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たいちの仮設避難所

某小説投稿サイトの規約改定による 仮設の避難所です。

四十九話


洛陽




桂花達が洛陽を去り、少し家の中が寂しくなったような気がするが、
私がそんな事を気にしてたら、従業員の皆に影響が出てしまうので
気持ちを切り替えて 今日も一日頑張って営業しよう。


そう思っててた時期もありました。
この眼の前で管を巻いてる人が来るまでは。


「賈詡さん、せっかく休みが取れたのなら、
こんな所に来ないで、もう少し体を休めるとか、
董卓さんと遊びに行くとかしたらどうですか?」
「そんな暇ないわよ!
今は一日も早くアンタの持つ治世の知識を取り入れて、
この洛陽を民が暮らしやすい町にしなくちゃいけないのに。
それに月は今日も仕事よ。
本当は月と休みを一緒にしたかったけど、
たまたまボクの仕事が進んだおかげで、
周りとの調節のために一日空いただけだもの。」
「そうですか・・・まぁ、私も董卓さんのお世話になってますし、
例の件もあるので 賈詡さんに話をするのはいいですけど、
店の営業もあるんですから 程々にしてくださいよ?」
「程々なんてありえないわね、今日は徹底的に議論するわよ。」
「・・・・ハァ。」


こんな事を言ってるが 賈詡さんは、
議論ではなく愚痴が半分 議論が半分で話をするから厄介だ。
農法の話をしていたと思ったら、
周りの農地の計算が遅いから予定通り進まないと愚痴り、
私が 「部下の前でそんな事言っちゃダメですよ?」 と諭すと、
「部下の前でこんな事言わないわよ!」 と返答が帰ってきて、
結果的に火に油を注いでしまう事になる。

個室に移ってもらったからいいが、
こんな話を店でやってたらお客が離れるし、
情報漏洩の危険もあるので、早々に個室に移ってもらって良かった。
賈詡さんもその辺は わかってやっていると思うが・・

そんなこんなで夕方頃まで議論は続き、
店を閉めて、皆で夕食になったのだが、
賈詡さんはまだ帰らずに、私達と一緒に食事を取り、
お酒も入って愚痴の比率が多くなる。

まぁ、ココで私に愚痴って明日から仕事を頑張ってもらえればいいかと思い、
私も賈詡さんの愚痴に付き合って、結局夜中まで話し合っていたのだが、
とうとう賈詡さんが酔いつぶれて眠ってしまったので、彼女を抱えて、
部屋まで運び布団を掛けてあげる。


「こんな両手で収まる小さくて軽い娘に、この洛陽の命運がかかってるんだな・・
たまにはこうして賈詡さんの愚痴を聞いて鬱憤を晴らすのに付き合うのもいいか。」


私はそう独り言を言いながら彼女を運び、
せめて今夜くらいは安らかに眠って欲しいと祈った。




--賈詡--


ボクは喜媚に寝かされた布団の中でゆっくりと目を開いた。


「ふん、小さくて悪かったわね。
大体、独身の男と気を許して酔った女が居るのに、なんでなにもしないのよ。
愚痴を聞いてくれるのはいいけど・・・・なんかむかつくわね・・・・ふん。」




--喜媚--


さて翌朝、昨晩飲み過ぎたせいで二日酔いなのか、
頭を抱えて賈詡さんが二階から降りてきたので、
消化の良い雑炊を朝食として取ってもらい、
彼女を宮殿へと送り出す。

去り際にボソッと、 「世話かけたわね・・」 と頬を染めて言い、
彼女は宮殿へと戻って行った。


家に来る人間の中で最も多いのが賈詡さんだが、
その次に多いのが実は呂布さんと陳宮さんだ。

最も、彼女達の場合は 店本来の目的通りに、
食事に来てくれるので、一見いいお客さんなのだが、
食べる量が半端じゃ無く、
一度その日の店のお菓子と料理を全て食べ尽くしてしまったので、
彼女達には事前に予約を入れてもらうようにしている。

呂布さん個人が食べる量もさることながら、
彼女が食事をしている風景を眺めるために、
他のお客も来てくれるので、
呂布さんが来る日の売上は通常の倍近いものになるので、
店としては嬉しい悲鳴なのだが、
よく考えて欲しい、そんなに食べて懐は大丈夫なのだろうか?
それに呂布さんには『家族』が多いので、
彼女の家の食費は人よりも多めにかかる。

もちろん大丈夫じゃない。
呂布さんと陳宮ちゃんの給金を足しても、
足りない月などがあるので、そういう時は彼女達にアルバイトをしてもらうのだが、
呂布さんを厨房や店に入れると 食事に目が行ってしまい、
仕事にならないので、彼女には薪割りをしてもらっているのだが、
家でつかう薪のほとんどはメイド・バイ・呂奉先だ。
無駄に豪華な薪である。


「薪割りが終わった。」
「ご苦労さまです、おやつを用意したので少し休憩したら、
次はお風呂の水汲みをたのんでいいですか?
帰りに陳宮ちゃんと一緒に入っていって、汗を流していってください。」
「セキトもいい?」
「セキト用の桶にしてくれるならいいですよ。
毛が湯船に残ったら後の人が困りますから。」
「ん、分かった。」


そして陳宮ちゃんは、その暗算の速さや、
可愛い容姿なども相まって、たまに看板娘をやってもらっている。

日頃は劉花ちゃんが家の看板娘なのだが、
陳宮ちゃんもマニア受けするので、
彼女達はいろんな意味で家の売上に貢献してもらっている。


「胡麻団子とお茶お待ちどうさまなのです!
あぁ、そっちの蒸しぱんはもうすぐ蒸し上がるので、
少し待って欲しいのです!」
「はい、陳宮様、蒸しぱん出来上がりましたよ。」
「了解です!」


こうして彼女達は意外にいい店員なのだが、
この事が後に賈詡さんにバレて、大目玉を食らっていた。

以降、 「外で働く暇があるのなら仕事を増やしても問題無いわよね?」
と賈詡さんに言われ、陳宮さんの仕事は二割増しに。
呂布さんの仕事も二割増しにされたが、
彼女達が家の店に通ってくる回数は減らなかった。


張遼さんはよく家にお酒をたかりに来るのだが、
意外にウチに店に来る回数が少ないのが華雄さんだ。

以前はたまに来てたのだが、
劉花ちゃんの働く姿を見て、 「陛下にそんな雑事をさせているのか!」 と
店で大騒ぎを起こしたのでしばらく出入り禁止になり、
劉花ちゃんにも 「仕事の邪魔をしないでくださいね。」 と
怒られたので、店に来づらいとの事だ。

董卓さんや賈詡さんから何度も、市井の民にまぎれて暮らしているのだから、
劉花ちゃんがこうして働くのは当然だし、本人も望んでいるので邪魔をするな!
と怒られているのだが、彼女の価値観から、
前皇帝陛下が民に紛れて額に汗をして働くのが耐えられないらしく、
偶に空いた時間を見つけては 店に来て入り口あたりの席から、
劉花ちゃんを見張ったり、
向かいの屯所に出入りしては店を見張っている。


「・・・・・・」
「あの・・・華雄さん、お茶のおかわりは?」
「ん? もらおう。」


董卓さんや賈詡さんも、アレで本人は納得してるみたいだし、
劉花様の警護になるのだから放っておくように、
と言われたのでそのままにしてあるのだが、
武官である華雄さんが店の入口で睨みを効かせていると、単に営業妨害でしか無い。
しかし本人に悪気もないので、追い出すわけにも行かず、
華雄さんが来たら気の済むようにさせておくというのが、
店の暗黙の了解になっていた。


ある日のことだ、
張遼さんが店にやってきて私を呼ぶなり一言。


「なぁ、どないしたら喜媚みたいに女らしくなれるやろか?」
「・・・・・は?」
「せやから、どないしたらウチも喜媚みたいに女らしくなれるやろか?」
「私が男だってわかってて聞いてますか? 嫌味ですか?」
「そこ何や! なんで男の喜媚がウチより女らしいねん!」
「別に女らしくなんかしてませんよ!
人聞きの悪い!」
「せやかてこの間もウチのアホ共が・・
『ウチの隊長は生まれてきた性別間違えてるよな?
黒猫茶館の店主と中身を間違えたんじゃないか?
「「「ハハハツ!!」」」 』
なんてアホなこと抜かしよるから・・」
「で、その後 その人達をどうしたんですか?」
「訓練倍にしてしばらく動けんようにしてやったわ。」
「そういう事するからでしょう・・・
少なくとも私の知る限り張遼さんは女らしいですよ?」
「どないなところが?」
「どんなところがって・・・む、胸とか・・・お尻とか?」
「体の事やのうて内面の事では?」
「・・・酔っ払った時とかお酒が欲しい時に甘えてくる仕草とか?」
「・・・ふむ? こないな感じか?」


そう言うと張遼さんは私にしなだれ掛かり・・


「なぁ、喜媚ぃ、ウチもう一杯だけ飲みたいなぁ。」
「・・・どうでもいいですけど、それ、外ではやらないでくださいよ。
勘違いした男が襲ってきても知りませんよ?」
「え、ほんま? 今の女らしかった?」
「女らしかったですよ。 悪い意味で。」
「なんでや!」
「そういう甘えるような事は 本来お酒のためなんかじゃなく、
好きな男の人 だけ にやってください。」
「え~・・・ほんならどうしたらええの?」
「普段通りでいいじゃないですか、
別に親から早く結婚しろとか、女らしくしろとか、言われてるわけじゃないんでしょ?
女らしくなくても張遼さんらしくしてればいいじゃないですか。
それに よく考えたら今の 内面と関係ないですよね。」
「ほんならなんのためにウチはあんな事やらされたんや!」
「張遼さんが勝手にやったんでしょう。
それに一応確認で聞きますけど、張遼さん、男の人と女の人、どっちが好きですか?
もちろん性的な意味で。」
「・・・・・・・・どっちも?」
「帰ってください、私にはどうしようもありません。」


私が張遼さんから一歩後ずさると、張遼さんは私の足元にすがりついてくる。


「わ~! そないなこと言わんと!」
「大体張遼さん、本当に女らしくなりたいんですか?
ただ部下の人に言われたから むかついて言ってるだけでしょ?
そんな人達 言いたいように言わせておけばいいじゃないですか。」
「言われっぱなしじゃむかつくやん。
それにウチも女なんやから 少しは女らしいとこ見せたいし・・・」
「誰に見せたいんですか?」
「誰にって・・・・誰やろ?」
「好きな人ができて その人に女として見てもらいたくなったら、
改めて相談に来て下さい。
今の張遼さんになにか言ったら、変な方向に進みそうです。
変に女として意識するよりも、張遼さんは張遼さんらしくしたほうが魅力的ですよ?
今回の相談のお力にはなれませんけど、自分らしく、コレが一番いいと思いますし、
私には それが一番張遼さんが魅力的に見えると思いますよ。」
「自分らしく・・・か。」
「少なくとも人に言われたから女らしくなりたい、
って言って、辺に振る舞っても私はそんな張遼さん見たくないですね。
いつものように明るくて、部下や皆の面倒見が良くて、
ちょっとお酒にだらしがない張遼さんの方がいいですよ。」
「ウチはそんなに酒にだらしがなくないで!」
「よく言いますよ。
この間だって 私のお酒を勝手に見つけて飲んだくせに。」
「アレは喜媚が隠すからやんか。」
「張遼さんが飲み過ぎるんですよ。
放っておいたら壷にある分全部飲むじゃないですか。」
「宵越しの酒は残さん主義や!」
「人の分は残しておいてください。
そういう事で、今回の女らしくなりたいって言う相談は、
なかった事でいいですね。」
「・・・あれ? まぁ、ええのかな?」
「いいんですよ。
そのウチ素の張遼さんが良いって人が現れますし、
もしかしたら今もそう思ってる人がいるかも知れませんよ。」
「喜媚みたいな?」
「私は変に飾るより今の張遼さんがいいですね。
きっと董卓さん達も皆そう思ってますよ。」
「そうかな~。」
「そうですよ。」


張遼さんは狐に化かされたような 複雑な表情をしながらお酒を飲んでいるが、
愚痴を言えたことである程度すっきりしたのか、
その後、いつも通りにお酒とおつまみの催促が飛んできた。

彼女は変に飾るよりも、素の彼女のほうが魅力的だろう。
少なくとも私はそう思う。


さて、董卓さん陣営で、
家に来るのが最も少ないのが、その陣営の主である董卓さんだ。

彼女は家のお菓子やお茶を気に入ってくれて、
自分でも作ってみたい、などとよく言っているのだが、彼女の立場がそれを許さない。
それに彼女にはひっきりなしに決裁が回ってきたり、面会の申し込みが来るので、
ほとんど家に来ることはなく、
逆に私が協ちゃんに会う時に一緒に会いに行くしか無い。

彼女もその日を楽しみにしてくれているようで、必ず予定を空けておいてくれる。


以前、張遼さんから女の子らしくなりたい、
と相談を受けたが、そもそも相談する相手を間違っている。
女の子らしくなりたいのなら、董卓さんを観察すれば良い。
女の子の中の女の子、董卓陣営最強の女の子だろう。
・・・自分でも言ってて意味がわからなくなった。


そんな董卓さんだが、意外な事に弓が得意だったりする。
史実か演技では、董卓は馬上で両方の手で弓を引けたらしいが、
以前その事を聞いてみたら・・


「そんな事できませんよ~、でも弓は得意ですよ。
皆 私の冗談だって言って聞いてくれないんですけど。」


彼女は笑ってそう言ったので 試しにお菓子を賭けて勝負してみようか?
と言う話になったのだが、私はなんとか中心に数本当てれたのに対して、
董卓さんは全弾中心に命中、董卓さんは照れ笑いしていたが、
これ、すごいことじゃないだろうか?


「動く的だとこうは行かないんですけど、
それでもイノシシ位なら動いてても当てれますよ。」
「すごいね・・・正直ここまで上手いとは思ってなかったよ。」
「ありがとうございます。
私も久しぶりに弓が引けて楽しかったです。」
「月は剣術とかもひと通り納めてるのよ!」
「それはすごいことなんだけど、なんで賈詡さんが偉そうに言うの?」
「月はボクの親友だもの!」
「へぅ、え、詠ちゃん・・・恥ずかしいよ。」
「なんで恥ずかしのよ、友達が仲がいいのはいいことじゃない。」
「そ、そうなんだけど・・・」


少なくとも董卓さんが武芸一般に通じてて、
二人がすごく仲がいいのだけはよく分かった。

あれ?・・・・・もしかしたら董卓さんって私より強いんじゃない?


  1. 2012/09/21(金) 14:09:13|
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四十八話


洛陽




翌日、またしても曹操さんに朝からかわれたが、
昨晩は私と桂花にとっていろんな意味で大事な夜になった。

曹操さんも昨日と態度が違うことで何か察したらしく、
それ以上からかうこともなくなり、
朝食は穏やかに進んだ・・・・が劉花ちゃんだけが非常に不機嫌な様子だった。


曹操さん達は本日は協ちゃんと董卓さんに面会できる日なので、
宮殿は直ぐ目の前なので護衛は必要ないと言い、
桂花を連れて宮殿に行ったので、
李典さんのみが家に残されていった。




--荀彧--


私達は、先日皇帝陛下と董卓に面会を希望した時に言われた時間通りに宮殿に訪れる。
どうも先日の話から、喜媚は董卓と面識があるようだし、
先代の皇帝陛下から今の代に変わったことに関係あるような気がする。

董卓がどういう人物なのかこの目で見定めるために、
私は気を入れなおして面会に挑む。

謁見の間に通されると、少し待たされた後に、
董卓とおもわれる女が何人かの女官を引き連れ現れる。


「これから陛下がお出でになりますので、伏して待つように。」
「「はっ。」」


そうして広く無音の謁見の間に人が歩く足音が聞こえ始め、
今代の皇帝陛下、献帝様が現れる。


「ふむ、面を上げい。」
「「はっ。」」


初めて目にする陛下は私よりも少し年下だろうか?
気品のある少女で来ている豪華な服を着せされていると言う様子はなく、
見事に着こなしている。
その事から生まれや品の良さが窺い知れる。

そして脇に控える少女、一番奥にいるのが董卓だろう。
華琳様のような人を圧倒する覇気のようなものは感じないが、
彼女からは穏やかな感じを受ける。
当初私が想像した女は、野心にあふれた女だったが、
まったく意表を付かれた感じである。


そうして華琳様の形式通りの挨拶のやり取りが済み、
コレで謁見が終わるかと思ったその時である。


「ふむ、そのほうが荀彧か。」
「・・は?」
「なんじゃ、お主が荀彧ではないのか?」
「い、いいえ、私が荀文若であります。」


陛下は私の返事を聞くなり私を観察するように見た後・・


「そうかそうか・・・・ふむ、
妾のほうが勝っておる・・・・うむ、勝っておるに違いない。」
「・・・むっ。」


なにか一部にすごく不愉快な評価を受けた気がした。


「荀彧よ、友とは仲良うしておるか?」
「は? ・・はい!」
「そうか、仲良いことは良い事じゃからのう。
時に・・ 「陛下!」 何じゃ賈詡、コレから良い所じゃというのに。」
「陛下はお忙しいのですから、
そのような些事は置いておきますようお願い申しあげます。」
「コレは妾や姉様にとって重要な事じゃろう。」
「へ い か !」
「わ、わかった、ほんに賈詡は融通がきかぬのう。
妾は引っ込んでおれば良いのであろう。」


・・・コレが皇帝陛下だろうか?
先ほどの威厳は何処かに吹き飛び、
今はどこかの良家のお転婆な子女のようではないか?

華琳様は肩を震わせて笑いをこらえているようだ。

そうして陛下が退席した後、謁見の間には董卓達と、私達だけが残された。


「すいません曹孟徳様、陛下はまだ幼いので、
いろんなことに興味があるようで・・・
あ、私が董仲穎です、以後お見知りおきを。」
「別に気にしてないわ。
なかなか、楽しい御方で 仕える私としても実にやりがいがあるわ。」
「そう言っていただけると幸いです。
時に曹孟徳様、この洛陽はどうですか?
孟徳様は以前の洛陽の事を私よりも知ってらっしゃるでしょうから、
どのように目に写るのか、評価などをお聞かせくだされば、
今後の統治の役に立つのですが?」
「短い期間で大変よく統治されていると思うわよ。
少なくとも私が知る洛陽よりは、良くなってると思うわ。」
「そうですか!
そう言っていただけると幸いです。」


そう言うと董卓は破顔し嬉しそうに微笑んでいる。
その様子を見て、私はこの女の王としての資質を見た気がする。
信賞必罰を実践し必要ならば 自らの危険も顧みずどんな事もされる華琳様と違い、
優しさや徳で人を導くような王と見た。


「私が着任した時は洛陽は酷い有様で、
なんとか民に安心して暮らしてもらえるように、様々な施策を練ったのですが、
それらが実を結ぶのはまだ先の事です。
ですが現状でもやれることは全てやっておりますが、
過去の洛陽を知る曹孟徳様に認めていただいて、良かったです。」


やられた、と思った。
喜媚が昨夜 私に語った通りなら、華琳様は董卓の治世を認めた事になる。
せめてもう少し時間があり、
華琳様に昨夜 喜媚から聞いた話をする時間があれば、
まだ返答に工夫をすることが出来たのだが・・

華琳様がにこやかに微笑んでいる所を見ると、
私と同じようにやられたと感じたのだろう。
追い詰められた時こそ優雅であれ、と 以前華琳様が言っていたのを思い出す。


「董仲穎様の治世は実に参考になるわ。
少し洛陽を見せてもらったけど、私も幾つか同様の施策を使っているわ。
珍しい施策だから私くらいしか使ってないと思ったのだけど、
董仲穎様はこのような優れた施策を一体どのように思いついたのかしら?」
「私にはこのような施策を思いつくような知識はありません。
私を支えてくれる皆の助力のおかげです。」
「なるほど、よい部下や友人に恵まれてるようね。
私の友人にも実に珍しい施策や知識を有する子がいるのだけど、
案外同じ友人だったりしてね。
胡喜媚と言う子なのだけど。」


華琳様が喜媚の名を出した時にわずかに、賈詡以外の董卓の護衛の者が反応した。
コレは当たりね。


「ならば私の友人の友人はまた友人、
そうならば私も曹孟徳様と良い友人になれそうですね。」
「そうね、私も出来れば良い関係を築けたらいいと思うわ。」
「そうですね、曹孟徳様はしばらく洛陽に滞在されるのですか?」
「いいえ、私も陛下から賜った土地を治めないといけないので、
近日中にでも御暇するわ。」
「そうですか、残念です。
よろしければ宴席など一席設けようと思ったのですが。」
「ありがたいけど今回は遠慮させてもらうわ。
又の機会を楽しみにしているわ。」
「ええ、それでは。」
「それでは失礼するわ。」
(・・・・)


そうして礼をした後私と華琳様は、宮殿を後にする。


「当たりね、喜媚が関わってるわ。
桂花の知らない施策もあるのよね?」
「・・・・はい。
まったく、あの馬鹿は・・・」
「コレでますます、あの子が欲しくなったわね。
それに董卓もなかなか面白そうな子ね。
今回は痛み分けというところだけど、フフ。」
「華琳様・・・実はお話したい事が。」
「じゃあ庭園でも見せてもらって 少しゆっくり戻りましょうか。」
「はい。」


そうして私は昨晩喜媚から聞いた話を華琳様に話す。


「そう、おおよそ、私も似たようなことを考えていたわ。
ならば、今回、私はまんまと董卓に釘を刺されたと言う事かしら。
洛陽の統治をこの目で見て謁見の間で褒めさせられたのだから。」
「すみません、私がもっと早くこの話をしていれば・・・」
「別にいいわよ、私も同じようなことを考えていたといったでしょう?
もし、今後反董卓連合なんてものが組まれて、董卓が潰されるならばそれでよし。
董卓が勝ちそうなら私はなんとかして勝ち馬に乗れるようにするだけよ。
そのためにも桂花には今以上に働いてもらうわよ。」
「はい!」


こうして私達の皇帝陛下と董卓への面会は終わった。




--喜媚--


「李典さん、李典さんは工兵部隊を率いていて絡繰りが得意だと聞いたので、
ちょうどいいので実は見てほしいものがあるのですが、少しいいでしょうか?」
「ん? ええで。
なんか面白いものでも見せてくれるんか?」
「面白いかどうかわかりませんが、ウチのお風呂なんですが、
その配管を李典さんに見てもらって、もう少し改善できないかと思いまして。」
「へ~この屋敷、風呂もあるんか。」
「えぇ、丁度今日はお風呂の日なので、入ってもらえると思いますよ。
結構広くて、足を伸ばしても十分な広さがありますよ。
その分色々大変なんですけど。」
「ほんならちょっと見さしてもらます。」


私は李典さんを連れて風呂場の方へ向かい、例の鉄のパイプの配管を見てもらった。


「コレなんですけど。
今は地元の許昌の鍛冶屋さんにお願いして作ってもらってるんですが、
水に浸かってるのと火の熱で消耗が激しくて。
何か李典さんの方でいい改良案があったら聞かせてもらいたいのですけど。」
「・・・・こ、コレは!
そうか、浴槽につないだこの鉄の管の中に水を通して、
その管を火で温めることで水を沸かしとるんかいな。
こないな使い方があったんかいな・・・
確かに普通の鉄やったらすぐに錆びて使い物にならんようになるから、
定期的に取り換えが必要やけど、
ウチが螺旋槍につこうてる鉄ならもう少し強度が出るはずや。」
「本当ですか? 私としては取り替えるのはしょうがないとしても、
その回数を減らせたり、お湯の沸き具合が良くなったらそれでいいんですけど。」
「せやな、今は無理やけど、陳留に帰ったらコレと同じ寸法で作って、
ここに送ったろか?
材料費だけ貰えればええけど、
その代わりに陳留で華琳様のお風呂にコレと同じ物使わせてもらうけどええかな?」
「それはかまいませんよ。
だけど材料費だけでいいんですか?」
「ええで、おもろいもん見せてもろうたし、
コレを使えば陳留の風呂も今より沸かしやすくなるからな。
せやけど、それと同時に焼けた石も使って一緒に沸かしたら、
もっとはようお湯を沸かせられるけど、なんでせえへんの?」
「・・・・完全に忘れてました。」
「喜媚はんは意外に抜けてるんやなぁ、まぁ、ウチも似たような事やることあるから、
あんまし人のこと言えへんけどな。」
「ありがとうございます、コレでお風呂のお湯をわかすのがもっと楽になりそうです。
それと コレは別の相談なんですが、コレと同じような鉄の管を作れますか?
穴はかなり小さくて穴と同じ寸法の鉄の玉が作れれば申し分ないのですけど。」
「鉄の玉は簡単やけど、コレよりも小さい寸法の鉄の管か・・・ちょっと難しいな。
どれくらいの大きさの穴なんや?」
「小指の先くらいなんですけど。
その管を真っ直ぐ加工して途中で鉄の玉を入れる穴を開けて欲しいんですけど。
長さは三尺ほどで、ある程度の強度を持たせるために、
鉄の作りは厚めにして欲しいんです。
詳しい図面は必要なら書きますけど。」
「ん~ちょいと難しいな、一応検討してみるけど作れんかったらかんにんな。」
「いいえ、できなくて元々だと思ってますから。」


流石に火縄銃に使える銃身は、
この恋姫世界で異常な技術力を持つ李典さんでも無理かな。
量産も出来ないだろうから、
私の護身用に一丁欲しいと思ったのだけど どうも難しそうだ。
一丁だけあっても火薬を作れなければ鈍器としか意味のない物だから、
奪われても私以外使いこなすことは出来ない。
これから乱世に向かう可能性がある以上、
私の武力を補う何かが必要なのだが、今のところ火薬しか無い。
なにか他にいい物があればいいのだが・・・


このあと私は李典さんとお風呂の構造等について話し、
そのあとはお店の営業の方に戻っていった。


午後になり、曹操さんと桂花が戻ってきたので、
昼食を用意しようとしたが、董卓さんの所でご馳走になってきたらしい。


「曹操さん、陛下や董卓さんはどうでしたか?」
「はっきり言って予想外ね。
董卓があんな娘だとは思わなかったし、
陛下もまだ幼い面が見えたけど、双方とも芯はしっかりとしている。
なかなかおもしろそうな娘達だったわよ。」
「そうですか。」
「真桜はなにかおもしろい話を喜媚から聞けた?」
「はい、華琳様!
陳留のお風呂が今よりも大分使いやすくできそうです。」
「あら、そう。
どう使いやすくなるかは後で聞くとして、期待してるわよ。」
「はいな!」
「お風呂と言えば曹操さん、今日家はお風呂の日なんですけど、入られますか?」
「当然入るわよ。
まさか、出先で風呂に入れるとは思わなかったわ。
せっかくだから堪能させてもらうわ。」
「はい、桂花も入っていってね。」
「えぇ・・だけどあんた、ここにもあのお風呂作ったの?」
「うん、許昌の鍛冶屋のおじさんに頼んで鉄の管作ってもらってね。
送ってもらったんだ。」
「そう、じゃあゆっくり汗を流させてもらうわ。」
「あら? あなた達一緒に入らないの?」
「・・・・人目がある時に一緒に入りませんよ。」
「じゃあ、喜媚は私と一緒に入る?
私、まだ貴方が男だって完全に信用できてないのよね。
裸を見れば納得できるのだけど?」
「嫌ですよ! 恥ずかしいですし。
曹操さんも少し恥じらいを持ったほうがいいんじゃないですか?」
「私は見られて恥ずかしい身体をしてないもの。」
「そう言う事じゃなくてですね・・・」
「冗談よ。 私だって簡単に男に肌を晒すほど恥知らずな女じゃないわ。」
「・・・まったく。」
「それよりお茶をもらえる?
食事はとってきたけど、洛陽を見て回る前に少し休憩したいわ。」
「はい、じゃあ、今用意します。」


こうしてお茶を飲んだ後、曹操さん達は三人で洛陽の視察に出かけていった。

夕食時に曹操さんが話していたのだが、
翌日、同じように視察し休養を取り、明後日、曹操さん達は陳留に帰るそうだ。


「そっか、随分短い逗留でしたね。」
「私も仕事があるから、そう長くココにいるわけにも行かないのよ。
桂花には残念だけど・・・喜媚が陳留に来れば全て丸く収まるのだけど?」
「残念ですけど、私も店を離れるわけにも行きませんので。」
「そう。 まぁ、今回はゆっくり話を出来ただけでよしとしておくわ。
貴方がどういう人間か見ることも出来たし。」


曹操さんが私をどう思っているか・・・
そう言われてみると気になったので、聞いて見ることにした。


「曹操さんの目には私はどう写りますか?」
「そうね、よくも悪くも民そのものね。
日々を穏やかに暮らしたいって言う言葉に嘘はないわね。
ただ、貴方のその中にあるモノはとても輝いて見える。
桂花や春蘭、秋蘭や真桜達みたいな才能の輝きじゃない、
知性・・・違うわね、知識ね。
まるで湯水の如く湧き上がる貴方のその知識は一体何処から来るのかしらね?」
「・・・あはは。」


余計なことを聞くんじゃなかった。
桂花もそうだが、曹操さんはこの短期間で私の異質さを見抜いているようだった。


(これだから曹操さんにはできるだけ会いたくなかったんだ。)
「今 私に会いたくなかったって考えてるでしょう?」
「そんなこと無いですよ?
曹操さんのような綺麗な方にあえて嬉しくないわけ無いじゃないですか。」
「だったら余計なことは言わないほうがいいわよ?
うまく表情を隠しているけど、私を妙に褒めるから図星だって行ってるようなものよ。
そこは否定するだけに留めておくべきね。」
「・・ご忠告感謝します。」
「フフフ。」
「・・・・・・むっ。」


私と曹操さんが話していると、
桂花が私を睨んでくる・・コレは後でご機嫌取りが大変そうだ。


こうしてこの数日後、桂花達は陳留へ帰っていった。
短い間だったが久しぶりに桂花に会えて、
触れることができたことで、自分の桂花に対する気持ちを再確認することが出来た。

ただ・・・桂花が去り際に私の耳元で、
「隠れて浮気したら殺すわよ。」
と呟いていったので、浮気するつもりはないが 迂闊なことは出来ないなと、
改めて心に誓ったのだった。


  1. 2012/09/21(金) 14:08:17|
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四十七話


洛陽




この日は朝起きた時から胸騒ぎがしていた。
何かとんでもないことが起きるような、そんな胸騒ぎが・・・


「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・あの、お茶のおかわりとか・・・は。」
「いらないわ。」
「喜媚様、結構です。」


今、私の店の個室でこうしてお互い睨み合っているのは、桂花と劉花ちゃんだ。

何があったかというと・・・話は簡単なのだが、
以前 桂花から書簡で書かれていた通り、曹操さんが洛陽に来たのだ。
曹操さんは 「久しぶりに会ったんだから色々積もる話もあるでしょう?
終わるまで待っててあげるから 話してらっしゃい。」
と言い 表の座席で李典さんと一緒にお茶とお菓子を楽しんでいる。


「・・・・・で? この女は何なの?」
「・・・・この方が荀彧様ですか・・・・フッ。」
「アンタ今私(の胸を)見て笑ったわね!」
「いいえ、そんな事はありませんよ?
喜媚様の幼馴染の方と会えて嬉しくて頬が緩んだだけですよ。」
「あ、あの・・・・」
「なによ!?」
「ひっ・・・こ、こっちの方は劉花ちゃんと言って、
以前、洛陽で揉め事が起きた時に、
ちょっと色々会って私が助けることになったんだけど・・
その辺のことは書簡で説明してあったと思うけど。」
「そう・・・それがこの女なのね。」
「えぇ、私は喜媚様に命を助けられて、
そのご恩返しにこうして 一緒に暮らして お世話をしているのです。」
「くっ・・私も一応自己紹介しておこうかしら。
私は荀文若、喜媚と 子供の頃からずっと一緒に 過ごしてきて、
少し前に とても深い関係 になったの。
今は華琳様、曹孟徳様の所で軍師をしているわ。」
「・・・・そんなっ!? 喜媚様!?」
「な、なに!?」
「荀文若様とはどういう深い関係なのですか!?」
「どういうって・・・」
「男と女の関係と言ったらわかるかしら?」
「・・・・っ!?」
「あ~・・・えっとその、まぁ、そうなんですけど。」
「なんでそういう大事な事を、もっと早くおっしゃってくれなかったんですか!!」
「いや、だって、そんな人に吹聴するようなことでもない・・ですし。」
「くっ・・・でも今は一緒じゃ無いんですよね?
・・・別れたんですか?」
「違うわよ!
ちょ、ちょっと色々あってお互い生き方を模索しているところなのよ。」
「つまり、今は婚約関係にあるとかではなく、ただの幼馴染という事ですね。
生き方を模索しているという事は、
お互い別々の道を歩んでいらっしゃると言う事ですね。」
「・・・そ、それが何よ。」
「いいえ、喜媚様も人間ですもの、たまには過ちを犯すこともありますね。
過ちを許して 相手の過去を受け入れてこそ、夫婦は長続きするものですわ。
そう思いませんか? 荀文若殿?」
「何が言いたいのよ・・・あんたはただの使用人でしょう。」
「今 は そうですわね。
将来はどうなるかわかりませんけど。」
「くっ・・・・」
「むっ・・・・」


怖い、女同士の話し合いって怖いよ。
私は何も悪い事してるわけじゃないのに、
すごい罪悪感を感じる。

桂花とはちゃんとした関係なはずだし、
劉花ちゃんと浮気したとか そいうわけでもないのに、
なんで私がこんな胃の痛い思いをしなくちゃいけないんだろう。

劉花ちゃんが私の事をどう思っているかくらいは察しがついているつもりだけど、
桂花と私の事をもう少しはっきりというべきだったんだろうか?

二人のにらみ合いは続いていたが、
そんな中、今は救いの女神とも言える曹操さんが、個室の扉を開けてやってきた。


「あなた達まだやってたの?
桂花、いい加減私達に喜媚を紹介なさいな。」
「・・・はい、華琳様。」
「劉花ちゃんは、お茶を入れなおしてきて。
冷めちゃったから。」
「・・・はい。
(喜媚様、荀文若様の事はあとで 詳しく 話を聞かせてもらいますから。)」
「(・・・はい)」


一度個室から出て、店の方に向かい、曹操さん達が座っている机に皆で座る。

劉花ちゃんがお茶を入れなおして来て、再度各々の紹介からやり直す。


「私の紹介は知ってるからいいわね、
この子は真桜、李曼成ウチで武官をやってもらってるわ。」
「ご紹介にあずかりました李曼成いいます。
李典と呼んでくださって結構です。」
「よろしくお願いします、私は胡喜媚です、喜媚と呼んでください。
この店の主をしてます。」
「やっぱりあんたが! 話は聞いてますで、
あの春蘭様と秋蘭様がいる眼の前で、華琳様に身体を要求したとか!」
「ブフゥッ・・・コホッコホッ・・・どんな話ですか!?」
「あら、事実じゃない。」
「あれは、あの時は事情があってそうしたんであって、
本気で曹操さんの身体を要求したわけじゃないですよ。」
「でも、身体を要求したのは事実なんや!
ほんま、どんなすごい豪傑や思うたら、こないな可愛い娘やなんて。」
「あの、私一応男なんですけど。」
「あぁ、すんまへん。
男やっちゅうのは聞いてたんやけど、どう見ても女の子にしかみえんから。」
「もういいです・・・」
「せやけど、よう生きてましたな、あの春蘭様の目の前でそないな要求して。」
「まぁ、曹操さんが止めて下さったお陰ですよ。」
「あの時はそうせざるを得ないからしょうがないわよ。
私は何を言われても怒らないって約束したわけだし。」
「もうあんな思いは二度とごめんですよ。」
「あら? でもそのおかげで桂花を抱けたんでしょう?
男を見せたってところかしら。
三日後に桂花が私の所に来た時はすごかったわよ?
完全に腰が砕けてて なんとか立っていたけど、
わずか三日でただの生娘がああも色気だつ女に変わったかと思ったら・・
私、思わずそのまま桂花を閨に連れ込もうと思ったもの。」
「華琳様!」
「無理矢理は流石に勘弁して下さいよ?」
「今は そんな事しないわよ。
私にも責任ってものがあるんだから。」

(つまり立場や責任がなかったらやるのか・・・)

「アレから桂花を何度か閨に誘ったんだけど、
良い返事がもらえなくて・・・やっぱり貴方と一緒じゃないとダメみたいね。」
「私は三人一緒とかそんな趣味無いですよ。」
「大丈夫よ。 人間慣れるものだから。
春蘭や秋蘭も最初は戸惑ってたわ。」
「そんな話聞きたくありませんし 慣れたくありません。」
「あら? 男なら好きそうな話題じゃない?」


このままだと曹操さんのペースになりそうなので、私は無理やり話を切り替える。


「それで、今回はなんのためにいらっしゃったんですか?
献帝様のお祝いですか。」
「そうよ。 漢の臣民として当然のことよね。」
「で、本当は?」
「董卓を見定めるのと、貴方を勧誘するのと、桂花の気晴らしにね。」
「随分と正直に教えてくれるんですね。」
「貴方は見当ついてるでしょう?
これから身内に誘おうという人間に偽りを言って心象を悪くしてどうするのよ。」
「残念ながら私はこの店の事があるので、
曹操さんの仕官のお話は受けられませんよ?」
「今日は私の意思を伝えるだけだからいいわ。
私は 諦めない って事だけわかってもらえれば。」
「私なんてその辺にいる農家の息子ですよ。
曹操さんのお役になんか立てませんって。」
「あら、桂花から色々聞いてるわよ。
貴方が作った算盤、アレもいいわね、私も使わせてもらってるけど、
随分使いやすくなってるわね、今まであったものとは大違いよ。」
「基礎を作った人は違いますよ、私は真似しただけですから。
それに大体基礎は前からあったものですし。」
「そうね、でもあそこまで使いやすい物は今までなかったわ。
お陰で仕事がはかどってるわ。」
「それは良かったです、もともと桂花に贈ったものですが、
曹操さんのお役に立てたのなら。」


曹操さんは一旦お茶を飲んで、店の中をぐるりと見回した後・・


「一つ 相談なんだけど、
この店、二階に空き部屋がたくさんあるわよね?
さっき外から見たところ従業員が全員住んでいるとしても、
明らかに屋敷の規模が大きいわ、庭まであるようだし。
そこで相談だけど 私達が洛陽にいる間、ここに泊めてくれないかしら?
宿代は出すし、貴方はその間桂花を好きにできるし、
それに真桜に話を聞かせてやってほしいのよ。」
「李典さんですか?」
「はいな。」
「この娘、ウチでは絡繰りと言うか、工兵もやってるんだけど、
手先が器用でね、桂花の算盤を見てから作った人の話を聞きたかったらしいのよ。
今回真桜を連れてきた理由がそれなんだけど、その辺の話を聞かせてやってほしいの。
貴方が ただの店の主 なら問題無いわよね?」

(私と董卓さんの繋がりに気がついているのか・・?
流石は曹操さんか。)

「う~ん、ウチは宿屋じゃないので、
たいしたおもてなしも出来ませんし、食事は私達が食べるものと同じ物になりますが、
それでもよろしいですか?」
「良いわよ。 桂花に聞いたところだと貴方 料理もうまいんですって?
期待してるわよ。」
「あんまり期待されても困るのですが・・・でしたら部屋を用意させますが、
三部屋でいいですか?」
「二部屋でいいわ、桂花は貴方と一緒でいいでしょう?」
「か、華琳様!?」

「だ、ダメです!!」


給仕をしていた劉花ちゃんがいきなり私達の話に入ってきた。


「あら? 貴方は?」
「この子は劉花ちゃんと言って、ウチで働いてもらっている娘です。
もともとこの屋敷は彼女の両親の物で、
私が彼女を助けた時にお礼として譲り受けたものなんですが、
彼女は両親を失って天涯孤独になってしまったので、
ウチで一緒に暮らしてるんです。」
「ふ~ん、でもただの従業員なら、店主の決定に口を出すべきじゃないわよね?」
「・・・・むっ!」


劉花ちゃんは裙子(スカート)を握りしめ悔しそうにしている。


「いいわよね? 桂花。」
「・・・・」
「あの劉花って娘・・・」
「喜媚と一緒の部屋で結構です!」
「いいそうよ。」
「あの、私の意見は・・・」
「あんたの意見なんて無いのよ!
私と一緒にあんたの部屋で寝る!
それでいいわね!?」
「・・・・はい。」


こうして曹操さんが洛陽に滞在している間、
ウチの店に泊まることが決定してしまった。

下手に断って董卓さんとの繋がりを疑われるのもまずいし、
久しぶりに桂花と過ごせるというのも今の私には何よりもうれしい事だ。

それに李典さんがいるのなら、お風呂の配管の事で相談したら、
いい話を聞けるかもしれない。
兵器の話をされたらぼかしておいて、
平和利用できるものに関しての話だけにしておこう。


この日は曹操さんが来たということで、
従業員の一人に屯所に行ってもらい、
董卓さん達にしばらく家に来ないように言付けして。
曹操さん達をもてなすために 少し豪華な料理とお酒を出したのだが、
料理の方はなんとか曹操さんを納得させられたのだが、
何点かダメ出しされてしまった。

あと、お酒の出自を聞かれて、私が作ったものだと言ったら、
是非製法を教えるか 譲って欲しいと言われたが、
とりあえず陳留に帰る時に数本譲ることで納得してもらった。

その日は久しぶりに桂花と一緒になれたということで、
いろいろ愚痴を言われたが、お互い、少々燃え上がってしまい、
翌朝、曹操さんにからかわれる事になる。
私の家の壁が厚く作ってあってほんとうに良かったと思った。
後で賈詡さんにお酒とお菓子を差し入れしておこう


翌日、曹操さんは宮殿に向かい、協ちゃんとの面会の予約を取り付け、
その後は洛陽を見て回っている。

現在の洛陽の統治方法は、私と桂花、郭嘉さんで考えたものに合わせて、
私の知恵袋の知識も導入されているので、
桂花ならすぐに私が関与しているとわかるだろう。
今夜桂花に何を聞かれるか恐ろしくてたまらない。


その夜・・・


「どういうことよ。」
「な、何がでしょうか?」
「とぼけんな! あんた董卓の統治に手を貸してるわね!
私と一緒に生きる道を探さすんじゃなかったの!?」
「・・・色々桂花には話せない事情があるんだけど。
コレは私なりに考えた最善なんだよ。
荀桂さんから聞いてるかもしれないけど、
この先、この国は戦乱の世に巻き込まれるかもしれない。
その前に董卓さんの手によって この国が安定すれば、
私と桂花が争うこと無く、いずれは一緒にこの国のために働いていけると思ってる。」
「・・・・何があったのよ?
あんた、アレだけ政治に関わるのを嫌がってたのに。」
「・・・関わらざるを得ない状況に・・追い込まれた。
そうしないと大切な人達が不幸な目に遭うことがわかっているから・・・
もちろん桂花も含めて。」
「・・・どういうことよ?」
「コレは・・・曹操さんに話してもいいけど、
できたら桂花の胸の内に締まっておいて欲しい。
これから先、董卓さんは袁紹さん、美羽ちゃんのが主導して、
反董卓連合が組まれる可能性がある。
先の霊帝崩御、何進様暗殺、丁原さん暗殺、宦官の粛清、
董卓さんが横から掻っ攫うように何進さんの地盤を継ぎ、
今や最大勢力なっている。
宦官の粛清を実行した袁紹さん達や生き延びた宦官達が、
このまま黙っているとは思えない。
でも、彼女達の勢力じゃ、董卓さんを討てないし、
討とうとしたら陛下に弓を引くことになる。」
「・・・・」
「ならばどうするか? 討つ理由を作ればいい。
例えば董卓さんが陛下を蔑ろにして洛陽で暴政を行なっている。
なんて噂を立てて。
そして連合を組んで皆で董卓さんを討てばいい。」
「・・・だから先手を打って董卓の善政の噂を流しているのね。」
「うん、しかし反董卓連合が組まれると この国は戦乱の世に突入する。
だから私はそれを防ぐために董卓さんに内政分野で手を貸して、
それを防ごうとしている。
コレを防げたら最低数年から数十年は国が安定する。
その間に董卓さんや、曹操さんの様な善良な諸侯達にこの国を中から変えて欲しい。」
「・・・・」
「私と桂花、今は立場は違うけど 同じ道を歩んでいけないかな?
将来董卓さんと曹操さんが同盟でも組めたら、
一緒になることもできるかもしれない。」
「・・・・難しいわね、華琳様は覇道を歩まれる覚悟をしてらっしゃるし、
私もそれに共感している。
この国を変えるには、外から変えるしか無いと・・・」
「桂花 今が最後の機会なんだ、
袁紹さん達が宦官を宮中から排除してくれた今こそが!」
「わかってるわよ!
・・・・だけど、私は華琳様に忠誠を誓ったのよ。
そう簡単に忠義を変えるわけには行かないわよ。」
「・・・そっか。」
「・・・ホント、なんでこんなにうまく行かないかな。
あんたと一緒に生きる事が・・こんなに障害が多いなんて。」
「・・・・なんでかな・・・」

「・・・・ねぇ、何があったの?
何があったらヘタレなあんたがそこまでの覚悟をしなくちゃいけないことになるの?」
「それは・・・・」
「言えないの?」
「桂花には言いたい・・・知ってほしい。
でも曹操さんに知られると・・・・」
「・・・・そう、じゃあ聞かない。
私が聞いたら華琳様に聞かれた時に言わなくちゃいけ無くなるから・・・」
「ごめん。」
「いいわよ、私も政治に関わってるんだから、
身内でも言いたいけど言えない事がある事くらいわかってるわ・・・
だけど・・・今は一緒にいて。」
「うん。」
「せめて私がここにいる間だけは離さないで。」
「うん、桂花・・・愛してる。」
「・・・・・・久しぶりね、アンタにはっきりそう言われるの。」
「そうだね。」
「・・・・・私も・・・その、す、好きよ。」
「うん。」
「・・・もっと嬉しそうにしなさいよ。」
「嬉しいけど、なんか気恥ずかしくて。」
「私だって・・・そうよ。」
「うん。」
「・・・・・今だけは全てを忘れさせて。
今だけでいいから。」
「うん、私も今だけは桂花だけを感じていたい。」
「私も・・・・」


・・・・・・・


  1. 2012/09/21(金) 14:07:14|
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四十六話


洛陽




洛陽を董卓さんが統治するようになり、
様々な制度を導入し 以前の洛陽とは違い、
徐々に一般の民にも笑顔が見られるようになったある日のこと、
桂花から定期的の送られてくる書簡に気になることが書いてあった。

いつもはお互いの近況報告と 早く陳留に来い!
と書かれた竹簡で構成されているのだが、
今回の竹簡にはそれ以外に、近い内に曹操さんと一緒に洛陽に来るかもしれない。
と 書かれてあったのだ。


(曹操さんが洛陽に来る?
なんでまた・・・まぁ、曹操さんや桂花に、
今の洛陽を見てもらうのはいいのかもしれないな。
反董卓連合が結成されたら曹操さんは連合に与しそうだが、
今の洛陽を見たら考えを変えてくれる可能性が少しは増えることになる。)


反董卓連合が結成された時に備えて、董卓さんや賈詡さんは、
様々な対策を行なっている。
洛陽の平穏な統治、細作や行商人を使っての情報戦、
董卓さんによる より多くの諸侯や豪族との面会、
特に以前より親交があり、漢という国や皇帝にに対して忠誠の高い馬騰さんとは、
より親密にしてもらうようお願いしてあるし、
私も華陀を紹介して馬騰さんの治療をお願いしてある。
恩を売るようであまりいい気分はしないが、
少なくとも民が戦に巻き込まれるよりははるかに良い。

それに私が劉花ちゃんを引き取り、董卓さんに協力するようになってから、
妙に左慈が私に協力的なのだ。
まぁ、理由はわかっている。
董卓軍が勝てば北郷一刀君に一矢報いる事ができるからだろう。
頻繁に私の所に来ては、「手が必要ではないか?」 と聞きに来るのだ。
今まで母さんに指示でもされないか、
私から接触しようとしない限りそんな事なかったのだが、
協力的なのは良い事なので、そのまま協力してもらうことにしている。

私も今では一刀君に勝たせるわけには行かなくなった。
劉備さんと董卓さんは仲良くやっていけそうだとは思うが、
原作知識を元にすると 今の董卓さんと 今の劉備さんでは決定的な違いがある。
君主としての覚悟が違う。
董卓さんは劉花ちゃんが誘拐されたあの日から覚悟を決め、
この国を立て直し、理不尽な死が無く、
民により良い暮らしをしてもらうことを目標にしている。
そのためには戦うことも辞さないと覚悟を決めているが、
原作通りの劉備さんならまだ、そこまでの覚悟は持ってないはずだ。
直接会って話しをしたわけではないので
もしかしたら一刀くんや愛紗ちゃんがうまくやって、
そういった君主としての覚悟を持つことができているのかもしれない。
それに自ら領地を持つことで主君としての心構えが出来たかも知れない。
そうならば董卓さんと劉備さんはきっとうまく協力してやっていけるはずだ。
だが そうでない原作通りの劉備さんならば、今の董卓さんと会わせるのは 危険だ。


最近になって周泰ちゃんも私のお店に来てくれた。
しばらく会えなくて心配していたが、
黄巾党の後始末やらで追われていたらしい。
寿春の方もかなり畑やらに被害が出ているようで、
周瑜さんが苦労しているようだ。
その周瑜さんだが、少し前に華佗の診察を受けたようで、
やはり身体を患っていたらしく、治療にしばらくかかったが無事に完治したらしい。
反董卓連合や、私が洛陽に住むことになってしまい、
当時とは立場が違ってしまったが、それで彼女の死を願うなんてことは出来ないので、
とりあえず完治してよかった。
周泰ちゃんによると 周瑜さんは、
私に会ったら是非お礼を言いたいと言っていたそうだ。


さて、問題は曹操さんだ。
曹操さんは目指す所は同じなのだが 手段が決定的に違う。
そして目的達成のためには覇道を突き進む彼女は、
反董卓連合が結成されれば必ず参加するだろう。
そして参加しつつ いつでも董卓陣営に着くことができるように、
準備をしてくるだろう。
桂花もいるし曹操さん自身の能力も高いこともあり それが可能なのだろうが、
できる事なら最初から董卓さんの陣営について欲しいが・・・おそらく無理だろう。

地理的な問題で、曹操さんが反董卓連合時に最初から董卓さんに付いたら、
まず最初に潰されるのは、より袁紹さんや美羽ちゃんに近い陳留の曹操さんだからだ。
曹操さんが汜水関よりも内側か西の諸侯だったら、
最初から董卓さんの味方になってくれるかもしれないが、
陳留の場所を考えると彼女は連合に参加せざるを得ない。

最も反董卓連合を組ませないことが一番いいのだが、
橋瑁の件や十常侍の張譲がまだ捕まってないいし、
死体も確認できていないらしいので安心できない。
史実では橋瑁は反董卓連合結成に関わっている。
できる限り早急に居所をはっきりさせて捕らえたいのだが、
あまりうまくいってない状況だ。


孫策さんについてはあまり心配していない、
現状彼女達は美羽ちゃんの配下扱いだし、
彼女達は母親の孫堅の天下統一の夢と言うよりも、
呉の民の安寧が優先されると私は考えている。
反董卓連合が結成されればその隙を突いて美羽ちゃんを裏切るかも知れないが、
結成されなければ機を伺うだろう。
適当な所で、董卓さんが支援する形で独立できれば、
董卓さんの味方になってもらうこともできるだろう。
美羽ちゃんには悪いが、彼女の統治、と言うよりも、
彼女の取り巻きの統治では民が苦しむことになる。
美羽ちゃんが本当に幸せになるには、いっその事、
袁家の呪縛から解かれたほうがいいのかもしれない。
コレは私の勝手な意見で、本人は否定するかもしれないが、
彼女は幼くして持たされた権力に縛られているので、
そこから開放したほうが彼女らしい生き方ができると思うが、
そう思うのは私のかってな想像なのかもしれない。


さて、話を最初に戻して、当初の問題は曹操さんが何を目的に洛陽に来るのか?
と言う事だろう。
名目上は新しい献帝のお祝いと言うことらしいのだが、それだけで来るはずがない。
私が目的とも思えないし、桂花がゴネたか?
董卓さんの顔を見に来るのか?
又はそれら全てか?

