練等、兵糧や食料の確保、
武器の確保等に追われるようになった。

私の方でも最悪の状況を想定して、
左慈君に火薬の材料を追加で買ってきてもらうことにした。
最悪、反董卓連合が組まれた場合・・・
私も工作部隊として五十人ほどの部隊を率いれるように、
事前に賈詡さんに許可を得ているので、
汜水関防衛戦には参加することになるかもしれない。


こうして数ヶ月ほど準備を進めていた所、
賈詡さんの細作から最近変な噂が流れているという報告があった。


『董卓が帝を軟禁し、陛下を拐かして暴政を働いている。』


今日は店は休日にして、私は宮殿に出向いている。
宮殿での作戦会議を行う執務室で、今回流れた噂について皆で議論をしている。


「コレはもう決定ね。」
「やはり・・戦になるんでしょうか?」
「相手はやる気のようです!
なぁに、恋殿が居れば勝利は確実なのです!」
「・・・・橋瑁。」
「あのボケジジイ共 今度こそ引導を渡してやるで。」
「董卓様や、陛下や劉花様が住まわれるこの洛陽を攻めるなど、
この華雄が討ち滅ぼしてくれる!」


皆戦になるという事を前提に話を進めようとしているので
一度落ち着かせるために、避ける方法がないか提案してみる。


「皆落ち着いて、戦なんてしないほうが一番いいんだから、
できたら避ける方策を練ろうよ。」
「そうね、まだ連合が組まれたわけじゃないわ。
とりあえず袁紹には陛下から橋瑁と張譲を引き渡すように書簡を書いてもらうわ。
袁紹が引き渡して来ればそれで終わりだけど・・・可能性は薄いわね。」
「詠ちゃん・・・」
「大丈夫よ月。 不意を付かれたならともかく、
今回の事は予測済みよ。
そのための準備もしてきた。
できるだけ回避できるようにするけど、
戦になっても負けるつもりはないわ!」
「うん・・・」
「それで、喜媚は戦になったら本当に出陣するつもりなの?」
「うん、本当は戦争なんてやりたくない・・・けど、
今回の連合が組まれたら・・・何もしなければ町の皆が苦しむことになる。
董卓さんの治世でようやく・・やっと洛陽の皆が幸せに暮らせるようになったのに、
その幸せを奪おうとする人達がいるのなら、私もできることをやる。」
「だが、喜媚に指揮の経験はあるのか?」


華雄さんが私の指揮経験について疑問視し、質問をしてくる。


「賈詡さんには前から話しておいたけど、
指揮経験はないけど、許昌では指揮も学んだ、
それに今回 私が率いるのは工作部隊、
五十人ほどの部隊だから正面切って戦うわけじゃないよ。
でも敵の戦意を削ぐための工作はいくつか用意してあるから、
人数以上の働きはできると思うよ。」
「詠が認めとるんやろ? なら喜媚に任せといたらええ。
少なくとも華雄より安心してられるわ。」
「なにぃ! それはどういうことだ!?」
「華雄のそういうすぐ挑発に乗る所が信用できへん言うてんのや。」
「くっ・・・」
「その点喜媚やったらヘタレやからな、
深追いもせえへんやろし、自分のやることやったらすぐに逃げるやろ?」
「もちろんです!」
「自慢するようなことではないだろう!」
「やることやって逃げるんやったらええやん、
戦うのはウチらの仕事や、そやろ華雄?」
「っち。」
「私の仕事は敵の士気を削り破壊工作などを行うことですので、
後は散発的な夜襲をかけて眠れなくしたり、
兵糧を焼いたりする破壊工作が主になります。」
「そういうことだから喜媚が参加することに異議はないわね?」
「まぁ、それならばいいだろう。」
「ウチは最初から賛成や。」
「・・・・いい。」
「じゃあいいわね。 連合が組まれて戦になったら喜媚は一時的な客将として扱うわ。
工作部隊は細作から有志を募って厳選しているから、
隠密行動等は得意なはずよ、うまく使ってちょうだい。」
「了解。
それと曹操さんに関してだけど、内通出来ないかな?
乗ってくれる可能性はそれなりにあると思うけど。」
「だけど貴方が言っていた性格や、私と月が直接会っていた感じじゃ、
コチラがある程度の状況を引き出さないと、逆に本気で潰しに来る感じよ?」
「だからコチラがある程度の状況を引き出せばいいんだよ。」
「何か具体案でもあるの?」
「あるにはあるんだけど、きっと賈詡さんはいい顔しなさそうなんだよね。」
「言ってみなさいよ。」
「実は・・・・」