現状では情報が少なすぎて判断がつかないので、
この件関しては後手になりそうだが、
董卓さん達とよく話をしておいたほうがいいだろう。
場合によっては反董卓連合結成の可能性の話をして、
連合側を裏切ってもらうようにほのめかして置くのもいいだろう。




--荀彧--


今私達は陳留の城で朝議を開いている。


「華琳様、例の洛陽へ陛下のお祝いに行く件ですが、日程が整いました。
貢物の手配のほうも滞り無く進んでいます。」
「そう、ご苦労様。
ご褒美に今夜閨でかわいがってあげましょうか?」
「それは春蘭に言ってやってください。」
「よく言ったぞ桂花! 華琳様!!」
「春蘭は自分の仕事で功績をあげてから来なさい。」
「そんなぁ~・・」
「・・・ふぅ、やっぱり桂花はあの子も一緒じゃないとダメみたいね。」
「しかし、華琳様、本当に洛陽に行かれるのですか?」
「もちろん行くわよ、秋蘭。
陛下が即位されたのに漢の臣下としてお祝いに行かないわけには行かないでしょう?」
「・・・それだけですか?」
「もちろん違うわよ、最近変な噂が流れてるのを知ってる?
董卓が統治するようになって洛陽は以前とは比べ物にならないほど住みやすくなった。
董卓様は素晴らしいお方だ。
不正を働く役人が完全に排斥されて賄賂を払わずに済むようになった。
こんな感じかしら桂花?」
「はい。」
「それを確認しに行くのですか?」
「違うわよ、問題は、董卓が統治するようになって数ヶ月しか経ってないのに、
こんな噂が流れる事よ。
どんなに董卓が優秀で、麗羽の馬鹿が忌々しい宦官を殺して回ったとしても、
数ヶ月でこんなに代わるものかしら?
代わるはずはないわ。
ならば意図的に噂を流している者がいるはず。
間違いなく董卓ね。
そしてその噂に真実味を持たせるために、
今董卓は必死になって洛陽で善政を敷いているのでしょうね。
ではなぜ、そんな噂を流す必要があったのか?
それを確認するのと、董卓の顔を見に行くのよ。
私の覇道に立ち塞がる者なのか、董卓に何処まで先が見えているのか確かめにね。」
「そうですか、しかし連れて行くのが、
桂花と新人の真桜だけというのはいささか不安です。
せめて姉者か私を連れて行ってくれませんか?」
「ダメよ、秋蘭には私がいない間の陳留を頼まなきゃいけないし、
春蘭は陳留防衛の要よ、まだ凪達では不安が残るわ。
あの子達はこれから伸びていくのだから。」
「しかしそれだったら桂花は?
桂花を置いて私を連れて行って下さったほうがいいのではないですか?」
「あら、秋蘭 桂花の恋路を邪魔しようっていうの?
洛陽には桂花の愛しのあの子がいるのよ?
そんなんじゃ馬に蹴られてなんとやらよ。」
「か、華琳様!!」
「そういう意味ではありません。」


くっ、私をからかうためにわざとあんな事を言う華琳様も華琳様だが、
あっさり流す秋蘭にも腹が立つ。


「冗談よ。 桂花をつれていくのは確認のためよ。
あの子が今洛陽に居て 洛陽から動けないとか言ってるらしいけど、
細作によると 董卓の洛陽運営にはウチで使ってる方策や、
今後 使う予定の屯所を運用するために、
用地確保をして兵の訓練をしているらしいわ。
そんな事ができるのは 私が知るかぎり桂花か、
桂花の幼馴染の郭嘉、それに喜媚、あの子よ。
誰かが董卓についている可能性があるのなら確認する必要が有るわ。
後は そろそろ桂花を喜媚に合わせてあげないと色々と問題があるのよ。
桂花の部下の男が桂花の口撃で再起不能にされてるらしくてね、
何とかしてくれって上申が来てるのよ。
喜媚に会わせて抱かれれば少しはおとなしくなるでしょう。
ねぇ、桂花。」
「くっ・・・私は何も特別なこと言っていません。
事実をありのままに口にしただけです!」
「ほら、このザマよ。
あの子はどうやって桂花をうまく扱っていたのか 是非とも聞いてみたいわ。」
「はぁ・・そういう事なら。」
「後最近 麗羽のバカが何やら企んでるらしいから警戒しておいて。
いきなり攻めてくるなんて事は無いと思うけど、
麗羽は何をしでかすかまったく予想がつかないから 警戒はしておいて。」
「わかりました。」


こうして朝議は終わり、私は今日の仕事を片付けるために執務室へ行く。


(フフフ待ってなさいよ喜媚! どんな馬鹿なことやってるかわからないけど、
今度は首根っこ掴んででも陳留に連れて帰ってやるから!)




--喜媚--


「・・・・・ビクッ!?」
「どうしました喜媚様、そんなに怯えて。」
「い、いや、今なんかすごい悪寒が背筋を走ったから。
何も嫌なことがなければいいけど・・・」


今背筋を走った悪寒は、昔桂花が悪巧みをした時の感じに似ていた・・・
まさか、桂花がなにか企んでいるのでは・・・


「ち~っす喜媚、邪魔するでぇ。」
「張遼さん、いらっしゃいませ。」
「ん? どないしたんや変な顔して?」
「いや、ちょっと嫌な予感がしたので。
幼馴染が悪巧みしてる時に感じたような悪寒が・・・」
「喜媚の幼馴染って荀彧っちゅ~奴やろ?
陳留のおるはずなのに、ここ洛陽でなんかできるわけあらへんやん、考え過ぎやって。
そ れ よ り も 早速一杯くれへんか?
もちろんつまみ付きで!」
「張遼さん・・・ウチ酒屋じゃなくてお茶と軽食を売ってる店なんですけど。」
「そんな固いこと言わへんと、
やっと仕事が終わったんやから一杯くらいええやんか。」
「本当に終わったんですか?
この間みたいに賈詡さんが怒鳴りこんでくるのは勘弁して下さいよ?」
「今度はほんまやって、詠にも確認取ったし、
今日はもう仕事上がってええって言うたし、今日は飲むでぇ~!」
「飲むって言ってもそんなにお酒ありませんよ。
許昌から送ってもらった分しか無いんですから。」
「今度輜重隊の行軍訓練で許昌までの往復の行軍訓練でもやろうかな?」
「止めてください!」
「冗談やって、流石にウチも酒のために軍を動かすなんてせぇへんよ。
今日は酒も自前で持ってきたし、喜媚は摘み作ってくれへんか?」


そう言って張遼さんは持ってきたお酒の入った壷を机の上に置く。


「しょうが無いですね、個室のほうでおねがいしますよ。
まだ営業中なんですから。」
「分かった分かった、ほな、頼むでぇ~。」


張遼さんは度々こうやってウチを居酒屋扱いして、
奥の間仕切りの向こうの個室で飲んでいく。
時には華雄さんや賈詡さん、董卓さんも参加していくのだが、
そのおかげで、ウチでは酒も出すのか?
と聞いてくるお客がいて困っている。

劉花ちゃん安全上 一般のお客にお酒を出すわけには行かないのだが、
こうもしょっちゅうやってきて家で酒盛りを開かれると、
誤解するお客が増えて困るのだが、その辺賈詡さんはどう考えているのか・・・

私はとりあえず簡単に作れる摘みを作って張遼さんの所に持っていく。


「はい、出来ましたよ。」
「お~、待っとったでぇ!」
「・・・そもそも なんで張遼さん達は家で酒盛りを開くんですか?
賈詡さんも家でお酒を出すのは反対していたくせに、
夜家に来てお酒を飲んでいくんですけど。」
「そんなんきまってるやん、喜媚が作るツマミが美味いからやん。
それに宮中だと決まった時間にしか食事が出ぇへんし、
つまみ作ろうにもウチらで料理うまい人間が喜媚か月しかおらへんし。
月に作らせるわけにもいかんからココに来るんや。」
「・・・皆さん少しは料理覚えてくださいよ。
陳宮さんは少しはできるんじゃないですか?
呂布さんの面倒見てるんですから。」
「音々はあかん、お子様やからウチらが酒盛り開く時間には寝てるか仕事やらな。」
「まったく・・・・女性がこれだけいて料理もできないなんて。
劉花ちゃんでも最近は簡単な料理をできるようになりましたよ。」
「ほんまかいな!? ・・・や、やっぱり少しくらいは出来たほうがエエのんかな?」
「そうですね、出来ないよりは出来たほうがいいと思いますよ。」
「肉焼くのは得意やねんけど・・・」
「今度機会があったら教えますから、炒飯くらい作れるようになりましょう。」
「う~ん、難しくないか?」
「簡単ですよ、材料切って炒めるだけですから。
調味料はきっちり計った分順番に入れるだけですから、
すぐに出来るようになりますよ。」
「ほんなら少しくらいはやってみよう・・・・・・・・・・・・・・・かな?」
「・・・すごく長く考えた上に疑問形ですか?
まぁ、いいですけど。」
「まぁまぁ、今はええやんけ、喜媚の料理が冷めてしまうから、
食べて飲んでから考えようや。」
「はぁ・・・」


結局このあと華雄さんも来て二人で夜まで飲んだ挙句、
彼女達は二階に泊まっていった。


  1. 2012/09/21(金) 14:06:14|
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四十五話


洛陽




董卓さんが何進さんの地盤を引き継ぎ、
洛陽を治めるようになって数ヶ月で、大きく変わったことがある。
それは町の見回りをする警備兵をよく見るようになった事だ。

民が安心して生活できるようにするために、まずできる事の一つとして、
町の警備を増やし、治安を回復する事だ。
袁紹さん達によって、悪政を働く一部の古参の宦官が排斥された事で、
若くてこの国の未来を憂いている宦官や文官、武官を採用し、
屯所を作るための下準備を進ませる間に、
警備隊を再編成し町の巡回を以前よりも細かくするようになった事で、
犯罪を未然に防ぐ事に尽力した。


それと均田制を導入する事だ。
均田制とは、税金を払えない人達や戸籍のない流民等に戸籍を与え、
最低限の衣食住を保証する代わりに、
洛陽周辺の荒れた土地を開墾し畑として利用できるようにし、
収穫の一部を税として収めさせる。
一代限りの畑と、一定の面積の範囲内の畑なら世襲を認めさせる畑の二種類があり、
流民に戸籍を登録させ、きちんと納税させるための制度だ。

一部豪族が、荘園運営のために人を雇っていたのだが、
その多くは流民で戸籍を有していない者を安い賃金で雇うことで、収益を上げていた。
しかし、袁紹さんの宦官の粛清の時に 自分達も粛清の対象になるのでは?
と 恐れた豪族達は囲っていた民を放逐するか、戸籍を入れさせ税を収める事で、
自分達はきちんと法を守っていると言う姿勢を示す態度をとる者などが現れた。

放逐された民は均田制の導入に伴い戸籍を得て、
衣食住を保証される代わりに洛陽の民としての地位と責任を得ることが出来たが、
中には悪質な豪族なども居て、
荘園で雇っていた民を 『処理』 しようとした者達もいたが、
その場合は私財没収や犯した罪によっては死罪まで適用して、厳重に処罰された。

均田制には 志願者が殺到し一時混乱したが、
なんとか無事に志願者全員分の耕作地の確保ができるようで、
コレは宦官や豪族から没収した私財の中に土地なども含まれていたため、
それをそのまま流用したり、
荒地を開墾させることで志願者の雇用を確保することが出来た。

まずは 基本は 今まで通りの農法で農作業を行なってもらうが、
許昌で採用している農法等も一部取り入れ、農業指導もしているため、
来年以降の税収は期待できるだろう。


更に雇用を生み出す為に、汜水関や虎牢関、函谷関、孟津港の、
防備を固めるための増改築工事で人を雇い、
洛陽内での当時、冷遇されていた職人達に、資金援助などで支援することによって、
職人の数を増やす試みも進行させた。
この増築工事に伴う設計案では、私の知恵袋から出した策も導入してもらい、
汜水関、虎牢関の二つの関は更に強固な関へと変わっていった。


衣食住が満たされ、治安も良くなれば人の心も穏やかになっていく。
こういった董卓さんの内政努力により、
これから数年で、洛陽内は以前とは比べ物にならないほど活気に満ちた、
まさしくこの国の首都に相応しい都市へと変貌していく。

しかし、今はまだ、その第一歩が始まったばかりである。


さて、そうなってくると忙しくなるのは賈詡さん達、文官なのだが、
嫌な忙しさではなく、明るい未来への努力なので、
意外にストレスは溜まってはいないのだが、そこはやはり人間だ。
どんなに良い仕事をしていてもストレスは溜まるので、
その発散方法を個々で色々考えるのだが、賈詡さんの場合は、
董卓さんとのお茶会か、私のところに来ての未知の知識の吸収と・・・愚痴と酒だ。


「だからね、ボクは言うのよ、あんたもこんな店やってないで、
宮殿に来てボクの仕事を手伝いなさいって!!」
「はいはい、そうだね、賈詡さんはすごく頑張ってるよ。
賈詡さん達のお陰で私達は安心して暮らしていけるんだから。」
「それがわかってるならボクの仕事を手伝いに来なさいよ!」
「だから、私がこの店を離れたら劉花ちゃんが心配でしょ?
護衛の人達がいるとはいえ、まだ、彼女は精神的に落ち着いていないんだから。」
「だったら一緒に宮殿に来ればいいじゃない。」
「だから、劉花ちゃんが宮殿内をふらふら歩いてたらみんなびっくりするでしょ?
大怪我で治療中の前皇帝陛下が宮殿内で見つかったらダメじゃない。
それに劉花ちゃんにとって宮殿は嫌な思い出が多すぎて安心できないから、
わざわざ私に着いてきてここで一緒に暮らしてるんでしょ?」
「だったらあんただけでも手伝いに来なさいよ。
あんたの新式の算盤がまともに使えるのは今のとこ、
あんたとボクと音々しかいないのよ!」
「皆に教えればいいじゃない。」
「そんな時間あったら仕事するわよ!」


こんな感じの話が彼女が眠くなるまで延々とループするのだ。
正直彼女にあのお酒を飲ませたのは失敗だった。
最初は美味しいお酒でも飲めば気休めになるかと思って薦めたのだが、
一般に流通しているお酒よりもアルコール度数が強いため、
お酒にそれほど強くない彼女はすぐに酔ってしまうのだ。
そして眠くなるまでひたすら愚痴る。

まぁ、彼女は酔った時の状況が 記憶には残るタイプのようなので、
翌朝、バツの悪そうな顔をして二階から現れる彼女が結構可愛いので、
愚痴を聞くくらいならいいのだが、
そんな彼女の様子を見ていると、ふと桂花の事を思い出してしまう。
書簡でやり取りはしているが、やはり会えないと寂しいもので、
自分でもここまで桂花が好きだったのかと 改めて驚いている。


「・・・・・」
「・・・そ、そのおはよぅ。」
「・・あ、おはよう賈詡さん。」
「・・・・ふんっ。」
「どうしたの?」
「なんでもないわよ!」
「?」


この日 賈詡さんはなぜか機嫌が悪かったが、次に会う時には元の機嫌に戻っていた。


さて、洛陽の宮殿を出て町に住んでいるとはいえ、
私と協ちゃん達が疎遠になったかというと そういった事は無い。
数日おきに洛陽の宮殿に劉花ちゃんと一緒に協ちゃんや、董卓さんを尋ねるのだが、
私が以前、協ちゃん達に用意してもらった書簡では、
効果が強すぎると言うか、兵がびっくりしてしまうので、
新たに董卓さんに立ち入りの許可証を発行してもらい、それで宮殿に立ち入っている。


「協ちゃん久しぶり~元気?」
「おぉ! 喜媚か、よう来たのう。
ほれ董卓よ、今日はもう仕事は止めじゃ。」
「陛下、そうはまいりません。
まだ、本日中に決裁をいただかないと行けない書簡が残っているのですから・・・
でも・・・丁度キリもいいので 少しくらいなら休憩してもいいですね。」
「じゃから董卓は好きなのじゃ~!
コレが賈詡じゃったら 「仕事が終わるまでおあずけです!」 じゃからのう。」
「フフフ、詠ちゃんらしいです。」
「では、お茶を用意させますね。」
「あ、お菓子は私が作ってきたのがあるからお茶だけでいいよ。」
「はい、わかってますよ。
私も喜媚さんのお菓子、楽しみですから。」
「姉様! 市井の暮らしはどうじゃ? 楽しいか?」
「えぇ、皆さんよくしてくれますから楽しいですよ。」
「そうか! よかったのう。
妾も喜媚の店に遊びに行きたいのじゃが、賈詡がうるさくてのう。」
「賈詡さんも劉協の為を思って言っているのですから、
あまり無茶をいってはいけませんよ?
私もできるだけ来るようにしますから。」
「うむ!」
「それにしても劉協は大丈夫ですか?
・・・私の代わりに嫌なことを押し付けてしまったみたいで。」
「妾は姉様が元気でやっておるならそれで良い。
それに姉様が皇帝だった頃と違うて、随分と風通りが良うなった。
妾もそれなりに自由な時間をもらっておるしのう。
逆に姉様に悪い気がしてならぬ・・・
姉様には最悪の時期に皇帝をやらせてしまったからのう。」
「そんな事無いですよ。
私も劉協が元気でやっているならそれでいいですから。」
「うむ!」
「さぁ、二人共話はお茶をしながらでもできるから、
一緒にお菓子でも食べながら話そう。
今日は新作で出す予定の試作品のお菓子だよ、
遥か西ではマドレーヌって言うお菓子だよ。」
「おぉ、喜媚の新作か! 楽しみじゃのう。」
「董卓さんもどうぞ。多めに作って来ましたから、余ったら皆で食べてください。」
「ありがとうございます。」


私達はちょっとしたお茶会を開きながら、
お互いの近況やこの国の将来の形等を話し合う。
董卓さんと協ちゃんはやはり謁見に来るお客が多いことを愚痴っていた。
今でも董卓さんに賄賂を渡そうとする者や、
自分の息子を婿として出そうとする者がいるようで、
董卓さんも対応に困っているそうだ。


「董卓もはよう婿を取ればそういった輩も減るのじゃがのう。
婿を取る予定はないのか?」
「へぅ、ありませんよ! それに詠ちゃんがそういうことにはうるさくて、
なかなか男の方と話す機会もなくて、
それに私も男の人はあまり得意ではなくて・・・」
「喜媚とは普通に話せておるではないか?」
「喜媚さんはなんか、同年代の方と雰囲気が違って話しやすいんですよ。
その・・・容姿の事もありますし、あ、すいません。」
「・・・董卓さん、一応言っておくけど好きでこの格好してるんじゃないからね。」
「わ、わかってますよ、何回も聞かされましたから!」
「わかってもらえてるならいいんだよ。」
「そうなると董卓の婚期も遅れそうじゃのう。
言うておくが喜媚はいかんぞ、喜媚は妾と姉様で婿にもらうのじゃから。」
「ブフゥ・・・ケホッケホッ・・・な、何言ってるの協ちゃん!?」
「何もふざけた事は言うておらぬぞ? のう、姉様。」
「し、知りません!!」
「姉様は初心よのう、そんな事では他の女に喜媚が取られてしまうぞ?
ほれ、喜媚には幼馴染の荀彧がおったじゃろう。
アレに取られてしまうぞ?」
「そう言う事は喜媚様がお決めになることですから・・・」
「そんなんじゃダメに決まっておるじゃろう。
喜媚も子を沢山残さんといかんから荀彧を妾にするくらいなら許してやるが、
本妻は妾か姉様のどちらかから選ぶのじゃぞ?」
「本気にしても冗談にしても性質が悪すぎるよ!」
「もちろん妾は本気じゃ。」
「余計に悪いよ・・・賈詡さんが聞いたら、
私が去勢されるかもしれないから、絶対に賈詡さんの前で言わないでよ!
董卓さんも賈詡さんに告げ口とかしないでよ?
私は協ちゃん達をどうこうしようとか思ってないんだから。」
「わ、分かりました。」
「姉様、喜媚の守りは硬そうじゃぞ。
まずは外堀から埋めていかんといかんようじゃ。」
(・・・・・・劉協、わかってますね?)
(うむ、まずは賈詡を何とかせんとな。)
「何をコソコソと二人で話しているの?」
「なに、女同士の秘め事というやつじゃ。」
「そうですよ、姉妹の語らいです。」
「?」


何やら二人が怪しい雰囲気を醸し出しているが、大丈夫だろうか?
とにかく二人の今後の動きには気をつけよう。
私も賈詡さんに去勢されたくはない。


洛陽の宮殿に協ちゃん達を尋ねた帰り、武官の人達が訓練している訓練所に寄って、
華雄さん達の様子でも見ていこうと予定していたので、
劉花ちゃんと護衛の人達とで訓練所の方に向かった。

私は以前から張遼さんに 密かにお願いしていることがある。
華雄さんの猪突猛進振りを何とか出来ないか? という事だ。

原作恋姫では華雄さんを張遼さんが抑えきれずに汜水関で出てしまい、
汜水関での戦闘で愛紗ちゃんに討ち取られるか、敗北して敗走するのだが、
今回、この外史でそれをやられると非常に困るので、
今の内から矯正できないか、張遼さんに相談しておいたのだが・・・・


「まだまだぁ!! 呂布もう一戦だ!!」
「・・・お腹すいたからヤダ。」
「飯はさっき食ったばかりではないか!」
「華雄の相手してたらお腹が減った。」
「恋殿! 厨房から肉まんを貰って来ましたぞ!」
「音々! お前は仕事があったやんか! 仕事はどないしたんや?」
「仕事よりも恋殿の空腹の方が一大事です!」
「・・・詠に言いつけるから覚悟しとくんやで。」
「し、仕事に戻るです!!」
「・・・なんか変な時に来ちゃいましたか?」
「ん? おぉ喜媚か、丁度休憩する所やからええで。
ほら、そんなところに突っ立っとらんと、
劉花様も一緒にこっちに来て一杯やりいや。」
「流石に昼間からお酒は飲みませんよ。それよりこっち飲んでください。
私が作った蜂蜜水のような物です、運動とかで汗をかいた後に飲むといいですよ。」


私は張遼さんがお酒を注ごうとしていた器に、蜂蜜水のような物を注ぐ。


「どれどれ・・・へ~ほんのり甘くて飲みやすいな。
お~い華雄、呂布もこっち来てコレ飲んでみいや。」
「なんだ?」 「飲み物?」


私は、伏せてあった茶器に 果実水を注いで二人に渡す。


「コレはなんだ?」
「運動などで汗を書いた後に飲むといいものです。
汗とともに失った身体の塩分や水分、栄養を補給するのにいいんですよ。」
「・・・ゴクゴク。」


呂布さんは私の説明を聞く前にもう飲んでいた。」


「・・・おいしい、もう一杯。」
「はいはい。」
「ふむ、確かに飲みやすいな、体に染み渡るような気がする。」
「運動すると水分と塩分を消費しますから、
兵の人達の訓練後にも水分補給と一摘みの塩を舐めるだけでも随分違いますよ。
ですから兵の調練後は水分補給はしっかりしてあげてくださいね。」
「ふむ、分かった。」


華雄さんは戦時はどうか知ら無いが、普段は意外に素直に私の話を聞いてくれる。
特に兵達のためになるような事だと 積極的に話を聞いてくれるので、
彼女が普段どれだけ部下を大切にしているのかがよく分かる。
もちろん、コレは張遼さんや呂布さんも同様で、
兵のためになる事だったら積極的に取り入れてくれている。


「しかしこの間、賈詡から聞いた盾を使った歩兵訓練はどうもいかんな。
防御しながら攻撃というのがいかん。
やはり先手必勝一撃必殺こそ 武の目指すところではないだろうか?」
「皆が皆華雄さんみたいに強いわけじゃないんですから、
アレで許昌では兵の生存率がかなり違うんですよ?
幾ら華雄さんが強くても数の力には勝てませんよ。」
「前にもその話はしたが、一人で二人倒せば倍の数にも勝てるではないか。」
「同じく、前にも話しましたが、
それで死んだり怪我を負ったらどうしようもないですよ。
二人か三人で一人を確実に倒してそれを三回繰り返せば同数、
六回繰り返せば倍の数の兵を安全に倒せるじゃないですか?
実際訓練して証明してみせたじゃないですか、
私の指示通り指揮する部隊対華雄さんの部隊の兵で、
その時は私の指揮する兵が勝ったでしょう?
個人戦ならともかく集団戦は如何に効率的に敵を倒すかです。」
「むぅ・・・」


実際、盾を使った戦法を華雄さんに受け入れてもらうのに、
模擬戦を行ったのだが、私の部隊は盾をつかって敵の突撃を抑えつつ
短く扱いやすい戈で突き刺すと言う戦法だったのに対して、
華雄さんは剣や斧を持った部隊での突撃だった。
両方共華雄さんの部隊の兵なので練度に違いはないが、
私の部隊はとにかく味方同士で守りあって後の先を取る戦法に徹した結果、
模擬戦終了時の損耗率は 私の指揮した部隊の方が圧倒的に少なかったのだ。

賈詡さんや陳宮さん達も実際見に来ていて、
この戦法のいいところを取り入れてもらいつつ、改善点を指摘してもらっている。


「とにかく、あの時負けたら賈詡さんの指示通りの訓練を、
受けるという約束なんですから、約束通り訓練してくださいよ。」
「それはわかっている。
私とて部下達には生きて戦場から帰ってきてもらいたい・・・
だが私の戦のやり方ではないからどうもなぁ。」
「そこは華雄さんが一騎打ちでもする時に華雄さんらしい戦い方をしてください。
部下の皆には生きて帰ってくる事を叩きこんでください。」
「うむぅ・・・」


色々消化でききれてないところもあるようだが、
コチラの指示は聞いてくれているのでいいだろう。
後は華雄さんに煽り耐性が付けば申し分ないのだが・・・


「ほら、華雄次はウチと勝負や。
呂布とやったばっかで疲れてへたれてる言うんやったら、
少しは待ったってもええで?」
「なにを!! この程度疲れた内にもはいらん!!
その減らず口たたっ斬ってくれる!」


まだまだ、先は長いようだ。
と言うか、煽り耐性無さ過ぎます華雄さん・・・


  1. 2012/09/21(金) 12:48:13|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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四十四話


洛陽




「あんた劉べ、劉花様に接客をやらせるつもりなの!?」
「私達も止めたんだけど、本人がやりたいって聞かなくて・・・」
「すいません賈詡様、私もこれからは市井の民として生きる以上、
ただ、この店で座っているだけというのも辛いのです。
喜媚様に無理にお願いして、接客を習っているのですがダメでしょうか?」
「劉花様・・貴女の身を守るためにも出来れば控えていただきたいのですが。」
「すいません、でもどうしてもやりたいのです。
今までのように ただのお飾りではなく、自分の手で 何かをやりたいのです。」


賈詡さんは劉花ちゃんの表情を見ているが、
劉花ちゃんの表情は真剣そのもので 折れる様子はない。


「・・・・喜媚、アンタわかってるわね?
もし劉花様に何かあったら・・・」
「わかってるよ。
だから警備の人にも常に劉花ちゃんに付いていてもらうようにお願いしてあるから。」
「・・・何か問題があったらすぐに他の者達に言ってくださいよ?
劉花様に何かあったら、ここにいる全ての者が罰せられる事になるのですから。」
「はい、無理をして皆の足を引っ張るような真似をするつもりはありません。
皆さんにもお願いした時にさんざん言われましたので。」
「はぁ~・・分かりました。
重ねて言いますが 何か問題が起こったら すぐさま兵が対応しますから、
そういった時は劉花様は兵の指示に従ってくださいね。」
「分かりました。」
「それとあんた、ちょっと来なさい。」
「ん? なに?」


賈詡さんに個人的に呼ばれた私は部屋に隅の方に連れて行かれる。


(いい、あんた。 間違っても劉花様に手を出すんじゃないわよ。
指一本触れるんじゃないわよ!
そんな事をしよう物なら即、去勢するわよ。)
(出さないって! さすがにその辺の分別はついてるよ!
だけどさすがに指一本触れずには無理だよ・・・)
(それくらい細心の注意を払えって意味よ!
特に劉花様はあんたにベッタリな所があるからどうなるか想像もつかないわ。
正直、今一番の不安要素はあんた達なんだからね。)
(だから劉花ちゃんにはなにもしないって。)
(約束したわよ、もし破ったら・・・・・もぐわよ。)
(わ、わかってるって。)


こうして、賈詡さんになんとか許可を貰い、
劉花ちゃんも一緒に働けるようになったのだが・・・実際 本当に大丈夫だろうか?
今まで見たところ物覚えはかなりいいみたいだから大丈夫そうだが、
最初はあまり本格的に経営をするのは止めたほうがいいだろう。

こうして、劉花ちゃんも含めて兵の皆にもお茶の入れ方や接客を覚えてもらい、
料理の得意な人には厨房での仕事に回ってもらいながら、
開店準備を進めていった。


さて、私が開店準備を進める中でも そんな事お構いなしにやってくる人達がいる。

その筆頭がまず賈詡さんに陳宮ちゃんだ。
この人達、董卓陣営の中では比較的常識が有りそうなのだが、
自分の欲望に直っすぐな人達でもあった。

董卓さんに対する彼女の対応から見てもわかるのだが、
彼女を大事にしすぎるあまり、原作では軟禁に近い状態で、
洛陽運営時にも ほとんど彼女を人に会わせることが無かったはずだ。
それ故に原作では劉備陣営に逃れる事が出来たのだが、
この外史でもその本質は変わっていないようで、
どこまでも自分の思いに真っ直ぐなのだ。

陳宮ちゃんもそうだ。
呂布さんに対する態度は董卓さんに対する賈詡さんと同系統のモノだ。


何が言いたいかというと、この二人、
空いてる時間を見つけては私のところにやってきて、
私から許昌運営の話を聞いたり、洛陽運営や防衛戦時の討論をしていくのだ。


「あのね賈詡さん、陳宮ちゃん、話をするのはいいんだけど、
時間っていうものを考えてくれないかな?」
「しょうがないじゃない、ボクも忙しくてなかなか時間が取れないんだから。」
「音々もそうですよ、それに喜媚の話を聞かないと洛陽での内政に滞りが出るのです。
許昌での統治方法や屯所の件では喜媚の知識が頼りなのですから。」


そう、今はもう日が沈んで夕食も終わり、
これから寝ようと言う時間に兵に護衛させて彼女達がやってきたのだ。

結局この日は深夜まで彼女達の話に付き合わされ、
彼女達は自分用に用意した部屋に泊まっていった。


それ以外では武官の三人衆だ。
華雄さんは単純に劉花ちゃんの護衛役として私を鍛え、
張遼さんは面白そうだからと付き合い、
呂布さんは私が強くなるのは良い事だという 善意で来るので、
張遼さん以外は断りづらい。

結局この三人が来ると程々にボコボコにされるので、
その日は仕事にならない。

こうして私の店の開店準備は外的要因で進まないことが多かった。


私達が店に引っ越してから、二十日ほどでようやく試験的に、
董卓さん達を招いてプレオープンに持ち込むことが出来た。
この日ばかりは協ちゃんもどうしても自分も行くとゴネにゴネて、
結局 賈詡さんが折れることになり、協ちゃんも来ている。
従業員の制服は裾の長いチャイナドレスで、
劉花ちゃんだけは中に裙子(スカート)を穿いて素足が出ないようにしている。
私は厨房なので普段通りの猫耳服にエプロンだ。


「はい、お待ちどうさま。
今日のお茶は劉花ちゃんが入れたお茶だよ。」
「お~姉様が入れたお茶か!」
「な! こ、これは恐れ多い事です!」
「賈詡さんには何回かもう飲んでもらってるよね。」
「そうね、他の従業員も含めて合格点を出せる程度にはなってるわね。
もちろん劉花さまのお茶も贔屓目なしで採点しているわよ。」
「アッハハ 国広しと言えども 前陛下の入れたお茶が飲めるのはココだけやな。」
「笑い事じゃないわよ、本来なら不敬もいいところなんだから。」
「私は気にしませんので、どうぞ、お茶を楽しんでください。」
「きょ、恐縮です!」


華雄さんだけが妙に硬くなっているが、
皆お茶を一口飲んだ所で賈詡さんと私達以外驚いた表情をする。


「へぇ~、ウチはお茶のことはよう解からんけど、美味しいやんか。」
「そうですね、私も自分でお茶を入れますけど、ここまで美味しくは無理です。」
「・・・・恐れ多くて あ、味が解からん。」
「・・・・ゴクゴク。」
「恋殿! お茶はそんなに一気に飲まれるものではありませんぞ。」
「ふむ、だいぶ安定して入れられるようになったみたいですね劉花様。」
「はい、練習しましたので。」
「劉花ちゃんを厨房に立たせる訳にはいかないからね、お茶を任せたんだよ。」
「姉様が入れてくれたお茶は初めて飲んだが美味しいのう。
これからも飲みに来るかのう。」
「劉協様は今回限りです。
次回以降飲みたいのなら、劉花様を宮殿に呼んでからにしてください。」
「良いではないか、すぐ目と鼻の先なのじゃから、ここまで来るくらい。」
「ダメです!」
「賈詡は頭がかたいのう、そんなんでは嫁き遅れるぞ?」
「大きなお世話です!!」
「はいはい、今度は私が作った料理を食べてみてよ。
ウチはお茶とお菓子と簡単な飲茶でやっていこうと思ってるから、
こっちの味も大切なんだから。」


そう言って私は従業員の皆と、皆の前に料理を並べていく。


「お~喜媚の作った菓子か!
久しぶりじゃのう。」
「久しぶり? あんたまさか以前に劉協様に食事を食べさせたことがあるの!?」
「前に何度かね。」
「あんた・・・バレたらそれだけで とんでもない事になるわよ。
毒見もしてない料理を陛下に出すなんて・・・」
「喜媚が妾に毒を盛るはずがなかろう。」
「そういう問題じゃありません!
陛下の安全のためなんです!」
「賈詡はほんに頭が硬いのう。」
「はいはい、話はいいから冷める前に食べてみてよ。」
「はい、それでは頂きます。」
「饅頭みたいに柔らかいが、甘い匂いがするな、どれ・・」
「おぉ~、甘くて美味しいのじゃ~!」
「本当ですね、これは蜂蜜ですか?」
「そうだよ、許昌のウチでとれた蜂蜜を送って貰ったんだ。
それを生地に練り込んで仕上げに上から少しかけた、
餡の入ってない饅頭みたいなものだよ。
遥か西の方ではパンっていう食べ物なんだけどね。」


今回私が作ったのは蜂蜜を練りこんだパンを一口大に焼いたものだ。
コレならオヤツ代わりになるし、持ち帰りもできるし、
洛陽には無いタイプのお菓子なので、当たれば結構な売り上げになるだろう。


「後は簡単に出せる飲茶だよ、饅頭とか胡麻団子とかね。」
「ふむ、コレなら大丈夫そうね。
お菓子とお茶ならこの洛陽では 客もそんなに多くなさそうだし、
食べに来る客は富裕層だから多少高く値段を設定しても大丈夫でしょうし。
私達が泊まりに来た時は普通に食事やお酒は出すんでしょ?」
「出すけど、宿代わりに使わないでよ。
ただでさえ賈詡さんは勝手に自分用の部屋作っていったんだから。」
「アレは私の部屋じゃないわよ、客間よ。」
「よく言うよ、陳宮ちゃんと一緒に、
本とか荷物とか替えの服も持ち込んできてるくせに。」
「音々もしょうがないのですよ、
必要な事をするのに必要な準備をしているだけなのです。」


この娘達に口で勝つのは不可能なので早々にあきらめることにする。


「喜媚の菓子は相変わらず美味いのう。
のう呂布よ。」
「・・・うん。 おいしい。」
「呂布さんは・・・美味しそうだね。」
「・・・・モキュモキュ。 ・・・・うん、おいしい。」
「へ、へぅ~・・・恋さん、私の分も食べますか?」
「呂布よ、私の分も食うか?」
「・・・・うん。」


呂布さんは頬いっぱいに食べ物を詰め込んでいる。
その様子に見とれた董卓さんと華雄さんが、
自分の分のお菓子を呂布さんのお皿に移しては、
呂布さんの口の中に消えていく。


「なぁなぁ、喜媚ぃ~酒は在らへんの?」
「ウチはお茶屋であって酒屋じゃありません。」
「そんな事言う手も自分達で飲む分くらいあるやろ?
せっかくの喜媚の店の開店祝いの席なんやから、ちょっとくらいええやんか~。」
「・・・一杯だけですよ。」


そういって私は奥から許昌から送ってもらった日本酒を出す。
後に、私はこの行為を後悔する事になる。


「はい・・・本当に一杯だけですよ。」
「わかってるって、お?
なんやコレ、水みたいに透き通ってるけど、匂いはかなりええ酒みたいやん。」
「家で作ったお酒です。
蜂蜜と一緒に送ってもらったんです。」
「どれどれ・・・っんく・・はっ~!
なんやこれえらいきっつい割に飲みやすくて美味い酒やなぁ!」
「家の母がコレが飲みたいってうるさくて・・・
数年がかりでなんとか再現したお酒です。」
「なぁ、喜媚これもう一杯頂~戴!」
「ダメです。 一杯だけっていう約束です。」
「そないな殺生な! こんな旨い酒一杯だけやなんて・・・」
「コレは私が自分用に取り寄せたんですからダメです。」
「こんなうまい酒一人で楽しむつもりなんか!
そりゃあかん! この神速の張文遠! ウチが絶対許さへんで!!」
「そんな大げさな・・・」
「ウチの分も! ちゃんと代金は払うからウチの分も取り寄せてぇなぁ。」


そう言いながら張遼さんが胸を押し付けてすり寄ってくる。


「ちょ、張遼さん! 胸が当たってますって!」
「ん? 喜媚も男の子やなぁ♪
なぁなぁ、お願いやからウチの分も取り寄せてぇなぁ~。」


張遼さんは更に胸を押し付け、首筋に顔を埋めるようにしながら、
私の耳元で甘えた声でお酒の催促をしてくる。


「あんた達! 陛下達の前で何やってるのよ!!」
「あだっ!」 「痛たっ!」


そんな私達に賈詡さんが拳骨を落としていく。


「いったぁ、私はなんにもやってないじゃない。」
「霞に言い寄られて鼻の下が伸びてたわよ!
何よ! そんなに乳がでかいのがいいっていうの!?」
「鼻の下なんか伸びてないって・・・張遼さんにはお酒を催促されてたんだよ。
それに胸の話なんかしてないじゃない。」
「お酒? あんたアレ霞に飲ませたの!?」
「祝いの席だからって、家には今料理用以外はあのお酒しか無いし。」
「あんなもの霞に飲ませたらそうなるに決まってるじゃない。
・・・まったくしょうがないわね。」
「なんや? 詠はもしかしてウチより先にアレ飲んだんかいな!
・・ずりゅいで!!」
「ずりゅいって、少し口調がおかしくなってるわよ。
私は、喜媚の所に泊まった時にちょっと貰っただけよ。」
「・・・嘘つけ、その後 張遼さんと同じように催促したくせに。」
「なんか言った!?」
「いいえ、何も。」
「・・・ならウチも今日から喜媚と一緒にココで暮らす!!」
「ダメに決まってるでしょ!!」
「せやったらどうやったら このお酒をもう一回飲めるようになるっちゅうんや!」
「泣きながら言う事じゃないでしょう・・・
もう、しょうがないわね。
喜媚、霞の分も取り寄せてやってちょうだい。
お金は霞の給料から引いてあんたに渡すから。」
「そんなんせぇへんでもちゃんと代金は払うって。」
「ウチにもそんなに量があるわけじゃないんだけど・・・」
「だったら多めに作ればいいじゃない。
代金は出すから・・・霞が。」
「そりゃないで詠!」
「冗談よ、でも飲む分は出すから作ることは考えておいて、
・・・ボクも もう少し飲みたいし。」
「・・・はぁ、わかったよ。」


結局この数カ月後、
二人以外にもお酒を口にした人達や、
あの董卓さんも一緒になって要求してきた事で、
ウチの庭に小さい酒蔵が建つ事になるのであった。


こうして、ウチの店のプレオープンは一部問題もあったが順調に終わり。
本番のオープンを迎えることが出来た。


まずは本来ならプレオープンの時に呼ぶべきだった、
近所の顔役の人達を無料で招待し、
その後、一般のお客をいれ始めたのだが、最初はそれほどお客は入らなかったのだが、
一度来てくれたお客がかなりの確率でリピーターになってくれたので、
最初の月はまずまずの売上だった。

賈詡さんにも コレ以上お客を入れると劉花ちゃんの保安上の問題があるので、
あまりお客を入れないように、と釘を刺された。


更に賈詡さんや陳宮ちゃん、華雄さん、張遼さん、呂布さんに董卓さんまで来るので、
その事が豪族達の間で話題になり、
私が何か董卓さんとの特殊な人脈があると考えた人達が、
店に訪れるようになった事で、一般の民には入りにくいが、
ある程度の富裕層の間では店主は董卓軍と人脈があり、
美味しいお茶や珍しいお菓子を出す店として、
そこそこ名が売れるようになっていった。


  1. 2012/09/21(金) 12:47:10|
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四十三話


洛陽




私が弁ちゃん達を助けて1月ほどだった頃だろうか?
とうとう私と弁ちゃん達が暮らす家の改修工事が終わったと聞いたので、
弁ちゃんは変装し、賈詡さんや護衛の兵達と一緒に見に行く事になった。

めったに洛陽の宮殿から出ることはない弁ちゃんは、
街の様子を見るだけで楽しいらしく、
辺りをきょろきょろと見回しているので、
護衛がいるとはいえ、
ほうっておくとはぐれて迷子になりそうだったので、
彼女と手を繋ぎ、一緒に歩くことにした。

洛陽の宮殿、正門から歩いて1分か2分くらいだろうか、
まだ、門が見えているような場所で急に賈詡さんが止まり、
それに合わせて私達も全員足を止める。


「ほら、ココよ。」
「・・・・え?」


そう言って賈詡さんが指をさした建物は、
洛陽の主要の通りが合わさる交差点の北西の角地で、
建物の作りは豪華な装飾はそれほどないが、
他の建物に劣らぬ大きさで、中もかなり広そうな庭付きの二階建ての建物だった。


「ほら、中に入るわよ。」
「本当にココなの?」
「そうよ、ホラさっさとついて来なさい。」


賈詡さんがその建物の中に入っていったので、
私達もついていき 一緒に入るが、
外はそれほど豪華な作りではなかったが、
内部はかなり良い材質の物を使っているのか、
置いてある机や椅子もケバケバしい豪華さではなく、
品のある、落ち着いた感じの物が多く、
置いてある装飾品等も同様で 落ち着いた感じの装飾になっている。


「どう? なかなか良い感じでしょ?
ボクが宦官共から没収した私財の中から選んだのよ。
内装もあまり派手なモノでは無く 落ち着いた感じで統一してあるし、
用意した茶器等もそういった物で統一させてあるわ。
一階には常駐する兵士の部屋もあるから お客の対応をする部屋は小さめなんだけど
これくらいアレば十分よね。
厨房も洛陽で最新の物を用意してあるわよ。」
「あの・・・賈詡さん。
私 家の希望を聞かれた時、
小さいこじんまりとしたもので良いって言いませんでしたっけ?」
「言ったわね。
だからこうして落ち着いた感じで、
机の数も減らしてあまりお客が入らないようにしてあるじゃない。
奥の間仕切りの向こうには個室みたいな感じで、
ボク達と落ち着いて話ができる場所も用意してあるのよ。」
「・・・いえ、そういうことではなくて。
はっきり言わせてもらいますと・・・なんでこんなに大きな店なんですか!?
ぜんっぜん小さくこじんまりとしてないじゃないですか!」
「当たり前でしょ!劉弁様がお住みになる家なのよ!
防犯上の事なども考えれば、
兵士を駐屯させる部屋も必要だし劉弁様を市井の民と同じ部屋に住まわせるつもり?」
「だからってこの立地でこの大きさはないでしょう?」
「仕方ないじゃない、宮殿から近くて、防犯上、兵士も駐屯できて、
向かいに屯所が用意できて、
劉弁様がお住みになるのに相応しい物件がコレしかなかったんだから!」
「だからって、こんな大きな店・・・おまけに広い庭までついてるし。」
「そこは諦めてもらうわよ。
劉弁様がお住みになる以上、それなりの作りは必要だし、
すでに工事も済ませたんだから。
防犯上襲われてもいいように、壁や扉は厚めにしてあるし、
劉弁様の部屋とあんたの部屋には隠し通路も用意したり、
色々大変だったんだから。 因みにお風呂もあるるわよ。」
「私はもっと小さな店でよかったのに・・・」
「すみません喜媚様、私のせいで・・」
「いや、弁ちゃんは悪くないよ。
融通の効かない賈詡さんが悪いんだから。」
「あんたがわがまま言いすぎなのよ!
何が不満なのよ! こんなにいい店あんたが生涯かかっても持てるかどうかって店よ?
それをここまでお膳立てしてただであげようって言うんだから、
感謝して欲しいくらいよ!」
「・・・はぁ、本当にこの店私が貰わないとダメなの?」
「ダメよ。 コレはあんたが陛下や劉弁様を助けた報奨の一部にもなってるんだから。
大体、あんたが月の配下になって官職を頂くか、
どっかの領主にでもなるかすればそれで済んだのに、
陛下の意向を尊重するにはあんたを月の配下にするわけにも行かないし、
領主として洛陽から出すわけにも行かない。
だったらそれ以外の物で報いるしか無いじゃない。
表には出せないことだけど、バレた時に中途半端な物で済ませたとなったら、
陛下や月の器量が疑われるんだから 黙って貰っときなさい!」
「・・・はぁ、桂花の時もそうだったけど、それしか無いのか。」


この国には受けた恩はそれ以上のもので返さないと、
恩を受けた側の器量が疑われるような風習がある。
だから桂花を助けた時も、宴席を開いてもらったり、
服を買ってもらったり、私塾に通わせてもらったり、
あげくには、荀桂さんは桂花をやってもいいとか言い出す始末。
コレで、皇帝陛下やその親族を助けたとなったらどうなるんだ?
董卓さんは何進さんの地盤を引き継ぐ形で官職を得たし、
張遼さんや華雄さんもそうだ、官職に宝剣や馬などを貰ったらしい。
そして私の場合はこの店と弁ちゃんと暮らす間の生活費に護衛の兵士だ。

とりあえず断れそうにもないようなので諦めて、
店の中を見て回るが、棚に置かれている茶器などはかなり良い物のようだ。


「賈詡さん、この茶器はどうしたの?
わざわざ買い揃えたの?」
「違うわよ。 この店に使われているものは建物以外、
ほとんど没収した宦官の私財から出したものよ。」
「へ~、こんないいものを揃えてたなんて、かなりいい暮らしをしてたんだね。」
「いい暮らしなんてものじゃないわよ!
酷いものだったわよ。
奴らから没収した私財の総額がいくらになるかあんた知ってる?
お金や塩などで洛陽の年間の税収の数倍はくだらないものだったわよ。」
「マジで?」
「? なにそのマジって言葉?
まぁ、本当よ。 お陰で洛陽の民の生活改善のための資金には当分困らないから、
ボクとしては予算で心配しなくてもいい分、少しは安心できたんだけど、
逆に言えばそれだけ宦官や権力者が好き放題やってたって事よね。」
「相当酷いことになってたんだね。」
「まぁね、だけどお陰で数年は予算には困ることはなくて済みそうよ。
その分 民に還元して行かなくちゃいけないし、
あんたが話してた 諸侯が連合を組んで私達を攻めてくるのを抑えるために、
色々やらなくちゃいけないのだけど、なんとか目処は付きそうよ。」
「そう・・それは良かった。
何としてもそれだけは防がなくちゃいけないから・・・」
「そうね、ボクもせっかく月が安心して暮らせる地盤を手に入れたんだもの、
絶対に守りきって見せるわ。」


それから賈詡さんの案内で二階に上がり、
私の部屋や、弁ちゃんの部屋などを見て回ったのだが、
弁ちゃんの部屋は他の部屋よりも倍の広さで、
内装もかなり豪華なものになっている。
私の部屋も今まで私が暮らしていた家などとは比べ物にならないほど豪華で、
弁ちゃんの部屋と隠し通路でつながっていたり、
外へ脱出できるような通路も有った。

それ以外にもたくさんの空き部屋が用意されており、
寝具も揃っているのだが、
コレは有事の際に兵が駐屯できるように と言うのと、
どうも賈詡さんが 私がこっちに移ってきても私の話を聞きに来るつもりのようで、
自分用の部屋をちゃっかり用意していた。
一階には言った通りお風呂もあったので、
許昌に手紙を書いて鍛冶屋のおじさんに鉄のパイプを頼んでおこう。
そうすればお風呂に入るのも多少は楽になるはずだ。


こうして、私達が今後住む 店舗兼住宅を見学した後、
宮殿に戻り今後の事を話すのだが、
問題は弁ちゃんの名前だ。
このまま劉弁と呼ぶわけにも行かず、
とりえず偽名を考えようと言う事になったのだが・・


「劉姓はこのままでもいいとボクは思うのよ。
結構劉姓の者は居るし、下手に全てをごまかすのもどうかと思うわ。
ご先祖様にも悪いだろうし。
それに名目上、劉弁様は喜媚に命を救われたお礼に家屋敷を贈って、
自分は居候と言う事になってるのだから、
それなりに格のある家柄ということにしておいたほうがいいと思うわ。
・・・っていうか居候じゃなくて、劉弁様が喜媚を雇ったって形じゃダメなの?」
「私は店の経営などまったくわかりませんし、
それに・・・・形式上とはいえ喜媚様の雇用主になるというのも。」
「共同経営で良いった言ったのに、なぜか弁ちゃんは嫌がるんだよね。
っていか今は名前の話ですよね?
姓は劉でいいとして名はどうしましょうか?」
「やはりそうなると名前ですね。
皆さん なにかいい案はありますか?」
「あまり変えるのもどうだろうか?
今の名前と同じ音の別の文字にしてはどうだ?」
「・・・・モキュモキュ。」
「それもいいですがやはり、
同じように りゅうべん と聞こえると混乱する者が出てくるですよ。
あぁ、恋殿、口の周りが汚れています。」
「だったらまったく別のモノの方が良いのかのぅ。
呂布よ、その肉まん一つ妾にもくれ。」
「・・・・・ん。」
「ふむ、市井の食べ物もうまいのう、賈詡、今度コレを三つほど買ってきてくれ。」
「陛下! 陛下がそのような物をお食べになるなんて!
毒見もしてないのですよ!?」
「呂布が食うておるではないか。」
「あ~~~~もうっ!!」
「詠ちゃん、落ち着いて。」
「ありがとう月・・・でもその片手に持ってる肉まんが全てを台無しにしてるわ。」
「なんでもええんちゃう? 偽名何やから間違わんようにすればなんでもええやん。
呂布、ウチにも肉まん一個頂戴な、酒だけでは口が寂しいわ。」
「・・・ん」


なぜか呂布さんが山のように抱えてきた肉まんを、
皆で食べながらの話し合いになっている。


「喜媚様は何かいい名前は無いですか?」
「そうだな・・・・花なんでどう?
元の弁と合わせると花弁、はなびらって意味になるし、
弁ちゃんの花が散る一瞬の儚げな感じの綺麗さと合うと思うよ。
花と言う言葉自体には これから咲き誇るっていう意味も含めて。」
「あ、あらあら・・・喜媚様・・・そんな皆の前で。」
「・・・あんた自然な感じで劉弁様を口説いてるんじゃないわよ!
そんな容姿で女を油断させといて口説き回ってるんじゃないでしょうね?」
「あ・・・ち、違うよ!
何かいい名がないかって言われたから考えただけで、
弁ちゃんを口説くとかそういう意味じゃ!」
「妾もなにか喜媚に名を付けてもらおうかのう。
市井を見て回る時に名乗る名前を。」
「陛下! 陛下が町を見て回るなどもってのほかです!」
「賈詡は固いのう、喜媚も言うておったではないか、
自分の目で見て体で感じて、今この国に何が必要か感じることが大切だと。
お主もその意見には賛成しておったじゃろう?」
「だからといって陛下が外を歩くのでは問題が大きすぎます!」
「ほんに賈詡は固いのぅ、そんなんでは嫁き遅れるぞ?」
「よ、余計なお世話です!
ボクは月と一緒にいられればそれでいいんです!」
「女同士とは、非生産的すぎるし良い趣味とは言えぬぞ。
女として生まれた以上子供くらいやはり産まぬとな、
よし、賈詡に子が生まれたら妾が名をつけてやろう。」
「え、詠ちゃん、私も女の子同士は・・・」
「陛下!!
月ぇ~、ボクはそんな意味で言ったんじゃないよ!?
月とはいい友達っていう意味で言ったんであって、
決して同性愛とか百合とかそういう意味じゃないからね?」
「フフッ冗談だよ、詠ちゃん♪」
「月ぇ~!!」
「董卓もやるようになったのぅ。」
「コレも陛下の教えの賜物です。」
「陛下! 月に余計なことを教えないでください!」
「妾はなにも余計なことは教えておらぬぞ?
ただ、董卓が面談に来る者達にどういう対応をすればよいか、
相談に来たからちょっと指南してやっただけじゃ。」
「なんでボクに聞いてくれなかったの月!?」
「聞いたけど詠ちゃんは 「適当に話を流して、
はっきりとした約束はしちゃダメよ!」
って教えてくれたじゃない。
忙しそうだったからそれ以上細かく聞くのも悪いと思って、
慣れてらっしゃる陛下にお聞きしたのだけどまずかったかな?」
「まずくはない・・まずくはないんだけど・・・っく!
恋! ボクにもその肉まん頂戴!」
「・・・もう無い。」
「うがぁ~~!!」
「ではとりあえず私の偽名は 『劉花』 と言うことで。」
「弁ちゃんがそれでいいなら、私はいいよ。」
「まぁ、いいんじゃないか?
花と言うのも私の華と似ていていいしな。」
「ええんちゃう?」
「きまりじゃな。」
「いいと思います。」
「・・・モキュ・・ゴクン。」
「いいのではないですか?」
「・・・・喜媚、後でなにか摘み作って、今日は飲むわ。」
「飲むのはいいけど この間みたいに私の部屋でそのまま寝るのはやめてね。
あの後みんなに誤解されて大変な事になったんだから。」
「わかってるわよ!」


こうして、弁ちゃんが町で使う偽名は劉花と言う事になり、
店への引越し準備も着々と進んでいった。

この頃からようやく桂花に書簡を出すのを賈詡さんに許されたので、
表に出せる事の経緯を説明し、しばらく洛陽に住むことを伝える。

表面上は、先の宦官粛清の折にどさくさに紛れて、
賊に襲われていた劉花ちゃんを助けたが、
両親は助けることが出来なかったため弁ちゃんは天涯孤独の身になってしまった。
お礼として両親の持っていた店を貰ったが、
劉花ちゃんの行く所がなかったので、
お店で一緒に働きながら 彼女が一人でも店をやっていけるように訓練をし、
将来的には店を彼女に返す予定だということにし、
桂花には説明しておいた・・・・のだが その返答で帰ってきた書簡には、
大きな文字で 「馬鹿! さっさと陳留に戻って来い!!」
と書きなぐられてあっただけだった。

その数日後に 数日して落ち着いたのか、
心配かけさせるな、もっと早く連絡をよこせ、
早く会いに来い、要約するとこんな感じの内容の書簡が届いたので、
私も早く桂花に会いたいけど、今は洛陽を離れられないのでしばらく待って欲しい。
といった内容の書簡を送っておいた。


こうして私の洛陽での新しい家であり、
目標の一つであった 小さくはないが 茶店の主としての一歩が始まることになった。


『黒猫茶館』


店の名前はこれで決まり、
開店のために兵、あらため、
従業員と劉花ちゃんにお茶の入れ方や接客方法を教える日々が始まる。


  1. 2012/09/21(金) 12:45:59|
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雑記


こんにちは


先ほど三十六話から四十二話まで投稿しておきました。


>>るーふぁさん
誤字の指摘ありがとうございました・
修正しておきました。

>>こーさん・yosaku さん
まずは、こーさん誤字の指摘ありがとうございました。
それとyosakuさん、お二人に残念(?)な話なのですが、
今は私生活の時間と恋姫SSの更新作業で手一杯で、ネギま!SSのほうの修正作業や、
後日談を書いている時間がありません。
申し訳ありませんが、修正項目は後で直しますし、後日談の方も、
後で増やす予定ですので、今はご容赦ください。


たいち

  1. 2012/09/20(木) 03:56:20|
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四十二話


洛陽




予定通り 弁ちゃんは怪我の治療という名目で、
皇帝を辞し、協ちゃんが新たな皇帝、献帝となり、董卓さんが洛陽を統治。
袁紹さん、美羽ちゃん達には褒美として官位と幾らかの金銭が渡されたが、
明らかに不満そうであったが、宮中を血で汚した事もあり、
表立って文句を言ってくる事はなかった。


その間、私と弁ちゃんは洛陽の宮中の一室で、
賈詡さんの指示で ほぼ軟禁状態にされていた。
私や協ちゃんはともかく、弁ちゃんの姿を人に見られるとまずいのと、
洛陽の統治のための準備や、取り押さえた宦官達や協力者の取り調べ、
私財の没収、政務に必要な書類の整理、軍部の掌握、等
仕事が山積みだったというのと、
さらに賈詡さんが私の所に昼夜問わず訪れては、
許昌での農法、内政、軍務の事を聞きに来るため、
私がすぐ近くにいたほうが良いとの事だった。
一応、私が務めていた食堂の大将には、
賈詡さんがうまく言い含めておいてくれたようだ。

それと並行して、私と弁ちゃんが一緒に暮らすための家を探してくれているようで、
私が以前 弁ちゃん達に将来、小さなお店を開きたい。
と言っていたのを覚えていたようで、
賈詡さんに店舗と住宅が一緒になった家を探すように指示し、
家事態は宦官から没収した私財の中で 良い物件があったのだが
護衛のための兵が泊まる場所を作るためや、
防衛のための改築工事などをしているようだ。
さらに洛陽で以前桂花と話していた屯所、所謂交番制度を洛陽で導入するようで、
私と弁ちゃんが一緒に住む予定の周辺の家を買い取って、
屯所にし、私達の護衛のための兵を常駐させるとの事だった。

一時、私が店を運営すると言った時に、
弁ちゃんが 「じゃあ私も手伝いますね♪」 と言ったため、
前皇帝を市井で働かせるなんてとんでもない!
と董卓さん達が猛反発し、その案は廃案にし、
どこか屋敷に住んでもらおうという話もあったが、
ソレだったら、以前十常侍がやっていた軟禁状態での政権掌握と同じではないか?
と言う理由と、私が生活費を稼げ無いし、
弁ちゃんも普通の人と同じような暮らしがしたいと言うので、
店の従業員を全員董卓軍の女性兵で固める事、
外出時には必ず護衛を数名付ける事を条件に、許可が出た。
一応生活費の方は全額、董卓さんが出してくれるというのだが、
将来的には生活費を貰わなくてもやっていける程度には稼ぎたい。


董卓さん達が洛陽、この国の改革に勤しんでいる中、
私と弁ちゃんは 比較的穏やかな日々を送っていた。

協ちゃんは面会を求める来客が尽きないために、
日中はほとんど部屋に戻ってこないのだが、
私達は賈詡さんが文官を連れて 私に話を聞きに訪ねてくるくらいで、
それ以外の来客は完全に無い。
コレは弁ちゃんを人目に晒さないためなのだが、
流石にずっと部屋に軟禁されていると気が滅入るので、
そのあたりの事を賈詡さんに相談した結果、
弁ちゃんを変装させ警備を付けた状態でなら、
庭園までなら出てもいいとい言う事になった。

弁ちゃんの警護についている兵は あの日、
洛陽から弁ちゃん達二人が拐われた事件に参加していた兵の中から
賈詡さんが選び抜いた女性で構成された警備隊で、
この人達は、私と弁ちゃんが洛陽市街に移っても一緒に住む事が決まっている兵達だ。
護衛の訓練も兼ねているので行動できる範囲は限られているが、
それでも部屋に軟禁されているよりはよっぽどいい・・・のだが、
私達が庭園でまったりしていると、
私の話を聞くために賈詡さんがやってきて 私を引っ張っていくので、
あまり長くゆっくりできるものでもない。


「あんた 本当に今まで荀文若の使用人やってたの?
どっかで文官か軍師やってたんじゃないの?」
「本当だって、私はただの使用人だったんだって。」
「だったら荀文若はよっぽどの間抜けか、
あんたを抱え込むために外に出さなかったのか。
・・・前者はないわね、彼女の評価からするとありえないわね。
大体なによその四則演算とか新型の算盤とか言うの、ボクにも使い方教えなさいよ!
こっちが予算の計算でどれだけ苦労してるのか知ってるの!?」
「教えるって、だけど今は洛陽の警備計画の話でしょう。」
「約束したからね! 絶対教えなさいよ!」


どうやら私の知識は彼女の知識欲を刺激してしまったようで、
空き時間さえ有れば賈詡さんは私のところにやってきてプチ討論会を開いていくのだ。
それに弁ちゃんも加わり、三人で話すことが多くなってきた。


「そういえば董卓さんはどうしてるの?」
「劉協様と同じよ、毎日ひっきりなしに面会の申し込みが来るから
ひたすら人に会ってるわよ。
本当は月は表には出したくなかったんだけど、
あんたのこれからの展開予想のお陰でそうも言ってられなくなったわ。
洛陽の統治を良くしていく上で 地元の豪族の協力は必要不可欠よ。
そのためにも月には今は一人でも多くの豪族に会ってもらわないと。」
「なんか董卓さんには悪かったね・・・だけど今が一番大切な時期だから・・・
初動をきっちりしておかないと、
諸侯に洛陽を攻め入る口実を与えてしまうから。」
「わかってるわよ!
だから本当ならボクが月に付いていたいんだけど、
こうして別行動してまで仕事を片付けてるんじゃない!
あんたも悪いと思うんだったら ここに竹簡持ってくるから、
予算の計算だけでもやりなさいよ!
あんたが算盤使えば普通の文官の数人分の計算があんた一人で済むんだから。」
「・・・お手柔らかに頼みます。」
「仕事はたんまりとあるから好きなだけ計算するといいわ。」
「・・やっぱり無しの方向・・・では行きませんよね~。」


賈詡さんが桂花並の睨みを効かせてくるので、
私はその睨みに負けて彼女の仕事を手伝うことになってしまった。
ついでに弁ちゃんも今後店で働くために、計算はできたほうがいいので、
その勉強も兼ねて、少しではあるが仕事を手伝っている。

軍部の方は華雄さんと張遼さんが他の将軍を連れて訓練しているようで、
許昌で使っている大盾と長槍の陣形を賈詡さん達が改良して、
より 元のファランクスに近い、小盾と戈の陣形に組み替えて、
攻防どちらにも対応できるように訓練しているようだ。
それと最悪の状況に対応するために、鞍と鐙の絵図面を賈詡さんに見せて、
試作してもらったものを張遼さんに試してもらって、
騎射ができる部隊を編成してもらうようにお願いした。

ココに来て私は もし、万が一、反董卓連合が結成されてしまった場合、
絶対に負けるわけには行かないので、
今までも桂花にも話して無かった鞍や鐙、などの話も賈詡さんにするようになった。
コレにより騎乗での安定感が増し、
短弓を使っての機動力のある弓騎馬隊の編成が可能になる。
更に弓も改良して射程距離を伸ばしたり、
大きな布を使って敵の矢を防ぎつつコチラの矢を補充する方法や
鎖につないだ丸太を城壁上から落として 城壁を上がろうとする梯子の兵を叩き落とし
鎖を引き上げることで再利用できるようにしたり、
関の門に鉄板を張るなどの案を出して、
汜水関や虎牢関での防衛戦で確実に勝てるように用意する。

私がそんな話をするせいで、賈詡さんの知識欲を刺激しまくり、
賈詡さんがわざわざ仕事や睡眠時間を削ってまで 私に会いに来るのに、
この時の私は必死過ぎて 気がついていなかった。


さて、こんな生活が続く中、新たな報告が上がってきた・・・
と言うより当事者より連絡が着た。

丁原さんが暗殺されたとの報告を呂布さんと陳宮ちゃんが兵を率いて持ってきたのだ。
いま、董卓さんが賈詡さんを連れ、謁見の間で呂布さん、陳宮ちゃんと会っている。


「・・・この書簡を読む限り、
丁原さんは自身の命が狙われていることを知ってらしたんですね。」
「そうですね・・・その書簡には自分に何かあったら、
董卓さんを頼れと書いてあるです。」
「いったい何が有ったの?
あの丁原様が暗殺されるなんて、
あの方は民を愛していたし何進様よりとは言え、
その政治に対する態度は誠実だったはずよ?
恨みを買うとしたら十常侍や宦官位だけど、
奴らは袁紹に誅殺されたかボク達が捉えて取り調べを行なって、
次々と処断している所だから
丁原様を暗殺するような そんな余裕有ったと思えないけど。」


董卓さん、賈詡さん陳宮ちゃんでそんな話をしている中、
今までずっと黙っていた呂布さんが呟いた。


「・・・橋瑁だ、アイツが!」
「橋瑁・・あいつか・・・」
「なにか知っているですか!?
知っているなら教えて欲しいです!」
「悪いけど、コレはウチの重要機密に関わることだから詳しくは話せないわ。
ただ言えることは、先の何進様暗殺や その他の事件は
十常侍を代表とした一部の宦官と橋瑁が結託してる事は間違いないようなのよ。
だけど・・・証拠がない。
捕虜の証言では言い逃れされる、何か決定的な証拠がないとダメなんだけど、
今のところ証言以外何も無いのよ・・・」


賈詡さんの話を聞いた呂布さんがすぐに踵を返し、
謁見の間からでていこうとする。


「・・くっ、橋瑁!」
「恋殿! 何処に行くですか!?」
「橋瑁を討ちに行く。 義母さんの仇だ。」
「待ちなさい呂布! 今橋瑁を今討つ事は許さないわよ。」
「・・・・なぜだ? 義母さんの仇なのに。」
「証拠が無いのよ、貴女が橋瑁が丁原様を暗殺したと思ったのはなぜなの?
何か証拠があるの?」
「義母さんを殺した奴らが吐いた。」
「丁原様が暗殺された時に呂布殿が駆けつけて、
そこい居た不審な者達を全員呂布殿が討ったのです、
その時に聞いたのでしょう。
そして最後に息も絶え絶えな丁原様は 恋殿や私にこの書簡の在り処を教えてここ、
董卓殿のところへ行くようにと・・・」
「・・・分かりました。 ですが詠ちゃんの言う通り、
今橋瑁さんを討つ事は許可できません。
呂布さん達の事は この書簡にあるように兵達や 呂布さんの家族 も含めて、
私達の所で受け入れさせてもらいますが、それでよろしいでしょうか?」
「兵達はそれでいい、でも私は橋瑁は討つ。」
「呂布さんが今、橋瑁さんを討つというのなら、
私達はそれを止めなくてはなりません。」


董卓さんがそう言うと、謁見の間にいた護衛が武器を構え、
呂布さん達を取り囲む。


「・・・お前もアイツの仲間か!?」
「恋殿!」
「違います、私達も橋瑁さんを捉えて罰したいと思っていますが、
話を聞いただけと言う理由で呂布さんが兵を動かすと、
呂布さんの兵達や家族が逆に罰せられることになります。
橋瑁さんを捉えた暁には証言を取り 必ず呂布さんに仇を討たせて差し上げますから、
今は抑えてもらえませんか?
・・・呂布さんを慕う兵や家族、陳宮さんの為に。」
「・・・・・・っく!」
「呂布・・・貴女が今暴れると下手をしたらそれをきっかけに、
この国で戦乱が起こるのよ。
丁原様がこの書簡を持たせえてあなた達がココに来て書簡を読んだ時点で、
形式上あなた達はボク達の配下ということになる。
その配下である貴女が勝手に橋瑁を討ったら、その責任は月に来るのよ。
いま、この国は非常に危うい状態なの。
黄巾の乱以降、何進様が暗殺されて前陛下が誘拐され大怪我をされて治療中、
そして今は私達が擁立して献帝様が即位されている。
今 周りの諸侯はボク達が邪魔でしょうがないのよ。
そのためにボク達を討つに足る理由を必死になって探すわ。
そこで貴女が好き勝手暴れたらそれを理由に挙兵され、
それがきっかけでこの国で戦乱起こる可能性もあるの。
橋瑁を討つならはっきりとした証拠が必要なのよ。」
「・・・恋殿、ココはくやしいですが賈詡の言う通りなのです。
今ココで恋殿が丁原様の仇を討つために挙兵したら、
賈詡の言う通りになる可能性もあるのです。
一応 丁原様の屋敷で恋殿が暗殺者を討った時点で、
仇を討ったと見なされるのですから、
証拠もなしに橋瑁を討ったら世間では恋殿が暴走したと見なされてしまうのです。
そしたら恋殿の兵や、セキトや家族が・・・」
「・・・・・わかった。
でも、必ず義母さんの仇は討つ。」
「それでいいわ、証拠が集まった時点で、
必ず呂布、貴女に指揮を任せて橋瑁を討たせるから、
それまでは兵や家族のために耐えてちょうだい。
丁原様もきっとそれを望んでおられるに違いないわ。」
「・・・・コク。」
「では、必ずこの約定は果たすという意味を含めて、
呂布さんが私達を信じてくれたという 信頼の証に私の真名を預けます。
私の真名は月です。」
「・・・私は詠よ。」
「・・・・・恋。」
「音々、は音々音です!」
「これから、よろしくおねがいします。」
「これから頼むわよ。」
「うん。」
「よろしく頼むのです。
恋殿! 一刻も早く橋瑁が丁原様を暗殺したという証拠を音々が見つけますから、
しばらく我慢してください。」
「・・・お願い。」


こうして、董卓さん陣営に、
呂布さん、陳宮ちゃんが加わり 原作通りの董卓軍の布陣となる。

この日以降、陳宮さんが加わったことで、
賈詡さんの仕事量が減った・・・ように見えたのだが、
その分、内政や風評操作の仕事を増やしたので、
まったく減ることはなく、私の所に回ってくる予算の竹簡も変わる事はなかった。
最近は弁ちゃんはようやく私の計算方法を覚え、前以上に手伝ってくれる。
賈詡さんは恐れ多いから止めてくれ、と言うのだが、
弁ちゃんが 「私もなにか力になりたいのです。」 と言うので
やむなく仕事を手伝ってもらっているというところである。

軍部の方も呂布さんが入った事で、
一旦は訓練方法などで揉めたが、
総合的に兵の練度が増し、華雄さんや張遼さんが呂布さんに挑戦し、
叩きのめされるということで武将個人の練度も上がっている・・・のだが、
何を思ったか、華雄さんが庭園で弁ちゃんとまったりしていた私の首根っこを掴んで、
訓練場まで連れていき、私も武術の訓練を受けさせられる事になった。


「お前は劉弁様をお守りせねばならんのだから、
武を修めなければならないのは当然だろう。
張遼に聞いたところだとなかなか使えるそうじゃないか?」
「張遼さん! なんで余計なことを言ってくれたんですか!!」
「せやかて、華雄の言うことにも一理あるで?
それに喜媚はもう少し伸びると思うからウチらで鍛えてやろう思うてな。
それにウチと喜媚は同じ戦場で戦った仲やないか、
張遼さんなんて他人行儀じゃなくて呼び捨てでええで。」
「コレは口癖のようなものですので、気にしないでください。
とにかく武術の方は母からもう私の伸びしろは無いと言われてますので、
身体がなまらない程度で結構です。」
「・・・そんな事はない。 喜媚はもうちょっとだけ強くなれる。
経験が足りてないだけ。」
「ほら、呂布もこう言っている、
ならば我等で足りない経験を補ってやろうではないか。
劉弁様をお守りする役目がある以上、万全の体制を常に整えておかんとな。」
「・・・私 オワタ。」


この後 華雄さん達にボコボコにされ、
この日の夜の賈詡さんとの話し合いをまともに出来なかったことで、
賈詡さんが華雄さん達に 「やるなら程々にしなさい!」 と言ってもらえた事で、
本当に程々にボコボコにされる日々が続いた。


  1. 2012/09/20(木) 03:48:55|
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四十一話


洛陽 東の外れの竹林




「喜媚、待たせたの。」
「協ちゃん・・・弁ちゃん・・・・」
「・・・・劉協、やっぱり。」
「姉様、もう良いのじゃ。
コレは妾が決めたことなのじゃから。」


馬車の中から出てきた二人の表情は対称的で、
協ちゃんが何かを決意したような、
しっかりと強い意思のある表情をしているのと裏腹に、
弁ちゃんは罪悪感に苛まれるような悲痛な表情をして、協ちゃんに語りかけている。

すでに弁ちゃんの手には短刀は握られておらず、
今すぐ自害するということは無さそうで、私は安心した。

二人の姿を見た私以外の人は皆平伏し、
私も遅まきながら一緒に平伏する。


「伏せずとも良い、皆顔を上げ立つが良い。
特に喜媚、謁見の場や外交の場ではともかく、
平時にはお主は今まで通りで良いのじゃ、妾と喜媚は友達じゃろう?」
「協ちゃん・・・」


そうして皆平服から膝立ちの状態になり、
協ちゃんの話を聞く。


「それで、馬車の中からも少し聞こえておったが、
今はどういう状況じゃ?」
「はっ、劉協様!
少帝弁様、劉協様を拐った者達は一部を除いて すでに処分いたしました。
生かしてある者達からは このあと首謀者を聞き出すために取り調べをする予定です。
敵の兵もすでに逃亡しております。」
「そうか、洛陽の様子は?
袁紹達がなにか騒いでおるようだが?」
「はっ、私達が洛陽を発つときには、
宮中で何進様を暗殺した宦官共を誅殺するため 兵を宮中に入れ、
暗殺に加担した宦官を発見次第捕縛、反抗するものは殺害しておりました。
誠に不敬ながら、袁紹ら諸侯の手で今や陛下の宮殿は血で汚されております。」
「それは良い。
今まで権力を笠に着て好き放題やっていた悪徳宦官共がコレで一掃されるのなら、
この国にとって良い物になるであろう。
この件で袁紹らを罰することは無い。」
「はっ!」
「今回の件で、洛陽内で不正を働く輩は一掃されると見ても良いのか?」
「一掃するにはまだ時間がかかりますが、
何進様暗殺の件などで関わった宦官や不正を働く大本となっていた十常侍などは、
今回の件で死亡、又は失墜することは確実でしょう。
後は捕縛した者を順次取り調べていけば、
宮中は正常な状態へとなっていきましょう。」
「ふむ、お主 名はなんと申す?」
「はっ、賈文和と申します。」
「お主は誰ぞに仕えておるのか?」
「ココに居る、董仲穎に仕えております。」
「ふむ、董仲穎。 此度の戦働き、見事であった。」
「あ、ありがたきお言葉、恐悦至極にございます!」
「張遼も、ようやってくれたな。
お主には宮中で世話になっておったが、今回も良く妾達に仕えてくれた。」
「ありがたき言葉 感謝いたします。」
「そこのお主、名はなんと申す?」
「はっ、董仲穎に仕える、華雄と申します。」
「お主もようやってくれた、
後でお主達全員に褒美を取らすゆえ 待っておるが良い。」
「「「「はっ」」」」


なんか協ちゃんの様子が今まで私が見ていた彼女の様子ではなく、
彼女から為政者としての威厳のようなものを感じる。


「さて、喜媚。」
「は、はい!」
「そうかしこまらずとも良い。
この者達もそうじゃが、お主も妾の命の恩人なのじゃ。」
「え、えっと、漢の民にとって陛下や皇家のために働くのは当然のことであります。」
「くっくっく、慣れぬ言葉など使うものではないぞ?
まったく似合っておらぬ。」
「す、すいません。 いつもはもう少しうまく話せるのですが、何分急なことで・・」
「お主は普段通りで良い。
さて、喜媚に聞きたいのだが、この者達。
張遼は妾は知っておるから除いても構わぬが、董仲穎は信用に足る人物か否か?」


コレは難しい質問をされた・・・
はっきりいって私が董卓さんを判断する材料は原作知識か噂程度しかない。
かと言って知らないと言ったり、酷評しようものなら、
董卓さんが洛陽県令に着任することもないが・・・
逆にそのほうが彼女にとってもいいのかもしれないが、
今現在、彼女が洛陽に留まらなかったら、
袁紹さんか美羽ちゃんが洛陽をめぐって闘いを始めるだろう。
そうなったら反董卓連合以前に洛陽は火の海だ。

だからと言って、ココで董卓さんが洛陽に居たら、
やはり反董卓連合で洛陽は戦火に晒される事になる。

それに協ちゃんの意図がわからない。
なぜ私にそんな事を聞くのか・・・


「逆に質問して悪いんだけど、なんで協ちゃんは私にそんな事を聞くの?」
「うむ、妾と姉様が今最も信用できるのが、喜媚だという事だ。
そこで喜媚の目から見て董仲穎はどんな人物に見えるのか聞いてみたい。」
「・・・・私が見た感じでは為人は善人だと思います。
噂では彼女は異民族からこの国を守るために武力だけではなく、
経済交流をすることによって緩やかに彼らの意識を変え、
争うこと無く国境警備を行なっていると聞きます。
私が洛陽に協ちゃん達が書いた書簡を持ってきた時も、
最初は色々ありましたが、その後は親身にしてくれましたので、
短い間でしたがそれなりに為人を見極められたと思います。」
「そうか。
妾も短い間しか見ておらぬが、この者は信用に足るものだと思う。
長い間あの宮中でいろんな人間を見てきたからの、
コレでも人を見る目には自信がある。
董仲穎からは野心や欲のようなモノがあまり見えて来ぬ。
今はただ困惑しておるだけのようだが、
野心や欲深いものなら、妾が褒美をやると言った時に何らかの反応が現れるはずだが、
そういった者は見受けられなんだ。」
「弁ちゃんにもそう見える?」
「はい、今まで私達の周りにいた宮中の者と比べても、
好ましい人物だと思います。」
「へ、へぅ・・・」


二人に褒められて照れているのか、困っているのか、
董卓さんは、頬を赤く染めて賈詡さんや華雄さんの方を
「どうしたら良いの?」 と言わんばかりにキョロキョロと見ている。
賈詡さんも流石に皇帝やその妹の前なので困惑美味だ。


「さて、何進が暗殺され、姉様は拐われ、
今やこの国の政治に中枢には穴が開いておる状態じゃ。
この状態が長く続くのは好ましくない、コレはわかるな? 董仲穎。」
「は、はい!」
「そこでじゃ、お主には何進に変わり洛陽を治め、
妾に力を貸してもらいたい。」
「ちょ、お待ちください劉協様!
月、董卓に洛陽を治め、何進様の後釜になれと申せられるのですか!?」
「そうじゃ。
それに辺り、姉様は今回の事件で大怪我を負ったため 政務執行不可と言う事で、
妾が皇位継承をし、今後は妾が帝となる。
コレが妾と姉上が話しあった結果、姉上が自害せずに済む最善の方法なのじゃ。」
「そんな・・・月が・・・嫌、でも・・・・うまく行けば・・・
劉協様! それは董仲穎が何進様の地盤を、
そのまま引き継ぐということでよろしいのでしょうか?」
「うむ、そうでなくては洛陽の統治など出来まい、
それに辺り張遼、お主も董仲穎の配下となるが良いか?」
「ウチは構わしまへんで、何進様のやり方には違和感があったし
宦官共にはむかついてたしな、この娘ならあんな事にはならんやろ。」
「そこで喜媚にも頼みがあるのじゃ。
これは皇帝の嫡子としてでも 皇帝でも無く 友としての頼みじゃ。
・・・姉上の事を喜媚に頼めぬか?
これは喜媚にしか頼めぬのじゃ。」
「お待ちください! 陛下をただの民に任せるなど!」


賈詡さんの発言によりまゆが吊上がり、
明確な怒りをあらわにした協ちゃんが賈詡さんに向けて言い放つ。


「この際、はっきり言っておくぞ賈文和、
妾も姉上も最も信を置いておるのはこの胡喜媚じゃ。
以降、喜媚に何か暴言を吐こうものなら直ちに処罰するゆえ心せよ!」
「はっ・・はい! かしこまりました!」
「さて、喜媚、先ほど申したように、
洛陽に住み、姉上の事を頼めぬか?
姉上は今まで妾の為に矢面に立ってくれて妾を守ってくれた。
次は妾は姉上を守る番なのじゃ。
しかし、姉上が宮中に居っては また政治の道具として使われるだろう。
だが妾も姉上とは離れて暮らしとうない。
じゃから洛陽に姉上と一緒に住んで、
姉上の心の傷が癒えるまで一緒にいてやってくれぬか?」
「私が・・・弁ちゃんと?」
「喜媚様・・・」


困った・・・今回は 本当に困った。
今私は 今までの人生の中で最大の選択肢を突き付けられている。

友達を見捨てて平穏な暮らしを得るか、
彼女達と共に戦乱の世を生きるか・・・
今回は以前の桂花の時と同じように、
お互いの妥協点を探る為に時間を取るということが出来ない。
今決めないと二人・・・特に弁ちゃんがまずい事になる。

それに 彼女と一緒に暮らすということは それだけで済む話ではない。

洛陽に住む以上、桂花には今まで以上に会いにくくなるだろう。
それに反董卓連合の戦にも巻き込まれるだろう。
それを原作ルートで凌げたとしても、
だったら彼女達はどうなるのだ?
原作では董卓さん達は劉備さんに保護され無事だが、
あの後 皇帝はどうなったんだろうか?
それを考えるとその後も様々なことに巻き込まれるだろう。
今まで原作のルートから外れずに生きてこようとしたが、
ココが私の分水嶺なのか・・・
まさか今日いきなり こんな事になるとは思わなかったが・・・

私が熟考する中、協ちゃんや弁ちゃんが不安そうに私の顔を見る。
董卓さん達も私がどうするのか心配そうに様子を見ている。

どうしたら良いんだ? 私はただ平穏に暮らせたらそれでいいのに、
この世界ではそれは贅沢な望みだったのだろうか?
私の頭の中を今まで出会った人達や 様々な出来事がぐるぐると回る。

桂花との出来事が最も多いのだが、ふと許昌で一緒に暮らした小作人の皆や、
鍛冶屋のおじさん、八百屋のおばさん、許昌の警備隊のお兄さん、
洛陽で私を雇ってくれた大将、荀緄さんの屋敷の使用人の皆、
洛陽の食堂に私目当てに来てくれたお客さん、
よく行く肉まん屋のおじさん、それ以外にもいろんな人達の顔が思い浮かぶ。

みんなの事を思い出していて一つ、心に出来た・・・いや、
最初から有った感情に気がつく。
私が今まで出会った皆には せめて人並みに幸せに暮らして欲しい。
朝 家族と一緒に食事を食べ、昼 仕事に出かけ、
夕 皆とその日の出来事を話しながら食事を楽しむ。
そんな人並みの暮らしを・・・

私がこのまま逃げ出せば、董卓さんが洛陽を統治し、反董卓連合が組まれ、
その後、史実では袁紹と袁術の不和で反董卓連合は崩壊し、
群雄割拠の時代へと移行していくのだが、
この外史では、史実から外れて一刀君の介入も有り、董卓さんは倒されるだろう。
その後 洛陽に皆はどうなるのだろうか?
どのルートでも袁紹さん美羽ちゃんの部隊が略奪を行ったとされているが、
その場合、洛陽の皆は一体どうなってしまうのだろう?