そして私は私が考えた反董卓連合を、
最も被害の少ない方法で収める方法を賈詡さん達に献策する。


「あんたバカなの!!」
「お前は馬鹿か!!」
「流石にそれは無いで、喜媚。」
「喜媚さん・・・」
「・・・・馬鹿ですね。」
「・・・・いや、恋はいけると思う。」

「「「「「恋!?」」」」」

「賈詡さん、常識を一度取っ払ってよく考えてみて。
私達が打てる手で これ以上の策は私には思い当たらない。」
「確かにそれをやったら一気に終息するでしょうけど・・・」
「だから時間は最低限にする。
それに呂布さんが橋瑁を討つ時間も稼ぐ必要があるから、
汜水関と虎牢関で時間を稼いで連合の士気を削いで、
兵が疲れきった所でこの手を使えば必ずその時点で戦を終息できる。」
「・・・今すぐに返答はできないわ、この案件はもう少し検討させて。
どんな檄文で連合が組まれるかもわからないから 今は答えようがないわ。」
「うん、考えてみて。」


この後は、汜水関や虎牢関の改築状況や、
地形の把握、部隊の編成や練度、騎馬、武器の数などを打ち合わせし、
この日の会議は終わった。


今はまだ反董卓連合を呼びかける檄文が出ている状況ではないので、
まだ、戦闘を回避できる可能性は残っている。

協ちゃんの書状で袁紹さんが応じてくれるかもしれないし、
事前に賈詡さんが流している洛陽での善政の噂を耳にして、
諸侯が乗ってこない可能性だって残っている。
愛紗ちゃんには噂を信じるだけではなく、
自分の目と耳で調べるように言っておいたし、
周泰ちゃんも洛陽のことは知ってるはずだ。
いくつか打った布石がうまく効いてくれるよう、祈りながら私は日々を過ごした。


こうして数ヶ月ほど経ち、
日常生活は穏やかながらも、水面下では様々な動きがある中、
とうとう袁紹さん、張譲、橋瑁の三名の署名付きで檄文が出回った。

要約すると、董卓さんが皇帝陛下を監禁し、
怪しい人物を使って皇帝を操り 洛陽で暴政を働いている。
張譲と橋瑁はその証人であり、
張譲は十常侍で董卓さんが洛陽で暴政を働いたのをこの目で見た証人であり、
董卓に洛陽を追われた被害者である。
橋瑁は、董卓さんに唆され乱心した呂布さんが義母の丁原さんを討ち、
董卓さんの元に逃れた際、
丁原さんを守ろうとして呂布と一戦交えた生き残りである。
漢の臣民たる我等は立ち上がり共に董卓を討つ。
コレに賛同しない者は朝敵とみなし、同様に討つ。 と言うものだ。




--荀彧--


この日、緊急で全ての将官が呼び出されて、
謁見の間で緊急の会議が開かれた


「よくもまぁ、麗羽もここまで嘘を並べ立てられたものね。
自分で宦官を誅殺しておいてコレだもの、
呆れを通り越して感心するわ。」
「しかし華琳様・・・」
「えぇ、私達はコレに乗らざるをえない。
コレで董卓が討てるならばそれでよし。
今最も警戒すべき相手を潰す最大の好機でもある。
逆に張譲と橋瑁を捉えて董卓に引き渡せば恩賞は思いのままでしょうね。
その場合 麗羽は斬首か・・・
そうしたらその領地はそっくりそのまま私達がもらうことさえできる。
董卓の次に厄介な麗羽を潰し、労すること無く領地をそのまま貰える可能性がある。
どちらに転んでも私達に損はないわ。」
「では、どうされますか?」
「予定通りよ、うまく手綱を操って勝ち馬に乗るわ。
ただし他の諸侯には悟られないように、私達 だけ が勝ち馬に乗るのよ。」
「はっ。」