・・・私なら、いや、私にはそんな力はない・・・・だが董卓さんや賈詡さん、
協ちゃんや弁ちゃんが達が協力してくれたら、
反董卓連合結成を回避できるのではないか?
そうすれば洛陽や許昌の皆は戦乱に巻き込まれることはなく、群雄割拠の時代は来ず、
洛陽や許昌の皆も穏やかに暮らせるのではないか?
この国の改革を 戦によるものではなく、
内部からゆるやかに変えられるのではないか?
そうすれば私と桂花もいずれは一緒に暮らす事ができるのではないか?
そんな思いが私の中に生まれてきた。


「協ちゃん、弁ちゃん、董卓さん、賈詡さん、張遼さん、華雄さん、
・・・皆聞いてください。
これからなにがおこって何に対応しなければいけないか・・・」
「? 何よ? これ以上何か起こるっていうの?」
「賈詡さん、コレから私が話す事を一度深呼吸でもして、
落ち着いて冷静に分析してみてください。
私の考え過ぎなのか、それとも現実に起こりえるのかを。」


そうして私は、これから恋姫の出来事や史実で起こることを、
私なりに消化して説明していく。

ぽっとでの田舎太守の董卓さんが政治の中央でいきなり実権を握ったことで、
諸侯に不満が蓄積する事。
特に宦官の処罰をした両袁家は黙っていないであろう事。
宦官を処罰したといっても全員ではない、必ず復権を狙うものが出るであろう事。
私が知る中でも 両袁家には権力を利用して私腹を肥やしている者達が多数いて、
双方とも基本的に本人は善人ではあるが、
袁紹さんは贅沢な暮らしをする事しか考えず、
美羽ちゃんにいたっては 幼さから政治の実権を握り切れていないと言う事。
私が二人の領土で生活した事もあり、
美羽ちゃんとも親しいためこの情報の信憑性は高い事。
やがてその不満がたまり、一部の権力者の思惑で袁家のどちらかを旗頭として、
反董卓連合が組まれる可能性がある事。
そうなると董卓さんは四面楚歌、周りの諸侯が全て敵になる可能性がある事。
そのためにも、早急に洛陽で善政を敷き、
各地に細作を飛ばして洛陽での善政を吹聴し情報操作をして、
それに伴う政策を行う事で、反董卓連合を組ませるための口実になりうる、
董卓が洛陽で陛下を軟禁し悪政を敷き、
好き放題しているなどと言う噂を封じ込め 攻め入る口実を与えない事。
更には汜水関などの洛陽を守る関を強化し、
何進さんから引き継いだ軍部を速やかに掌握しなければならない事。
汚職を行った宦官の連中が溜め込んだ資産を没収し、
何進さんが溜め込んだ資産と合わせてそれらを一気に行い、
借金をしてでも短期間で洛陽を復興させなければ、
諸侯に攻め入る口実を与えてしまう事。
これらの事を事細かに説明していった。


「・・・・・正直被害妄想に近い・・・と言いたいけど、
言い切れないだけの説得力があるわ。
国境付近では食べ物をめぐって戦が起きるけど、
中央では権力をめぐって戦が起きる、コレは歴史が証明しているわ。
・・・ボクもいきなりの事で 正直そこまで考えていなかった。」
「宦官の連中はかならず復権を狙うやろうな。」
「へぅ、私が洛陽を治めるとそんな事になるんですか?」
「なにが有っても私が董卓様を守ればいい!」
「・・・妾は間違っておったのか?」
「・・・協ちゃんは多分間違ってないよ。
今の私達には 限りなく選択肢がないんだよ。」
「喜媚様・・・・」
「弁ちゃんが自害したらもっと状況は混乱するからね。
その原因を作ったのが董卓さんにされて、
まず最初に董卓さんが討たれる、その後は協ちゃんを奪い合う戦争が始まるよ。
そしてキリのいいところで禅譲を要求されて後は・・・」

「「「「「「・・・・」」」」」」

「でも今なら、洛陽ので袁紹さん達が宦官を一掃した今が、
この国を立て直す最後の機会でもある。
この機会を逃したら もうこの国は終わるし、
その後は長い戦乱が続くことになる・・・」
「喜媚! あんた陛下がいらっしゃる目の前でなんて事を!」
「いいのです・・・私にもわかりますから。」
「それでも・・それでも董卓さんは洛陽を治める気になるの?」
「・・・・」


私の問に、董卓さんは数秒ほど目をつむり、次に目を開いた時には、
その瞳や表情には 確かな決意が見て取れた。


「やります。 私が何進さんの後を継ぎ 洛陽を治める事で、
この国の状況を変え、民が幸せに暮らせる世を作る礎となるのなら。」
「月・・・」
「・・・董卓様。」
「・・・よっしゃ、ならウチも董卓はんに力を貸そうか。
ウチの真名は霞や。 あんたのその決意に惚れたで!」
「私の真名は月です。 霞さん、
私は親から権力を継いだ 何もできない女ですが力を貸してください。」
「ちょ、月!?」
「任せとき!」
「いいの、月?」
「うん、詠ちゃん。
真名を預けてくれるほど信用している人には 信用で返さないと。
皆が仲良くなる第一歩は、相手を信じる事だよ。」
「・・・月。
・・・・・・私は詠よ。
月を裏切ったりしたら許さないわよ。」
「ここまで覚悟見せてくれた娘を裏切るなんてウチの矜持が許さん。
すぐに信用しろとは言わへんけど、よう見といてや。」
「言われなくても ちゃんと見てるわよ。」


こうして董卓陣営に張遼さんが加わり、董卓さんは洛陽を統治し、
この国を内部から変えていくことを決意する。

・・・私もこの国の為とは言えない、この国の知らない民の為なんて言えない。
兵を率いて多くの人を殺めることも出来ない。
でも、私と一緒に暮らしてきた皆や、私に良くしてくれた皆のために、
私にできる事をやっていこうと思う。


「わかった、弁ちゃんは私が預かるよ。
それに賈詡さん、私は許昌で荀文若様と一緒に学問を習い、
一緒に許昌の為に働いてきました。
一応彼女とは真名も交わしていますし、色々と深い関係にでもありますが、
その知識の中で きっと洛陽の統治に使えるものがあると思うので、
弁ちゃんの件があるので 董卓さんに仕官はできませんが、
知識の部分で力になりたいと思います。」
「荀文若って・・あの許昌の?
助かるわ、許昌の農法や内政、兵法は是非一度調べてみたいと思ってたのよ。」
「一応、荀文若様の知っている知識はひと通り修めてますので、
洛陽で使えるものも多数あると思います。」
「喜媚・・・すまぬの。
でも妾や姉様には喜媚以外 心から頼れるものがお主しかおらぬのじゃ。」
「すみません喜媚様。」
「いいよ二人共、だって友達でしょ?」
「・・・うむ!」
「はい!!」


こうして私の人生の転機とも言える、一日が終わった。


  1. 2012/09/20(木) 03:47:43|
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四十話


洛陽




私、張遼さん、華雄さん、兵士の人二人、
私達はこのメンバーで 拐われた私の友達である協ちゃん、
劉協様を救出するべく、
拐った男達を追って宮中を走り回っているのだが、
男達の仲間に足止めされたせいで 宮中で取り押さえることが出来ず、
とうとう外に出られてしまう。

そこにはすでに用意していたのか、
貴人が乗るような屋根付きの馬車と騎馬が四頭あり、
私達が追いつきかけた時には、劉協様が馬車に乗せられるところだった。


「喜媚ぃ~!」
「協ちゃん!」
「っち、アイツらやっぱり馬で逃げよるつもりか!」
「そうはさせんさ!」


私達は追いついて馬車を止めようと一気に駆け寄るが、
協ちゃんを連れて馬車に乗り込んだ男以外の数人の男達が
私達の足止めをするべく襲いかかってきた。


「本来のウチの得物とはちゃうけど、
お前ら相手やったらコレで十分や!」
「宮殿の外だ、ここなら切っても問題なかろう。」
「私は一人くらいしか相手出来ませんよ?」
「はっ、私一人で十分だ!」
「アホか、時間がないんやから手分けしてかたずけんかい!」


私達は協ちゃんを拐った男達と交戦するが、
相手はそれほど武に長けているわけではないようで、
一人二人なら私でもなんとか相手にできそうだったが、
張遼さんと華雄さんが私が一人を相手にしている間に、
ほとんど全員片付けてしまった。


「ふん、口ほどにもない。」
「っち、言うてる場合か、馬車が出てしまったやんか。」
「町中ならば そう速度も出せんだろう、追いついてやるさ!」
「必ず協ちゃんを助けます!」
「おい、一人賈詡の所に行って状況を知らせてこい!
相手は馬車と騎馬四騎、東に向かっている 行け!」
「はっ!」
「ウチは馬取ってくるさかい、追うのは三人に任せたで!」
「私の分も取ってこいよ!」
「取れる分取ってきたるわ!
あの馬車には劉協様だけや無くて、天子様も乗ってる可能性もあるから
下手に馬車潰すんやないで。」
「っち、金剛爆斧があればあんな馬車真っ二つにしてやるのに。」
「それをするんやない言うてんのや!」


一旦ついてきてくれていた兵士の内の一人が賈詡さんへの報告に向かい、
張遼さんは馬を調達しに行く、
私と華雄さん、残りの兵士一人で協ちゃんの乗せられた馬車を追う事にした。

私達は馬車を追うが、町中で速度が出せないとはいえ、
流石に馬に追いつくのはかなりしんどく、
なかなか距離が縮まらない。
東の方向に向かっているようなので、東の城門から外に出るつもりなのだろう。
賈詡さん達が兵を指揮してうまく足止めしていてくれたらいいが、
この短時間ではそこまでは期待できない。

逃げる彼らは馬車で人を轢くことなどお構いなしに速度を上げていくので、
距離が縮まるどころが、どんどん離されていく。

こうして東の城門まで着たが、やはり賈詡さん達は間に合わなかったようで、
城門はいつも通り開けられ、
馬車は門番の兵士の制止も聞かずにそのまま走り抜けていってしまう。


「まずい、外に出られたら本当に追いつけなくなる!」
「っち、せめて馬があれば・・。張遼はなにをやっているんだ!」


私達が東の城門を通り過ぎ、馬車が速度をあげた所で、
後方から馬が近づいてくる音が聞こえてきた。


「待たせたな! 二頭しか用意でけへんかったわ。」
「遅いぞ張遼!」
「こっちやって精一杯急いできたんや!
文句あるんやったら乗んなや!」
「今はそれどころじゃないですよ!
華雄さんは空いた馬に乗ってください、
張遼さん、二人乗りできますか?」
「喜媚くらいチビやったら大丈夫や、ホラ。」


そう行って張遼さんは馬の上から手を伸ばしてきたので、
私はその手に捕まって張遼さんの後ろに乗る。


「華雄、すぐ取ってこれた得物は戟と戈しか無かったから、
両方持ってきたけど お前はどっちや?」
「戟だ、よこせ!
お前! 敵は街道を東に向かっている、賈詡に伝えろ!」
「はっ!」


張遼さんは馬車を追いながらも器用に華雄さんに武器を渡す。
武器を戟に持ち替えた華雄さんも馬の速度を上げ一気に馬車に迫っていく。


「さぁ、馬に乗ったらウチに敵う奴はおらへんで、
一気に追いついて劉協様を助け出すで~!」
「騎馬は得意ではないが、董卓様のためにも貴様に負けてはおられん!」
「二人共目的は協ちゃんですよ!」


私達は、騎馬二頭で馬車を追う、
流石に相手も馬車の速度に合わせて走らねければいけないのと、
張遼さんや華雄さんの乗馬技術が優れているので、
すぐにでも追いつけそなのだが、
馬車の護衛についていた四人の騎馬の内 二人がコチラに向かって転身してきた。


「また足止めかいな!
華雄! こっちは二人乗りやからしんどい、
お前があの二人を仕留めてから追ってこいや!」
「っち、しょうがない。
すぐに片付けて追いついてやるさ! はぁっ!」


そう言うと華雄さんが二人の方にまっすぐ向かっていき、
張遼さんは少し逸れて走り、
敵の一人が戈で攻撃してきた所を持っていた戈でいなして そのまま走り抜けていく。

後ろの方から華雄さんの名乗りが聞こえてくるが、
私達はそれを無視して、馬車に向かう。


「張遼さん、一瞬だけでいいので馬車の横を通り抜けられますか?」
「できるけど どないするんや?」
「私が一緒に乗っていたら張遼さんが本気で戦えません、
横を通り抜けるのと同時に、
私が馬車に飛び乗りますのでしっかり馬を抑えててください。」
「ほんまにやるんか?」
「コレでも母にしごかれてますので大丈夫です。
失敗したら私を放って置いてなんとか馬車を止めてください。」
「よっしゃ、任せとき!
ホラ、コレ持って行き。
宮中で奴らから奪った剣や。」
「ありがとうございます。
うまく飛び乗れたら御者を倒して馬車を乗っ取りますけど、
・・・馬車ってどうやって止めるんですか?」
「ゆっくり手綱を引いたらええ、そしたら速度が落ちる。
一気に引いたら馬がびっくりするからゆっくり引くんや。」
「分かりました。」


そう言うと張遼さんは更に馬の速度を上げ、
馬車の左側面から近づいていく。
馬車の左右を守っていた敵の騎馬が気づいて張遼さんを止めようとするが
流石に馬上での張遼さんは強い。
あっさり相手の攻撃を捌き 戈の石突きで殴りつけ相手を落馬させる。

そして馬車の側面に近づいた所で・・


「喜媚今や!」
「はい!」


馬に乗る練習をしてるとはいえまだ 慣れない馬の背中から私は馬車に飛び移る。
なんとか馬車に飛び移ることが出来たが、
掴む所があまりないので剣を馬車の屋根に突き立て、
その剣を掴むことで体勢を立て直す。

剣を突き立てた所で、馬車の中から二人の女の人の悲鳴と、
男の声が聞こえてきた。

私は鉄扇から鉄針を取り出すと、
馬車の屋根の上から御者の頭を殴りつけ、鉄針を首に差し込む。

意識を失い倒れこむ御者を蹴り飛ばして御者席から蹴り落とし、
馬の手綱をゆっくりと引いて馬車を止める。

張遼さんの方は私が馬車を止めている間に、
もう一人の方も倒してしまったようで、
その後ろから華雄さんもすぐに馬車に追いついてくる。


「おぉ~うまくやったな喜媚。」
「な、なんとか・・・」
「ならば早速劉協さまをお助けせねば。」


すぐさま馬車の扉を開けようとする華雄さんを、
私は御者席から急いで降りて止める。


「なん (し~! 中に協ちゃん以外に最低二人乗ってます。) わかった。)
(私が馬車の下に隠れますからお二人は
扉を開けた時の強襲に備えてください。)
(わかった。) (任せとき。)


その後、私が馬車の下に隠れて鉄針と鉄扇を用意し、
いつでも奇襲できるように備えた所で、
華雄さんが扉を開けると、
中から短刀を協ちゃん以外の女の人に突きつけて男が出てきた。


「それ以上近づくな! それ以上近づいたら少帝弁の命はないぞ!」
「貴様ぁ! 陛下を人質に取るとは何たる不敬だ!!」
「なんとでも言うがいい! このような飾り者、
我等がいなければまともに政治もできぬ愚か者ではないか!」
「お前らが陛下を軟禁して好き勝手やって私腹を肥やしてるだけやないか!」
「この国を治めてやっているのだ!
多少我等が潤った所で仕事に対する正当な報酬というやつよ。」
「何処まで腐った奴だ!」
「おっと近づくなよ・・その内我等を迎えに兵がやってくる、
そうしたら貴様ら如き武将二人では、
多少武に心得があろうと数には勝てまい。
それまでは時間稼ぎをさせてもらうぞ。」
「くっ、卑怯な。」
「何処まで腐ったやつや!」


華雄さんと張遼さんが少し大げさに騒いで気を引いてる間に、
私は馬車の下から出て二人に目配せしてから 短刀と少帝弁様の間に鉄扇を置き、
鉄針で男の背後から短刀を持っている腕を突き刺す。


「な!? 痛っ ぎゃ~!!」
「二人共!」
「よっしゃ!」
「任せろ!」
「殺しちゃダメですよ!
情報を引き出さないと!」
「わかっている!」


華雄さんは男の顔面を殴りつけ、
倒れた男を、張遼さんが取り押さえる。


「大丈夫でしたか、少帝弁 陛・・・下?」
「え?・・・・喜媚・・様?」


そこには泣きはらして目を真っ赤にして、
涙を流す弁ちゃんが居た。


「姉様!」
「・・え? 劉協! 大丈夫でしたか?」
「妾は姉上がかばってくれたおかげで大丈夫じゃ!
・・・ん? 喜媚!!
お主が妾と姉様を助けてくれたのか!?」
「私だけじゃないよ、張遼さんと、華雄さんも一緒だよ。」
「そうか! じゃがよう来てくれた・・・ほんに よう来てくれた!
前に喜媚からもらった組紐が切れた時に願いが叶うというのは、
本当じゃったんじゃな・・・今朝方髪を結おうと思ったら切れてしまったから
何かあるかもしれぬと思ったが・・・」
「うん、二人が霊帝様の娘だと言うのにはびっくりしたけど、
二人共無事でよかったよ・・・」
「喜媚・・・」
「喜媚様・・・」
「三人とも悪いけどすぐにここから 洛陽に戻らんとまずいことになるで。
こいつが言ってた事がほんまなら、
もうすぐココに兵がやってくるで。
その前にこの馬車使こうて宮殿に戻らんと。」
「そうだな、流石に陛下と劉協さまを守りながら戦うのは厳しいな。」


すると弁ちゃんが私の背後に回って怯えるように叫ぶ。


「い、嫌です!!
もう、もうあんな所へは戻りたくありません!」
「姉様・・・」
「陛下、なぜですか?
このままココにいてはいずれ敵の兵が来て、
陛下や劉協様が連れ去られてしまいます。」
「もう、あんな所 嫌なんです・・・
宮中での私はただのお飾り、私が何を言っても誰にも聞いてもらえず、
皆の策謀の道具にされ、散々使い潰された挙句、
子を生むための道具にされる・・そんな目に会うくらいなら・・・」


そう言うと弁ちゃんは落ちていた短刀を拾い、首に当てる。


「これ以上そんな目に会うくらいなら この場で自害したほうがマシです!」
「「陛下!!」」 「姉様!!」 「弁ちゃん!!」
「・・・劉協ごめんなさい・・・
貴女を守る為にがんばってきたけど、もう限界なの。」
「姉様・・・止めてください!
姉様を失ったら妾はどうずればいいのじゃ!
もう家族は姉様しかおらぬというのに!!」
「ごめんね、劉協・・・喜媚様、私の最後のお願いです。
劉協を、妹をお願いします。」
「弁ちゃん!」
「ね、姉様が自害するなら妾もココで死ぬぞ!!」
「協・・・お願い、貴女には私の分も幸せになってほしいの。
だから貴女は・・ 「姉様が死んで妾が幸せなはずないであろう!」 ・・・劉協。」
「姉様、お願いじゃから妾を一人で置いていくのは止めてくだされ。
妾の一生のお願いじゃ・・・」
「劉協・・・」


私達が協ちゃんが弁ちゃんを説得している様子を見ていると
東と西の両方から砂塵が見えてきた。


「ち、二人共話は馬車の中でゆっくりしてや!
東の砂塵は敵の兵やろう、だが西は・・」
「おそらく賈詡、董卓軍の騎馬隊だ。
ようやく追いついてきたのだろう。」
「とにかく、二人は馬車の中に!
このままじゃ敵に捕まるから 話は馬車の中でゆっくりしてて!」
「う、うむ、姉様 さぁ!」
「でも、劉協・・・」
「ここで奴らに捕まっては何もならぬ!
さぁ!!」
「・・・うん。」
「張遼さん! 馬車を使って少しでも西の方に!」
「馬の扱いやったら任せとき!
華雄、お前は馬車の護衛や、喜媚もウチの乗ってきた馬に乗り!」
「おう!」
「はい!」


こうして私達は張遼さんの操る馬車を護衛しながら董卓軍に合流するために、
西に向かった。

移動していると、徐々に砂塵上げて走る騎馬隊が見えてきて、
騎馬隊が掲げている旗には賈と書かれていることから
賈詡さんの騎馬隊だということがわかる。

しかし騎馬隊の数は少なく、
五十騎弱といった所だろうか。


馬車と賈詡さんの部隊が合流すると、
賈詡さんが前に出てきて状況を聞こうとする。


「華雄! どうなったの!?」
「とりあえず陛下も劉協さまも無事だ、そっちはどうしたんだ?
えらく騎馬の数が少ないが?」
「こっちも大変だったのよ!
洛陽の宮中で袁紹と袁術達が何進様を暗殺した罪で、
宦官と十常侍を殺して回ってるのよ!
そのせいで 宦官が紛れて逃げるかもしれないからって、
あまり大量の兵を出せなくなって、
取り合えずボクが理由を説明してすぐに動かせる騎馬全部動かして連れてきたの。
歩兵も直に着いてくるわ。」
「こっちも厄介なことになってな、
とりあえずまずは陛下達を拐った奴らが兵を率いて東からやってくるから、
それを何とかしないことには・・・」
「あそこに見えてる砂塵がそう?」
「あぁ、このままだと直に追いつかれるな・・・かと言って洛陽にも戻れんし。」
「なんでよ! ボク達が殿を引き受けて洛陽まで逃げきれば大丈夫でしょう!?」
「・・・陛下が洛陽に戻るくらいなら自害すると言ってな。
いま劉協様が説得されている。
それが終わるまでは洛陽に戻れん。
無理に戻ったらそれこそ陛下が自害しかねん。」
「・・・なんでそんなこ事に!」
「理由は後で詳しく話す。
まずは奴らを何とかせんと・・・」
「・・とりあえず馬車を中心に方円陣を組むわ。
それまでは防衛に徹して歩兵が追いついて来たら何とか押し返せると思う。
あの砂塵の量だと敵は百~二百もいないわ。
歩兵は五百は持ってこれるから押し返せるはずよ。
こっちの騎馬は六十近くあるから防衛に徹すれば
歩兵が来るまでの時間稼ぎくらいなんとかなるはず。」


私は敵の砂塵や周囲を見回すと、
少し離れた場所に小規模ではあるが竹林があるのが見えた。


「賈詡さん! あの竹林使えませんか?
敵の先方は急いでいるなら騎馬のはずです。
あの竹林を背にすれば騎馬に背後に回り込まれることが少なくなります。
それに竹を切って簡易の長槍にすれば あまり練度の高い訓練を受けていない騎馬では
槍の穂先に驚いて馬が混乱したり落馬を誘えます。
竹を斬るだけでいいので短時間でも何本か用意できると思います。
馬二頭にそれぞれ竹を括りつけて突っ込ませてもいいですし。
それに華雄さんなら力が強いから、
長い竹でなぎ払うだけで馬から落馬させることができると思いますけど。」
「そうね・・・六十騎ほどの騎馬で方円陣を組むよりかは持ちそうね。
竹林の近くまで移動して竹を切るわよ!
華雄! あんたの武を魅せつけてやりなさい!」
「竹相手に武を魅せつけろと言われてもなぁ・・・コレは馬鹿にされているのか?」
「いいから一本でも多く切りなさい!!」
「わ、分かった。 ・・・まったくなんで私が竹を切らねばならんのだ・・・・」


私達は竹林まで移動し、華雄さんが剣で竹を一刀の元に切り倒す。
本来固い繊維でそう簡単に切れないはずなのに、華雄さんは楽に切っていく。
やはりこの世界の武官は一般人とは一線を画す武を持っている。
華雄さんが切り倒した竹をの枝を兵士が切り落とし、
敵の騎兵が見えるまでに十数本の長い竹槍が用意できたので、
私が賈詡さんや兵達に 許昌での運用方法を説明していく。

華雄さんはその内の一番太い竹槍の持ち手に布を巻きつけて握りやすくし、
振り回している。


「ほう、コレはなかなか面白いな。
どれ、私が先陣を切って敵の騎兵を叩き落としてやろう。」
「馬鹿なことはやめなさい!
他の兵の竹槍の邪魔になるでしょ!
あんたは他の兵の邪魔にならないように小さく細やかに騎兵を落とせばいいの!」
「面白くないな・・・」
「で、ウチは適当に落馬した兵や、
回りこんでこようとする兵を相手にすればええんやな。」
「話が早くて助かるわ・・・何処かの馬鹿にも見習ってほしいわね。」


華雄さんは竹槍を振り回す時の風切り音が面白いのか、
自分の得物を確かめるように振り回しては、握りなどを確認している。


こうして敵の兵が視認できるほど近づいてきた。
先陣はやはり騎馬でコチラの様子を伺っているようだが、
弁ちゃん達が乗った馬車を確認した所で コチラに向かって陣形を整えている

敵はコチラが少数だと侮っているのか、
そのまま騎馬で突撃を仕掛け、その後に歩兵で突撃を仕掛けてくるようだ。

今回は、敵の兵にも旗はなく、鎧も野盗のような粗末な物だが
陣形を組んだ所を見ると中身は訓練された兵のようだ。
野盗に変装して弁ちゃん達を連れて行くつもりなのだろう。


しばらくすると、名乗りもなく 敵がコチラに向かって突進してくる。

竹槍は伏せていたのだが、賈詡さんが絶好のタイミングで指示を出し、
敵の騎馬に向かって竹槍を突き出す。
それに驚いた敵の馬は混乱し、
落馬するものや回避しようとして横の馬に当たる者などで、
敵の先陣の騎馬隊はこんらんし、
それに乗じて張遼さんが騎馬二十騎を引き連れて 一気に畳み掛ける。

敵の騎馬隊が混乱して張遼さんの指揮する騎馬隊にやられている間に、
竹槍を捨てて騎馬に乗り戈で武装した賈詡さんの残りの騎馬隊が、
次の歩兵の突撃に備える。

敵は騎馬隊が思いもかけぬ打撃を受けたことで、
一旦混乱し、歩兵の突撃も止まり膠着状態に持ち込まれる。
歩兵では騎兵を相手にするのは分が悪いと踏んだのだろうか?

そんな中 賈詡さんが名乗りを上げる。


「我が隊は中郎将、董卓様の配下 賈文和(かぶんわ)である!
天子様をお守りする我らに弓を引いた貴様らは一族郎党 尽く皆死罪になるだろう!
捉えた者より情報を聞き出し、
必ずや貴様ら全てを朝敵として一族もろとも子供、
孫の代に至るまで尽く首を刎ねてやろうぞ!!」


賈詡さんの口上とともに図ったように西から砂塵とともに
董の旗を掲げた歩兵がやってくる。

それを見た敵の歩兵の士気は一気に下がり、散り散りに撤退を開始する。


「ふぅ・・・何とかなったわね。」
「今の口上狙ってやったんですか?」
「そうよ、丁度西に砂塵が見えてきたからね、
そろそろ月達の部隊が着くと思ったから、
今の口上と合わせれば敵も逃げ出すと思ってね。
敵の指揮官はともかく、
兵の末端にまで今回の狙いが陛下だとは知らされてると思えないから、
陛下に弓を引いたとなれば当然 一族も含めて死罪だもの。
後は月達の兵を見てだめ押しすれば逃げ出すって寸法よ。」
「へ~・・・なんか、すごいですね。」
「そう? 貴女の竹林を使った兵法もなかなかのものだったわよ?
貴女、ウチに来ない・・・・って、そうだ! 貴女!!
陛下達とどういう関係なのよ!
劉協様は貴女のこと知ってらしたから・・・本当に陛下のお知り合いなの?」
「あ~・・さっき顔見たけど、弁ちゃんが劉弁(りゅうべん)様・・・
少帝弁陛下なら間違いないかと。」
「し、失礼いたしました!」


そう言うと賈詡さんは膝を付き礼を取る。


「あぁ、いいですよ! 本当に! 普通にしてもらっていいです!
私自身はただの農家の子ですし、二人とは本当にただの友人なので!」


私がそう言うと賈詡さんは立ち上がる。


「貴女ねぇ・・・陛下のご友人というだけで、
この国でどれだけの権威があると思ってるのよ。
はぁ・・・まぁいいわ。
だけど陛下に何があったの?
なんで陛下が自害するなんて話になってるのよ?」
「実は・・・」


そうして私は弁ちゃん達を助けた時の彼女の様子を話す。


「なるほどね・・・そういう理由ね。
と、なると難しいわね。
今 洛陽では袁紹達が宦官を誅殺して回ってるから、
陛下が宦官達にいいように使われることはないけど、
何進様も暗殺されて、今 この国の政治の中心には穴が開いてる状態だから、
何としても陛下には戻っていただいて、
次の洛陽を収める者を決めていただかないといけないわね。」
「だけどあの様子だと弁ちゃんが素直に戻るとは思えないんだけど・・・
極度の人間不信になってるから、
協ちゃんか・・・後もしかしたら私くらいしか信用してくれないよ?」
「最悪貴女には陛下と一緒に宮中で暮らしてもらう事になるわね。」
「なんで!?」
「しょうがないじゃない、
無理に連れて帰って自害されでもしたら大事になるわよ。
劉協様と貴女が一緒にいれば 多分時間は稼げるでしょう。
その間に次の洛陽の領主を決めてもらって、
その者にはなんとか陛下のご機嫌を損なわないように気をつけてもらわないとね。」
「・・・・絶対に嫌だ!」
「なんでよ、貴女友達なんでしょ?
それに農家の娘が宮中で暮らせて、
しかも陛下のお世話をできるなんて大出世もいいところじゃない。」
「私は男です! 宮中に入るとなると去勢されるんでしょう!
絶対に嫌だ!」
「宮中に入るもの全てが去勢・・・・は?
貴女・・・・男 なの?」
「男です!」


賈詡さんは私の頭の先からつま先まで何度も見なおして、
目をこすったあと深呼吸して一言。


「嘘だ!!」
「本当です。」
「冗談でしょ? そんな・・そんなはず。」
「事実です。」
「そんな・・・」


何がそんなにショックだったのかわからないが、
賈詡さんが地面に四つん這いに倒れ伏して落ち込んでいると、
董卓さんの部隊が合流し、董卓さんが現れた。


「詠ちゃん! ・・・・どうしたの?」
「月~、ボク・・・ボク本当に女なのかな?」
「は? 何言ってるの詠ちゃん!」
「だってこいつ・・こんな 可愛いのに男だなんて。
だったらボクは何なんだろう?」
「詠ちゃんしっかりして!」


そうして董卓さんが賈詡さんを慰めていると、
馬車の扉が開いて、中から協ちゃんと弁ちゃんが現れた。


「喜媚、待たせたの。」
「協ちゃん・・・弁ちゃん・・・・」
「・・・・劉協、やっぱり。」
「姉様、もう良いのじゃ。
コレは妾が決めたことなのじゃから。」


  1. 2012/09/20(木) 03:46:28|
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三十九話


洛陽




黄巾の乱が鎮圧されたことで、洛陽内な雰囲気もだいぶ穏やかなものになり
宮殿での物々しい雰囲気もなくなったが、
宮中のお偉いさん方の間で怪しい動きが目立つようになってきた。

コレは私が食堂で働いていたため、
お客の会話から幾つか聞いた話をつなげていった結果わかったのだが、
霊帝様の体調がかなり悪いらしく、下手をしたら今日明日にも危ないらしいのだ。
そこで次代の皇帝を誰にするかで揉めているらしく、
宦官やその中でも最も力のある十常侍達、何進大将軍、その異母妹
さらに様々な者達の色々な思惑の中で策謀が繰り広げられている。

そんな中、とうとう霊帝が崩御し、何進さんの暗殺未遂事件。
それに怒った何進さんによる報復行動、
少帝弁の即位と目まぐるしく政治が動いていく。
何進さんは報復のため宦官を排除しようと袁紹さんや袁術ちゃん等を呼びだし
王匡(おうきょう)さん、橋瑁(きょうぼう)さん、
鮑信(ほうしん)さん、張楊(ちょうよう)さん、張遼(ちょうりょう)さん等に
兵や兵糧を集めさせると共に、
黄巾の乱の後の周辺の治安維持のために動いていた董卓さん、丁原さんの軍を呼び出し
本格的に動き出そうとしていた。


ここまでの事態になって、ようやく私のヘタレな心も決まり、
協ちゃんに一度会いに行く事にした。

弁ちゃん協ちゃん達がもし宦官の娘だったら、
最悪 今回の宦官排除で彼女達の身も危ないだろう。
何進さん側の配下の娘だったとしてもこの騒ぎで身に危険が及ぶ可能性があるし、
その騒ぎの中で命を落とそうものなら悔やんでも悔やみきれない。
本人達もわかっているだろうが、
もし まだ現状を把握していないなら宮中で、
怪しい動きがあると言う事を警告してあげたいし
騒ぎの時に、宮中から逃げ出すにしても逃げ場がなかったりしたら、
私が匿ってあげることもできるし、
もし彼女達が何らかの形で親を失い 自分達生きていけないというのなら、
私が許昌で匿うのもいいだろう。
少なくとも 彼女達に宮中の外での生活能力があるとは思えない。
彼女達からもらったこの書簡で宮殿に入れるかどうかわからないが
二人は友達だから、出来るだけのことはしてあげたい。

そういった理由で、私は書簡を持って洛陽の宮殿に向かった。


洛陽の宮殿に向かうと、
宮殿に入るために様々な人が並んで検査を受けている。
以前はここまで厳重ではなかったのだが、
黄巾の乱以降、さまざま事情で宮中の人への面会の人が増え、
それと同時に何進さんの暗殺未遂事件があったので 警戒が厳重になっているのだ。

しばらく待っていると私の順番が来たので、
検査をする兵士の人に宮殿に来た理由と入城に際して、
宮殿内部の人の紹介状などがないか、
武器を持ち込んでいないかなどを検査される事になった。


「あの、この書簡を書いたお方に面会したいのですが。」


そう言いいながら私は二人から預っていた書簡が入った箱を兵士に渡し、
中身を確認してもらうのだが・・・どうも様子がおかしい。
最初は兵士の人達が、私のように書簡に書かれた文字が古くて達筆なため、
文字をはっきり読むことが出来ないのかと思ったが
その内、確認できる文官を呼びに行くから待つようにと言われ 待っていたのだが、
私の後ろの方で並んでいた人達が、
あまりにも確認に時間がかかりすぎているので騒ぎ出し
その中の内の一組が、私達のところにやってきた。


「何をちんたらやってるのよ!
こっちは急いでるのよ?」
「何者か知らぬが、ちゃんと列に並ばれよ!」
「コレを見ても同じことが言えるの?
私達は何進大将軍から呼び出されて わざわざ兵を連れてやってきたのよ?」


そう言うと、緑の長髪を左右に編み上げ、
眼鏡越しに見える瞳は本人の気性を表しているのか、
気の強そうなつり目で、身長は私より少し低いくらいだろうか?
ミニスカートに黒のストッキング、黒のブーツ(?)を履いている。
・・・・私の記憶に間違いがなければ、賈文和 賈詡さんだ。
その後ろには肩まである青みがかった白髪に気の弱そうな表情で、
賈詡さんをなんとか宥めようとしているが
声をかけるタイミングを失ったのか、
あわあわと どうしていいか分からない様子の董卓さん、
それに控えるように、肩までの紫がかった灰色の髪に
上半身は肌の露出の多い服装だが、そこから見える筋肉等は
女性らしさと武人としての鍛えあげられた肉体と
両方を持ち合わせた不思議な魅力を放つ華雄(かゆう)さんと何人かの護衛兵が居た。


彼女は紙の書簡を広げ兵士に突きつけると、
兵士の表情がどんどん青ざめたものへと変わっていく。


「こ、コレは失礼いたしました!」
「わかったらいいのよ。 それで? 何を揉めているのよ。」
「実はこの者が持参した書簡なのですが
あまりに不自然なものが多く、我々では判断できかね無いので
上の者に確認のため連絡をとっているところなのですが・・・」
「騙りじゃないの? まぁいいわ、ちょっとその書簡見せてみなさいよ。」
「は、っはい!」


そう言うと賈詡さんが私を怪しいものを見るような目で一瞥した後、
私が持ってきた書簡を読み始めるが、
読み進めるに従って顔がこわばっていき、最後には顔面蒼白で頬を引き攣らせている。


「あ、あ、あんた? こ、コレをどこで手に入れたのよ?」
「・・・大丈夫ですか?」
「いいからボクの質問に答えなさいよ! コレを何処で手に入れたのよ!?」
「えっと、そこの最後の方に連名で二人の名前が書いてあると思うんですけど
その二人から直接もらったんですけど?」
「何処で!」
「ここの宮殿の中の庭園でですけど?
もう何年か前になりますけど、まだ二人が幼かった頃に書いてもらったんです。
それでこの宮殿に入れるかどうかわからないが、
その書簡を持って来れば私が来た事が自分達の耳に入るだろう、
だから困ったら使えと言われて・・・やっぱり何かまずかったですかね?」
「まずいも何もないわよ!!
あ・・・うん、失礼しました。
大変まずい事になりますので、
よろしかったら私達と同行していただけますでしょうか?
私達と同行していただき、
この書簡があればお二人にご面会する事ができると思いますので。」
「? どうしたんですか? 話し方急に変わりましたけど。」
「・・・同行して い た だ け な い で しょ う か ?」


賈詡さんはコメカミに血管を浮かせて引きつった笑顔で、
私に同行するように進めてくる。
賈詡さんの態度がここまで急変するのだ、
よっぽどまずい事でも書いてあったのだろうか?
賈詡さんの後ろでは董卓さんがどうしていいものかと 今もあわあわと慌てている。


「分かりました、とりあえず皆さんに同行すれば二人に会えるんですね?」
「・・そう取り計らわせて頂きます。」


こうして私は董卓さん達一行と一緒に宮殿内に入ることにしたのだが、
賈詡さんが董卓さんとヒソヒソと話をしながら私を宮中へと案内するのだが、
その様子が、あからさまにおかしい。
時折 私の方を見てはコソコソと何か話している。


「あの~やっぱり何かまずかったですかね?」
「・・・貴女もしかして 何も知らずにこんな物騒なモノを持ち込んできたの?」
「え? それってそんなに物騒なものなんですか?」
「物騒も何も、これ一つでヘタしたら私達や貴女の首が簡単に飛ぶわよ?」


何やら賈詡さんが物騒なことを言っているが、
話し方は元に戻っている事から、
私の出自が そう上の方の人物ではないと見定めたのだろう。


「え゛?」
「当たり前でしょう? ココに書かれてある二人から直接もらったのなら、
読んだ上で無碍に扱えば勅令無視と不敬罪で。
貴女が騙りならこんな文章を偽造したうえ、
ココに押されている印の偽造なんて それだけで死罪ものよ?」
「あの~あの二人ってそんなに偉い娘・・偉い方なんですか?」
「あんた本当に何も知らないの?」
「はい、二人からは弁、協と呼べと言われただけで
本名はわけあって話せないと言われてますし、
その書簡も古い言葉な上達筆なので読みにくくて・・・」
「この書簡を書いたお二人はね、少帝弁様とその妹の劉協(りゅうきょう)様よ。
そして押されている印は伝国璽。」
「・・・・・・は?」
「貴女大丈夫? ちゃんと聞いてた?」


私は賈詡さんが言った言葉を何度か頭の中で反芻して、
なんとか理解しようと努力する。


「まって! ・・・と言うことは? あの二人は先代の霊帝様の娘で?
弁ちゃんの方は今の天子様?」
「そうよ、だからまずいのよ。
読んでしまった以上、ボク達が貴女を無碍に扱えば、
皇帝陛下のお客を無碍に扱ったという事と同義になるのよ。
そして もし騙りならあんたは公文書の偽造と皇帝陛下を侮辱した罪になるのよ。」
「・・・・ま、まずいじゃないですか!?
あの二人・・・なんて物を私に渡したんだよ!」
「まぁ、貴女はコレを作った人が本人である事を祈ることね。
それ以外だったら即 死につながるのだから。」
「・・・・・最悪だ。」
「だから物騒な物だって言ったでしょう。」
「詠ちゃん、そんな脅すようなこと言わなくても・・・
この娘も悪気があったみたいじゃないから。」
「月は甘いのよ! こんな事に巻き込まれて・・・
っていうか私が勝手に首を突っ込んだ形なんだけど、
私達にもコレはまずいのよ?
コレが本物だったらこの娘の扱いでなにか言われるかもしれないし、
偽物だったら、くだらない話を持ってくるなと叱責されるかもしれないのよ?」
「でも、詠ちゃんが話に横から入ったのがいけないんだから・・」
「うっ、それを言われると私も辛いのよね・・・
はぁ、まったく。 余計な事しなければよかった。」


その後、無言で足取りも重く宮中を進んでいくのだが、
少し離れた所で怒声と破壊音が聞こえてきた。


「またんかいコラァ!!
この神速の張文遠(ちょうぶんえん)から逃げられると思んなや!!」
「っち・・・!
おい、お前達足止めをしろ!」
「「はっ!」」
「離すのじゃ! は~な~す~の~じゃ~!!」


何やら聞き覚えのある声が聞こえてくる方を見ると、
そこには宮中でありながら刃物を持った複数の男達と
その男達に抱きかかえられた見覚えのある少女、協ちゃんだ。
その男達を追うように、
無手の張遼さんが二人の武器をもった男達に足止めをされていた。


「協ちゃん!!」
「む、その声は・・・喜媚か!!
喜媚! 助けてたもぉ!!」
「協ちゃん!」
「ちょっと貴女!」


私はすぐに協ちゃんを抱えた男達を追うために飛び出す


「エエ所に来たなあんたら、そいつら捕まえるの手伝ってや!
そいつらが何進様を暗殺して劉協様を攫ったんや!」
「「「えぇ!?」」」
「何進様が暗殺って・・・」
「ちょ、月! 今は劉協様をお助けしないと!
華雄!!」
「任せろ!!」
「あんた達も半数は追うのよ! 劉協様には傷ひとつ無いようにね!
残りはボク達と馬と兵を連れてくるわよ!
何進様を暗殺して劉協様を攫おうなんて奴らよ、
必ず裏で手を引いてる奴らが居るはずよ!
華雄についていって追う者達は 奴らが何処に逃げようとしてるのか分かり次第、
私達の所に報告するのよ!
ほら月行くわよ!」
「え、詠ちゃんもっとゆっくり走って~。」
「「「「「「はっ!」」」」」」


私は足止めされている張遼さんが相手している内の一人を、
背後から鉄扇で殴りつけて倒し、協ちゃんを攫った男達を追う。

無手とは言えそこは神速の張遼さん、武器を持った二人を何とか無傷で倒し、
私の後に続いて、華雄さん張遼さんそれに董卓さんの兵士が数人着いてきて
一緒に協ちゃんを攫った男達を追う。


「助かったわ、あんた名前は?
ウチは張遼や。」
「喜媚で結構です、今は協ちゃんを助けないと。」
「華雄だ、董卓様の一の槍だ。
後ろの者達は私の部下だ。」
「ほんなら一時共闘といくで!
劉協様に怪我を負わせんようにな、それと別口で天子様も連れ去られてもうた。
おそらく犯人は十常侍や宦官の連中や、
奴ら前に何進様の暗殺が失敗して以降なんとか復権しようと躍起になっとる。
陛下を拐ってどこぞの諸侯と組んで復権を狙うつもりや!」
「犯人の証拠は何かあるんですか?」
「それが何もないんや、アイツらそういう手口だけは一流やからな。」
「犯人探しは後でもできるだろう、
今は劉協様をお救いすることだけだ。
董卓様の一番槍、この華雄の武を劉協様にお見せするいい機会だ!」


お互い今の状況を確認しながら走るが、
流石にこの国の武官ともなると足も早い。
身長差もあるのか、先行した私にあっさり追いつき、
今は並走している状態だ。


「奴ら東の門から出るつもりやな、
あそこには馬も馬車もあるから そこまでに追いつけんとちょっと厄介やで。」
「聞いていたな! 東だ、一人急いで賈詡に伝えろ!
騎馬の用意をさせるんだ。」
「はっ!」


華雄さんがそう指示を出すと一緒に追っていた兵士の内の一人が逆に走りだし、
賈詡さんへの報告へ行く。


「っち、面倒な、 おい、二人で時間を稼げ!」
「「はっ!」」


逃げていた男達の内二人が止まって剣を抜き、
コチラに向かって身構える。


「厄介やな、誰か棍でも持ってへんか?」
「ココは宮中だぞ、武器など持ち込めるか!」
「っち、さっきの奴らの剣取っとくんやった。」
「なら私が剣を抑えますのでその間に張遼さんと華雄さんで倒してください。」
「大丈夫なんか?」
「この鉄扇なら剣を受けるくらい平気です。」
「それ鉄扇やったんか、なら任せたで!」
「っち、私も武器があればあんな者達など一閃で真っ二つにしてやるものを。」
「アホか! 宮中で流血沙汰起こしてどないすんねん。」
(そうか。宮中だからなるべく血を流さないようにしないといけないのか・・・
だったら鉄針は使えないな・・・・そうだ、これなら!)