(私が喜媚の住む邑を攻めるなんてね・・・どうしてこう うまくいかないかな・・・
私達はただ一緒にいたいだけなのに。
コレが喜媚が言っていた生きる道が違うということなのか・・・
私が華琳様の元に仕えずに、普通に喜媚の奥さんをやってたら・・・
一緒に居られたのかな?
・・・いいえ、私は荀文若なのよ! 必ず華琳様の望む結果を引っ張りだして、
その上で喜媚と一緒に居られるよにしてやるわよ!
待ってなさいよ 喜媚!)




--関羽--


訓練中に、緊急の動議があるということで、朱里に呼び出された私は、
会議室へ向かうと丁度私が最後だったようで、
私が着くとすぐに会議が始められた。


「今日、袁紹さんから このような檄文が届けられました。」


そうして朱里が読み上げるその内容は、
驚きの内容で、聞かされた桃香様やご主人様もかなり動揺しておられるようだ。


「董卓の暴政か・・・」
「・・・そんな馬鹿な。」
「で、でも朱里ちゃん! 董卓さんの噂は、かなりいい噂が広がっていたって・・」
「それと同時に最近になって悪い噂も流れ始めたんです。
私達には未だ、領内の統治と軍部の掌握で手一杯で、
洛陽まで細作を飛ばす余裕はなかったですし、
隣地でもなかったので情報収集はもっぱら行商人からの噂だよりだったのですが、
今回はそれが裏目に出ました。」
「俺の知る歴史では確かに董卓が洛陽で暴政を働いていた、と言う出来事があった。
だけど、この世界は明らかに俺の知るものとは違うから、
それが正しいのか はっきり言って当てにならない。
やはり直接調べないことには・・」
「ですがご主人様、今回は調べている時間はありません。
この檄文にある通りに 賛同しない者は敵とみなし、同様に討つ。 とあります。
袁紹さんの領は私達のすぐ隣でその軍事力も私達とは比較になりません。
戦えばあっという間に滅ぼされます・・・・領民を守るためにも、
私達にはコレに乗るしか道はありません。」
「そんな・・・董卓さんが悪い人かどうかもわからないのに、
それに洛陽には愛紗ちゃん友達が・・・」


そう言って桃香様は心配そうに私の方を見る。


「・・ありがとうございます桃香様。
私は大丈夫です。」
「私達に選べられる選択肢はそう多くありません。
連合の誘いに反対し 滅ぼされるか、連合に乗り董卓さんを討つか・・・」
「待ってよ雛里ちゃん!
董卓さんがほんとうに悪い人ならともかくいい人だったら?」
「・・・・その時は俺達が助けよう。
連合に参加中に情報を集め、董卓の本当の統治状況を調べて、
いつでも動けるようにしておくんだ。
最悪情報が集められなかった時は、
誰よりも洛陽に一番乗りをして、洛陽の状況を確かめて、その時判断しよう。
それで董卓が善人なら助けて、悪人なら討つ。
・・・その時に、一緒に愛紗の友達も助けよう。」
「ご主人様・・・ありがとうございます。」
「現状では、それしかないようですね・・・」
「そうですね、私達の勢力は未だ弱く、選べられる選択肢の中では、
コレが最善かと思います。」
「鈴々にはよくわからないけど、愛紗の友達は助けるのだ!」
「ありがとう、鈴々。
私も・・・出来る限りの最善を尽くします。」


こうして私達は反董卓連合に参加することになり、
その中から少しでも情報を集め、
董卓の真の姿を見極め・・・そして、喜媚殿は私が必ず助け出す!