私は速度を上げ 武器を構える二人の内、
一人に 持っていた飴が入った袋を投げつけ牽制し、
もう一人の剣を鉄扇で正面から受けて 一瞬だけ鍔迫り合いの状況に持ち込む。


「張遼さん!」
「任せときや!」


私が一人の剣を抑えた隙に張遼さんが男を抑えこむ。
その間に飴の袋で牽制した男が切りかかってきた所を鉄扇で受け流し・・


「華雄さん!」
「おう!」


剣を受け流したことで体勢が崩れたところへ
華雄さんがもう一人の男の顔面を殴りつける。

その間に 協ちゃんを攫った男達との距離が空けられてしまい、
外が見える所まで逃げられてしまう。


「こっちは片付いたで!」
「こっちもだ!」

「喜媚ぃ~!!」

「協ちゃん!! すぐに追いますよ!」
「任せとき!」
「おう!」


二人は男達から取り上げた剣で武装し、
私達は男達を追って宮殿の東の出口、
張遼さんが言うには近くに厩舎があるそうなのだが
そこに逃げられる前に男達を捕まえ、協ちゃんを救出するために私達は駆ける。


  1. 2012/09/20(木) 03:45:23|
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三十八話


許昌




陳留から許昌までの道中は、特に問題らしい問題もなく、
無事に許昌にたどり着くことが出来た。

この辺は、流石曹操さんのお膝元だというのと、
許昌もこの辺りでは治安がいいことで有名なので、
陳留、許昌間は比較的安全な道と言われている・・・と
同行した行商人や傭兵の人達が教えてくれた。


許昌に着き 一緒に旅をした人達と別れ。
私は、久しぶりの我が家に向かうことにした。

家に着いた私をまず最初に迎えてくれたのが 母さんだった。


「お帰り 喜媚。」
「ただいま 母さん。」
「疲れたでしょ? 荷物を置いてスポーツドリンクでも飲みなさい。」
「アレを その呼び方で呼ぶのは母さんくらいだね。」
「そうね、皆変な呼び方をするから。
仙水だとか力水だとか。」
「ただの蜂蜜とか塩とか果実の汁が入った水なのに。」
「アレを飲むと仕事が捗るそうよ。
さぁ、今日は私が料理をしてあげるから 今日はゆっくりしなさい。
その変わり明日からは貴方がやるのよ。」
「そこは、せめて一週間くらいは代わってくれても良いんじゃない?」
「嫌よ、面倒くさいもの。」
「・・・・はぁ、部屋に戻るよ。」


母さんは私に向かって手を何回か振った後、
調理場に向かっていった。


この日は久しぶりに母さんの手料理を食べたが、
やはり私の料理の腕は、まだ母さんに追いついていない事を実感した。

正直、洛陽や寿春、南皮、陳留と回って私の料理の腕なら
結構いいところまで行けるんじゃないか?
と自惚れていたのだが、まだまだ母さんには追いついていないようだ。


この日は母さんがお風呂を用意してくれたので、
お風呂で旅の疲れを癒して、翌日 荀桂さんに報告をすることにした。


そして翌日・・


「喜媚ちゃんいらっしゃい。」
「おひさしぶりです、荀桂さん。」


私が一人で現れた事で、荀桂さんは少し不安な表情をしたが、
すぐに、普段通りのニコニコとした表情に戻った。


「さぁ、座って。
お茶でも飲みながらゆっくり桂花の話を聞かせてちょうだい。」
「はい。」


屋敷の中に案内された私は、
南皮、陳留での私と桂花の話をしながら荀桂さんとお茶を飲み、
問題の 私と桂花の関係が変化した事を話した。


「本当!
喜媚ちゃんが一人で家に来た時は 少し不安になったし、
話を聞いていて 途中であの子を陳留まで行って叱りつけてやろうかと思ったけど、
最低限の合格点はあげられそうね♪」
「・・・荀桂さん、桂花に変なこと吹きこむのはやめてくださいよ。
房事の事といい、私と一緒にならなかったら別の男と婚姻させるとか。」
「あら? 桂花はお気に召さなかったかしら?」
「・・・黙秘権を行使させてもらいます。」
「もくひけん? なにそれ?」
「自分に都合の悪いことは話さなくても良いという権利です。」
「まぁ、私も二人の房事を聞こうとは思わないわ。
ただ、家の問題として子供を作るためにはそういった知識も必要なのよ。
抱かれればいいというものではないわ。
たくさんの子宝に恵まれるためにはそういった知識も必要なのよ。
私も実際 母から教わったし 家の旦那との経験も含めて
あの子には色々教えておいたから 喜媚ちゃんも若いんだし 楽しめると思うわよ♪」
「・・・そんな話聞きたくなかった。」
「まぁ、その話は今度お酒でも飲みながらゆっくりしましょう。
それで、桂花は曹孟徳さんの軍師になったのね?」
「えぇ、私から見ても曹操さんなら桂花を大事にしてくれると思います。
・・・ただ。」
「ただ、何?」
「あの人、特殊な趣味を持ってて、
女性を閨に連れ込んで・・・その色々するんですよね。
陳留では結構有名ですし。」
「あら、それじゃあ桂花が曹孟徳さんに取られないか喜媚ちゃんは心配ね。
でも、流石に女同士じゃ子供はできないし、
桂花も喜媚ちゃん捨ててまで女に走るとは思えないし、
そんな教育はしてないから 大丈夫だとは思うけど。」
「流石に私も、桂花と恋仲になって すぐ女の人に寝取られたとかしたら、
男として自信がなくなるとか以前の話になっちゃいますよ・・・」
「流石に桂花もそれはないと思うわよ、あの子はアレで一途だから。
主としては命がけで出世しようとしたのだから 曹操さんに尽くすでしょうけど、
恋や色事では喜媚ちゃんに尽くすと思うわよ。」
「そうであったら嬉しいんですけどね。」
「・・・それにしても功を焦って命を賭けるだなんてね。
よっぽど曹操さんの所が気に入ったんでしょうね。」
「そうですね、相性は良いと思います。
曹操さんは相応しい才を持つ人を身分で差別しませんし、
能力以上に邪心を持って重用することも無い 公平な判断の出来る人ですから。」
「喜媚ちゃんにそこまで買われてる人なら桂花は安心ね。
・・ありがとう喜媚ちゃん。
桂花のために命を張って大切なことを教えてあげてくれて。」
「いいえ・・私も この先桂花に無駄死はしてほしくないですし・・・
桂花には幸せになってもらいたいですから。」
「・・・うんうん、これならもう桂花の事は、
喜媚ちゃんに全部任せても大丈夫そうね。」
「私の出来る範囲でなら・・・」
「後は、二人が一緒に生きていけるような生き方を、
見つけてくれることを祈ってるわ。」
「ありがとうございます。」


正直、今回の結果は荀桂さんに怒られることも覚悟していたのだが
思いの外、あっさり受け入れてもらえて、
いままで緊張していた気分が一気にほぐれた。

話が一段落つき、乾いた喉を潤すためにお茶を飲もうとした時、
荀桂さんが思いもかけない一言を放った。


「それで、話は変わるんだけど、
荀衍と荀諶それと荀愔を喜媚ちゃんの妾にしない?」
「ブフゥ・・! ケホッ ケホッ・・・な、何を言い出すんですか!!」
「桂花が曹操さんの所で出世しそうだから、
後はあの三人を何とかすることなんだけど、
あの子達も桂花と一緒でなかなか見合いの話を認めないのよ。
いい話もあったんだけど、ウチの旦那が最近考えを変えたらしくて、
本人が望まないなら無理には婚姻させないつもりらしいから。
喜媚ちゃんの血なら、ウチの家に是非とも欲しいから
三人を側室にとってもらってその子達に家を継いでもらおうと思うんだけど。
桂花と喜媚ちゃんはそんなんだから、いつ子供が生まれるかわからないし。」
「だからってそんな事になったら私が桂花に殺されますよ。
それに三人も納得するかどうかわからないし。
そもそも荀愔さんは会った事もありませんよ!」
「あら? 私は相手が喜媚ちゃんなら三人は納得すると思うんだけどな。
荀愔はウチの旦那が言えば見合いくらいしそうだし、
意外に喜媚ちゃんと相性良さそうだし。」
「と、とにかく! 今は私にはそんな気はありませんし
農家の息子が嫁以外に側室持つなんてありえませんよ。」
「その辺が難しいのよね~、喜媚ちゃんがもっと出世してくれたら
安心して出せるんだけど、流石に今の喜媚ちゃんじゃ桂花はいいとしても
三人を出すのは反対意見が出そうだし。
まぁ、その辺は時期を見ましょうか。」
「お願いしますよ?
迂闊な事になったら 私が桂花に殺されるんですから。」
「その時は私も一緒に説得してあげるわよ。」
「・・・もう勘弁して下さい。」


その後は、もう少し細かく桂花の日常の暮らしや、
旅の間で有った色んな出来事などを話し、
翌日以降も、娘の色んな話を聞きたいと、
荀桂さんに頼まれたので しばらく荀桂さんの家に通うようになった。


この日から数ヶ月、私は月に最低一度は陳留に行くようになり、
数日陳留で桂花と過ごしたり、曹操さんにお茶を御馳走になったりしている。

家では前のように、試験用の畑で好きな作物を育てたり、
身の回りのモノで 改善できる物を探しては自分でいじったり、
鍛冶屋のおじさんや職人の人に相談して 色々改善している。

ろ過器やお風呂も鉄のパイプが耐熱性が増し、耐久性が上がったり、
井戸の滑車を鉄製のものに変えたり、
陳留への移動で馬に乗ることも多くなったので 馬に乗る練習もしている。
鞍や鐙を使えばもう少し楽に乗れるのだろうが
下手に作って市場に流通でもしたら大変なので、コレは作らないことにした。

後は鉄扇を今の私の身長や力に合わせて作りなおした時に、
鉄扇の絵柄に黒猫を描かれた時は微妙な気分になった。
どうも今の許昌では、私は頭の可哀想な娘ではなく
桂花の弟子と思われているようで、
今までは皆が私を見る視線は哀れみに満ちていたのだが、
数年前からは普通を通り越してやや好意的に見られるようになった。
買い物などをしていても おまけしてくれたりすることが多くなった。


そしてとうとう、黄巾の乱が起きた。


コレにより何進(かしん)さんが大将軍となり、
黄巾に対する対策を取ることになったのだが、
官軍の動きは悪く、一部で盧植さんなど功を上げている人達もいるが、
全体では鎮圧はむりで抑えるのに精一杯というところである。

なぜ、私がこんな事を知っているかというと・・・
今私は洛陽に居るからである。


なぜ洛陽に来たのかというと、
協ちゃんが会いに来るのならば早い内に来て欲しい、
と言っていたのを思い出したので、
許昌、陳留間は比較的安全だったので
では、洛陽も行けるのではないか?
と思った私は洛陽に行き協ちゃんに会おうと思ったのだが、
荀緄さんが尚書から済南相になってしまったので、私は宮中に入ることが出来ず、
協ちゃん達に以前貰った書簡を使って入るか、
それとも別の方法を探すか、又は帰るかの判断をしていた所で
黄巾の乱が本格的に動き出し、何進さんが大将軍となり、
洛陽防衛のために周辺の関に兵を配置、
黄巾の兵がそこらで暴れ回り行商人の行き来も減り、
傭兵は義勇軍や兵として登用され、
私は洛陽から移動できなくなってしまい、
今は宿で過ごしているが、その内 路銀も尽きてしまうので、
早い内に許昌に無理にでも帰るか、協ちゃん達に貰った書簡を使って会うか、
それとも洛陽で働きながら黄巾の乱が終わるまで待つか、
最悪 貂蝉さんの屋敷でお世話になるか選ばなければならなかった。


そうして考えた結果、私はとりあえず路銀をこれ以上消費しない為に
何処かの食堂で 住み込みで雇ってもらえるところを探したのだが、
元々 私が荀緄さんの屋敷に出入りしていたという事と
私の黒い猫耳頭巾が目立つということで
意外に私を覚えてくれている人達が多く、
すぐに住み込みで雇ってもらえる食堂を見つけることが出来た。
私が行きつけていた肉まん屋だ。

その食堂で働きつつ、折を見て協ちゃんに会いに行くのもいいし、
黄巾の乱が収まるまで待つのもいいだろうと思った。


「喜媚ちゃんが居ると喜媚ちゃん目当ての客が来るから繁盛して助かるぜ。」
「・・・あの 私男なんですけど。」
「知らね~奴が見たら女にしか見えないし、俺にとっては良い看板娘だぜ?」
「私は厨房で働く仕事を希望したはずなんですけど・・・」
「馬鹿言え、喜媚ちゃんに俺の料理見てもらったお陰で、
俺の腕が上がったって最近評判なんだ。
俺も腕には自信があったが、喜媚ちゃんには負けちまったからな。
この上喜媚ちゃん厨房で働かれたら店が乗っ取られちまう。」
「そんな事ないと思いますけど。
大将の料理も美味しいですし、特に肉まんは絶品ですよ。」
「とにかく喜媚ちゃんは調理場に立つのは禁止だ。
ホラ、お客が来たぜ。」
「はいはい、いらしゃいませ~♪」


こうして数ヶ月、私は食堂で働きつつ 黄巾の乱が収まるのを待っていた。

途中で左慈君が様子を見に来てくれたので、
母さんや荀桂さんに私の無事を伝えてもらい、
荀桂さん経由で桂花にも私の無事を伝えてもらうよう、
書簡でお願いしておいた。

そんな中、黄巾の乱で功績を上げていた盧植(ろしょく)さんを、
宮中の一部の者が嫌って追い落とし、
その後釜に董卓(とうたく)さんを呼び出して盧植さんの後釜にしていたが、
董卓さんが積極的に黄巾に対して積極的に攻勢には出ず 防衛に徹していた。

史実とは違い、私の知識として知る恋姫の彼女の性格からして、
黄巾に参加している賊はともかく流民などを討つことは出来なかったか。

それとも 賈詡(かく)さんが董卓さんが功績を上げて、
表の舞台に出るのを嫌ったのか、
功績を上げても盧植さんのように 宮中の者達に追い落とされては
兵を無駄に失うことになるのでそれを嫌ったのか。
理由は分からないが、丁原さんと協力して防衛に徹していたそうだ。

丁度この頃、呂布さんが黄巾の兵三万を相手に、
一人で立ち向かったという噂が流れたが、
流石にいくら呂布さんでも三万は無理だろうし、
この時代、報告は十倍に報告することが一般的だったので
おそらく 相手は三千くらいで、
呂布さんと戦った時に呂布さんの武勇に恐れて逃げ出したのだろう。
その噂に尾ひれがついて 呂布さん一人で三万と戦った、
と言う噂になって流れているのだろう。


さて、問題の天の御遣いの噂だが、
どうやら黄巾討伐に義勇軍を率いて参加してるらしいので、
おそらく劉備さんと合流したのだと思われる。
あそこは愛紗ちゃんや張飛ちゃん、
諸葛亮(しょかつりょう)ちゃんに鳳統(ほうとう)ちゃんがいるので大丈夫だろう。

私の知る通りに進むなら曹操さんの所と共闘するはずなので、
もしかしたら桂花と愛紗ちゃんが会ってるかもしれない。




--荀彧--


「お久しぶりです桂花殿。」
「ひさしぶりね愛紗・・・アレがあんたが主として認めた子?
どっちが主なの?」


私は華琳様と話している劉備と北郷一刀とかいう男を見て愛紗に尋ねる。


「どちらが・・と言うよりも両方です。
桃香様は大変心の優しい方で誰よりもこの国の民のことを心配してらっしゃいます。
まだ、いろいろ至らないところもありますが、
それは私達が支えていけばいいと思っています。
ご主人様の方は・・あのお方は天の御遣いなのです。
実際 私や桃香様が噂通りに流星が落ちてきた地点を見に行ったら、
あの方がおられたのです。」
「ご主人様? 変わった呼び方をしてるのね・・・あの男の趣味? まぁいいわ。
華琳様もその噂を確かめに行ったらしいけど、遠くて確認できなかったそうよ。
あんた達のほうが近くにいたんでしょうね。
・・・あの男が天の御遣いかどうかはともかくとして。」
「私達が確認しに行った時は、流星が落ちた所にご主人様が倒れていました。
天の御遣いということもありますが、
あの方も桃香様同様に この国の民を思ってらっしゃいますし
その覚悟もコレまでの戦いでついたと思っています。」
「そう・・・だけどあんたわかってるの?
天の御遣いなんて名乗らせたら、天子様に反旗を翻していると思われるわよ?」
「それも考えたのですが、今は民の心を安心させるための道標が必要だと思います。
コレは軍師の朱里や雛里も同様の考えで、
今はまず民を安心させたいと言う考えのようです。」
「そう? 私には義勇兵を集める口実に使ってるようにしか見えないのだけど?」
「・・・その部分も否定はしません。
最初はご主人様も自分がそう名乗ることで人を集められると考えたようですし。
・・ですが! コレまでの戦で、
ご主人様も本心からこの国の民を何とかしたいと考えておられます。」
「そう・・・なら私が言うことはなにもないわ。
いつか天の御遣いを名乗ったことを後悔しないように気をつけなさい。
特に今後 洛陽に居る奴らを相手にする時は。
奴らはそこを突いてあの男を処刑するくらい平気でやってくるわよ?
今ならまだ間に合うわよ?」
「ご忠告として聞いておきます。
・・・それより、喜媚殿はどうされたんですか?
てっきり今日一緒に会えると思って楽しみにしていたのですが・・・」
「あの馬鹿は洛陽よ・・・何を考えたかしらないけど、
黄巾の連中が馬鹿騒ぎしてるこの時期に、
あの 馬鹿 は! 洛陽にのこのこと出かけていったのよ!」
「そうなのですか・・・ご一緒じゃなかったんですか・・・残念です。
せっかく久しぶりにお会いできると期待していましたし、
私の主や仲間達を紹介したかったのですが。」
「そのうち会えるでしょ。
書簡が届いてきたから 一応無事みたいだし。」
「そうですか、無事なら何よりです。」


この女・・・愛紗は危ないわね。
喜媚の事をどう思ってるか詳しくはわからないが、
あの馬鹿が私と一緒に居ないことを聞いた時の落胆のが かなり激しかったし。

それにこの忌々しい乳!! コレは明確な敵に違いない。
喜媚をこの女に近づけさせないように気をつけないといけない。




--喜媚--


そして更に時が流れ、私もいい加減 協ちゃんに会うかどうか決めないといけない。
何度か宮殿の前まで行ったのだが、
なにやら物々しい雰囲気で、宮中に入るのも以前のように簡単には行かず
門前で検閲しているようなので私のような一般人が行った所で
門前払いされるのがオチだと思ったので 今までは見るだけで済ませておいたのだが、
流石にこれだけ時間が経ったのと、
黄巾の乱がどうやら鎮圧に向かって居るという事で、
そろそろ厳戒態勢も解かれたのではないかと、何日かおきに見に行っている。


そうして更に時がすぎ、とうとう黄巾の乱が鎮圧された。


私の知る通り、張角(ちょうかく)達三姉妹は、
曹操さんの所の夏侯惇さんに討たれたという噂が流れ、
今回の功績でそれぞれの諸侯に領地や官位が送られ、
劉備さんの所も領地を貰い、私の知る恋姫の蜀ルートを追う動きになってきている。

このまま行けば、最後には劉備さんの所が勝利し、
桂花も死なずに全てが丸く収まると私は安心していた。



・・・この時の私は まだ何処か心の隅でこの世界を物語として俯瞰して見ていた。

実際にこうして洛陽で暮らして居る人達と交流しているのにも関わらず、
私はまるで物語でも見るように状況を見ていた。


  1. 2012/09/20(木) 03:44:10|
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三十七話


陳留




「・・・ハァ・・あんた・・やってくれたわね! ・・痛たた。」
「・・・その、ごめん。」
「誘ったのは私だから・・・だ、抱くのはいいわよ?
だけどね・・・・・誰が、気を失うまでやれって言ったのよ!!」
「・・・すいません、今まで散々我慢してきたのでつい。」
「つい。 じゃないわよ!!
どうすんのよ! 私腰に力が入らなくて立ち上がることも出来ないじゃないの!!」
「いや、でも・・・桂花も 「むちゃくちゃにしてください、喜媚さまぁ」
とか言うから・・・」
「そんな事言った覚え・・・・わ、私が悪いっていうの!?」
「いえ、私が全面的に悪いです。」


何があったか詳細は省くが、ナニがあったのだ。
今現在、私の部屋の寝台でうつ伏せに寝転がっている、
桂花の横で正座で私は座っている。
ココ数年ずっと我慢してきたのと、
夏侯惇さんに殺されかけたことで本能が刺激されたのと
単純に桂花が魅力的だったのがあって、体力的にボロボロだったはずの私が
ほぼ徹夜でいたしてしまうという自体になってしまった。


「とりあえず身体がベトベトだからお湯と体を拭くモノ、
それと下着と服持ってきて!」
「はい、すぐに!」


この後、腰に力が入らない桂花の身体を洗うのを手伝い、
下着と服を着せてから桂花を居間に抱いて連れていき
椅子に座らせ食事を摂り布団を洗ってる内に午前中は過ぎてしまった。

ようやく人心地付き、桂花とお茶を飲んでいる。


「で? 昨日も聞いたけどあんたやっぱり許昌に帰るの?」
「うん、コレは桂花に何と言われても変えない。」
「そう・・・じゃあ、お母様によろしく言っといてね。」
「うん。」
「そうそう、私達の事もちゃんと言うのよ。
でないと、私その辺の男と無理やり結婚させられるんだから。」
「なにそれ? 私は知らないけど。」
「お母様が私が仕官するまでに喜媚を堕とせなかったら
無理矢理でも何処かの男と結婚させるって言ったのよ。」
「荀緄さんはそんなつもりなかったみたいだけど?」
「お父様とお母様、こういうどっちが時強いと思ってるのよ?」
「こういう時は荀緄さんでしょう。
普段は荀桂さんだけど。」
「・・・・・それもそうね。
ダメね、まだ頭がはっきりしないわ。
どこかの誰かさんが無茶苦茶やってくれたせいでね!
やっぱり男は獣ね、こんなかわいい顔してやることはえげつないんだから。」
「・・・・半分は桂花がやって欲しいって言ったのに。」
「何か言ったの!?」
「いえ、なにも!」


そうなのだ、一応弁解させてもらうと、
私だってなにも自分の欲望に任せて好き勝手やったわけじゃない。
最初は普通にお互いの愛情を確かめ合うような感じだったのだが、
途中から桂花の変なスイッチが入ってしまい、
桂花から 自分を私の所有物かのように滅茶苦茶にして欲しい、
自分が私のモノだという事を刻み込んでほしい! と言い出したのだ。
だから少しやりすぎたとは思うが私は悪くない!
・・・・多分。


「・・・とにかく、あんたは普通の民のように暮らしたい。
私は才を生かしてこの国を何とかしたい。
これはいいわね?」
「うん・・・私じゃ、兵士に死ねと命令できそうにないし。」
「私だってそんな命令したくないし できるかぎりしないわよ。
・・・だったら私が華琳様を支えて、
一気にこの国を戦も略奪も無い まともな国にしてやるわよ。
そうすればあんたも安心して暮らせるでしょ。」
「桂花・・・」
「なによ、文句あるの?」
「いや、やっぱり桂花は強いなって。」
「ふん、そうでもしなきゃ・・・その、あ、あんたと一緒になれないでしょ!」
「・・・・そうだね。」
「それとあんた、許昌に戻っても たまには陳留に来なさいよ。
その、アンタほっとくと変な女に捕まりそうだし。
荀諶とか荀諶とか荀諶とか。」
「全部荀諶ちゃんじゃない・・・」
「アイツが今一番危ないのよ!
あの馬鹿、南皮で私に喜媚を自分のモノにするって 私に向かって啖呵切ったのよ!」
「だから途中であんなに仲悪かったのか・・・
荀諶ちゃんはともかく・・・そうだね、たまに会いに来るよ。」
「そうよ、月に一度・・・・五回は会いに来なさい。」
「さすがにそれは無理だよ。」
「あんたが行商人になればいけるでしょ?」
「私は農家の息子なんだけど。
私の将来設計に行商人はないよ、
簡単な菓子や飲茶が食べれる茶店を開こうとは思うけど。」
「だったら陳留で開きなさいよ。」
「いや、それじゃあ桂花と暫く離れる意味ないじゃない。
一緒にいると、このままくっついちゃうから少し離れて
お互いが尊重できる生き方を探そうっていうのに、私が陳留にいたら一緒じゃない。」
「私がこの国を変えてやるからいいのよ!」
「・・・桂花本気で言ってる?」
「変える気があるのは本気よ・・・あんたは寂しくないの?
せっかく・・せっかく気持ちが通じたのに。」
「そりゃあ・・寂しいよ。」
「・・・ごめん。」
「私もごめん、桂花の事嫌いとかじゃないんだ。
結局 私がヘタレだから・・・」
「あんたが本当にヘタレだったら、
昨日私のためだからって春蘭のいる前で華琳様にあんなコト言わないわよ。
私は あんたがいつか必ず私の横に立ってくれるって信じてる。」
「・・・・」
「私は信じてるから。」
「うん。」
「・・・でも、他に女作ったら殺すわよ。
作るとしても私が認める女じゃなかったら殺すわよ。」
「作らないよ・・・私こんなんだからモテないだろうし。」
「あんたは知らないだろうけど、
姉さんや荀諶があんたを狙ってるんだから 私に内緒で手を出すんじゃないわよ!
昨日までだったら まったく疑わなかったけど、
昨晩でわかったわ、あんたも男だって事が。」
「・・・・それについてはなんとも。」
「ほんと、男は獣ね。
お母様の言ったとおりだわ。」
「・・・ちなみに荀桂さんはなんて言ってたの?」
「お母様? 確か男は若い内は性欲を持て余している時期がある。
特に力のある男は何人も女を侍らす傾向にあるから、
私にはそんな男に引っかからないように気をつけろ。
と言うのと、喜媚が他の女に手を出そうとしても 自分で制御して、
自分が正妻の立場だと相手の女にしっかりわからせろ。
その上で性欲を満たすためなら少しの遊びくらいは見逃してやれ。
特に子供がお腹にいる時は 私が相手をしてあげられないのだから、
そういう時に変な女に捕まるくらいなら、自分の管理出来る範囲で性欲を発散させろ。
・・・だったかな。」
「荀桂さん・・・なんてことを桂花に吹き込んでるんだよ。」
「私もその話を聞かされた時は、まさか喜媚が?
と思ったけど、昨晩で確信したわ。
あんたも男だって事がね!」
「もう本当、勘弁して下さい。」


しばらくは私は桂花に頭が上がらないだろう。
自分でもなんであんなになったのかわからないのだから、
もし、次桂花とスルことがあっても今度からは気をつけよう。


許昌に帰ることが決まったので、陳留での暮らしも残り僅かだ。
私はとりあえず帰るための準備のため、
行商人や傭兵の宛を探していたんだが、
桂花が陳留のお城で知り合いになった者の中に
そういった方面に人脈があるものが居るというので
その人にお世話になることにした。


「・・・桂花が相手の名前を言わなかったから、
少しおかしいとは思ってたんですが・・・
貴女でしたか、夏侯妙才(かこうみょうさい)さん。」
「夏侯淵でいいぞ。
桂花からの書簡を読ませてもらった。
護衛の傭兵は私の一族の中で信用できるものが居るから用意させてもらおう。」
「しかしいいんですか?
曹操さん、私を引きとめようとしてたんじゃないんですか?
それなのに、夏侯淵さんが私が陳留を出ていく手伝いなんかして。」
「無理に引き止めようとは華琳様も考えていらっしゃらない。
あくまで、お前が自分から望んで華琳様に仕えるようにさせることが華琳様の望みだ。
今回 喜媚が許昌に帰ったとしても、
また陳留に来るんだろ? だったら何も問題はない。
後は桂花がうまく喜媚を説得できるかどうかだ。」
「曹操さんらしいというか、らしくないというか。
私は最悪、城に桂花と一緒に軟禁するくらいするかと思ってましたよ?」
「まぁ、昔の華琳様だったらやったかもしれんが、
華琳様も陳留の刺史となられて色々と忙しい。
お前ばかりにかまってはいられんのさ。
それに風評もあるしな、ただでさえ華琳様は同性愛者だと言う噂が立っているのに、
女を二人城で軟禁しているなんて噂を立てるわけにもいかん。」
「そういうことですか・・だけど私も女扱いなんですね。
一応男なんですけど。」
「私も最初はお前は女だと思っていたからな。
世間もそう見るだろう。」
「・・・ハァ。 やっぱり髪切って服も変えようかな・・・」
「それは止めておいたほうがいいな。」
「なんでですか?」
「華琳様が悲しむ。」
「そんな理由ですか・・・」
「華琳様はお前のその黒髪を褒めておられた、
華琳様が悲しむというだけで理由としては十分だ。」


そうだった、夏侯淵さんは一見 魏の常識人に見えるのだが
この人も根本は、曹操さん第一主義だったんだ。


「じゃあ、護衛の件、お世話になります。
それと桂花の件もよろしくお願いします。
あの娘、結構無茶をする時があるのでよく見ておいてやってください。」
「わかった、桂花も曹操様の軍師になったんだ。
我々の仲間ならその身は我等が守ろう。」
「お願いします。」
「あぁ。」


こうして私の護衛の件も方が付き、
行商人の方も陳留に着た時同行していた人達がいたので
許昌まで、同行させてもらうことになった。


この日の晩、桂花と一緒に居られるのが 残り二日ということで、
昨晩のように暴走しないように気をつけつつ、
お互いの愛情を確かめ合った・・・・のだが。

やはり、若さゆえの過ちか・・・
深夜、そこには体力を使い果たした私と、
身体に力が入らず、私にされるがままで抱かれてながら
甘い声を上げている桂花が居た。


翌日も、昼間は普通に身体に力が入らない桂花の世話をしながら過ごし、
次の夜は流石に昨晩みたいに無茶をすると桂花の仕事に響くので
何もせずに生まれたままの姿で抱きあうだけに止め・・・ようとしたが、
結局、二人共やっと想いが通じたということで、
欲望に流されはしたが、ある程度加減することは出来た。

こうして桂花が曹操さんと約束した三日が過ぎたが、
城に向かったのは桂花一人。
曹操さんはそのことを咎めるでもなく、
「次はきっちり捕まえておきなさい。」
と、桂花に言ったのみであったそうだ。

こうして数日ほど陳留での生活が続いたが、
とうとう、私が陳留を発つ日が訪れた。

その日は家の門の前で二人で手を繋いでお別れをしていた。


「・・・喜媚。 本当に行くの?」
「うん、私もなんとか桂花と一緒に歩いていける道を、
探してみるから桂花も頑張ってね。
・・無理して怪我とかしたら嫌だよ?」
「わかってるわよ・・・もう功を焦って馬鹿な真似はしないわよ。」
「うん、荀桂さんにも桂花は良く頑張ってるって伝えておくから。」
「ん、書簡書くから・・ちゃんと返事よこしなさいよ。
あと、たまには遊びに来なさいよ。」
「わかってるよ。
出来る限り会いにいけるようにしてみるよ。」
「・・・うん。」
「・・・じゃあ、行くよ。
皆待たせてるし。」
「うん・・・」


そう返事はするが 桂花は私の手を離してくれない。
私も手を離すのは嫌なのだが、
お互いがこれから自分の生き方を曲げずに
それでも同じ道を二人で歩いて行けるようになるために、
しばしの別れはしょうがない。

私が手を握る力を抜くと、桂花が離さないと言わんばかりに
強く手を握ってくるが、徐々に手から力が抜け、
とうとう私達の手が離れてしまう。


「じゃあ、桂花、元気でね。」
「あんたもね・・・」


最後にそう言って私は門を出ようとした時、
桂花が私の所に走りこんできて 抱きつき、
私に接吻をした。


「ん・・・・じゃあね!
他所で変な女作るんじゃないわよ!」
「・・・またね、桂花。」
「またね!」


最後に見た桂花の顔は
満面の笑みを浮かべながらも、目の橋から涙が零れ落ちるのがわかった。
私も出来る限りの最高の笑顔を浮かべ、桂花の元を去った。


家から城門へと向かう途中、
見慣れない金髪と二本のくるくるの女性・・だと失礼なので、
見事な金髪ツインテールにパーマをかけ
その瞳には確かな意思の光が宿る小柄な女性と
その娘に付き従うように長身でつり目の長い黒髪の女性、
空のように蒼い髪を短く切り前髪だけ伸ばして片目を覆う女性が立っていた。


「わざわざ、曹操さんが見送りに来てくれたんですか?」
「そんなわけないでしょ?
視察の途中でたまたま鉢合わせただけよ・・・って桂花なら言うんでしょうね♪」
「そうですね。」
「もう一度 貴方に言っておくわ、
私は一度狙った獲物は逃さない。
必ず貴方も私のモノにしてあげるわ。
それまで、せいぜい元気でやんなさい。」
「それは怖いですね、
じゃあ、曹操さんの目が届かない所でおとなしくしていますよ。」
「桂花が私の元にいるのに、私の目の届かない所で会うなんて不可能ね。
まぁ、今はいいわ。
やるべきことが山積みだからそれが片付くまで英気を養っておきなさい。
私の元に来たらこき使ってあげるから。」
「おぉ、こわいこわい。」


私は鉄扇で口元を隠し、
相手の神経を逆なでするよな眼つきで曹操さんに向かってそう言い放つ。


「春蘭、アレを今すぐ切り捨てなさい。」
「お任せください!」
「すみませんでした!!」


どうやら、私のこの態度は 曹操さんの逆鱗に見事に決まってしまったらしい。


「喜媚、次そのムカつく態度をとったら その場で首を刎ねるわよ。」
「分かりました。」
「じゃあ、元気でやんなさい。
今度 陳留に着た時は私の所にも顔をだすのよ。
お茶をごちそうになりっぱなしじゃ悪いから、
次は私がお茶をごちそうするわ。」
「あの時のアレですか。」
「えぇ、貴方が私の分の代金まで払ったおかげでね。
あの店、アレからまた腕を上げたから
今度 桂花も連れて皆で行きましょ。」
「そうですね、楽しみにしています。」
「じゃあね。
春蘭、秋蘭、行くわよ。」

「「はっ!」」


去り際に夏侯淵さんがこっちに向かって手を振ってくれたので
私も手を振り返し、この日、私は陳留を発った。


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三十六話


陳留




「ただいま喜媚! やったわよ! 私 華琳様の軍師になれたのよ!!」
「・・・・桂・・花?」


最初は桂花が扉から飛び込んできた時、
幻覚でも見たかと思ったが 桂花が私の肩を掴んだ感触で
現実だと認識できた。

桂花の様子は 少し汚れているが見た感じ特に問題ありそうではない。


「喜媚・・ってあんたどうしたのよ?
風邪でも引いたの? なにか病気にでかかったの? すごい顔よ。」
「別に大丈夫だよ、少し寝てないだけだから。」
「少しって・・そんなにやつれて何が少しよ。
ほら、早く部屋に戻って横になってきなさいよ。
何か食べるもの買ってきてあげるから。」
「それはいいよ・・・お帰り桂花。
怪我とかしてない?」
「え、えぇ、私は大丈夫よ。
少しお腹が減ったくらいだから。
それよりもあんたよ、あんたの方が酷いじゃない、」
「私は大丈夫だよ、すこし眠ってご飯でも食べれば。」
「本当でしょうね?」
「それより桂花、今までどうしてたの?
心配したんだよ?」
「あぁ、ごめん・・・ちょっと理由ありでね。」
「どうしてたの?」
「どうしてたって、別にいいじゃない。
そんな事より私華琳様の 「桂花。 今までどうしてたの?」 ・・えっと。」


桂花はバツの悪そうな顔をして私から目をそむける。


「ええっと、ちょっと色々あって、華琳様の賊の討伐に参加してたのよ。
それで、その功績を認められて、
華琳様と真名を交わして軍師として召抱えられたのよ。」
「私はどうして桂花が何の連絡もなく、
賊の討伐に参加することになったのか聞いてるの。
桂花は兵糧管理の文官でしょ?
何がどうなって軍の指揮なんてするようになったの?」
「そ、それは・・・・」


その後、渋々遠いった感じで桂花は事の経緯を話す。

最初は賊の討伐のため必要な遠征期間の兵糧を用意するように言われたのだが
桂花が独断で少なめに見積もった竹簡を担当者に渡し、
どうして兵糧を少なめに見積もったのか
その理由を尋ねるために曹操さんに呼び出された時に、
自分が指揮をすれば試算した兵糧で足りると進言したそうだ。
そして それを証明するために桂花は自分の首を賭け
賊の討伐に参加し、途中で大食いの許褚(きょちょ)さんの参加もあり
若干兵糧が足りなくなったのだが
許容範囲内と言うことで許され、その功績を認められて、
桂花は曹操さんの真名を呼ぶことを許され 軍師として召抱えられる。

やはり原作通りの展開・・・一刀くんは魏以外か。


「そう・・・」
「その・・・ごめん。
急いでいたから連絡できずに心配掛けたのは悪かったけど・・
でも! おかげで華琳様の軍師として一気に出世出来たわ!
コレでこの陳留ももっと豊かにできるし
私の目標に一気に近づいたわ!」


私に連絡がなかったことは悪いと思っているようだが、
反省した感じではない。
それどころか、曹操さんの軍師になれたことが
嬉しくてしょうがないといった感じだ。

私は椅子から立ち上がり桂花の正面を向き、
手を組んで拝礼し桂花に告げる。


「荀文若様、おめでとうございます。
コレにて私めが荀桂様より指示された期限は満たされたものと致します。
文若様にお仕えするのも今日限りとなりますが、
許昌にて文若様のますますのご活躍とご健勝をお祈りしております。」
「え・・・・?」
「それでは荷物をまとめて出ていきますので失礼します。」
「・・・・・え? ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!
なんでそうなるのよ!?
華琳様にお願いして、
あんたを私の専属の文官にしてもらうようにお願いしてあるのよ?
なんで急にそんな、許昌に帰るなんてなるのよ!」
「私が元々荀桂様より頼まれていたのは
荀文若様が使えるべき主を見つけ、そこに仕官するまでの間です。
文若様が曹孟徳様を主と定め 軍師となられたならば
私のお役目も終わりました。
この上は速やかに許昌に帰り、荀桂様に報告し、
私は許昌で農家の運営の仕事に戻りたいと思います。」
「なんで、なんでそうなるのよ!
お母様は関係ないわよ、あんたは私と一緒に華琳様の元で働けばいいじゃない!?
喜媚と一緒ならこの陳留、いやこの国をもっと良く出来るわ!」
「申し訳ありませんが、私には無理です。
以前から申し上げたかもしれませんが、文若様と私では生きる世界が違います。
私の様な身分の者では文若様の足を引っ張ることしか出来ませんし
私には文若様の生きる世界で生きていく事などできません。」
「なんでよ・・いままでは一緒にやったこれたじゃない!
それにその口調と呼び方をやめなさいよ!
いつも通り真名で呼びなさいよ!!」


桂花は私の方を掴んで引きとめようとするが、
今回は私も譲ることができない。
今の私と今の桂花では生き方が決定的に違うのだから
このまま一緒にいてもお互いのためにならない。


「荀文若様、貴女と私では決定的に生き方が違うのです。
貴女は民のため、国のため、主のため、
家のため、名のため、功績のために己が全てを懸けますが、
私は自分の命と身の回りに居る僅かな者達が、
一緒に笑って生きれればそれでいいのです。
私の器はその程度のモノでしか無いのです。
そんな小さな私の器に文若様と同じ物を入れたら、
たちまち溢れて器が割れてしまいます。
私では文若様のお供になれないのですよ。」
「そんな事ないわよ!
あんたの器の広さは 一番長く過ごした私が一番良く知ってるわよ!
喜媚ならきっとこの国で苦しむ民達を救えるし・・・・それに私だって・・・」

「・・・フゥ 桂花、私は桂花が好きだよ。」

「・・え?」
「でも、たとえ好きでもこのままじゃお互いがダメになる。
今の私じゃ いつか必ず桂花の足かせになる。
その時にお互い潰れたんじゃダメなんだよ。」
「わかんないわよ・・・あんたの言ってる事は私にはわかんないわよ!!
私のことが好きなんでしょ!
だったら一緒にいればいいじゃない!!」
「好きなだけじゃダメなんだよ・・
根本的な生き方が違うんだ、私が桂花に合わせても
桂花が私に合わせても、いつか必ず破綻する。
私には桂花にはそうなってほしくないんだよ。」
「そんな事わからないじゃない!!
今までやってこれたんだから これからもきっとやっていけるわよ!
あんたに相談も無しに勝手に賊の討伐に行ったのは謝るから、
だから・・・」
「ごめんね、桂花。」
「あ・・・っ!?」


私が桂花の手を振り払い部屋からでていこうとした時・・


「何やら大声が外にまで聞こえるから
何か事件でも起きてるのかと思って 礼には失するけど立ち入らせてもらったわよ。」
「華琳様・・・」
「・・・・曹孟徳様。」


扉から入ってきたのは、
曹操さんと夏侯惇(かこうとん)さん夏侯淵(かこうえん)さんの三人だった。


「何だ桂花、なんて顔してるんだ?」
「・・・・何か有ったのか?」
「なんでもございません、私が荀文若様の使用人の仕事を
辞する旨をお伝えしただけです。」
「わ、私は認めてないわよ!」
「・・・桂花はこう言ってるけど?」
「私は荀文若様の母上からご依頼されて文若様の使用人として働いておりました。
その期限が来たので職を辞する旨をお伝えしたのです。」
「その呼び方をやめなさい! さっきみたいに真名で呼びなさいよ!」
「ふぅ、話がわからないわね。
桂花、何があったのか最初から説明しなさい。」
「は、はい、華琳様。」


そして桂花は自分が帰ってきてからの出来事を曹操さんに漏れ無く話し
私と桂花が幼馴染で真名を交わした仲であるということまで説明した。


「ふむ、で、貴女胡喜媚と言ったわね。
貴女の言い分は?」
「私から説明することは何もありません。
荀文若様がそうおっしゃるならそうなのでしょう。」
「くっ・・・!」


桂花が私を睨みつけるが私はその視線を無視する。


「貴女の言い分を詳しく聞かない事には判断できないのだけど、
要は胡喜媚、貴女は桂花とは根本的な考え方が違うから
何れ不和を起こす事を恐れているのよね?」
「何も申し上げることはありません。」
「あら、そう。
・・・そうね、貴女 桂花の使用人を辞めるのよね?」
「そうです。」
「喜媚っ!」
「桂花は少し黙ってなさい。」
「・・・はい。」
「じゃあ、貴女私の所で働きなさいな。
桂花に道中で聞いた話では
貴女も文官としてかなりの才を持っているのでしょう?
喜媚が文官として望むなら文官として、
桂花付の侍女か文官がいいならそれでも良いわよ?」
「本気ですか曹孟徳様?
よく知りもしない農家の出の者を その懐に置くなどと。」
「本気よ、私は才ある者を出自で差別するつもりはないわ。」


コレは困ったことになった・・・
曹操さんは陳留の刺史だ。
その曹操さんが言ったことは陳留では絶対だ、
下手に断ろうものなら手討ちにされても文句は言えない・・・が
曹操さんはそこまではやらないだろうが
無理やり私を城に連れていき、
桂花と一緒の部屋に缶詰にして話し合わせるくらいならやりそうだ。

・・・・私の無い頭を総動員して考えた結果、
私が桂花にしてあげられる最後の事を思いついた。
失敗したら桂花に最悪のトラウマを植え付けることになるが、
成功したらきっと今後の桂花の財産になる。
それにどちらにしても、私が桂花に何を伝えたかったのか、
桂花なら理解してくれるはず・・・
私は曹操さんを信じてこの策を使うことにした。


「・・・曹孟徳様にお仕えするのはかまいませんが
一つ。 私の望みを叶えてくれますか?
それが条件です。」
「なにかしら? 言ってご覧なさい。
高待遇は約束するわよ?」
「その前に一つ約束してください。
私がこれから何を言っても絶対に怒らないと。」
「・・・・面白そうね。
良いわよ、言ってご覧なさい。」
「では・・・」


私は一度 夏侯惇さんの方を見て彼女が帯剣していることを再度確認した後、
できるだけ下卑た笑みを浮かべてこう言った。


「曹操、お前の身体を今後 私の自由に弄んで良いのなら その仕官の話受けよう。」

「「・・・は?」」
「貴様ぁ!! 華琳様に向かってふざけたことを!
叩き斬ってくれる!!」
「・・・ッ!」


私がそう言うと夏侯惇さんはすぐさま剣を抜き私に向かって切りかかってきて、
夏侯淵さんは懐から小刀を取り出し曹操さんの前に立ち私を威嚇する。


「喜媚っ!!」
「・・・・」
「やめなさい春蘭!!」
「・・・くっ!」


曹操さんが夏侯惇さんに制止するよう命令を下すと
夏侯惇さんの剣は私の猫耳頭巾に触れた所で止まり、
その後すぐに桂花が私に抱きついてくる。


「馬鹿っ!! あんた何ふざけたこと言ってるのよ!!
もう少しで春蘭に斬り殺されるところだったじゃない!!」
「・・・これで少しは分かってもらえた?
私がこの数日間 どんな気持ちで桂花を待っていたのか。」
「・・・・え?」
「自分の大切な人が必要もない事で命を賭けて来るそのさまを、
ただ待つことしか出来ない人が どんな気持ちか。
荀桂さんや荀緄さん、桂花の姉妹達が今回の桂花の行動を知ったら、
どんな気持ちになるか。」
「・・・・」
「今回の桂花の行動は明らかに功を焦った結果だよね?
桂花ならこんな事しなくても 近い内に曹操さんの目に止まったはずだよ?
・・・もし間違って桂花の首が斬られたら、
私はどんな顔して桂花の家族に説明しに行ったらいいの?」
「・・・・・・」
「桂花、そんなに焦らなくてもいいから確実に一歩ずつ前に進めばいいんだよ?
桂花の事を心配して協力してくれる家族や皆が居るんだから、
そんなに命を粗末にするような無謀な賭けは止めて。
孫氏にも そんな事は愚者のやることだって書いてあったでしょ?」
「・・・・・ごめん。」
「コレが私が桂花に教えてあげられる最後の事。
もっと自分を大切にして。
桂花の事を大切に思っている人がたくさんいるんだから。」
「・・・・うん。」
「さて、曹孟徳様、どうしますか?
ちなみに、私はこう見えて男ですよ?」
「・・・なるほどね、私への仕官を断るのと同時に桂花に教育ね・・・
私を出しに使ったわけね。」


夏侯惇さんは訳のわからない顔をして剣を元に戻し
夏侯淵さんはクスクスと笑っている。


「こうなっては私もこの話を引っ込まざるをえないわね。
貴方の事はすごく気に入ったけど、
今は 流石に私の身体を差し出してまで手に入れようとは思わないわね。
これで貴方への貸しは二つになったのかしら?
一つは何年前かの茶店、もう一つは今。」
「覚えてたんですね・・・」
「私はやられっぱなしで済ます女じゃないの。
それと覚えておきなさい、私は欲しいと思ったモノは必ず手に入れる。
貴方 気に入ったわ、その端正な顔に己が友のために命を張れる胆力、
それに僅かな時間でこの私を出し抜く知、
何れ必ず桂花と一緒に可愛がってあげるわ♪」
「それは御免被りたいですね。」
「話し方も桂花に話す時と同じように普通に話していいわよ、
呼び方も曹操でいいわ。
貴方を手に入れた時には私の真名を呼ばせてあげるから、楽しみにしてなさい。」
「・・・・ハァ。(厄介な人に目をつけられちゃったな)」
「春蘭! 秋蘭! 帰るわよ。
それと桂花、三日休みをあげるから、
胡喜媚を止めたいのなら その間に何とかなさい。」
「は、はい!」
「じゃあ、三日後、二人揃って私の前に来ることを楽しみにしているわ。」


そう言って曹操さん達は帰っていった。


「・・・・・ハァ。」


曹操さん達が帰ると同時に私の足から力が抜け
その場にぺたんと座り込んでしまう。


「こ、怖かったぁ~・・・マジで死ぬかと思った。」
「あんたがあんな馬鹿な事するからでしょ!」
「だってしょうがないじゃない、アレしかいい方法が思いつかなかったんだから。」
「だからってやりようがあったでしょう!
・・・ん? あんたなんで春蘭がすぐに切りかかってくるって分かったのよ?」
「だって陳留じゃ有名じゃない。
曹操さんの悪口を言ったら夏侯惇さんがどこからか現れて、
すぐに斬り殺されるって。」
「・・・あの馬鹿、そんな噂が流れてるなんて。
もぅ・・・あれ? 安心したら私も腰が抜けちゃった。」


そうって桂花も私と同じようにその場に座り込む。


「・・・馬鹿・・・本当にあんたが殺されたかと思ったじゃない!」
「ごめん・・でも桂花にわかってもらうにはあの方法しかなかったんだよ。
桂花も私と同じ気持だから私が死ぬような目にあったら、
きっと実感してくれると思って。」
「口で説明すればいいじゃない!!」
「こういうことは口じゃダメなんだよ、実感しないと。
私だって、桂花が帰ってこなくなって初めて実感したんだから。」
「・・・もう、こんな事二度とするんじゃないわよ!」
「桂花もね。」
「・・うん。
・・・・・ん? ちょっと待ちなさいよ。
私があんたと同じ気持ちってどういう事よ!?」
「桂花はきっと私の事好きなんだろうなって思ってたから。
でなかったらあんな下着が透ける寝間着着て私に抱きついたり
私を閨に誘ったりしないだろうし。」
「あ、あ、あ、あんた・・・知ってたんならもっと早く何か、
こう、行動に移すなり、伝えるなり、何か有ったでしょ!!」
「しょうがないじゃない、今は桂花と一緒になるつもりは無いし。」
「どういうことよ!! あんた私の事好きだって言ったじゃない!!」
「好きだけど一緒にはなれないって・・・
言ったでしょ? 私と桂花じゃ生き方が違う。
桂花が農家の嫁で収まるはずないし、
私が曹操さんの文官なんて務まるわけがない。」
「あんた、まだそんな事・・・」
「荀緄さんも言ってたよ。
私と桂花は今はまだ道が交わらない。
今一緒になっても必ず何処かで破綻するって。」
「お父様まで・・・」
「でも、今は無理だけど 何れ時代が動いて
否応無く私と桂花も生き方を変えざるを得なくなる とも言ってた。
うまくすれば その時に私と桂花の道が交わることを祈ってるって。」
「・・・お父様。」
「だからその時までは・・・
私は許昌に戻って今まで通り農家をやってるよ。」
「どうして・・・別に陳留に一緒にいてもいいじゃない?
華琳様に仕えろとまでは言わないわ、でも一緒ココで暮らすくらい・・・」
「私がココにいたらきっと桂花を放っておけなくなる。
それじゃあ私が桂花の生き方に引きずられることになっちゃうよ。」
「べ、別にいいじゃない! 私が面倒見てあげるわよ!!」
「それだと私の心が持たないよ・・
これから来る戦乱で多くの命を奪う覚悟が桂花と違って私には無いから。」
「・・・私だってそんなにはっきり覚悟として持ってるわけじゃないわよ。
ただ この国を良くするために犠牲は最小限にする必要はあるけど
犠牲者は出るとわかってるだけだもの。」
「それでも桂花は覚悟ができてるよ、
今回の賊の討伐だってちゃんと指揮できたんでしょ?」
「・・・・うん。」
「私じゃ無理だよ・・・きっと。」
「そんな事無い・・そんな事無いわよ、
喜媚だってあの現状を見てあの場に立てば・・・」
「でも今の私にはそう思えないんだよ。」
「・・・・どうしても許昌に帰るの?」
「うん、一度荀桂さんに報告もしないといけないしね。
桂花が立派に曹操さんの所で軍師をやってるって。
今まで私達はずっと一緒だったけど、
ここらで一度離れてお互いの生き方を見なおそうよ?
その間に二人が尊重し合って二人で並んで生きていける生き方を探そう?」
「・・・・」
「さぁ、今日はもう寝よ?
桂花も疲れたでしょう、私も桂花が無事で安心して眠気がもう限界・・・ではないね。
さっき夏侯惇さんに殺されそうになったから目が冴えちゃった。」
「・・・何よそれ。」
「アレは本当に死ぬかと思ったんだから。」
「・・・思い出したくないわ。」


そう言って桂花は私の方に倒れこんできて抱きついてくる。


「私も もう思い出したくないな。
夏侯惇さんに斬られそうになった事も
桂花が帰ってこないんじゃないかって 眠れない夜を過ごしたことも。」
「・・・・ごめん。」
「もういいよ 済んだことだし。
さぁ、もう寝よ。」
「うん。」


こうして私と桂花はようやく腰と足に力が入るようになったので
二人で手を繋いで寝室に向かい それぞれの部屋に別れようとするが、
桂花が私の手を離してくれない。


「桂花、流石に今日一緒に寝るのはまずいんだけど。」
「なんでよ?」
「いや、だって・・・ねぇ。
夏侯惇さんに殺されそうになったり桂花に告白したりした後の夜だから
その、色々と我慢するのもきついし、汗も流してないし。」
「・・・そう、今なら我慢出来ないのね。」


そういうと、桂花は私の手を掴んだまま部屋に私を押しこんで
寝台に私を突き飛ばして自分は私の馬乗りになる。


「あの桂花サン? 私の話を聞いてました?」
「聞いてたわよ、今なら我慢出来ないのよね?」
「いや、そこじゃなくて。」
「華琳様も言ってたわ、あんたを引き止めるために三日休みをくれるって。
つまりコレは華琳様あんたを引き止めろって言ったということよね?」
「・・・嫁入り前の娘が はしたないと思わないの!?」
「あんたに責任取ってもらうからいいわ。」
「え? ・・・・・マジ?」
「マジよ。」
「・・・・・・」


私に馬乗りになった桂花は 上着と頭巾を脱いで私に覆いかぶさり耳元で囁いた。


「・・・・喜媚、大好き。」


「・・・え?」
「な、何度も言わせんじゃないわよ・・・好きって言ったのよ!
あんただけに言わせて私も言わなかったら・・・・
ごめん、ちゃんと伝えたかったの、私の気持ち。」
「・・・あの、本当に まずいんですけど?」


桂花が覆いかぶさってきたせいで
私は身動きが取れない。
その上桂花も何日も汗を流してないせいか
彼女の女性独特の体臭が私の鼻いっぱいに広がり
桂花が密着してくるせいで
胸や太腿の体温や感触がはっきりと分かる。
さらにさっき死にかけたことで生存本能が刺激されているのか、
私の男の部分がはっきりと反応してしまい、その事を桂花が耳元で指摘してくる。


「・・・喜媚のが、私のに当たってる。」
「桂花本当に我慢出来ないんですけど!」
「好きに・・・すれば いいじゃない。」
「・・・いいの? 今は結婚とか出来ないよ。」
「良いわよ 私も喜媚の匂い嗅いでたら なんか・・我慢出来ない。
・・・っん。」
「桂花。」
「喜媚。」

「「んっ・・・」」




こうして私の長い桂花を待つ日々は終わり・・・そうに無かった。
まだ日は沈んだばかり、夜は長い・・・


  1. 2012/09/20(木) 03:41:36|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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雑記


こんにちは。


今日は個人的に呆れて失笑するような事がありました。
まぁ、それはいいんですが、
三十一話~三十五話投稿しておきました。
まだ、七十四話まで半分も着てないんですね。
なんとか早めに辿り着きたいとは思います。


>>巌の蛟さん
誤字の指摘、表現方法の部分は修正しておきました。
ご指摘ありがとうございました。


ぼちぼちと、感想掲示板を使い始めてくれる人が出始めました。
ありがとうございます。
やっぱり感想返しだけで言うなら、個人的にはあっちのほうが使いやすいですね。
もう少し、色々模索してみようと思います。


たいち
  1. 2012/09/19(水) 03:13:02|
  2. 雑記
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三十五話


南皮




私が買い物から家に帰ってくると、
憮然とした表情の桂花が椅子に座り イライラしているのか
落ち着きのない様子で足を揺すっていた。


「ただいま~、あれ? 荀諶ちゃん帰ったの?」
「あの馬鹿はもう帰ったわよ!」


私が買い物でいない間に何か有ったんだろうか?
荀諶ちゃんの話をした途端に桂花の機嫌が一気に悪くなる。


「・・・近い内に南皮を発つから準備しておいて。」
「え? いいの?
袁紹さんに結構良い待遇で仕官を進められてたんじゃないの?」
「駄目ね、袁紹の君主としての器はともかく
人の話を全く聞かないんじゃどうしようもないわ。
唯一の頼みの顔良は袁紹の言いなりだし、
どんないい計画を持って行っても、
袁紹の気分一つで採用か不採用か決まってしまうんだもの。
・・・・君主以前に人として失格よ。」
「・・・そう。
で、次は何処に行くの? やっぱり陳留?」
「そうね、陳留の曹操様の人柄は申し分ないし、
私の知る限り君主としての器は最高ね。
確実にこれから伸びる方だわ。
孫策も、悪くはないんだけど、あそこは今は袁術の配下だからね。」
「そっか、じゃあ荷物をまとめて 陳留に行く行商人や護衛の手配をしておくよ。」
「えぇ、お願い・・・・喜媚あんたさぁ・・・・」
「ん? なに桂花?」
「・・・ん、やっぱいい、なんでもないわ。
旅の支度は任せたわよ、私はちょっとつかれたから部屋で休んでるわ。」
「わかった、体調には気をつけてね。
ここんとこ桂花は働き詰めだったし。」
「えぇ、わかったわ。
・・じゃあ。」


そうして桂花は自室へ戻っていったが、荀諶ちゃんと何か有ったんだろうか?
明らかに様子が変だけど、大丈夫だろうか?