--周泰--


雪蓮さまから緊急の呼び出して集まると、
そこには冥琳様や祭様、穏様などの重鎮が集まっていた。


「今日袁術ちゃんがこんな物を貰ったらしくてね。」


そう言って雪蓮様が机に上に投げ出した書簡には、
袁紹により洛陽で暴政を働く董卓を連合を組んで討つ、との内容の書簡だった。


「コレは嘘です!!」
「そうね、その通りだと私も思うわ。
だけど袁紹の名で檄文が放たれた以上、風評は広がるわ。
事前に董卓も風評を気にして色々やってたみたいだからこの場合、
勝ったほうが正しいことになる。
それに袁術ちゃんが乗り気でね、
最近黄巾の乱の後始末が忙しくて明命が洛陽に行ってないから、
その事が余計に袁術ちゃんを煽ったらしくて、
「喜媚を助けに行くのじゃ~!」 ですって。」
「・・・ふむ、そして我等の立場ではコレに乗るしか無いと。」
「えぇ、その変わり私達の本拠地から人を呼んでいいことになったわ。」
「ならば、蓮華様や思春達を呼び出すことも。」
「えぇ、コレは私達にとって好機よ。
この連合で董卓と袁術ちゃんの部隊が戦えば袁術ちゃんの兵は損耗する。
それに私達にとって名声を上げる機会でもある。
そして最後に・・・損耗した袁術ちゃんを背後から討つ事もできる。」


雪蓮様はそう言って獰猛な笑みを浮かべる。


「しかしそれでは・・・いえ、なんでもありません。」
「明命の言いたこともわかるわ、
しかし私達がいつまでもこの立場に甘んじているわけに行かない。
董卓には悪いけど、今回は私達が袁術ちゃんを討ち、
私達が蜂起するための足がかりにさせてもらうわ。」
「ふむ、ならばすぐに兵を手配しよう。
それに最小限の被害で最大限の名声を上げねばならぬから大変だ。」
「では亞莎ちゃんも急いで呼ばないといけませんねぇ。」
「とうとう我等の夢への第一歩が始まるのか、腕が鳴るのう。」
「・・・・・」
「明命が何を心配しているかわかるつもりよ?
喜媚ちゃんは発見次第すぐにウチで保護して、
今後の暮らしも不自由の無いようにするつもりよ。
私達も冥琳の件で世話になっているのだから、
最大限やれることはやるつもりよ。
だから明命、貴女は全力でこの戦で功を上げて、
洛陽に一番乗りして喜媚ちゃんを探してらっしゃい。
洛陽に行った際は貴女の単独行動を許すわ、董卓の首は私達で狙う。」
「雪蓮様・・・ありがとうございます。」
「明命、喜媚殿は私にとっても命の恩人だ、頼んだぞ?」
「はい!」


こうして、私達の連合参加が決まり、
この連合の後、とうとう孫家の旗揚げのための第一歩が始まる。


  1. 2012/09/22(土) 16:53:51|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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雑記


こんにちは


四十三話~四十九話まで投稿しました。

昨日は私生活で色々あって大変でした。
まだはっきりしませんが、
もしかしたらリアルな引越しをしなくてはならないかもしれないので、
しばらく私生活でバタバタしそうです。


>>読み返しは一気に派さん
>>十六話へのリンクを設置、と
コレは通常に読んだら十六話へのリンクではなく、
感想返しへのリンクが表示された、と言うご指摘でよろしいでしょうか?
そこはブログの特性上ご勘弁ください。
目次やカテゴリ分けされた部分で読めばリンクは十六話に繋がるはずです。

>>Lekshumiさん
何度も読み返していただきありがとうございます。
まぁ、体調を崩したら流石に休みをもらいますが、
ボチボチと完結目指して頑張りますので、よろしくお願いします。

誤字の指摘などのコメントは、その話数にコメント返しさせて頂きました。


たいち

  1. 2012/09/21(金) 14:14:45|
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