この日は桂花は一人で寝ると言ったので、久しぶりに私も落ち着いて眠ることが出来、
翌日から南皮を発つための準備を始め、
幸いなことにすぐに陳留へ行く行商人や護衛の手配が着いたため、
この五日後、私達は南皮を発つことにした。

私達が南皮を発つ日、荀諶ちゃんがわざわざ見送りに来てくれた。


「それじゃあ喜媚ちゃん元気でね♪
お姉ちゃんは・・どうでもいいや。」
「あんたはさっさと何処かへ嫁に行きなさい、コレは命令よ。」
「じゃあ、喜媚ちゃんにお嫁さんにもらってもらおっと♪
ね~♪ 喜媚ちゃん。」
「ね~・・・って言われても。」
「寝言は寝てから言いなさい。
どこぞのむさい親父の所にでも嫁に行けばいのよ。」
「お姉ちゃんこそ、さっさとお父様の決めた相手の所にでも嫁けば。
あ、お姉ちゃんみたいな貧相な身体じゃ
その手の特殊な嗜好をもつ変態にしか相手にされないか。」
「あんたも似たようなもんじゃない!!」
「私はお姉ちゃんより中身がいいから。
喜媚ちゃん、私 結構尽くす方だからお得だよ。」
「さっさと仕事に行け!
喜媚! 行くわよ!!」
「え、ちょっと桂花引っ張らないでよ。
じゃあ、荀諶ちゃんまたね。」
「喜媚ちゃんまったね~♪」
「さっさと来い!」


なぜか急に仲が悪くなった桂花と荀諶ちゃん、
一体二人に何があったのかは分からないが、
まぁ、許昌に居る時もこういう時があったから
次会うときにはまた仲良くなっているだろう。


こうして私達は南皮を後にし、陳留へ向けて旅だった。

陳留までの道中は特に問題なく進んだが、
やはり陳留に近づくつれ、治安が良くなってきているのか
妙な視線や怪しい人物を見ることがなくなってきている。

噂では 最近曹操さんは陳留の刺史に出世したそうだから
その影響もあってか、道中は安全に旅をすることが出来た。


「所で桂花、曹操さんのところにはどうやって仕官するの?
荀緄さんや袁紹さんの時みたいに曹操さんに人脈を使って仕官するの?
確か桂花は曹操さんと知り合いだったよね?」
「陳留では今 人を集めてるそうだから、
今回は曹操様の文官としての試験を受けるつもりよ。
曹操様は出世されたから面会できるかどうかわからないし
知り合いといっても何度か書簡をやり取りした程度だから
そんな私がいきなり訪ねていっても迷惑になりそうだしね。
それに曹操様のところなら 能力さえアレばすぐに上に行けるから
直接面会出来る立場になった時に改めて挨拶すればいいわよ。」
「そう、桂花がそうするつもりならそれでいいんじゃないかな。」
「なんか、投げやりな言い方ね。
・・そういえば、今度会う時は あんたも連れてこいって言われてたわね。
まだ覚えてらっしゃるかわからないけど
場合によってはあんたも曹操様に会うかもしれないから
失礼の無いようにしなさいよ。」
「・・私は会いたくないんだけど。」
「別に取って食いやしないわよ。」
(私はともかく、桂花は別の意味で食べられるかもしれないけど・・・)


若干桂花が曹操さんとそういう関係になったことを想像した時
不快感があったが、そのほうが桂花にとってきっと幸せかも知れない。
曹操さんの元でなら桂花はその才能を充分活かすことが出来るだろうし
陳留の民や、この国の人達にとっても そのほうが良いような気がする。

私はこの時はよく考えもせず単純にそう思っていた。


陳留に着き、行商人達と別れまずは宿を取り、
翌日から、住む家を探す。
たまたま運が良かったのか、
宿屋の御主人がこのあたりに顔が効く人で
安くてそこそこ広い空き家があるというので
持ち主を紹介してもらったのだが・・


「今まで何人も曹操様の所に仕官目的出来た者がこの家を借りていったが
誰一人として登用されなんだ。
以来、なかなか借り手がつかんでのう。」
「そう? なかなか値段の割に良い家だし、
ならば 私が借りて曹操様のところに仕官出来た第一号になってあげるわよ。」
「まぁ、儂としても借りてくれるのならば文句はないが
曹操様の所に仕官するには並大抵のことではないから
しっかりと準備をし、心してかかるようにな。」
「ご忠告感謝するわ。
喜媚、この家にするわよ。」
「桂花がいいなら私はいいけど・・・」


こうして陳留に来てすぐに家は見つかり、
数日掛けて掃除し、日常生活をおくるには問題ない状況になった所で
早速 桂花が曹操さんの所に文官としての試験を受けに行った・・・のだが
その日の内に合格してくるとは私も予想していなかった。


「案外楽勝だったわよ、あんたの算盤も一応用意していったんだけど
使うまでもなかったわね。
ちなみに兵糧を管理する部署に登用されたわ。」


桂花には以前からせがまれていたので 算盤を送っていたのだが、
そもそも暗算の能力がかなり高い桂花には
必要なのか疑問に思う時がある。
私が昔 四則演算を一緒に勉強した時にはあっさり習得してしまったし
二桁の掛け算を私は簡単に解くテクニックを使って
インチキをして 桂花をからかおうと思ったのだが
あっさり暗算で解かれてしまったこともある。


今回はその計算能力を買われたのだろう。
・・そういえば原作の桂花も最初に出た時は
兵糧の管理をしていたっけ、などと思いだしていたが・・


この時 もう少し先まで思い出していれば
あんな思いはせずに済んだのかもしれない。


桂花があっさり曹操さんの所に仕官することが出来、
急なことだったのでお祝いは翌日改めてと言うことで
その日は簡単なお祝いだけして就寝、
翌日改めてお祝いのための料理の準備をしていた。


(コレで桂花が無事曹操さんの所に仕官できたから、
私の役目もそろそろ終わりかな。
近い内に荀桂さんに書簡を送って
許昌に帰る準備でもするか・・・)


買い物から帰り、お祝いのための料理を準備がほぼ完了し、
丁度 桂花が日が沈む前にお城から帰ってきたので
桂花が軽く汗を流している間に食事の準備をする。


「それじゃあ、昨日もやったけど、桂花おめでとう~。」
「ありがと、まぁ、私にかかかればあんな試験楽勝よね。」
「桂花が凄いのは認めるけどあんま調子に乗らないようにね。
調子に乗ってるといつか足を掬われるよ?」
「わかってるわよ。
お母様みたいなこと言わないでよ。」
「一応 荀桂さんから桂花のお目付け役を頼まれてるからね。」
「はいはい、まったく・・お母様も余計なことを。」
「荀桂さんの話はいいとして、今日はお城でどんな事したの?」
「今日は大して仕事らしい仕事はやってないわよ。
城の中の案内と関係者への挨拶周りと仕事の説明ね。
後は現在の兵糧の備蓄量やらが記載されてる竹簡を読んだり。
本格的な仕事は明日以降になるそうよ。」
「そっか、頑張ってね。」
「任せときなさいよ、すぐに功を上げて、
もっと大掛かりに陳留の内政に介入できる立場になって
この邑からこの国を立てなおしてやるわよ。」
「大きく出たね、でも桂花ならきっと大丈夫だよ。
焦らなくてもいいから足場を固めて安全で確実にね。」
「そんな余裕は無いわよ、
今もこの国は持ちそうにないのに悠長なこと言ってられないわ。」
「そういう思いは桂花一人じゃ無いんだから、
皆と協力して頑張っていけば いつかこの国をよく出来るよ。」
「そうね・・まぁ、曹操様は上司としては申し分ないから
後は曹操様にどんどん出世してもらって、
多くの県や州を管理する立場になってもらえば
それだけ、多くの民にいい暮らしをさせてあげられるわ。
そのためにも明日から頑張らないとね。」
「頑張ってね。」


翌日から桂花は洛陽や南皮で仕事をしていた時のような陰鬱な表情ではなく、
生き生きとした表情で、お城に出かけていった。

この調子なら、問題無いだろう。
そう判断した私は、荀桂さんに桂花の様子を伝えるのと、
そろそろ私がいなくても大丈夫だろうと言う内容の竹簡を書き、
許昌の荀桂さんに届けてもらうように手配をすることにした。


丁度その頃だろうか、
今まで以上に天の御遣いの噂があちらこちらから聞こえてき出したのは。
最近は食堂や酒場に行けば必ずといっていいほどその噂を耳にする。
そろそろ一刀くんがこの外史に降り立つ頃なのだろうか?


そんな時、近くで賊の集団が発見されたという報告を受けたのか、
曹操さんが夏侯姉妹と兵を率いて賊の討伐に出かけて行くのを遠目から見た。
ここの兵はよく訓練されているようで、
動きに大きな乱れもなく、整然と行進している。
私の周りに人々もその様子を頼もしいと感じているのか、
好意的な視線で見つめるものや、声援を送る者もいる。
この様子を見るだけで、
曹操さんがこの陳留でどんな政治を行なっているのかがわかるようだ。


この日からしばらくして、
賊の討伐が終わった曹操さん達が帰還したと言う話を桂花から食事中に聞いたが、
天の御遣いが見つかったという話は聞かなかったし
珍しい服をきた青年を拾ったという話も聞かなかった。


そしてしばらく後、私に取って最初の運命の分岐点、
その始まりとも言える日を迎える。


その日は普段通りの穏やかな日だったのだが、
二つほど変わったことがあった。
一つは曹操さんが兵を率いて賊の討伐に出たこと。
コレはそれほど珍しいことではない。
曹操さんは賊が発見されたり、近くの村や集落が襲われたと言う報告を聞いたら
すぐに兵を率いて現地の確認と賊の討伐を行う。
問題はもうひとつの方だ・・・

桂花が夜になっても帰ってこないのだ。

桂花が仕事で帰ってこない日は別に珍しいものではない。
袁紹さんの所にいた時も時折そういう日があったし
陳留に来てからもそういう日はあったが、
必ず事前に予定を話していたり、後から使いが来て連絡が入ってきたのだが、
この日は連絡が来ることがなかった。

しばらく私は家で待っていたが、
何時まで経っても状況が変わらないので夜にお城に行き
門番に人に確認をとってもらうことにした。

陳留の警備兵は基本的に親切で、
こういったことを頼んでも賄賂も要求しないし
城で働く桂花が帰ってこないとなれば
色々と問題があるため、すぐに確認してくれた。


「遅れてすみません、
荀文若殿なら本日は曹孟徳様と、
近隣の村を襲った賊の討伐に向かわれたとのことです。」
「・・・え? で、でも、桂花・・荀文若様は文官で兵糧担当ですよね?
なんで賊の討伐に同行したんですか?」
「私も詳しくは知りませんが、
曹孟徳様に呼ばれた後、一緒に出陣したと言う話です。」
「・・・・そ、そうですか・・・・ありがとうございます。」


わたしはとりあえず家に帰りながら、
なぜ桂花が賊の討伐に参加したのかを考えていたが、
私の記憶と知恵袋の両方である出来事が有ったことを思い出した。

それは桂花が曹操さんの軍師として登用される事件。
族の討伐に持っていく兵糧の算出を頼まれた桂花がわざと少なめに報告し、
自分の策ならば提示した兵糧で十分だと言い、
それを証明出来なければ・・・・桂花が首を差し出すと言うイベントだ。


それを思い出した時、私の頭から一気に血が引き、
頭の中に氷を突っ込まれたかのような冷たさと、
アレほど、足場を固めてじっくり行けばいいと忠告したのにもかかわらず
それを無視し 功を焦った桂花に対する怒り。
荀桂さんに申し訳ないと言う罪悪感。
原作とは違い、私と関わったせいで、
もしかしたら桂花が本当に首を斬られるのではないかという恐怖。
様々な感情で頭が混乱し、どうやって家に着いたのかわからないが
家についた時には私は完全に混乱状態になっていた。


(桂花・・どうしてこんな事を・・・
そんな危険を犯さなくても桂花なら着実に一歩一歩やっていけば
すぐに曹操さんの目に止まるのに!
もしかしたら私のせいで桂花が居なくなる?
いや! 桂花の事だ、わざわざ首を賭けなくても、
言葉巧みに曹操さんを説得したに違いない!)


こんな思考が頭の中でずっとループして
とても眠ることなど出来ないし、
今の私にはどうすることも出来ない。


(せめて私がそばにいれば桂花を守ることもできるのに!)


そんな事をずっと考えたいたら、気がついたら朝になっていたようで、
窓から差し込む朝日が私の顔を照らし、作っておいた食事も既に冷めきっていた。


この日から数日間、私はろくに食事も取れず、
眠ることも出来ず、最低限の水と食事だけはなんとか摂り、
ひたすら桂花が帰ってくることを祈りながら家で待っていた。


(桂花が居なくなる・・死ぬかもしれないと思っただけでこのザマか・・・
私は自分が思ってた以上に桂花が大切だったんだな。
それにわかっていたはずなんだ、桂花が私と生きる世界が違うことくらい。
桂花が生きる世界は、民のため、国のため、主のために命を懸け、
功を上げるために命を懸け
才を活かすために時に己の全てを懸ける世界。
ここで、桂花が曹操さんを説得して討伐に参加したのならまだいいけど、
もし、原作通りに首を賭けて討伐に参加したのなら・・・・・・私は許昌に帰ろう。
生きる世界が違う桂花にはもうこれ以上付き合えないよ。
これ以上一緒にいたら私は本当に桂花から離れられなくなる。
本当に最後まで桂花に付き合って 戦乱の世を生きることになる。
今でもこのザマなのに 私にはそんな世界・・・耐えられそうにないよ、桂花。
・・でも今は・・・今だけは無事に帰ってきて!)




結局、桂花が帰ってきたのは この翌日の午後だった。


「ただいま喜媚! やったわよ! 私 華琳様の軍師になれたのよ!!」


  1. 2012/09/19(水) 03:00:52|
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三十四話


許昌




寿春から許昌までの道中は、
賊の急襲などはまったくなく、無事に許昌までたどり着くことが出来た。

実は夜襲が何度か計画されていたらしいのだが、
周泰ちゃんが事前に察知して、
賊の頭領を討ち取ることで急襲を阻止してくれていたという話だ。
私や桂花、それに傭兵の皆も完全に熟睡していて 全く気が付かなかった。
以前 関羽さんにボコボコにされてわかってはいたが
この世界の武官は明らかに強さの桁が二~三桁違う。
なにかあったとしても 武力で立ち向かうというのは絶対にやめておこう。

こうして無事に許昌にたどり着き、
行商人達と別れ、桂花を家まで送った後、
周泰ちゃんには 旅の疲れを癒す間 家に泊まってもらうことになった。

私はその間に 母さんに華佗か、
華陀と一緒にいるであろう卑弥呼達に連絡を取ってもらい
周瑜さんの診察を頼むよう、母さんに言付けと手配をしてもらっておいた。


許昌についたその日は、荀桂さんが簡単な宴席を設けてくれたので 皆で参加し、
寿春での出来事などを話したりして、一時の安らいだ時間を過ごした。
次は南皮、かなり遠いが袁紹さんの本拠地だ。

桂花が荀諶ちゃんに誘われ、まずは様子見としてしばらく仕え、
袁紹さんの為人や器を見定めるそうだ。
おそらく、袁紹さんのところでは桂花は長く勤まらないだろう、
派手好きの袁紹さんが桂花の出す内政に関しての政策を受け入れるとは思えない。
そうなると近いうちにも次は陳留、曹操さんのところになる。
私が桂花の使用人として仕えるのも もうすぐ終わるだろう。

その後は・・・特に考えが纏まっている訳ではないから
一度 許昌に戻ってゆっくり考えるのもいいかもしれない。

・・・そういえば協ちゃんが次に洛陽に来るなら
できるだけ早く来いと言っていた、
黄巾の乱が本格的に動き出す前に一度 洛陽に行ったほうがいいかもしれない。
アレが始まれば、しばらく行商人も都市間の移動も控えるだろう。
私に一人旅は流石に無謀なので、
洛陽に行くなら黄巾の乱が始まる前か その直後がいいだろう。
アレだけの乱が鎮圧された後なら賊の動きもおとなしくなるだろうし
行商人達の動きも激しくなるだろう。


周泰ちゃんが家に逗留している間に、
桂花は南皮に行く行商人達や傭兵と打ち合わせして
南皮までの同行の手配をしいる。

今回の許昌での逗留はそんなに長くはなさそうだ。


そうして数日ほど許昌で周泰ちゃんや桂花と過ごした後、
とうとう周泰ちゃんが洛陽に向けて発つというので
私の家で私と周泰ちゃんだけでのお別れとなる。

今回 荀桂さんによると 桂花は家の仕事を手伝っている(?)ので、
周泰ちゃんの見送りには来れないようだ。
一応 護衛のお礼と餞別という事で桂花から周泰ちゃんに
幾らかのお金が渡されている。


「それじゃあ、周泰ちゃん洛陽までの道中気をつけてね。
周泰ちゃんが強いのは知ってるけど、怪我とかしないようにね。」
「ありがとうございます。
仕事柄慣れてますから大丈夫です!
でも、喜媚さまの御心使い 感謝いたします。」
「あとこれ、道中で食べて。
飴とか日持ちするお菓子とか水は入ってるから。
それと寿春からの護衛のお礼として幾らか入ってるから、
周泰ちゃんの旅の路銀にでも使って。」
「そ、そんな・・そこまでしていただいてはむしろ申し訳ないです。」
「いいからとっといて。
特に 洛陽までの道中は普通の旅の食事だけじゃ味気ないだろうから
甘いものを摂れば元気も出るから。」
「・・ありがとうございます。
許昌に来てからと言うもの 喜媚さまには何から何までお世話になって。」
「私達の護衛をしてくれたんだからこれくらいは当たり前だよ。
・・・それじゃあ、元気でね。」
「はい! ・・・喜媚さま・・今度また私達の所に遊びに来てくださいね。
雪蓮さまも皆も、私も待ってますから!」
「うん、また寿春か孫策さん達が居る所に行ったら遊びに行くよ。」
「はい! お待ちしています。
それでは!」
「またね!」


こうして私は周泰ちゃんを見送り、
この数日後、桂花や行商人に皆と一緒に南皮に旅だった。


南皮までの道中は今までとはまた違い、
洛陽までの道中よりも寿春までの道中に近い。

道は南皮に近づくに連れ荒れていき、
それに連れて怪しい人影が こちらの様子を伺う回数も増えていく。
私達がこれだけの人数じゃなかったら とうの昔に襲われていただろうか?

それか、むしろこれだけの人数で荷物を輸送しているのだから
逆に興味を引いて監視に来ているのかもしれない。

とにかく、私が警戒しすぎなのかもしれないが、
私達が人目を引いているのは間違いない。


私が一人で神経をピリピリさせている間、
同行している行商人や傭兵達、それに桂花はのんきなものだった。
結局南皮まで賊に襲われるという事などはなく、
私が一人、精神をすり減らしただけですんだ。

もう十年以上この世界で生活をしているが
やはり前の世界の感覚が抜け切らないのだろう。
行商人や傭兵にとっては旅は日常みたいなところがあるので
ある程度リラックスしているのはわかるが
桂花ですら 途中で見た怪しい人物や視線などを気にすること無く
道中の地形の把握や調査をしていた。

・・・単に私が臆病なだけと言う可能性も高い。


南皮に着いて最初に思ったことは
何もここまで豪華にしなくてもいいのに・・・
と言う感想だった。

城門は彫り物が施され
城壁にも彫像が立っていたり彫り物がしてあったりする。
主要の道の店や建物は この世界にしては綺羅びやかに飾られ
洛陽に勝るとも劣らぬ豪華絢爛差である・・・が
一本脇道に入れば そこには古い建物や一部が崩れた建物、
とても表の通りの建物とは比べ物にならない貧相なもので、
そこで生活する人達の表情は一様に暗く、瞳に生気はなく、
ただ生きるためだけに黙々と働いている、といった感じである。

私と一緒にその様子を見ていた桂花も
コレには驚いたようで、あの袁家の本拠地でさえこの現状なのか?
と、後で宿に泊まった時に話していた。
寿春も酷かったが、ここ南皮も酷い現状だ。
洛陽と同じく一部の者が富を独占し、
その他の民は ただ日々を生きることで精一杯といった感じだ。


南皮に着いた私達は その日は宿で一泊し、
翌日、お城に努めている荀諶ちゃんを尋ねることにした。


「お姉ちゃんいらっしゃい、喜媚ちゃんも良く来たね。」
「ひさしぶりね、あんたは・・・どこでも元気そうね。」
「荀諶ちゃん久しぶり。」
「ぶ~、そうでもないよ。
私も仕事が大変でさ、お姉ちゃんが来てくれて助かったよ。」
「言っとくけど私はあんたの仕事を手伝う気はないわよ。」
「え~なんでぇ、手伝ってくれてもいいじゃない?」
「自分の仕事くらい自分でやりなさい。」
「ちぇ~ 喜媚ちゃんは?」
「私は桂花の使用人なので~。」
「酷い! 喜媚ちゃんにまで見捨てられた!」


そう言って荀諶ちゃんは その場に泣き崩れる。


「演技はその辺にして、さっさと袁本初様に会わせなさいよ。」
「いいよ、とりあえず私とお姉ちゃんは本初様のとこに行くけど
喜媚ちゃんは・・・私の部屋で待ってて。」
「あ、私は一旦外に出て、今日から暮らす家を探そうかと思うんだけど。」
「それなら心配ないよ、私が探しておいたから
お姉ちゃんを本初様に会わせたら皆で行こうよ。」
「そういう事なら待ってるよ。」
「じゃあ、こっちね、着いてきて。」


その後 私は荀諶ちゃんの部屋で二人戻ってくるのを待っていたのだが、
しばらくすると こめかみに指を当てながら渋い表情の桂花と
いつも通りのニコニコ顔の荀諶ちゃんが帰ってきた。


「どうしたの桂花?」
「どうしたもこうしたも・・・明日から私はアレの下で働くの?」
「本初様は扱いやすくていいじゃない。
適当に褒めておけばいいし、袁家の人脈もできるし、袁家で働いたって泊もつくし。」
「だからって街のあの現状を放って置けることなんて出来ないでしょ!」
「私だって別に放っておいてるわけじゃないよ。
色々やってるけど それでもあの現状を維持するのがやっとなんだよ・・・
周りが足を引っ張すぎるのよ・・・だからお姉ちゃんが来て
二人ならなんとか出来ると思ったんだけど。」
「・・・はぁ、とりあえず まずは現状を確認しないと。
誰が敵で誰が味方で誰が使えるのかを・・・」
「その前に私達が住む家を何とかしない?」
「・・・そうね、まずはそっちが先ね。
荀諶、案内しなさい。」
「は~い。」


荀諶ちゃんの案内で、一旦城から出て、彼女が探しておいたと言う家に着き、
とりあえず、今日寝れるだけの掃除を皆でして この日は終わった。


翌日から桂花と荀諶ちゃんは お城で働き、
私は家の掃除と食事の用意などの雑務をこなしながら、
町の様子を見て回り、夜に帰ってきた桂花に南皮の現状を桂花に報告。

夜眠る時、寿春までは別々で寝ていたのだが
南皮に来てからまた桂花と私が一緒に寝るようになり、
更に桂花が何処で手にれたのか薄手のネグリジェのような寝間着で
私にくっついて寝るものだから、私もたまったものではない。
桂花がそれ以上の行動に移らないため、
なんとか耐えてはいるが かなり困った状況ではある。
・・・おそらく桂花にこんな事をさせたのは荀桂さんだろう。
桂花が自発的にこんな行動に出るとは思えない。
荀桂さんの思惑通りに行かないためにも
私は日夜の武術の訓練で思いっきり汗を流し
体力を使い果たすことで なんとか桂花の誘惑(?)に耐えるようにした。

南皮では しばらくはこんな生活が続いた。
そんなある日・・


「とりあえず文醜(ぶんしゅう)は性根はいいとしても文官としての能力は皆無。
顔良(がんりょう)がこの南皮の唯一の良心ということね。
後はひどすぎて言葉も出ないわ・・・」
「そうだね、それ以外にもいい人はいるけど、
完全な善人ってわけじゃないから、
自分が不利益を被ってまで何とかしようっていう気は無いね。
まぁ、それが普通なんだけど、話の持っていきかた次第で
敵にも味方にもなるってとこかな。」
「まぁ、その辺はうまく立ち回ればいいでしょう。
洛陽で宦官達相手にするよりかは楽なはずよ。」
「そうだね~。」
「ならばまずは顔良を味方につけて
その上で町の改善要求を出して・・・」
「後は文醜さんも一緒に味方に出来れば・・・」


二人はこの南皮の民の生活水準を上げるために知恵を絞っている。
桂花に性根は真っ黒だと言われる荀諶ちゃんも
荀桂さんの教育の賜物か、やはり南皮の民を放ってはおけないようで
今まで一人で がんばって来てたそうだ。


こうしてしばらくこの二人はなんとか、
南皮を立てなおそうと頑張ってきていたのだが・・・


「何よアレ!! わけわかんないわ!
何が 「美しくないから却下。」 よ!!
顔良も顔良よ! あの娘がもう一押しすれば
文醜も袁紹も納得しそうだったのに
な ん で あの娘がまっさきに折れるのよ!!」
「もう顔良さんは完全に本初様の言いなりだよね。」
「あ゛~もう!! やってらんないわよ!
これじゃあ、どんなに良い計画書を出しても 袁紹の気分次第じゃない!」
「内政なんて地味な積み重ねだからね~
なかなか、本初様が好む派手さとか 華麗さとかは無いよね。」
「その積み重ねを怠ったら華麗さも糞もないでしょうが!」


もはや桂花には当初から少なかったが、
確かに有った袁紹さんに対する忠義の心は既に完全に無くなり、
袁紹と呼び捨てにするほどだ。
荀諶ちゃんも桂花が来たらなんとかなるのでは?
と 思っていたようだが既に諦めの境地に入っている。


そしてこの数日後、私が買い物に行っている時の話である。




--荀諶--


「もう駄目だわ・・・ココを中から変えるのは袁紹が居る間は無理よ。
私はもう南皮を出ていくけどあんたはどうするの、荀諶?」
「私はもう少し南皮に居るよ。
お姉ちゃんはいいけど 私は結構長い事ココに居るからね。
私まで一緒に出て行ったら民にどんな被害が出るか・・・
民に出る被害を最小限にできるように準備してそれからにするよ。」
「そう・・あんたも気をつけてね。
最悪何かあったら、お母様が居る許昌か、私の所に来なさい。」
「うん、喜媚ちゃんの居る所に行くよ♪」
「私かお母様のところに来いって言ってんのよ!!」
「え~、私が本初様の所で駄目だったら喜媚ちゃんに嫁入りしようと思ってたのに。
ココお給金だけはいいから、
結婚費用とその後の生活費はもう十分たまったんだよね。」
「あんた 子供の頃からずっと言ってるけど まだそれ言ってんの?」
「私はずっと前から喜媚ちゃん一筋だよ。
少なくともお姉ちゃんよりは 私のほうが喜媚ちゃんに合ってると思うな~。」
「・・・・どういうことよ?」
「お姉ちゃんは自分の事ばっかりで喜媚ちゃんの為に何かしようとしたことある?
お姉ちゃん 喜媚ちゃんの将来の夢・・知ってる?」
「・・・・のんびり暮らすことでしょう。」
「そう、それよ。
お姉ちゃんは家のため、この国のため、って言ってるけど
実は自分の才を十全に活かしたいだけでしょ?
お姉ちゃんわかってる?
お姉ちゃんがその才を活かそうと思ったら 喜媚ちゃんの望む、
贅沢は出来ないけど、
家族が幸せにのんびりと暮らせる生活を送ることは出来ないんだよ?」
「・・・・」
「お姉ちゃんが才を完全に活かせる場は 政治や戦場、
喜媚ちゃんの願いと まるで正反対。
だからお姉ちゃんが幾ら喜媚ちゃんを誘惑しようとしても、
喜媚ちゃんはお姉ちゃんを相手にしないんだよ。」
「そんな事! ・・・・無いわよ。」
「実は私達もお母様から言われてるんだよね~
お姉ちゃんが駄目だったら 私か荀衍お姉ちゃんが喜媚ちゃんの嫁になれって。」
「・・・・っ!?」
「今夜辺り喜媚ちゃんに夜這いかけちゃおうかな~。
『こんな国は放っておいて 何処か遠くで私と一緒に幸せに暮らそう?』
・・とか言って♪」
「荀諶あんた!!」
「お姉ちゃんはどっちか選べないんでしょう?
いや、違うわね、お姉ちゃんは自分の才を活かしたいんだよ。
喜媚ちゃんの事なんてどうでもいいんだ、
喜媚ちゃんの持ってる独特の着想や知識が欲しいだけなんだ 「荀諶!!」 ・・っ!
叩いたわね・・・。」


お姉ちゃんは私の頬を思いっきり叩き、
私を睨みつける。


「あんたに喜媚は渡さないわ!」
「 今の お姉ちゃんじゃ喜媚ちゃんを幸せにできない。
近い内にきっと喜媚ちゃんを悲しませる。」
「・・・・私には・・喜媚しか いないのよ。」
「そうやって喜媚ちゃんに甘えている内は、
何時まで経っても喜媚ちゃんは振り向いてくれないわよ。
ま、私にはそっちの方が都合がいいんだけど。」


最後にそう言って私は部屋を出る。


(痛~、お姉ちゃん本気で叩いてくれて・・・母さんにもぶたれた事・・・あるわね。
コレは喜媚ちゃんのお妾さんくらいは許してもらわないと駄目ね♪
・・・でも、コレでお姉ちゃんも少しは
喜媚ちゃんの気持ちを考えるようになるでしょ。
このままだと本当にあの二人がくっつくことなんてなさそうだし。
喜媚ちゃんは妙にお固いし、お姉ちゃんは全っ然素直じゃないし、
普通だったらとっくの昔にどっちかが手を出して結婚して、
私がお妾さんになれてるはずなのになぁ・・・ホント二人とも困ったものだよね。
・・・でも、そういう二人が可愛いのよね♪)


  1. 2012/09/19(水) 02:59:42|
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三十三話


寿春




孫策さんに桂花への言付けと着替えを持ってきてもらうように頼んで、
今日 私は美羽ちゃんのお城に泊まることになった。

孫策さんが帰った後、
私は美羽ちゃんと七乃さんと三人で私の許昌での話や
美羽ちゃんの子供の頃の話などをし、
豪華な夕食をごちそうになった後は、
七乃さんに客室を用意されていたのだが、
美羽ちゃんが私が泊まっていく今日だけは、一緒に寝ようとぐずったため、
結局 七乃さんを含めた三人で美羽ちゃんの部屋で眠ることになった。


「・・美羽さま、もう寝ちゃいましたね。」
「そうですね、いつも寝付きはいいんですか?」
「いえいえ、いつもは寝るまでにもっと時間がかかりますよ。
今日は喜媚さんが来てくれたお陰で
美羽さまはいつになくはしゃいでいたから 疲れちゃったんでしょうね。」
「そうですか。
・・・なんだったら私 今からでも客室の方に行きましょうか?」
「いいえ、ココにいてください。
美羽さまが目を覚ました時に喜媚さんがいなかったら
きっと悲しみますから。」
「そうですか・・・」


私も 美羽ちゃんや桂花ならともかく、
七乃さんは完全に大人の女性なので流石に落ち着かない。


「喜媚さん 今日はありがとうございました。」
「え? あぁ はい。 どういたしまして・・?」
「美羽さまがこんなに嬉しそうに過ごせたのは、
寿春に来て以来 初めてなんですよ・・」
「・・・そうなんですか? いつも明るい感じがしますが。」
「とんでもない、普段美羽さまが笑ってるのは、
蜂蜜水を飲んでるか喜媚さんの書簡を読んでる時くらいで、
普段はふてくされていることが多いんですよ。」
「そうですか・・」
「同年代の友人も居ませんし、
気を許せる話し相手もそんなに居ませんし。
周りには美羽さまを利用しようとするか、
美羽さまにあまりいい感情を持ってない人達ばかりで・・」
「・・・・」
「なんとかしようにも、私には美羽さまのみを守るのが精一杯で。」
「そうですかね? 七乃さんはよくやってると思いますよ。
本当に七乃さんの言う通りだったら
美羽ちゃんはこんなに素直に育ってませんよ・・・
ちょっと我儘な所がありますけど。」
「フフフ、そうですね。 そうだといいんですけど・・」
「そうですよ。」
「・・・」


今は私、美羽ちゃん、七乃さんと並んで寝ているので
七乃さんの表情はあまりはっきりとは見えないが
彼女は少し困ったような感じで微笑んでいる。


「そういえば喜媚さん、今日は孫策さんに手を貸しましたね?
揚州の開墾や治水の件で。」
「・・・やっぱり七乃さんにはバレますか?」
「それは、わかりますよ。」
「ちょっと孫策さん・・と言うより孫策さんの所の
周泰ちゃんと友達なので断りきれなくて。
内容自体も、揚州の民の為になることみたいだし、
一緒に来ていた桂花・・荀彧ちゃんも特に問題無いと判断したようなので・・」
「今日は見逃しますけど、次はダメですよ?
孫策さんは、お嬢様の客将・・みたいな扱いですけど、
実質は美羽さまに援助を受ける代わりに、
配下として働いてもらってます。
ですけど 何時美羽さまに反抗するかわからないんですから。」
「・・孫策さんは、無茶なこと言わない限りは
とりあえず借りを返すまでは大丈夫だと思うんですけど・・・
でも それはあくまで普通の農民の私の考えだから 当てにはなりませんかね?」
「そうですね、事 領地や領民、官職や面子が絡むと、
個人の為人は当てに出来ませんから。
今回の件は 以前から孫策さんから上がってきていた計画書がありましたし、
孫策さんが得る理は揚州での名声だけですので、
喜媚さんを連れてきてくれた褒美として見逃しましたけど次はありませんよ?」
「心しておきます・・でも、もうこういう事もないと思いますけどね。
次からは寿春に来ても すぐにお城に通してもらえそうですし、
私自身 孫策さんに特に借りがあるわけではないですから。
宿がわりにお世話になったのも、今日のコレで十分返したことになるでしょうし。」
「お願いしますね。
喜媚さんが美羽さまに何かするとは思ってませんが、
利用されることがあるということを 覚えておいてくださいね。
美羽さまの真名を預かるということは、
それだけで十分な力になるのですから。」
「・・・分かりました。」
「さて、難しい話はコレまでにして、もう寝ましょうか。
「そうですね。」


この後しばらくして、私と七乃さんは眠り、
翌朝、私よりも先に目を覚ました美羽ちゃんに叩き起こされ、
朝食を作らされることになったり、
昨日作ったお菓子の材料費と褒美だと言って、
小さい袋ではあったが、
銀がぱんぱんに詰まった袋を貰っていいのかどうかで揉めたりしたが、
結局そのまま押しに負けて 貰う事になり、
午前中一緒に美羽ちゃんと遊んだ後、桂花が心配するといけないので一旦、
孫策さんの屋敷まで帰ることにした・・・のだが、
美羽ちゃんがゴネまくったりと一悶着があった。


孫策さんの屋敷に帰った私は、桂花がどうしているのか気になったので、
使用人の人に桂花の居場所を聞き、庭に居るというので見に行ったら・・・


「・・何やってるの?」
「・・・・色々あったのよ。」
「・・・・ハァ。」
「ハァハァ・・・あぁん♡
あっ、喜媚さん、この縄をほどいてくださいよぉ、
そしたらぁ、ンフフ、私と一緒に二人っきりでお話ししましょう♡」


そこには縄でぐるぐる巻に縛られた陸遜さんが転がされており、
その状態の陸遜さんを無視するように 桂花と周瑜さんが机に竹簡や本を並べて、
何やら勉強会を開いているようだった。


「穏じゃなくて亞莎を連れてくるべきだった・・・」
「・・あんたも苦労してるのね。」
「あぁん♡」
「わかってくれるか?」
「とりあえず、陸遜は放っておいていいから あんたもこっちに来て座りなさい。
丁度今経済の話をしていたから あんたも一緒に話に加わりなさい。」
「・・はぁ。」


結局この後、陸遜さんは縛られたまま、私達の話を聞くことだけ許され、
太腿をもじもじとすり合わせながら 何度かビクビクと震えているが
その様子を見ようとすると、
桂花に思いっきり足を踏まれるか 本で顔面を叩かれるため、
彼女の方は見ないようにしながら話し合いに参加させられた。


そうしてある程度キリがいいところで、
周泰ちゃんがお茶のおかわりを持ってきてくれたので いったん勉強会は休憩となり、
私が寿春のお城で何をやってきたのか話すことになった。


「しかし、あんた、袁公路の真名を預かってくるとは・・
どれだけ好かれてるのよ?」
「色々あったんだよ・・・ハァ」
「だが、我々は大いに助かった。
昨日 雪蓮から話は聞いたが お陰で少しではあるが確実に揚州の民が救われる。
それに荀彧殿と話しあった治水法や農法は大変役に立つだろう。
できたらお二人にはこのままこの屋敷に残ってもらいたいくらいだ。」
「私もあんたや陸遜との話は楽しいからいいけど、
私達はこの後、行かなきゃいけないところがあるのよ。」
「その話は昨日聞かせていただいた、
袁本初殿のところに行かれるとか?」
「えぇ、妹が早く来いってうるさくてね。」
「それならば仕方がないが、お二人ならいつ来てもらっても歓迎するから、
雪蓮の所に来ることも選択肢の一つとして考えておいてほしい。
アレは普段は仕事をさぼったり問題行動も多いが
民を思う気持ちと主としての器は本物だ。」
「そうね、孫策の為人はまだ見極める必要があるけど
あんたほどの人物が仕えてるんだもの、見極める価値は充分有りそうね。」
「あぁ、是非考えてみてほしい。
もちろん喜媚殿もいつ来てもらっても歓迎しよう。
喜媚殿ほどの人物が野に埋もれるのはこの国の損失だ。」
「私はそんな大した人物じゃありませんよ・・
私はただ、私や私の周りの人達がほんの少し幸せでいてくれたらそれでいいので。」
「・・・ふむ、どうやら喜媚殿は我々や蓮華様と考えが近いようだ。
一度 我々の考えも聞いて欲しい所だが・・・まだその時期ではなさそうだ。
何れ 我々が喜媚殿を迎えに行くこともあるやもしれぬな。」
「・・・そうですか?」
「あぁ、今はまだ理由があって語れないが
何れ我々の話を聞いてもらえれば、きっと理解してくれると信じている。」
「・・・・」
「まぁ、今の我等は袁術の駒でしか無い・・
我等も喜媚殿も荀彧殿も未だその時では無いが、
今はお互い出会えた事を喜ぶとしよう。」
「・・・そうね。」 「そうですね。」
「わ、私も喜媚さま達に会えたことは嬉しいですよ!」
「私もですよぉ・・・っていいますか、いい加減縄を解いてくださいよ!」

「「「「駄目だ(です)。」」」」

「そ、そんなぁ・・・このままじゃ新しい世界に目醒ちゃいますよぅ。」


こうして 夕食中も桂花達の話し合いは続き、
陸遜さんが椅子に縛り付けられたまま話に参加しては悶え、
私が陸遜さんを見ようとすると桂花や周泰ちゃんからいろんなモノが飛んでくる。
と、いう状況の中 夜が深まり、
陸遜さんが私を襲いに来るのを防止するための監視として、
桂花と私が一緒に寝ることになったりして この日は終わった。

翌日以降は、私が昼から夕方まで美羽ちゃんの所に遊びに行くために抜けたが、
桂花と周瑜さん、陸遜さんが、勉強会を開いてお互いの知を高め合っている。


結局、私達が寿春にいる間、勉強会をしている周瑜さんと陸遜さんの仕事は、
普段さぼりがちな 孫策さんと黄蓋さんがやらされることになり、
彼女達は屋敷に軟禁状態にされ、竹簡の山と戦っていたそうだ。

周泰ちゃんは早々に 自分の仕事を終わらせ、
桂花達の勉強会に参加しつつ、陸遜さんを取り押さえる役目をしていた。


それから数日後、とうとう私達が寿春を去る日になり、
美羽ちゃんがゴネにゴネたが七乃さんが何とかしてくれたようで
私を止めるために挙兵するという状況になるのだけは避けられた。

私達が許昌に帰る旅には
周泰ちゃんが護衛として同行してくれる事になり
行商人の護衛隊、私達が雇った傭兵、
さらに周泰ちゃんと言う布陣で安心して許昌までの旅をすることができそうだ。

孫策さんの屋敷で皆が 私達が旅立つのを見送ってくれた。


「喜媚ちゃんが来てくれて助かったわ。
荀彧ちゃんも二人でいつウチに来てくれてもいいからね♪。」
「こちらこそありがとうございました。」
「そうね、考えておくわ。」
「二人が来てくれて楽しかったぞ。
またいつでも来るといい、その時はまた儂の手料理を馳走しよう。
明命、二人の事を頼んだぞ。」
「黄蓋さんも飲み過ぎないようにしてくださいよ。」
「また今度あんたの料理を食べるのを楽しみにしてるわ。」
「はい! この周幼平、必ずやお二人を無事に許昌までお届けします!」
「喜媚さんも荀彧さんもまた来てくださいね♪
その時は またいっぱいお話ししましょうね。」
「あんたを袋詰めにして顔だけ出した状態でいいなら良いわよ。」
「あはは・・・桂花、さすがにそれは・・・・」
「話をする度に発情されたんじゃ あんたやこっちの身がもたないのよ!!」
「その、少しは我慢するように頑張りますぅ。」
「喜媚殿、荀彧殿、また会える日を楽しみにしている。
二人共 壮健でな。」
「えぇ、あんたもね。」
「・・・・周瑜さん、ちょっと二人だけで話してもいいですか?」
「ん? 構わないが?」


私はこの寿春にいる間、一つ気にかかっていたことがある。
最後までどうするか迷ったが 結局、私は情に弱いようだ・・
一度出会って、同じ時を過ごし、友誼を深めることが出来た相手を、
見捨てることが出来ないようだ。

これからすることがどういう影響を及ぼすかわからないが、
わかっている悲劇を回避するために、
私は手を打つことにした。


(何だ喜媚殿、二人だけでの話とは?)
(周瑜さん・・・もしかして何処か身体が悪くないですか?)
(・・っ!? いや、何処も悪くないぞ。
喜媚殿の気のせいではないか?)
(私の気のせいだといいんですけど・・・
私の知り合いに華佗と言う 良い腕の医者がいます。
私が知るかぎり最高の医者です。
彼に頼んで一度ココを訪ねてもらうようにしますから 診てもらってください。)
(・・・私はべつに何処も悪くないといったのだが?)
(そうであることを願っています。
診てもらうだけで結構です。 治療費も何もいりません。)
(・・・・)
(・・・・)
(・・・はぁ、分かった。
喜媚殿がそこまで言うのなら診てもらうだけならいいだろう。)
(お願いします。
容姿は赤髪の男性の医者ですので ココを訪ねてきた時は診てもらってください。)
(わかった。)
(私の話はそれだけです。)


なんとか周瑜さんに納得してもらうことが出来、
これで、後は華佗に連絡を取るだけだ。
母さんか、左慈に頼むか、華佗が許昌に来た時に母さんに言付けを頼むかして、
周瑜さんを診てもらうように頼めばいいだろう。

こうして私は寿春でのすべての用事を終わらせ、
桂花と周泰ちゃんと共に許昌に帰るのだった。


  1. 2012/09/19(水) 02:58:40|
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三十二話


寿春




宴席の準備が出来たと呼びに来た周泰ちゃんが、
息を荒くして今にも私に襲いかかろうという陸遜さんを殴って気を失わせ、
何事もなかったように・・・


「宴席の準備が出来たのでどうぞコチラへ♪」


と、にこやかに言ってのけた。
ココ孫家ではコレが日常なのだろうか?
周瑜さんも特に咎めること無く、私と桂花を屋敷内に案内していく。

陸遜さんは周泰ちゃんに引きずられている・・・・わざわざうつ伏せにして。
桂花も時々そうだが、
周泰ちゃんも陸遜さんの胸の事で色々と思うことがあるのだろうか?


案内された部屋には豪華な食事が用意され、
既に孫策さんと黄蓋さん(?)がお酒を飲んでいる。


「雪蓮! 祭殿! 喜媚殿と荀彧殿の歓迎の席なのに
お前達が先に酒を飲んでどうする!!
それに祭殿! 貴女はまだお二人に自己紹介すら済んではおらぬではないですか!」
「おぉ そうじゃったな、
儂は黄公覆(こうこうふく)、黄蓋(こうがい)で良いぞ。
ほら、冥琳すんだぞ。」
「・・・貴女という方は!」
「や~ねぇ、冥琳 固いこと言わないでよ♪
早く食べないと折角の料理が冷めちゃうしお酒も美味しく飲めないじゃない。」
「お前達はっ・・・・二人共 明日から暫く私達の分も含めて、
仕事は全部二人だけでこなすように。」
「えぇ! そんなぁ!」 「それはないぞ冥琳!」
「二人が馬鹿なことをやった罰だ!
本当に申し訳ない喜媚殿 荀彧殿。」
「べ、別にいいですよ。」
「私も気にしてないわ・・・だけど中央の役人相手にこんな事やったら
ただではすまなくなるわよ?」
「流石に二人もそれはわかっているのだが
どうも明命の友人ということで気が抜けているようでして・・。」
「さぁ、お二人共、どうぞ席の方へ!」


この世の終わり家のように凹む二人を放っておいて、
私達は周泰ちゃんに案内され席に着き
周瑜さんの歓迎の口上の後、私達を歓迎する宴会が開かれた。

その様子は、許昌での荀桂さんの宴会に
輪をかけたように明るく騒がしくもので
孫策さんが皆にお酒を進めて周り、
黄蓋さんが私達に食事を進め、
一見すると静かに黙々と料理を食べている周泰ちゃんの周りには
空のお皿が増えていき、
陸遜さんは私と桂花に絡んでさっきの話の続きを、
自分の部屋でゆっくりしよう誘いに来た所で
どこからともなく飛んできたお皿の直撃を食らって倒れ伏し、
周瑜さんは合間合間に私達の旅の話や、許昌での生活の話を聞いたり、
自分達の故郷の話などを話してくれる。


こうして、宴会が終了し、私と桂花は用意された部屋に案内され
この日は布団でぐっすりと眠ることが出来た。


翌日、孫策さんは朝食後すぐにお城へ行き、
私の事を袁術ちゃんに伝えてくれるそうだ。

私と桂花は孫策さんの屋敷の庭で、
武術の稽古をする周泰ちゃんと黄蓋さんをよそ目に、
東屋で周瑜さん、陸遜さんの四人で昨日の話の続きをしていた・・・のだが、
しばらくすると孫策さんがあわてて帰ってきた。


「喜媚ちゃん! ちょっと一緒に来て!」
「え? なんですか孫策さん?」
「袁術ちゃんが喜媚ちゃんをすぐに連れてこいって言ってるのよ。
本当に我儘で困った娘だわ!」
「お前が言うな雪蓮。
しかし、話を伝えてすぐに来いとは・・よほど会いたかったのか?」
「今頃は張勲が抑えてるところよ。
本人に伝えたら自分から会いに行くって言って聞かなかったんだから。」
「あんた書簡で何書いたのよ・・・
何書いたら あの袁公路がそこまで執着するようになるのよ。」
「別に普通の世間話し程度のことだけどなぁ。
じゃあ、すぐに準備します。」
「お願いね。」


私は一旦用意された部屋に戻り、
袁術ちゃんのお土産用に持ってきた蜂蜜の壷と自家製酵母 試作品の蜂蜜飴等を持って
孫策さんの待つ庭へ急いだ。


「お待たせしました。」
「それじゃあ、行きましょうか。」
「じゃあ、桂花はココで待っててね。
私は行ってくるから。」
「いいけど、変な約束とかしてくるんじゃないわよ?」
「わかってるよ。」
「ふむ、喜媚殿 城に行かれる前に少し聞いて欲しい話があるのだがよろしいか?」
「なんですか、周瑜さん。」
「実はな・・・」


その後、周瑜さんは寿春の民の現状と揚州の現状などを簡単に説明し、
その問題の解決のために袁術ちゃんに人手や、資金を出して欲しいのだが
あまりうまくいっていない事などを話し、
揚州の民の生活を改善するための治水工事や畑の開拓資金の捻出の件で、
私に袁術ちゃんに口利きしてくれないか?
と頼んできた。

桂花の方を見てみたが特に問題ないのか 口を挟む様子はない。


「う~ん、私はただの農家の息子なので
袁術ちゃんが聞いてくれるかわかりませんよ?」
「だが、少なくとも我等が話すよりまともに話を聞いてくれるだろう。」
「その話は何度か袁術ちゃんにしたんですか?」
「あぁ、何度か話したが 検討するというだけで
返事をもらっていない状況だ。」
「・・・それだったらむしろ、私が袁術ちゃんのご機嫌を取りますから
どさくさに紛れて 孫策さんが話をすればいいと思うんですけど。」
「・・・普通だったらあり得ないけど、袁術ちゃんだと有り得そうだわ。」
「ふむ、逆に一から話すよりいいかもしれんな。」
「袁術ちゃんは昔から色々有って、
周りの情報から隔離されてるような状況なんですよ。
だから、そうしたら皆が喜ぶよ。
って、単純に話したほうが、彼女には効果的だと思うんですけど。
ちょっと我儘だけど根はいい子ですから。
下手に治水工事云々や開拓云々の話をするよりも、
皆お腹空いて困ってるから袁術ちゃんが少しお金出してくれれば皆喜ぶよ?
くらい単純に話したほうがいいですよ。
張勲さんが目を光らせてますから、全部が全部は通らないでしょうけど、
少なくとも 難しい話をするよりいいですよ。」
「なるほど雪蓮に話すよりも より単純に話せばいいのだな。」
「雪蓮さまに話すようにすればいいんですねぇ。」
「なんで二人して そこで私を例に出すのよ・・・」
「お前は難しい説明をしても、こっちのほうがうまく行く気がする!
とか言って勘で動くだろう・・・それで上手くいくから腹が立つんだが。」
「うまくいくのならいいじゃない。」
「・・・・な? どう思う荀彧殿?」
「私に振らないでよ・・・」
「とにかく、時間もないし喜媚ちゃん行きましょう。
喜媚ちゃんの案ならうまくいくそうな気がするわ!」
「あ、ちょっと、孫策さん!」
「ほらな。」 「ほらね。」
「・・・・あんた達も苦労してるのね。」
「わかってくれるか?」  「・・・・」
「そこ! うるさいわよ!」


そして私は孫策さんに服の襟の部分を捕まれ
猫のようにお城まで運ばれていった。

お城の城門は兵士が孫策さんを確認したのでそのまま素通りし
私は猫掴みで掴まれたまま、袁術ちゃんの待つ
謁見の間まで連れて行かれた。


「連れてきたわよ袁術ちゃん!」
「遅いの・・・・・喜媚ぃぃ!!
久しぶりなのじゃっ!!」
袁術ちゃんは私を見るなり椅子から立ち上がって、
そのままの勢いで私に飛びついてきた。」
「お久しぶりです袁術ちゃん。
だけど、アレから何年も会ってないのに よく私がわかったね?」
「妾が喜媚を見間違うはず無いのじゃ!」
「アハハ、そうなの?
袁術ちゃんは少し大きくなったね。」
「うむ! じゃがまだまだ妾は綺麗になるぞ?
七乃やそこの孫策よりも良い女になるのじゃ!」
「うん、頑張ってね。
・・・・でも好き嫌いはだめだよ?
張勲さんの書簡に袁術ちゃんが好き嫌いをして困るって書いてあったよ?」
「むぅ・・・七乃め、余計なことをしおって。」
「美羽さまぁ、喜媚さんの言う通り好き嫌いはダメですよ?」
「わかっておるのじゃ!
じゃから嫌いな人参も・・・・・少しは食べておるではないか。」
「その調子だよ、袁術ちゃんが嫌いな野菜も頑張って食べるって言うなら・・・
私も約束通り 袁術ちゃんにお菓子を作ってあげるんだどなぁ?」
「本当か! ならば今日から野菜も食べるから 早速お菓子を作るのじゃ!!」
「張勲さん聞きました?」
「はい♪」
「じゃあ、まずはコレ。」
「ん? なんじゃこの袋は?」


私は上着のポケットから小さな袋を取り出して
袁術ちゃんに見せる。


「コレはウチで作った蜂蜜飴だよ。」
「蜂蜜の飴かや!?」
「後で張勲さんに渡しておくから、
ちゃんと野菜を食べたら張勲さんからもらってね。」
「七乃に渡すのではなく妾によこすのじゃ!」


袁術ちゃんは私にしがみついて、飴の入った袋を取ろうとするが
私に近寄ってきた張勲さんに先に飴の袋を取られてしまう。


「七乃返すのじゃ!」
「ダメですよ、美羽さまがちゃんと野菜を食べた時に
一つずつあげますから、ちゃんと嫌いな野菜も食べてください。」
「むぅ~・・・・っ!」


張勲さんを睨みつけながら むくれる袁術ちゃんを
背後から抱えて 私の方を向かせる。


「袁術ちゃん、もう一つお土産があるんだけど。」
「む、何なのじゃ?」
「前書簡で約束した通り、袁術ちゃんお菓子を作って上げようと思ってね。
蜂蜜等は持ってきたけど、張勲さん、厨房を少しお借りしてもいいですか?」
「はい、いいですよ。」
「孫策さんも少し手伝ってもらえますか?」
「え? 私? 言っておくけど私 料理はそんなに得意じゃないわよ?」
「大丈夫ですよ、少し力仕事があるのでそこで手伝ってもらえれば。」
「・・・女の私に力仕事をさせるの?」
「ここまで私を片手で掴みながら走ってこれるんですから
私なんかより十分力がありますよ。」
「・・・うっ。」
「妾も手伝うのじゃ!」
「美羽さま!?」
「いいよ、じゃあ袁術ちゃんも一緒に作ろうか?」
「うむ!」
「あの・・大丈夫なんですか?
美羽さまは料理などした事は・・・」
「大丈夫ですよ、作業自体はそんなに難しことはないですから。
じゃあ、厨房に案内してもらえますか?」
「はい、コチラです。
「はぁ・・・まったく なんで私が。」
「何を作るのじゃ?」
「できてからのお楽しみだよ。」


厨房に案内され張勲さんに他に使う材料を用意して貰う。
使うのは小麦粉、塩、水、酵母だ。
フランスパンを焼いて薄く切り、そこに蜂蜜を塗って食べようということだ。

私の家なら牛乳もバターも用意できるのだが
ココにはさすがに無いので、
今日はコレで我慢してもらう。
だが、焼きたてのフランスパンなら十分おいしいので
袁術ちゃんにも気に入ってもらえるはずだ。

途中の生地を捏ねるのを袁術ちゃんと、孫策さんにやってもらう。
袁術ちゃんはすぐに力尽きてしまったのだが、
孫策さんはラクラクとこなしていた。

一次発酵、ガス抜き、二次発酵、切り分け、寝かせて成形し釜で焼く。
発酵を待つ間にお茶をしながらお互いの話をして時間をつぶす。
焼きあがったパンを少し冷ました後切り分け、
用意していた蜂蜜塗り、皆で食べることにした。


「む!? 甘くてふわふわで美味しいのじゃ!」
「表面がカリッとして中がフワフワなんですねぇ、
甘くて美味しいです。」
「へ~、こんなの初めて食べたけど、美味しいわね。」
「本当ならもっと柔らかく美味しく出来るんですけど
今は材料がないのでコレで我慢してください。」
「コレよりもおいしいものがあるのかや!?」
「まだ、色々あるよ。
でも、コレも焼きたてだから美味しいでしょ?
それに自分で作ったものだから余計に美味しく感じると思うよ。」
「コレを妾が作ったのか・・・もう一つ食べるのじゃ!」
「ほとんど私が練ったんだけどね・・・でも美味しいからいっか。」


その後 ハニートーストもどきを皆で食べながらお茶を楽しんだ。
まぁ、ほとんど袁術ちゃんが食べちゃったんだけど。


「余は満足じゃ~。」
「あらあら美羽さまったら♪」
「それじゃあ約束も果たせたし 私達はコレで帰ろうと思うんだけど・・・」
「なぬ! ならぬ! 喜媚は帰ったらダメじゃぞ!」
「もうすぐ日も沈むからそろそろ帰らないと。
それにまだ何日か寿春に居るからまた会いに来るよ。」
「ダメじゃダメじゃ! 喜媚はココに泊まっていけば良いではないか!」
「う~ん、どうしましょう 張勲さん?」
「美羽さまもこういってますし、
お部屋は用意しますので今日は泊まっていってください。
「いいのかな、私みたいな普通の農民の子がお城なんかに泊まって。」
「はい、喜媚さんなら構いませんよ。」
「それに喜媚にはまだ褒美もやっておらぬ。」
「別に私はいいよ、元々袁術ちゃんにお菓子を作ってあげるのは約束してたし。
それよりもご褒美だったら、孫策さんにあげて。
孫策さんが今回のお菓子作りで一番頑張ったんだから。」
「むぅ、しかしのぅ・・・」
「一番頑張った孫策さんがもらえないなら私ももらえないよ?」
「むぅ・・・・・なら孫策よ、お主何が望みじゃ?」
「私の望みと言ったら・・・今日はアレでいいわ。
前 言っていた、揚州の開墾工事と治水工事の指揮権を、
任せてくれればそれでいいわよ。」
「むぅ?」
「揚州の人達がご飯を食べれなくて困ってるから、助けて上げようって言う工事だよ。
袁術ちゃんがそれを許可してくれたら 後は孫策さんが勝手にやってくれるし、
揚州の皆が御飯食べれるようになって、袁術ちゃんに感謝すると思うよ。
張勲さんどう思います?」


張勲さんは困ったような表情で考え込んでいるが
軍部を動かすならともかく、治水工事や開墾工事ならば行けると思うけど・・・


「・・・う~ん、まぁ、それくらいなら。」
「張勲さんも良いって。」
「うむ、ならば孫策よ、そのなんたら工事をするがよい!」
「ありがと、袁術ちゃん♪」
「ならば喜媚はどうしようかの?
何か欲しいものでもあるか?」
「私は特にないよ、今回使った蜂蜜とかの材料費を少し貰えればそれでいいよ。」
「むぅ・・・うむ! 決めたのじゃ!」
「なに?」
「喜媚には妾の真名を預けるのじゃ!」
「「「・・・・・は?」」」
「み、美羽さま!?」
「なんじゃ、だめなのか?
わざわざ、妾との約束を守るためにここまで来てくれて、
美味い菓子を馳走になったのじゃ。
その友に真名を預けるのに何の問題があるのじゃ?」
「いや・・・・う~ん、喜媚さんなら・・いいのかなぁ?」
「張勲さん!」
「なんじゃ・・・喜媚は妾と真名を交わすのは嫌なのか?」


袁術ちゃんがそう言うと悲しそうな顔をして、
上目+涙目で私を見つめてくる。


「嫌じゃないけど・・・私 真名がないんだよ。」
「どういうことじゃ?」


皆に私の真名がない理由を話し、
真名を交わしたとしても私には交わす真名が無いことを説明する。


「じゃあ、荀彧ちゃんとはどうなの?
荀彧ちゃんの真名は預かってるわよね?」
「アレは桂花が、私の名を呼ぶときには真名を呼ぶつもりで
魂と誇りを懸けて呼ぶって言って・・・」
「ならば妾もそれで良いのじゃ!」
「張勲さん・・・?」


私は最後の望みをかけて張勲さんを見つめるが・・・


「なら、私のことも今後は七乃とお呼びください♪」
「・・・・張勲さん。」
「美羽さまの為にわざわざ許昌からいらしてくれて
美羽さまの信に応えて下さった喜媚さんなら何も問題無いと思います。
それに喜媚さんと私達とのお付き合いもそれなりに長いですし
喜媚さんの為人は見定めたつもりですよ♪」
「ならば妾のことは今から真名で呼ぶのじゃ!」
「これからもよろしくお願いしますね、喜媚さん♪」
「・・・じゃあ、その美羽ちゃんと七乃さん、よろしくお願いします。」


こうして、私がこの世界に来て、
真名を交わした相手が、桂花、稟ちゃん、愛紗ちゃん、美羽ちゃん、七乃さんの
五人になり、何やら大変なことなってきてしまった。


  1. 2012/09/19(水) 02:57:41|
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三十一話


寿春




寿春に来て、無事周泰ちゃんに会うことが出来たので
彼女に こっそり用意していたお土産を渡すことにした。


「周泰ちゃんこれ、私からお土産。」
「えぇ! わざわざ来ていただいたのに
お土産まで頂いていいのですか?」
「いいよ、周泰ちゃんのために わざわざ作ってきたんだから。」
「喜媚さまの手作りですか!
それは楽しみです、何でしょう・・・・」


私は周泰ちゃんに布に包まれた包みを渡し、
彼女は嬉しそうな表情でそれを開ける・・・と
中から出てきたのは一本の紐が付いた布の巻かれた棒・・・のような物。


「何ですか、コレは?」
「ふふん、それはね、こうして付けるものなのだよ。」


そう言って、説明のために私の腰に紐を巻きつけて縛り、
棒の部分を少し曲げて取り付ける。
その様子を見てすぐに周泰ちゃんは気がついたようで
喜びで頬を垂れさせながら うれしそうに叫んだ。


「お猫様の尻尾だぁ!!」
「周泰ちゃんは猫好きだから服の耳だけだと
片手落ちだと思って、尻尾も作ってみたんだよ。」


この尻尾の作り方はいたって簡単。
黒い布を筒状に巻いて、中に芯として、
何故かこの世界にあるブラジャーに使われている針金を、
何本か束にしてある程度強度を出して、後は綿を詰め、紐をつけて縫うだけ。


「こ、このような物を頂いても良いのですか!?」
「周泰ちゃんにあげるために作ってきたんだから
もらってくれないと困るよ。」
「あ、ありがとうございます!!」


私は尻尾を外して周泰ちゃんに渡す。
すると すぐに彼女は尻尾を付けて
うれしそうに飛び回っている。


「へぇ、あんたあんなの作ってきたのね。
・・・面白そうだから、アンタも付けなさいよ。」
「え? わ、私はいいよ。」
「付 け な さ い 。」
「・・・遠慮「付けろって言ってんのよ。」・・・はい。」


結局この後、許昌に戻った時に もう一本尻尾を作って
付けさせられるはめになってしまった。

私だけ付けさせられるのでは面白く無いので
桂花用に頭巾と色を合わせた尻尾を作って渡したが
彼女は 私には常に付けるように強要するくせに
自分はたまにしか尻尾を付けることはなかった。
椅子に座る時に邪魔なのだとか・・・


周泰ちゃんと尻尾に付いて話していると
周瑜さんがお茶を持って私達の居る東屋にやってきた。


「何やら楽しそうな話声が聞こえてきたが、
何を話していたんだ、明命?」
「冥琳さま、見てください! 尻尾ですよ! 尻尾!
お猫様の尻尾を作っていただいたんです!」
「・・・それは、良かったな。」


周瑜さんは何か、幼い子供を見るような
微笑ましいものをみるような 生暖かい目で
周泰ちゃんを見つめている。


「お二人とも、今日はわざわざ明命・・幼平に会いに来てくれて感謝する。
ゆっくりしていってくれ。」
「ありがとうございます。」
「ありがとう。」
「それでは、私は邪魔をしても悪いので
コレで失礼・・「あ、ちょっと待ってもらえますか?」 ・・ん?
私にも何か用があるのか?」
「周公瑾さんに用というよりも孫伯符(そんはくふ)さまにお願いがあるのですが。」
「雪蓮、伯符に用事か?
・・・あの馬鹿がまたなにかやらかしたのか?」
「あの・・・なにか言いましたか?」
「あぁ、いや、こちらの話だ。
それで、伯符に用事とは一体何の用なのだ? 」
「はい、実は袁術ちゃんに会う為に、
私がそのままお城に行ったのでは 門前払いを受けてしまうので
孫伯符さまにお取次ぎ願いたいのですが。」
「袁術 様に?
・・あぁ、そういえば喜媚殿は袁術さまと懇意にされているのだったな。」
「えぇ、今回袁術ちゃん・・・と言うよりも張勲さんに
南皮に行く前に どうしても来いと言われましたので。」
「南皮? ・・・あぁ、袁本初殿か・・」


周瑜さんは桂花と同じで頭の回転が早いので
少し単語を並べただけですぐに察してしまう。
この世界の軍師って皆こんな感じなのだろうか?


「お察しの通り、私が袁術ちゃんに会わずに
先に袁本初さまに会ったと知れたら袁術ちゃんが何をしでかすか・・・」
「それは想像したくないな・・・いや、喜媚殿 よく来てくれた!
伯符には すぐに袁術様に会えるように取り次がせよう。」
「ありがとうございます。」
「なに、逆にコチラが礼を言いたいくらいだ。
袁術様が癇癪を起こすのを止めることが出来たのだからな。
そうだ・・喜媚殿と荀文若殿は本日の逗留先は決まっておいでか?」
「いえ、これから宿を探す予定です。
一緒に来た行商人の方がいい宿を知っているという話なので
そちらにお世話になろうかと・・」
「ふむ、ならば寿春に居る間は、この屋敷に泊まっていかれてはどうかな?
幼平が世話になっているそうだし、袁術様と懇意にしておられる方に
もしものことがあっても困る。
当屋敷なら寿春に居る間は安心して泊まっていただけるし
歓迎させてもらうが、どうだろうか?
もちろん家主である伯符の許可を取らねばならぬが
喜媚殿は幼平の友人だ、まず反対することはないだろう。」
「喜媚殿お泊りになるんですか!」が
「そうですね・・・少し桂花、文若ちゃんと相談してもいいですか?」
「もちろん構わない、私はその間に伯符を呼んでこよう。
さっきまで部屋で仕事をさせていたから、
まだ抜けだして・・コホン まだ職務中のはずだ。」


そう言うと周瑜さんは屋敷内に戻っていった。
周泰ちゃんは私達の話が終わるまで待っていてくれるようで、
少し離れた所で、私があげた尻尾をいじっている。

その間に私と桂花でどうするか話し合うことにした。


(桂花どうしようか?)
(どうするもなにも喜媚が決めたらいいじゃない。
でも、わかってるでしょうけど、
あの周公瑾って女、あんたを利用する気よ?)
(そこは宿賃替わりみたいなものでしょう?
私を利用するとしても袁術ちゃんのご機嫌取りくらいにしかならないんじゃない?)
(袁紹からあんた取り返すために軍を率いかねない娘なんでしょ?
アンタから袁術に何か要求するように 頼まれるかもしれないわよ?)
(そこは桂花がしっかり見極めてくれればいいんじゃない?
寿春の民のためになるような事だったら受け入れればいいし、
個人的な利益を得ようとしているなら断ればいいし。)
(ふむ・・・)
(それにあの周公瑾さんかなりやり手みたいでしょ?
桂花も一度 話してみたいんじゃない?
あんな人が仕える孫策さんにも興味わかない?)
(それは・・・一応興味あるわね。)
(でしょ? もしかしたら桂花の仕官先になるかもしれないよ?)
(それはないわね、少なくともこの寿春を収める、
袁術の下にいるような状況ならお断りね。
でも、あの周公瑾は興味あるわ。)
(じゃあ、しばらく厄介になるということで。)
(いいわよ、でもなんかあったらすぐに出るわよ。)
(了解。)


こうして私達の方針が決まり、
周瑜さんが孫策さんを連れてくるのを待っていた。

しばらく周泰ちゃんと話していると
屋敷の出入口の方から声が聞こえてきた。


「痛い痛い! ちょっと冥琳!
髪を引っ張らないでよ!」
「お前が仕事をサボって抜けだそうとしなければ こんな事せずにすむんだ!」
「逃げようなんてしてないって、
ちょ~っと気分転換しようとしてただけなんだから。」
「明命の大事な客人が お前に頼みがあると言ってきてるのに
肝心のお前が逃げ出そうとしてどうする!
私や明命に恥をかかせるつもりか!」
「お客が来てるって知ってたら 逃げ出そうなんてしないわよ。」
「やっぱり、逃げるつもりだったんじゃないか!」
「あ・・・」


そんな声が聞こえたきたかと思ったら
屋敷の方から孫策さんの後ろ髪を引っ張りながら
周瑜さんがやってきた。


「すまない、待たせてしまったか?」
「いえ、コチラは大丈夫なんですが・・・そちらの方は大丈夫なんですか?」
「痛いって冥琳! もう逃げないから離してよ!」
「全く・・・・」


周瑜さんが掴んでいた髪を離したら
孫策さんが、手櫛で髪を整えて一呼吸してから私達の方を向く。

桃色の腰までまっすぐと伸びた長い髪の毛。
胸や肩口が露出した赤紫の袖口の広いチャイナドレスに身を包み
少し日に焼けた健康的な肌色は、活発そうな彼女によく似合っている。
若干つり目がちな瞳からは彼女の意志の強さを感じ、
長身だが女性らしい肉付きの身体は、男ならば一目で心を奪われるだろう。

・・・・ただし、さきほどまでの醜態がなければ。


「コホン・・初めまして、私は孫伯符。
ようこそ我が屋敷へ。
明命の友達なんですって?
明命の友達なら大歓迎よ♪
私のことは孫策でいいからね、堅苦しいのは苦手だから。」
「はぁ、私は胡喜媚といいます、喜媚と呼んでくれれば結構です。
よろしくお願いします。」
「私は荀文若よ、荀彧でいいわ。」
「それで? 私に何か頼みがあるんだって?」
「はい、実は袁術ちゃんに会いたいのですが
そのお取次ぎをお願いしたいのですが。」
「袁術ちゃんに?
なんでまた・・まさか仕官の口?」
「いいえ! 違いますよ。
以前から会いに来てほしいと言われていたのですけど、
私がいきなり訪ねていっても、門前払いを受けそうなので、
孫策さんに取次をお願いしたいんです。
私の名前を出してくれれば すぐに面会の予定を組んでもらえると思うので。」
「それくらいならお安い御用よ。
・・・でも、貴女袁術ちゃんとどんな関係なの?」
「私は許昌の農家のものなんですけど
袁術ちゃんが良くウチの蜂蜜を買っていってくれるのでその関係で・・・
知り合い? になったんですが。
ちなみに周泰ちゃんもその関係で友達になったんです。」
「あぁ! あの蜂蜜の!
実は私達も助かってるのよね~。
あの蜂蜜持ってくと袁術ちゃんの機嫌が良くなるから
私達のお願いも通りやすくなって。」
「コラ雪蓮!」
「そ、そうなんですか・・・袁術ちゃんらしいというか・・」
「それで? いつ会いに行くの?」
「流石に今日はもう遅いので、
明日以降にでも話を通してもらえれば。
後は袁術ちゃん次第なので。」
「そう、わかったわ。
丁度 明日お城に行くから、その時に話してみるわ。」
「よろしくお願いします。」
「それと雪蓮、彼女達には
寿春にいる間 屋敷に泊まっていってもらおうと思うんだが?」
「もちろんいいわよ。
明命の友達なら私も友達よ♪
仲良くしましょうね喜媚ちゃん♪」
「・・・あの、一応言っておきますが、私これでも男なので。
ちゃんは止めて欲しいのですけど。」
「え・・・? 冗談でしょ?」
「・・・・」


孫策さんは驚き周瑜さんにいたっては眉間に手を当てて固まっている。


「本当ですよ、雪蓮さま。
喜媚さまは殿方でらっしゃいますよ?」
「一応コレでも男なのよ、こいつは。」
「男色とか女装癖とかではなく 歪んだ家庭教育のせいなので・・・
お察しいただけると。」
「ま、まぁ、世の中色々あるわよね。」
「そ、そうだな・・・大喬みたいなのも居るしな。
それでは部屋は二部屋用意したほうがいいな。」
「・・・・」


流石に人の家では桂花も余計なことを言うつもりはないようだ。


「そういえば荀文若殿と申されたな。
荀文若殿と云えばもしや許昌の?」
「確かに私は許昌の出だけど?」
「おぉ、やはり! 一度お会いして話を伺いたいと思っていたんだ。
よろしければ部屋を用意する間 少し話でもどうかな?」
「いいわよ、私も貴女と少し話してみたいと思っていたから。」
「じゃあ、喜媚ちゃんは私達とお話ししましょうか?」
「雪蓮はその前に穏を呼んできてくれ、
文若殿との話は穏にもいい勉強になる。」
「・・・なんで私が、私一応この屋敷の家主なんですけど?」
「だったら家主らしい仕事をしてから言え。
仕事をほったらかして逃げ出そうとしなくなれば
家主らしい扱いをしてやるぞ。」
「・・・・わかったわよ! 呼んでくればいいんでしょ!?」


孫策さんは肩を怒らせながら、屋敷の中に戻っていく。


「あ、ついでに二人の泊まる部屋の用意もして置くように言っておいてくれ。」
「わかったわよっ!!」
「・・・あの、いいんですか?」
「あぁ、アレくらい全然構わないぞ。
普段仕事をさぼりがちなんだから こういう時にこき使ってやらんとな。
それよりも文若殿、許昌では素晴らしい農法を考案されたとか?
是非その話を聞きたいのだが。」
「だったら喜媚、あんたも参加しなさい。
こいつが元々研究していた農法に私が少し手を貸して普及させただけだから
喜媚もいたほうが話が早く進むわ。」
「それなら喜媚殿も是非。」
「あの、周泰ちゃんは・・・」
「私なら構いません。 会いに来て下さいましたし、
このようなお猫様の尻尾までいただきましたから。
それに部屋の用意を手伝ってきますので
冥琳さまのお相手をしてあげてください。」
「すまんな明命、後で二人で話す時間を作るから勘弁してくれ。」
「はい。 それでは。」


周泰ちゃんが屋敷に戻るのと入れ替わりに、
肩まで伸ばした緑の髪に
妙に袖の長い赤紫の服・・・それになんというか・・・
どうしても目が行ってしまう巨・・爆乳。
小走りでコチラに向かってくる陸遜さんの動きに反発するように
凄い揺れ方をしていて、今にも服から零れ落ちそうだ。

彼女を一目見た瞬間に桂花は敵だと認識したようで、
凄い眼つきで彼女の胸を睨みつけている。


(あんな忌々しい生き物が この世に存在していたのね・・・)


桂花、頼むから いきなり噛み付くような真似はよしてよ・・・


「あの~、雪蓮さまに急いでくるように呼ばれたんですけどぉ。」
「うむ、ココに座れ。
この者は陸伯言、私達と一緒にこの屋敷で暮らしているものだが
なかなかの知をもっているので、
是非文若殿との会談に参加させて勉強させてやりたいのだがどうだろうか?」
「構わないわよ、それと私のことは荀彧でいいわ。」
「それでは私も周瑜で結構です。」
「陸伯言です、よろしくお願いしますぅ。
陸遜と読んで下さぁい。」
「私は胡喜媚です、喜媚と呼んでください。
・・・あの私は一応男なので間違えないようにお願いします。」
「あらまぁ・・・可愛らしい♪」
「・・・・・」


こうして四人揃った所で農法の話に始まり、
経済、政治、軍事、へとどんどん話が広がり、
話が進むに連れて皆議論が白熱していき、
時に口調が荒くなったり、
・・・一部興奮して鼻息や呼吸も荒くなる者もいる。


(しまった・・・陸遜さんは知識欲で性的に興奮する特殊な性癖を持っている人だ。
この中では男は私しかいないから、何処かで逃げ出さないと
大変なことになる・・・最悪 後で桂花に殺されるかもしれない。)


将来歴史に名を残すような軍師三人の話の巻き込まれた私は
知恵袋を動員して話について行くのがやっとで
宴席の準備が出来たと周泰ちゃんが呼びに来た頃には
私は脳と精神的な疲労でヘトヘトになっていた。

しかし、陸遜さん・・・・私に胸や太腿を押し付けるのは勘弁していただきたい。
ただでさえ、桂花の日々の猛攻で悶々としているのに
貴女が本気で迫ってきたら洒落になりません。
太腿を撫で回しながら耳に息を吹きかけるのは止めていただきたい!


  1. 2012/09/19(水) 02:56:30|
  2. 真・恋姫†無双 変革する外史。
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雑記


こんにちは。


恋姫ssの移転状況ですが、
ブログの方での投稿状況は三十話まで終了いました。

後1週間くらいで最新話まで追いつけそうです。


たいち
  1. 2012/09/18(火) 01:34:25|
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三十話


洛陽




荀緄さんの屋敷で私達の旅立ちを祝う宴を開かれた後、
私は、後二人、弁ちゃんと協ちゃんに
洛陽を去ることを伝えなければならないので
いつもの時間に宮殿の庭園に行き、
二人が来るのを待っていた。

しばらく日向ぼっこをしながら待っていると
協ちゃんが一人で生垣の隙間から現れた。


「おぉ、今日は喜媚が先に来ておったか。」
「協ちゃんこんにちは。」
「うむ、今日は喜媚に会えて佳き日じゃな。」


その後、しばらく弁ちゃんが今日も執務で来れないことや
協ちゃんの、話や愚痴などを聞いていたのだが、
丁度話の区切りがいいところで、
洛陽を去る件を伝えることにした。


「協ちゃん。」
「ん? なんじゃ喜媚、そんなに暗い顔をしおって。
屋敷で嫌なことでもあったのか?」
「屋敷では良くしてもらってるよ。
今日はその話じゃなくて・・・
私、近い内に洛陽から出ていくことになったんだ・・・」
「・・・・そうか、いつかこの日が来るとは思ぉておったが、
とうとう洛陽を発つのか。」
「うん・・・近い内に発つことになるから、
二人に会えるのは今日が最後の機会かもしれなかったから
弁ちゃんにも会いたかったんだけど
仕事ならしかたがないよね・・・」
「すまぬの、妾も会わせてやりたいが
無理にそれをやると喜媚にも姉様にも迷惑がかかる・・・」
「しょうが無いよ・・・あ、でも手紙を用意してきたから、
それだけ渡してくれないかな?」
「うむ、承知した。 必ず姉様に渡そう。」
「お願いね。」
「うむ。
・・・・それで、次は何時くらいに洛陽に来れそうじゃ?」
「正直な話、次は何時来れるかわからないんだ・・・
今までは年に一回は来れたんだけど
次は何時になるのか・・・」
「そうか・・・ならば最悪、今日が最後になるやもしれぬのか。」
「・・・私もできるだけ洛陽に来るようにするけど、
今までは桂花や荀緄さんのお陰でここまで来れたけど
次は 宮殿に入れてもらえないかもしれないから。」


今までは桂花の使用人と言う事と、
荀緄さんの口利きでなんとかここまで来ることができていたが
次はそれも難しくなるだろう。


「そうか・・・っむ、そうじゃ!
以前妾と姉様で書いた 喜媚に渡したあの書簡はまだ持っておるか?」
「え? 持ってるけど?
今はお屋敷に置いてきてあるけど。」
「ならば次はアレを使うと良い!
あの時は ほんのイタズラ心と、また会いたいというお守りのつもりで書いたが、
アレをしかるべきものに見せれば 十分使えるはずじゃ!」
「本当なの?」
「うむ、妾と姉様の連名で、父上の印まで押してあるからの。
大丈夫じゃ!」
「う~ん、じゃあ 次ココに来る手立てがなかったら使ってみるよ。」
「うむ!」


その後も私と協ちゃんは、別れを惜しむように
今までの思いで話や、これから私が何処に行くかなどを話し、
彼女の時間が許す限りいろんな話をした。

そしてとうとう、別れの時間がやってきた。


「そろそろ、戻らんと周りが騒ぎ出すじゃろうな・・・」
「そっか・・・」
「喜媚・・・もし次に洛陽に来るのならば、
できるだけ急いでくれ・・・
姉上もそうじゃが 妾も直に
こうして抜け出すこともできなくなるじゃろう。」
「そう・・・なんだ。」
「姉上も妾も喜媚には会いたいのじゃが
周りがそれを許さぬ・・・妾もこんな所に生まれねば、
姉上と喜媚と三人で楽しく暮らせたのだろうが・・な。」
「協ちゃん・・・」


その時の協ちゃんの表情は、
私よりも年下の幼い彼女が普段するような表情ではなく、
まるで人生に疲れた老人のような表情だった。


「無事会えたとしても、おそらく次が妾達が喜媚に会える最後の機会となろう。
・・・・もし、次会えたならば・・・その時は妾達の本当の名を教えよう。
・・・だから喜媚、ちゃんと次も会いに来るのじゃぞ?」
「協ちゃん・・・また、洛陽に来るよ・・・必ずまた会いに来るよ。」
「うむ、待っておるぞ。」


こうして私は協ちゃんと握手をした後、
その場を離れ、洛陽の宮殿を後にした。

屋敷に帰る時に振り返って洛陽の宮殿を見てみたが、
その豪華な作りとは裏腹に、
洛陽の宮殿は何処か、虚ろで空虚な印象を受けた。



こうしてこの日から数日後、私と桂花は許昌へ向けて旅立った。

荀緄さんは私達が旅立つ前日に、
「もう既に伝えるべきことは伝えた。」
と言い、この日は朝から普段通り宮殿に向かっていった。

私と桂花も、特に普段と変わること無く、
荀緄さんを送った後、城門で待ち合わせをしている行商人や傭兵の人達と合流し、
許昌に向かった。


道中、小規模な戦闘の後が何箇所かあり、
そのまま放置された死体などが幾つかある。
洛陽、許昌と言う主要の道でもこの有様なのだ。
洛陽から離れれば離れるほど状況はひどくなっていくのだろう。

最近では黄巾の噂もちらほら聞くようになったし
管路(かんろ)の占いも耳にする。

果てには東から太陽を背負った救世主が現れるとか
龍が天より降りてきてこの国を一旦滅ぼしてから再生させるとか、
そう言った与太話に近い噂も流れている。
ただの与太話で済めばいいが、私は外史や管理人を知っているだけに
その与太話が本当に起きるのではないか?
と 心配になるが、その話を許昌に帰った時 母さんにしたら・・・
おもいっきり笑われた。


許昌に無事到着した私達は、同行した行商人や傭兵の人達と別れ、
荀桂さんの家へ向かった。


「ただいま! お母様。」
「ただいま戻りました、荀桂さん。」
「あら、二人共お帰り!
予定より随分と早く帰ってきたわね。」
「色々あったのよ、でも 向こうで学ぶべきことは学んできたわ。」
「そう・・・・でも まだ喜媚ちゃんとの事はダメみたいね・・・」
「・・・・ぅ。」
(本人がいる前でそういう話は止めて欲しいんだけどな・・・)


荀桂さんはわざとなのか、私の方を見ては
桂花の耳元で何か囁いて言る。

その後一旦、私は家に帰り母さんと会い、
旅の話を軽く済ませ、久しぶりに食べる母さんの手料理を味わい この日は就寝。


翌日、荀桂さんの家で、母さんも呼んで無事帰ったことを祝う宴会が行われたが、
私は本来祝われる側なのにもかかわらず、
母さんのわがままで私も厨房に立たされることになり
宴会終了直前まで厨房で料理をしているだけだった。

この日は私や、母さんも泊まっていくように言われ
空き部屋が無いから、と言う理由で
私と桂花は一緒に桂花の部屋で寝させられた。
少なくとも私の知る限り空き部屋はいくつもあるし、
寝るなら私と母さんだろうと思ったが、荀桂さんと母さんが結託して、
私と桂花を一緒の部屋に放り込もうとしているので
逆らうことは出来無かった。


「あ、あんたわかってるわね!?
へ、変なことしたらこr・・怒るわよ!!」


真っ赤な顔をして怒る桂花だが、
だが逆に言えば 私が何かしても怒るだけで済ませてくれるということだ。

それに桂花の方から抱きついてきているのだが、
・・・私は怒ってもいいんだろうか?


もちろん 桂花に変なことをするつもりはないが、
私も桂花の気持ちをまったく察していないわけじゃないし
私も決して桂花が嫌いというわけではない。
きちんと手順を踏んで行けば、
ちゃんと 世間一般で言う恋愛関係には成れるだろうし、その先もあるだろう。
しかし 私にはまだそのつもりも覚悟も無い。

荀緄さんに言われた言葉が思い出される・・・

荀緄さんは時が経てば 私と桂花も変わるかも知れない、と言っていたが、
変わった時 私と桂花はどういう関係になっているのだろうか?
私と彼女は幼少時から長く付き合い
今では私の知る恋姫の荀文若ではなくなっている。

男に対して下ネタを含んだ罵詈雑言は吐かないし、
仕事の上では男が相手でも(腹の中で何を考えているかは分からないが)
ニッコリと愛想笑いを崩すこともない。
その分 愚痴等が私に集中するのだが、それもただ彼女の話を聞いてやれば
次の日にはスッキリした顔をしているのだから、
男に対する嫌悪感は、私が恋姫と言うゲームで知るほど酷くはない。

この先どんな形で私達が変わっていくのかわからないが、
少なくとも お互いが幸せでいられる関係でありたいと願っている。


その夜、私は結局桂花に抱きつかれたまま、
彼女の女性特有の匂いや柔らかい身体、体温などを感じながら、
悶々とした夜を過ごしたのだった。


翌朝、私達が袁紹さんの居る南皮へ行く前に
寿春へ行くことを 荀桂さん達に告げたが、
私も桂花も既に家を出た身、 「好きにすると良いわよ。」 と言われ
あっさり寿春行きは決定した。


寿春へ行くまで同行する行商人や傭兵を手配する間、
久しぶりに稟ちゃんに会おうと思い、桂花と一緒に私塾へ行ったが、
既に彼女は旅に出た後で、会うことは出来なかった。

寿春では周泰ちゃんや袁術ちゃん達に会うため
なにかお土産を用意しようと思い何がいいだろうかと考えた。、
袁術ちゃんには手料理でいいのだが、周泰ちゃんは何がいいだろうか?
しばらく考えた後、以前考えた通り彼女の嗜好に沿った物にする事にし、
それを用意するために、服屋へ行き布を購入して早速制作に入った。

後は特筆するようなことはなく、
久しぶりに会った、小作人の皆と話したり、
荀桂さんの家に呼ばれて三人で洛陽での生活の話をしたりしながら
寿春へ旅立つ日まで穏やかに過ごしていた。


数日後、寿春へ旅立つ日になり、
荀桂さんや母さん達に見送られながら出発。

日が合えば 周泰ちゃんが、護衛を引き受けてくれる手はずだったのだが、
私の前居た現代とは違い、通信手段もなければ
移動時間もかかるこの世界では 日数調整はうまく行かず、
周泰ちゃんは寿春で待っていてもらい、
寿春から許昌へ帰るときに送ってもらうよう、書簡で打ち合わせをした。


寿春への道中は、洛陽、許昌間よりも更に酷く、道も若干荒れている。
行商人や傭兵の人達が言うには
コレでもマシな方らしく、さらに南や東に行くと
もっと道が悪かったり、野盗などの危険が多いのだそうだ。

寿春までの道中で小規模な野盗に一回襲われたが、
傭兵の人に怪我人が出た程度で、
私の鉄針の投擲や、傭兵の人の弓で牽制し
桂花の指示した順番で野盗を討っていったら すぐに退散していった。
どうやら、まだ賊に身を堕としたばかりの賊のようで、
武器なども農具であったり、棍棒、粗末な剣等で武装していた。


そうして、無事に寿春にたどり着き、
行商人の人達と別れ、周泰ちゃんが待つ
孫家の屋敷へ向かうのだが、道中 寿春の町を桂花と一緒見て回ったのだが、
主要の道路以外は 洛陽や許昌、陳留よりも酷く荒れ、
路地裏で痩せた老人が座り込んでいたり、
子供達は城壁外の畑で働いていたり、
見る人々も 裕福な人達以外は皆やせ衰えている人が多く
この寿春の政がうまく機能していないことがはっきりと分かった。


「・・・名門袁家の息女の領内とはいえ、
こんなものなのね・・・コレだったら許昌の方がよっぽど良いわよ。」
「仕方がないよ・・・袁術ちゃんの周りが好きかってやってるんだから・・」
「わたしもあんたに言いたくないけど、
それでも領主として着任している以上、責任は袁公路様にあるのよ。」
「それはわかってるよ・・・」
「・・・悪かったわね、あんたの友人を悪く言うような真似して。
でも、それが領主として領内を任された以上 最低限負うべき責任よ。」
「・・・うん。」


袁術ちゃん自身は我儘なところもあるけど
決して善悪の判断が間違っているわけじゃない。
ただ、あの子は若くして領主になってしまい、
なまじ袁家の力があるから それを利用しようとする人間が多すぎる。
そして、それらの人から袁術ちゃんを守るために
張勲さんが無茶をするから余計におかしくなる。
孫策さんの件がいい例だろう。

袁術ちゃんを利用しようとする人間だけだと
暴走しかねないし抑え切れないから、
牽制役に丁度 孫堅さんが亡くなって
力を失っていた孫策さんを取り込むことで
お互いで牽制し合うようにしたのだろう。
自分の利益の為に暴走する者達を、
呉の領民を守る事を第一に考える孫策さんを当てることで
張勲さんが袁術ちゃんをうまく言いくるめて
お互い牽制し合う状態を維持し、袁術ちゃんを守っている。

張勲さんの書簡や、袁術ちゃんの書簡、周泰さんの話、
私の原作知識を動員して考えた結果、
コレが最も納得の行く理由だった。
完全に合ってるとは思えないが、それほど間違っても居ないと思う。

だからといって 袁術ちゃんの領主としての責任が無いわけでもない。
どんな理由であれ、領主になってしまった以上
寿春の領民の生活が苦しいのは 彼女の責任なのだから。


そんな事を考えながら、周泰ちゃんの用意してくれた
書簡の案内通りに進み、途中で人から話を聞くなどして
無事に孫家の屋敷にたどり着くことが出来た。


「じゃあ、桂花 私が中の人と話すから。」
「いいわよ、まかせたわ。
私は周泰って娘、ちょっと遠目で見たことある程度だから。
いい娘そうだったけど ほとんど他人だしね。」


私が門に向かって中の人を呼ぶと、
中から、若干肌が焼けて褐色の肌色をした
長身で長い黒髪の綺麗なメガネをした女性が応対に出てきた。


(あの女は・・・・あの乳は・・敵ね!)


後ろで桂花がブツブツ言っているが無視する。


「すいません、私 胡喜媚と申しますが、
コチラに周幼平様はおられますでしょうか?」
「私は周公瑾(しゅうこうきん)と言う。
明命に用とは・・・あぁ! 胡喜媚殿と申したか。
話は聞いている、明命・・・幼平が世話になっているそうだな。
丁度 今屋敷に居るから どうぞお連れの方も一緒に中へ入られるといい。
すぐに呼んでこよう。」
「ありがとうございます。」


周瑜さんに案内され、屋敷の中に入り、
庭にある東屋に案内されて、ここで待つように言われた。

しばらく待っていると、私と同じ黒い猫耳頭巾のついた服を来た
周泰ちゃんが走ってやってきた。


「喜媚さま! お久しぶりです!!
約束通り来てくれたんですね!」
「お久しぶり、周泰ちゃん。
元気だった?」
「はい! 私は元気です!」
「それにしても・・・私があげたその服 まだ着てたんだね。」
「はい! 屋敷に居る時はこの上着で過ごしているんです。
ところどころほつれたりもしたのですが、
祭様が直してくださるので 今でも貰った時同様 ちゃんと着れますよ。」
「あんた・・・その服一着足りないと思ったら この娘にあげてたのね・・・」


私の横で桂花が小声で呪詛のようにつぶやく。
っていうか、数えてたの!?


「あの、喜媚さま、そちらのお猫様・・・じゃなかった!
そちらの方は?」
「私は荀文若、喜媚の・・・いいな、友人よ!」
「喜媚さまのご友人ですか! 流石お猫様の頭巾がよく似合ってらっしゃる!
私、周幼平と申します! よろしくお願いします!」
「こ、こちらこそよろしく。」
(ちょっと喜媚! この娘何なの!?)
(周泰ちゃんはちょっと人より猫好きだから、
桂花の猫耳頭巾を気に入ったんじゃない?)
(・・・・私のはあの子にあげないわよ。)
(・・・・好きにして。)
「お二人共 どうかされましたか?」
「い、いいえなんでもないよ。」
「なんでもないわ。」


こうして、私は寿春に来た理由の内の一つ、
周泰ちゃんに会うと言う目的を果たしたのだった。


  1. 2012/09/18(火) 01:26:32|
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二十九話


洛陽




私がおみやげに肉まんを買って帰ろうかという時、
私の裤(ズボン)を咥えて引っ張っている犬が居る。


(この犬って明らかにセキトだよな・・・
コーギーなんて犬種の犬流石にこの時代の中国に
居ると思えないし、赤いスカーフ巻いてるし・・)


私がセキト(?)を観察している間も
セキト(?)は私の裤(ズボン)の裾を加えて
引っ張っている。


「フー・・・どうしたの?
お腹でも減ってるの?」
「ワン!」
「(・・・流石の知恵袋も犬の言葉はわからないよ。)
あ~、肉まんが欲しいの?
でも君が食べられるものじゃないよ?
玉ねぎとかニンニクとか入ってるだろうし。」
「ワン! ワン!」
「・・・ワンと言われても。」


肉まん屋の前で犬と話している私を
皆奇異な目で見てくる。


「あ~・・・すいません、おじさん。
この子が食べれそうな骨とかありませんか?」
「あ? まぁ、あるにはあるが・・・ちょっと待ってな喜媚ちゃん。」


このおじさんは私が良くこの店で買い食いをするので
私のことはよく知っているので、多少のお願いは聞いてもらえる。

おじさんはそう言って肉まん屋のおじさんは店の奥に行く。
その間もセキト(?)は私の周りをぐるぐると回りながら
吠え続けている。


「よぉ、またせたな喜媚ちゃん。」
「すいません、御迷惑かけて。」
「これくらい いいってことよ、
いつも贔屓にしてもらってるからな、ほれ。」


私はおじさんから少し肉の付いた骨を貰うと、
しゃがんでセキト(?)の目の前に出し食べるように促す。


「ほら、コレならお前も食べれるでしょ?」
「ワン!」


セキト(?)は その場で骨を咥えて齧りだしたので、
呂布さんが来るとまずいので セキト(?)が骨に夢中になっている間に
退散しようと思ってその場から立ち去ろうとするが
また裤(ズボン)の裾を咥えられる。


「・・なに? もうご飯はあげたでしょ?
もう無いよ?」
「ワンワン!」
「・・・・困ったな。」

「あ~~!! セキトこんなところに居たんですか!!」


私がセキトを見つけた様な声のする方を見てみると
そこには未来の呂布さん(董卓軍)の軍師、
陳宮(ちんきゅう)ちゃんがコチラに向かって走ってきていた。


「もぅ、何やっているんですか!
恋殿を探してと言ったではないですか!」
「ワン!」
「ワンじゃないのです!
・・・・お前は誰ですか?」
「いや、それは私の台詞なんだけど?」


セキトを見つけて叱りつける陳宮さんが、私を見て睨んでくる。


「音々は陳公台(ちんこうだい)!
恋殿の一の部下なのですよ!」
「はぁ・・・私は胡喜媚です、喜媚と呼んでくれて結構です。」
「それで、喜媚? はなんでセキトに絡まれてるんですか?」
「私が聞きたいんですけど?」


どうもお互い状況がわかってないようなので、
まず私の方からこうなった経緯を話し、次に陳宮ちゃんから話を聞いたのだが・・・


「つまり肉まんを買って食べている時に 呂布さんという方とはぐれてしまったので、
肉まんの匂いをセキトに嗅がせて 追わせていたら、ココに付いたと?」
「そうです。」
「・・・そりゃそうなりますよ。
この子は肉まんを探せと言われたと思ったんでしょう。
だからココに来て私を捕まえたんじゃないですか?」
「うぅ・・・肉まんの匂いで追わせたのは失敗ですか・・・」
「何か呂布さんの持ち物を持っていないんですか?」
「そんな物恐れ多くて持ち歩けるわけ無いです!
きちんと屋敷に保管してあるのです!」
「じゃあ警備隊の人にでも呂布さんの特徴を伝えて 探してもらったらどうですか?」
「そんな恥ずかしいことできるわけないじゃないですか!
まるで音々が迷子になったみたいではないですか!」
「いや、実際どっちかが迷子じゃないですか・・・」
「恋殿がそんな不名誉な迷子になるわけ無いのです!」
「じゃあ陳公台さんが迷子なんじゃないですか。」
「違うのです! ・・・・恋殿・・・・音々が迷子なのです・・・」


流石陳宮ちゃん、呂布さんを迷子扱いにするくらいなら、
自分が迷子扱いされるという不名誉を受け入れるとは!
なんという忠義心!!

・・・そんなに大したことでもないんですけど。


「とにかく、だったらやっぱり警備隊の人に・・・」
「ワンワン!!」
「「へ?」」


陳宮ちゃんと今後のことについて話していると
急にセキトが走りだした。
向かった先には、両手で抱えるほどの袋に
いっぱい詰まった肉まんを抱えた呂布さんが居た。


「れ・・恋殿ぉぉ~~っ!!」
「音々、勝手に離れたらダメ。」
「うぅっ・・・申し訳ないのです。」


呂布さんに抱きついて謝る陳宮ちゃんはかなり微笑ましい感じだったが、
このままココに残っていると、
呂布さんにも絡まれるおそれがあると思った私は、
話しかけられる前に、そそくさとその場を後にした。


「そういえば恋殿、さっきセキトがエサを貰った娘が・・・・あれ?」
「・・・?」
「・・・いないのです。」
「ワン! ・・・ッハッハッハ。」
「セキト、その骨どうしたの?」
「そうです、さっきセキトが間違えて捕まえた娘が、
セキトにその骨をあげていたのです!」
「・・セキトご飯貰ったの?」
「ワン!」
「嬢ちゃん達、喜媚ちゃんならもう帰ったぞ。」
「店主、どういうことですか?」
「あんた達が話している間に喜媚ちゃんは帰っちまったぜ?」
「なんと・・」
「・・セキトのご飯貰ったのにお礼言ってない。
・・義母さんに怒られる。」
「て、丁原(ていげん)殿に怒られるのですか!?
・・・あわわ、なんとかして探してお礼を言わないといけないのですが、
時間がもう無いのですよ。」
「探す。」
「しかし、恋殿、丁原殿から頼まれた
お仕事もしないといけないのです。」
「・・・どうしよう?」
「と、とにかく、まずは丁原殿の仕事を先に済ませてから 喜媚を探すのです!」
「分かった。」

「あ、おい嬢ちゃん・・・・行っちまったか。
なんで喜媚ちゃんの住んでる屋敷を俺に聞かないのかね?」


結局この後、呂布ちゃん達は
洛陽にいる間、私を探していたそうなのだが、
帰らなければいけない日まで私を見つけられなかったため、
丁原さんの元に帰った時に 拳骨を貰ったそうだ。


「痛い・・・」 「痛いのですぅ・・」 「クゥン・・」


そろそろ、洛陽で四ヶ月ほど過ごした時、とうとう桂花の限界が来た。


「あ~~! もう、やってらんないわよ!!」
「いきなり私の部屋に入ってきたと思ったら何なの?」
「もう限界! あの宦官共・・・
報告を勝手にいじる、経費の水増しはする、
勝手な命令書を作っては予算を懐に入れる、
賄賂は要求する、挙句に私をいやらしい目で見た挙句 妾になれですって!!
・・・今すぐアイツら殺すわ!」
「桂花・・・誰かに聞かれたら大変なことになるよ?」
「あんたの部屋は壁が厚いから大丈夫よ!
だからわざわざこの部屋に来たんじゃない!」
「・・・ハァ、頭に血が登ってても
そういうとこはしっかりしてるんだね。」
「当たり前よ! これくらい出来なきゃ、
アイツらとまともに仕事なんてできないわよ!」
「でも、荀緄さんの所で仕事を学ぶんじゃなかったの?」
「もう充分学んだわよ!
それに、お父様はともかくアイツらの仕事の仕方を学ぶより、
あんたのほうがよっぽど効率良く仕事してるじゃない!」
「私は、仕事をやる前に整理して順番を決めて片付けてるだけだよ。」
「それに何よあの使いやすい算盤!!
私にもよこしなさいよ!!」
「アレは試作品だから
もう少しちゃんとしたのができたらあげるよ。」
「本当でしょうね! 約束したからね!」
「はいはい。」


とりあえず算盤を貰えるということで 少しは怒りが収まったのか、
桂花は私の寝台に座り、顎に手を当てて何か考えている。


「・・・・・決めた! そろそろ許昌に帰るわ。」
「は?」
「何驚いてるのよ?
ちゃんと学ぶべき仕事は学んだし、洛陽である程度人脈も作ったし、
もうやること無いじゃない。」
「え~っと、何遂高様に仕官とかは?
誘われてなかった?」
「あんた本気で言ってるの?」
「・・・やっぱりだめか。」
「わかってんならくだらないこと言わないでよ。
こんな所で この国をよく出来るわけ無いでしょ。
上の奴らは どいつもこいつも 私腹を肥やすことしか考えていないし
下の手柄を平気で横取りするし。
私がこんなところで仕官したら潰されるわよ。」
「・・・それで? 許昌に帰った後はどうするの?」
「とりあえず許昌に少し逗留した後は荀諶がうるさいから、
一旦 袁本初(えんほんしょ)様の所に仕官するわ。」
「荀諶ちゃん? そう言えばあの子 袁本初様のところに仕官したんだっけ?」
「えぇ、まぁ、あそこは名門として有名だから 泊を付けるには最適よね。
・・・ただ、袁本初様にすこし問題があるらしいけど。」
「まぁ、詳しくは聞かないけど・・・
そうだ、許昌に少しの間いるなら、私、寿春まで行ってきていい?」
「なんであんたが・・・あぁ、袁公路様とあんた懇意にしてたわね。」
「何度か洛陽に来てからも書簡でやり取りしてたんだけど、
袁術ちゃん、袁本初と仲悪いから 私が袁本初様の所に行くと言ったら、
攻め込みかねないって張勲さんが・・・・
だから、せめて袁本初様の本拠地の南皮に行く前に、
顔を出して欲しいって張勲さんに言われてるのよ。」
「・・・・あんたが原因で戦が起きるなんて洒落にならないわね。」
「・・・あの子は本気でやりかねないんだよ。
いい意味でも悪い意味でも純真だから・・・」
「私も話には聞いてるけど、かなりの箱入りなんですって?」
「えぇ、それもまだ若い彼女を守る為なんだけど、
少し度が行き過ぎて悪影響が出てるんだよ。
袁術ちゃん自身は決して愚鈍な娘じゃないんだけど、
周りが幼い彼女を利用しようとするから、
彼女に重要な決済が回らないように 周りで処理してるんだけど、
それだけに彼女には判断材料が全くないのよ。
だから場合によっては 本気で私を捕まえに軍を率いて南皮まで来かねないんだ。
その結果どうなるか 今の彼女には予想も出来ないから。」
「・・・流石に周りが止めるでしょ?」
「止めるでしょうけど、
それでも聞き入れなくて袁術ちゃんが命令を出そうとしたら彼女、最悪謀殺されるよ?
そしたら今度はそれが原因で袁家が寿春に攻め込むよ?」
「あんたどれだけ、袁公路様に好かれてるのよ・・・」
「・・・さぁ? 私もよくわからないけど
長いこと書簡でやり取りしてたらいつの間にか・・・
前に貰った書簡には 今度会う時は私に真名を預けるとか書いてあったし。
・・・多分、周りには彼女を利用しようとする大人か、
彼女を守るために軟禁に近い状態にする人達しかいないから、
同年代で普通に話ができる子が 私しかいないからじゃないかな。
張勲さんは姉か母親って感じだし・・・
あの人もちょっと・・・かなりおかしいとこあるけど。」
「・・・若くして官職を継ぐと大変なのね。」
「とにかく、一回私が顔を見せれば、
しばらくは大人しくしてるって張勲さんが言ってるし、
袁本初様の所に行く前に かならず顔を出して欲しいって言われてるから、
私は少し休みを貰いたいんだけど。」
「・・・・そうね、良いわよ。
だけど私も寿春に行くわ。」

「は?」

「何よ、今後のために実際に見ておくのも悪くないでしょ?
それに袁家に縁が出来るかもしれないし。」
「だったら尚更行かないほうがいいんじゃない?
袁術ちゃんと袁本初様は色々と問題抱えてるから 変な疑い持たれるよ?」
「そしたら『袁公路様は王の器ではありません
ですので仕官の誘いを断って袁本初様の元に参りました。
貴女こそ王の器を持つお方です。』 とか言えば良いんじゃない?」
「よく口の回る・・・」
「・・・・洛陽で仕事してれば これくらい嫌でも口が回るようになるわよ。」
「・・・・・苦労 したんだね。」
「・・・お父様はこういうことを体験させたくて 洛陽に私達を呼んだのよ。
不本意だけど今の世では必要なことだから。」

「「・・・ハァ。」」

「じゃあ、寿春には二人で行くということで。」
「そうね。」
「そうだ、寿春では私の知り合いの周泰ちゃんが
紹介したい人がいるって言ってたから桂花も会うといいよ。
少なくとも一人は話が合う人がいるだろうから。」
「そう? 楽しみにしておくわ。」


そんなこんなで、洛陽の後は許昌、寿春へと行くことになった。
桂花と周瑜(しゅうゆ)さんはきっと話が合うだろう。
陸遜(りくそん))さんとかもいれば彼女とも話が合うだろうし。

ついでに私は周泰ちゃんに 前から考えていたお土産を持っていくことにして、
袁術ちゃん達には、
約束していた私の手料理とお菓子を作ってあげればいいだろう。


こうして、許昌へ帰る手配ができ次第、桂花と私は許昌へ帰ることになったのだが、
その前に私に話があると荀緄さんに言われ、
私は 荀緄さんの執務室に呼ばれた。


「ふむ、楽にしてくれ。
今日は儂の役職は関係なく、桂花の父として喜媚と話がしたいのでな。」
「はぁ・・・それで、どういった話でしょうか?」
「妻から聞いておると思うが、桂花の婚姻の話だ。
アレは喜媚を桂花の相手にしようと考えておるようだが・・
お前には今のところその気はないだろう?」
「・・・・荀緄さんや荀桂さんには悪いのですが、
私と桂花では生きる世界が違うと思っています。」
「うむ、儂もそう思っておる。
家柄等は関係なく、思想が違うというところか・・
お主は人としての安寧を求める。
桂花が家に入って家庭に収まるのなら問題なかろう。
お主は桂花を大切にするだろうし、子が生まれれば大切に育てるだろう。
だが桂花はこの国を憂い、民に幸福を与えようとしておる。
喜媚と結婚したとしても 今の桂花は生き方を変えはしまい。
桂花はお主に補佐されて伸びるだろうが、
お主には安寧は訪れず、その道は険しいものとなろう。」
「・・・・」
「妻はそれがわかった上で それでもお主と桂花の二人ならば
乗り越えていけるだろうと考えておるようだが・・
儂はそうは考えていない。
少なくとも今の喜媚では 何れ持たぬ時が来るであろう。」
「・・・そう ですね。」
「お互いどんなに大切に想い合っておっても生き方が違えばどちらか、
又は双方が歪むことになる。
そうなってしまってはお互いが不幸になるだろう。」

「・・・」

「だが、そこまでわかっておっても
儂にも桂花には喜媚しか相応しい者がおらぬとも思っておる。」
「・・・どうしてですか?」
「元から男が苦手な上にあの件じゃ、お主以外に心を許しておる男がおらぬ以上、
下手に無理にでも子を産ませようと 別の男をあてがえば、
桂花は心が壊れるか 自害してしまうだろう。
それは儂も妻も望むところではない。」
「・・・」
「だが喜媚に無理に桂花と一緒になれとも言えぬ。
それにそんな中途半端な気持ちの状態の喜媚に 大事な娘をやるわけにもいかん。」
「・・・」
「だから儂は今少しの間、時を置くことにした。」

「・・・え?」

「少なくとも、今は時期ではない。
お主と桂花が結ばれる定めならば 天がその時を決めるだろう。
それに・・・これから世は荒れる。
コレはもはやどうしようも出来ぬ。
お主や桂花も否応なく巻き込まるだろうが、
その時に 二人の生き方も変わってくるやもしれぬ。
うまく変われば二人の生き方が交わう事になるだろう。
そうならないかもしれぬ。
または 喜媚より桂花にふさわしいものが現れるやもしれぬ。
・・・だがそれらは 天が決めるであろう。
儂は、お主達の生き方が交わうのをただ祈るのみだ。」
「・・・・・荀緄さん。」
「何も言わずとも良い。
儂はそう思っておるというだけで お主に何かを強要しようとは思っておらぬ。
喜媚が桂花を求めるなら好きにするがいい。
どうするかはあの子が決める。
逆また然りじゃ。
・・・ただ儂はどんな形であれ、
あの娘が幸せになってくれればそれで良い。」
「・・・・荀緄さん。」
「後は 妻が下手に暴走しないよう、
儂が見張っておくから お主達は好きにするといい。
仮に喜媚が桂花を選ばずとも無理に桂花に男をあてがって、
あの子を壊すような真似はせぬ。」
「荀緄さん・・・・その、なんて言うか・・・ありがとうございます。」
「うむ、今しばらくの間、桂花を頼んだぞ。」
「はい。」
「ならば、わしの話は終わりじゃ。
今宵は二人の旅立ちを祝い宴を開くゆえ
楽しんでいくといい。」
「はい。」


こうして、この夜は皆で洛陽での最後の宴を楽しんだ。


その数ヶ月後 荀緄さんも尚書から、
済南相になり洛陽を去ったという話を桂花から聞いた。


  1. 2012/09/18(火) 01:25:27|
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二十八話


洛陽




洛陽での生活も十日ほど経った頃、
桂花はいつものように荀緄さんの仕事を手伝い、
今日は荀緄さんが何処かの諸侯と会談を開くというので 桂花だけ帰された。
あまり桂花に合わせたくないタイプの人間のようだ。

関羽さんも洛陽の視察を終わらせて帰ってきたのだが、
洛陽での滞在日数がかさむのと比例して 彼女の表情は暗くなっていく。

最近では、路地裏などや、周辺の畑を見て回っているらしいが
洛陽で暮らす一般の民の生活水準を見てショックを受けたようだ。

私は桂花の仕事や、屋敷での仕事を手伝いながら、
空いた時間を見て協ちゃんに会いに行っているが
未だに弁ちゃんとは会えていない。


今日の夕食後、いつものように桂花の仕事の愚痴を聞きながら
食後のお茶を楽しんでいたのだが、
関羽さんが私たち二人に話があるというので、
彼女の借りている部屋に三人で向かうことにした。


「それで? 私達だけに話したい話って何なの? 関羽。」
「はい・・・実は近いうちに洛陽を発とうと思います。」
「そう・・もう洛陽の視察はいいの?」
「はい、荀彧殿が洛陽はこの国の縮図だと
言っていた意味がよくわかりました。
・・・一部の者達だけが富を独占し、民は重税に苦しみ、
日々の食事も満足に得られることができていません。
まさしく、この国の縮図を見ているようでした。」
「そう。」
「しかし、私ではこの洛陽で仕官して
国を内部から変えることは出来ないでしょう・・・
私にはそんな知もなければ 器も無い。」
「「・・・・」」
「ですから私は また旅に出ようと思います。
今度は、私と同じ志を持ち この国を・・・
この国の民を救うことができる仲間と、それができる主を見つけて
協力して、少しでもこの国の民の現状を、良い方向に変えていきたいと思います。」
「そう、じゃあ私から言うことはなにもないわ。
私には私のやるべきことがあるから、
関羽、貴女と共には行けないけど、
貴女の旅で良い出会いがあるように祈っているわ。」
「関羽さん・・・きっと良い仲間に出会えます・・・
貴女が心から信頼出来る人達に会えますよ。」
「ありがとうございます。
・・・その旅立つ前に一つお願いがあるのですが・・・
私と真名を交わしていただけないでしょうか?」
「真名を?」
「本当なら、許昌を発つ時に言うつもりだったのですが、
郭嘉殿に先を越されてしまいましたので・・・」
「別に稟と一緒に言ってくれても良かったのに。」
「いいえ、気恥ずかしかったというのもありますが、
郭嘉殿には失礼かもしれませんが、
私はお二人と真名を交わしたかったので。」
「私達と?」
「はい。
別に郭嘉殿が信頼出来ないというわけではないのですが、
私はあの方の心底を計れるほど 付き合いがあったわけではないので・・
ですが、お二人とは短い間でしたが、
私の人生において大事な時間を過ごさせて頂きました。
お二人には 私に何が足りないのか教えていただき、
その足りないものを埋めて頂きました。
それで、完全になったなんて烏滸がましいことは言いませんが、
それでも 目指すべき道標は出来ました。」
「・・・」
「そう、まぁ、あんたはもう少し学問を修めるべきね。
個人の武はもう申し分ないのだから、
後は知を補えば 優秀な武官になれると思うわ。」
「ありがとうございます。
それにお二人は それぞれ形こそ違えど 心から民を思って居られます。
そんなお二人だからこそ、私の真名を預け、
できることならお二人からも
信頼を預けていただきたいと思っています。」
「・・・そこまで言ってくれるなら
私はいいけど・・・」
「私もいいわよ。
短い間だったけど、あんたの為人は見定めたつもりよ。
ただ残念なのは、あんたが歩む道が私と違ったことね。
あんたが力を貸してくれたら、
武においての不安要素は無くなったのに。」
「私も同じ思いです・・・荀彧殿は
上から変えようとしておられる。
私はまずなによりも先に民を救いたい。
そういう意味では喜媚殿の方が私の思いには近いですね。」
「私!? 私はそんなに大それた事は考えてないよ・・・」
「そうでしょうか?
私には 何れ喜媚殿は大業を成し遂げる人物だと思っています。」
「私はそんな・・・」
「喜媚にはそんなのは似合わないわよ。
喜媚は私の下でこき使われるのがお似合いなのよ。」
「桂花・・・さすがにそれは。」
「う、うるさいわね! あんたにはそれがお似合いなのよ!」
「フフフ・・・私は何れ喜媚殿が
私と同じ道を歩んでくれると期待していますよ?」
「関羽! あんたねぇ・・・!」


関羽さんが私の方を見て微笑んだ後
桂花を見つめている、桂花も負けじと関羽さんを睨みつけるが
関羽さんの瞳には全く悪意や邪心はなく、
ただ 自分の信頼するものを見つめる 穏やかながらも真摯なものだったので
桂花も毒気を抜かれて、すぐに目をそらしてしまった。


「さて、私 関雲長 真名を愛紗と申します。
私の心からの信頼の証としてお預かりください。」
「・・・・私の真名は 桂花よ。
・・・よろしく。」
「私は、以前説明したかもしれませんが
真名がないので・・・」
「えぇ、わかっています。
荀彧・・・桂花殿と同じように、
今まで通り喜媚殿と呼ばせてもらいますが、
その意味は今までとは違い、信頼を込めて呼ばせて頂きます。
喜媚殿は私を真名で呼んでください。」
「・・じゃあ、その、愛紗ちゃん、よろしく。」
「ちゃ・・ちゃん!?」
「あ、まずかった?」
「い、いいえ! 結構です!
それで結構ですよ!」


関羽さん、あらため愛紗ちゃんは、少し慌てながらも
頬を赤く染め、すこし照れたほほ笑みで 私を見つめて来た。


「喜媚殿。 桂花殿。 これからもよろしくお願いします。」


こうして、私と桂花、愛紗ちゃんの三人で真名を交わし、
翌日、今日の真名を交わした一件を荀緄さんに話、
桂花は仕事を早く切り上げ屋敷に戻り、
一日遅れだが、三人で祝杯を上げた。


この日から数日後、
とうとう、関羽さんが洛陽から旅立つ日がやってきた。


「それじゃあ愛紗、元気でね。
できたら貴女とは同じ主の元で働けると良いわね。」
「そうですね、桂花殿と私では 色々考えが違うところもありますが
この国や民の暮らしをよくしたいと望む主の元でなら、
一緒にやっていけると思います。
お互い そういう主に出会えることを祈っています。」
「えぇ・・じゃあ、道中気をつけてね。」
「はい。」
「愛紗ちゃん。」
「は、はい・・・・どうもその ちゃんと言うのは慣れませんね。」
「私から愛紗ちゃん言える事はそんなに無いけど・・・
醜聞に惑わされず、
自分の目と耳で真実を確かめるように気をつけてね。
悪人だと言う噂の人が善人だったり、
良い話に裏があったり・・・愛紗ちゃんは
真っ直ぐすぎるところがあるから、時間がある時は、
まず一旦落ち着いて情報の真意を確認してから動くようにしてね。」
「はい。 肝に銘じておきます。」
「私の見た目で女だと思って閨に誘った時みたいに 思い込みで判断しないでね♪」
「あ、あの時は!
あの時は喜媚殿が黙っていたのが悪いのではないですか!!」
「ハハッ、冗談だよ。
アレは言わなかった私も悪かったからね。
でも、そういうことだよ。
見た目や噂に惑わされないで。」
「分かりました。
・・・・それでは、また会える日を楽しみにしています。」
「お互いにね。」
「愛紗ちゃん、元気でね。」
「はい! ・・・それでは!」


こうして愛紗ちゃんは行商人の人達と次の街へと旅立っていった。

一応 彼女には釘を刺しておいたけど、
恋姫の歴史の流れ通りに反董卓連合が起きてしまった時に、
少しでも洛陽の皆の被害を抑えられるように・・・


さて、愛紗ちゃんが洛陽を発ち、
荀緄さんの屋敷内が少し寂しくなってしまったが、
私も桂花も がんばって洛陽での生活を送っている。


洛陽での生活が一月ほど経った時に、
周泰ちゃんが袁術ちゃんの書簡を持って訪ねて来たので、
お互いの無事を確認した後、
洛陽の店で、簡単な祝杯を上げ、
お互いの近況を話し合った。


「それにしても あの時は本当に大変でしたよ、
喜媚様が洛陽に行かれたと袁術様が聞いた時は
『なんで喜媚は妾の所に来ずに毎回洛陽などに行くのじゃ!
こうなったら妾も洛陽に行くのじゃ!』
と言い出して、張勲様が袁術様をなだめるのに
寿春中から色んなお菓子を集めて
なんとかご機嫌を取ってましたから。」
「あはは・・・それは張勲さんに悪い事したかな?」
「多分 張勲様からの書簡には、
その愚痴が書き連ねられていると思いますよ。」
「覚悟はしておくよ・・・それにしても
やっぱり一回 寿春に行ったほうがいいのかな・・・
一応、洛陽での仕事が終わって、許昌に戻った時、
少し休みをもらって行こうかと桂花に話してはいるんだけど。」
「来てくださるなら、日程がわかれば私がお伴いたします!」
「周泰ちゃんが付いてくれるなら道中は安心だね。」
「おまかせください!
その話を袁術様にしたら、
きっと私の派遣を許してくださるはずです。」
「なんか悪いけど、日程がわかったら教えるよ。」
「はい!」


この後も いろんな話をした後、
周泰ちゃんは仕事があるというので
最後にお茶で乾杯して別れた。


洛陽での生活もだいぶ慣れ、
荀緄さんの屋敷の人達や、よく行く店の人達、
それに加え、私がよく出入りするのと、
特徴的な猫耳服のお陰で宮殿の見張りの人達とも、
ある程度挨拶や世間話をするようになった頃、
ようやく宮殿内の庭園で弁ちゃんに会うことが出来た。


「喜媚様・・・お久しぶりです。」
「弁ちゃん久しぶり・・・ちょっと痩せた?」


最後に彼女を見たのが 約一年ほど前の記憶なので
あまり当てにはならないが、
彼女は少し痩せた・・・と言うか
やつれたと言う表現のほうが正しいのかもしれない。
若干顔色が悪く、けだるいような感じを受ける。


「食事はちゃんと食べているのですが・・・
最近少し忙しいので。」
「・・・姉様は最近ほとんど休みをとっておらぬ。
今日姉様の体調が悪いということで
ようやく休みを取れたのじゃ。」
「え? じゃあ、こんなとこに来てないで寝てないと!」
「すいません・・どうしても一目 喜媚様に会いたかったので・・
無理を言って少しだけ時間を稼いでもらってきたんです。」
「どういうこと?」
「妾や姉様の身の回りの世話をする者の中に
信用できるものが数人おってな、
その者に姉様の身代わりをしてもらっておるのじゃ。
あまり時間は取れないが それしか方法がなくてのぅ。」
「そこまでして・・・・」
「せっかく喜媚様が洛陽にいらしているのに、
一目もお会いできずに、手紙だけなんて悲しいじゃないですか。」
「弁ちゃん・・・」
「今日は妾の事はいいから、姉様の相手をしてやってくれぬか?」
「でも、体の調子はいいの?」
「えぇ、喜媚様の顔を見たらなんだか気分が良くなってきました。」
「そう? でも少しでも体調が悪くなったら すぐに言ってよ?」
「はい。」


その後、ほんの少しの時間だったが
弁ちゃんと、二人で近況を話し合い、
時々協ちゃんが茶々を入れながら楽しく過ごしていたが
不意に協ちゃんが、今の境遇に付いての愚痴をつぶやくようになった。


「妾もそうじゃが、特に姉様はもう少し、謁見の回数を減らすべきなのじゃ。
今ではまともに休む時間や、食事の時間も取れておらぬではないか。」
「でも協、私が会わないといつまでも待ってる人達も居るし・・」
「それで姉様が体を壊したら元も子もないのじゃ!
それに父様がまだ存命なのにもかかわらず
跡目の事で周りが勝手に騒ぎ立ておって・・・
母様も母様じゃ・・・」
「協!!」
「う、うむ・・・すまぬのじゃ。
喜媚がおるのにする話しじゃなかったの・・・
喜媚も今の話は聞かなかったことにして欲しいのじゃ。」
「それはいいけど・・・二人共体調だけは気をつけてよ?
私には話を聞いてあげるくらいしか出来ないから。」
「うむ、だが喜媚はそれでいいのじゃ。」
「えぇ、話をしてくれるだけで だいぶ気分が楽になりますから。」


彼女達はこ宮殿の中でも
かなり偉い人の娘だということは察しがつくが、
桂花もそうだが、そういう家に生まれたら それはそれで大変なんだろう、
家を守って行かなければならないし
権力が強ければ それに付随する荷物も大きくなる。
跡目争いもある・・・
私には何も出来ないけど、
せめて彼女達の愚痴を聞いたり 気晴らしくらいには付きあおうと思った。


結局この後、すぐに二人は戻らなければならない時間になり
部屋に戻っていった。
短い間ではあったが
お互いこうして顔を合わせて 無事を確認できて良かった。


この後、私も宮殿から帰ったのだが、
帰り道で、肉まんを売っている店があったので
おみやげに買って帰ろうと思い、
何個か買って店前から立ち去ろうとした時。
不意に足を引っ張られる感覚がしたので
下を見たら、この時代のこの国に居るべきでない
赤いスカーフを首に巻いた犬が
私の裤(ズボン)の裾を加えていた。


(なぜオマエがここにいる・・・セキト!)


「ワン!」


  1. 2012/09/18(火) 01:24:19|
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二十七話


許昌




後日、荀桂様に桂花の洛陽行きの日付を教えてもらい
私と関羽さんは旅の準備を済ませ、
後は許昌を旅立つのみとなった。


そんなある日、私と桂花は郭嘉さんに呼ばれ
許昌の南にある畑のそばの小川へと着ていた。


「・・・懐かしいわね。
昔は良くココへ喜媚と遊びに来たっけ。」
「そうだね・・・最近は郭嘉さんも一緒に来て・・・
遊びはしなかったね・・・」
「郭嘉は変な所で真面目だから、
せっかく小川に来たのに水軍の話をしだすんだもの。」
「別に私が遊びを知らないわけではないですよ!
ただ、あの時は本で水軍の話を読んだばかりだったので・・・」
「何言ってんのよ、一回や二回じゃないわよ?
釣りに来たのに、いきなり太公望の話をしだしたり
喜媚が葉っぱで船を作ったら
いきなりもっと作れとか言い出して
水の流れを調べるとか言い出したじゃない。」
「・・・そんな事もありましたか?」
「・・・まったく。
それで? 今日はこんな所に呼び出してなんなの?」

「荀彧さんが洛陽に旅立つと聞いたので、
私もいい機会なので、国内を見て回る旅に出ようかと思いまして。」
「そう・・・あんたもなの。」
「はい。 この国を良くしようと思ったら
まずはこの国のことを知らねばなりません。
ですので、私は名を隠して旅に出ようかと思っています。
知り合いに同じ志を持つものがおりましたので
その者と一緒に国内を見て回ろうかと思います。」
「・・・あんたの旅の無事を祈ってるわ。」
「ありがとうございます。
私も、荀彧さんと喜媚さん、お二人の無事を祈っております。」
「ありがと。」
「ありがとう郭嘉さん。」
「話はそれだけ?
なら この後みんなで一緒に簡単に祝杯でも上げに行かない?」
「いいえ、ここからが本題です。」


そう言うと郭嘉さんは、私達に向かってまっすぐと立ち
私と桂花の顔を交互に見つめる。


「今回お二人を呼んだのは、
お二人に私と真名を交わしていただきたいと思ったからです。」
「・・・真名を?」
「はい。
幼少の時よりお二人と出会ったことで、
私の知識はより深みを増し、そして初めて心から友と呼べる者を得ました。
許昌で初めての実戦の空気を感じた時には
お二人に心を癒され、
私の目指すべき道を・・・まだ、はっきりとはしませんが
進むべき方向を定めることが出来ました。
そんなお二人だからこそ、私の魂を預けたいと思い、
旅立つ前に お二人と真名を交わしていただきたいと思いました。」
「別に私はそんな大したことはしてないわよ・・・
逆に私も色々・・その、世話になったし。」
「私もです、誰かが一方的に世話をしたのではなくて
皆で少しずつ歩いてきただけですよ。」
「・・・・フフ、やはり私の目に狂いはなかった。
喜媚さん、荀彧さん、私 郭奉孝の真名を、稟と申します。
受け取っていただけませんか?」
「・・・・荀文若、謹んで預からせてもらうわ。
私の真名は桂花よ。」
「私は・・どうしよう、真名無いんだけど。」
「知っています、私も荀彧さん・・
いや桂花さんと同じで構いません。
以後、喜媚さんの名を呼ぶ時は 我が魂を懸けて名を呼ばせて頂きます。」
「・・分かった、郭嘉・・・稟さん。
これからもよろしくね。」
「はい。」

「さて、じゃあ、今日は皆で祝杯と行きましょうか!」
「だったら家に来てよ。
母さんに作らされたお酒で、いいのがあるから。
まだ、母さんにも飲ませてないけど、
味は私が今まで作った中で最高だよ♪」
「では、喜媚さんの家に行きましょうか。」
「じゃあ、行くわよ!」
「うん!」 「はい!」


こうして私達は、郭嘉さんあらため、
稟さんと真名を交わし、祝杯を上げた。

祝杯の席で稟さんだと呼びにくいので稟ちゃんと呼んだら
稟ちゃんは顔を真赤にして、慌てていた。

どうやら今まで呼ばれたことがない
呼び方だったため恥ずかしいそうだ。

途中で関羽さんと母さんも参加して、
その日はちょっとした宴会になった。


そしてとうとう、桂花の洛陽への出発の日。

その日は桂花の家の前に荀桂さんや桂花の家の使用人達、
そして稟ちゃんや荀家に関わりのある人達が集まり、
皆で桂花の見送りに来ていた。


「・・・喜媚、あんた何やってんのよ。
あんたはこっちでしょ!」
「バレたか・・・」


私はどさくさに紛れて、
荀桂さんの後ろに隠れていたのだが、
すぐに桂花に見つかってしまった。


「喜媚殿・・・荀彧殿の大事な出発の日に
ふざけるのは止めてください。」
「喜媚さん・・・」
「喜媚ちゃん・・・」
「「「「・・・・」」」」
「すいませんでした。」


後に郭嘉は語る、それはそれは見事な頓首だったと言う。


「・・・コホン、
確か、一度洛陽でお父様の所で仕事を一通り学んでから
許昌に戻り、その後、袁本初様のところに行くのだったわね。」
「えぇ、荀諶がうるさいから・・・
それに一度 名門と言われる袁家の治世を見てみたかったし。」
「あの娘も困ったものね。
まぁ、いいわ・・・
さて、桂花、貴女もとうとう この時が来てしまったけど、
荀家の者として恥ずべき事がない様に、
そして 己を見失わずに、自分の歩みでしっかりと進んでいきなさい。」
「はい。」
「洛陽ではお父様の言うことをよく聞いて、
しっかり学んでくるのよ。」
「はい。」
「桂花が無事に帰ってくるのを待ってるわ。」
「はい。」
「喜媚ちゃん、関羽ちゃん、桂花の事よろしくね。」
「「はい。」」
「大体 半年ほどだけど、
洛陽から帰ってきたらおいしいもの用意して待ってるわ。」
「桂花さん、私は少し遅れて許昌を発ちますけど、ご壮健で。」
「あんたもね稟、できたらあんたとは一緒の仕官先になるといいわね。」
「そうですね。
喜媚さんも関羽さんもお元気で。
また何れ会える日を楽しみにしています。」
「稟ちゃんも元気でね。」
「郭嘉殿もお元気で。」
「「「「お嬢様、お元気で!」」」」
「あんたたちもね!
さぁ、行くわよ!
喜媚も関羽も付いてらっしゃい!」
「はいはい。」 「はい。」


こうして私達は城門で待ち合わせをしている
行商人と警備隊の一団と合流し、
洛陽に向けて出発した。


道中では何度か怪しい集団がコチラを伺っていたが、
警備の人数の多さと、関羽さんの睨みで
襲われることは無かった。


「しっかし、昔と比べて物騒になったわよね~。
何回か洛陽には行ったけど
昔はこんなに物騒じゃなかったわよ?
・・・ほら、あそこにもコチラの様子を伺ってる馬鹿共がいるし。」
「そうだね・・・年々物騒になっていくね。
私達はいいけど、他の旅人とかはどうするんだろう?」
「そういう旅人は私のような護衛を数人雇うか
今みたいに行商人の一団と交渉して同行するんですけど、
それも出来ない人達は、命がけで旅をしていますよ。」
「本当ならこの許昌と洛陽の街道なんか
賊が出たら駄目なところなのに・・・何やってんのかしら。」


桂花は官軍という言葉は出さなかったが
話を聞いていた皆は同じ気持ちだっただろう。


「まぁ、いいわ。
私が行くからには少しでもマシにしてやるわよ。」
「その意気です、荀彧殿。」
「頑張ってね。」
「・・・・ハァ、
あんたは本当にもぅ・・・」


賊に警戒しながらも、
私達は洛陽まで旅を続け、ようやく洛陽の城門が見える所まで来た。


「・・・凄い、アレが洛陽ですか。」
「えぇ、そうよ。
・・・本当に城壁は立派よね。」
「城壁は? 中も立派なんじゃないですか?」
「立派よ、宮殿と大通りの市と一部の屋敷だけは。」


関羽さんはよくわからないような顔をしたが・・


「関羽、貴女はそれをその目で確かめるために来たんでしょう?
よく見て回るといいわ・・・この洛陽こそが
この国の縮図だということを・・・」
「この国の縮図・・・・ですか。」
「そうよ、その目で確かめることね。」
「・・・・・」
「・・・」


桂花はそれ以上何も言わず、
私達は洛陽の城門まで進み、手続きをした後、
洛陽に入り、行商人や護衛の人達と別れ 荀緄様の屋敷に向かった。

荀緄さんの屋敷に着くと、
すぐに門が開けられ、荀緄さんが屋敷内から姿を現す。


「おぉ! よく来たな桂花よ!」
「お久しぶりですお父様、1年ぶりくらいですか?」
「そうじゃな、まぁ、堅苦しい挨拶はよい。
喜媚と護衛の関羽じゃったか?
二人共ご苦労だったな。」
「お久しぶりです荀緄様。」
「初めてお目にかかります、関雲長です。」
「うむ、家内から書簡で聞いておる、
部屋はすでに用意してあるからゆっくりと寛ぐが良い。」
「「お邪魔します。」」


荀緄さんの屋敷に入り、私達が使う部屋に案内され
荷物を置いたら、一旦居間に皆で集まり
簡単な祝宴の後、今後の事を話す。


「さて、桂花はもう知っておると思うが、
明日休んだ後。明後日からは儂と一緒に宮中に上がり
儂の補佐をしてもらいながら 仕事を覚えてもらう。


「はい。」
「喜媚は一応使用人ということだが、
荀桂から桂花付きの侍女の仕事をさせろと
言ってきておるからそのようにな。」
「はい。」
「関羽は洛陽を見て回るんだったな。
ならば儂から言うことは特に無い。
騒ぎを起こさない限り好きにして構わぬ。」
「ありがとうございます。」
「うむ、とりあえずそんなところだが、他に何かあるか?」
「あの荀緄さん。」
「なんじゃ喜媚。」
「良かったら私も宮中に入れるように出来ないでしょうか?
今まで通り、宮中のお庭まででいいので。」
「ふむ・・・出来ぬことはないが・・
例の友人とかいうのに会いにゆくのか?」
「はい。」
「構わぬが・・・以前から儂も聞いていたが
宮中にそんな者達はおったかのう、まさか あのお二人ではないだろうし。
まぁ、人の出入りが激しいため
儂もすべてを把握しておらぬからなんとも言えぬが。
とりあえず、桂花の侍女ということで報告しておくので
儂の執務室までの出入りを許可しよう。」
「分かりました。」
「あんた今度 私にもその女達に会わせなさいよ。
どんな女か見てやるわ。」
「あの桂花・・・結構偉いとこの娘みたいだから
もし会えたとしても粗相のないようにね。」
「わかってるわよ、宮中で会う人間に下手なことはやらないわよ。」


こうして 私はなんとか弁ちゃんや協ちゃんに会う算段を付け、
この後は本格的な夕食を楽しみ、
洛陽での初日は終わった。


翌日は、桂花と関羽さんと私の3人で
洛陽の地形を把握するために
目印となる通りなどを 関羽さんに案内しながら
洛陽を視察した。


「どう、関羽?
何か思うことはあった?」
「そうですね、表通りは大変賑やかなのですが
路地に入ると・・その。」
「口に出さなくていいわよ、
私も同じ感想だから、それに下手に人に聞かれてもまずいから。」
「はい。」


私と桂花も何回か洛陽には着ているが、
来る度にひどくなっているような気がする・・・

関羽さんは表通りは賑やかだといったが
昔はもっとすごかった。
ただし、それはある一部の人間のみだったが。


この日は簡単に洛陽の町を見て回るだけで終わり、
明日以降は 関羽さんが自由に見て回るそうだ。

荀緄さんの屋敷に戻り、今日の洛陽での事を話しながら食事を済ませ、
桂花は明日に備え早めに寝るそうなので、
私達もその日は 早めに寝ることにした。


翌日、荀緄さんと桂花と私は宮殿に行き、
まずは手続きを済ませ、宮殿に出入りできるようにしてもらい、
その後、荀緄さんと桂花は仕事を始める。

この日は私は、桂花の手伝いや、
屋敷で、私と桂花の部屋の掃除などをして過ごし、
弁ちゃんや協ちゃんに会いに行くのは、
明日にすることにした。


翌日、午前中は屋敷での仕事を手伝い、
午後になったころ、
弁ちゃん達とよく会えた時間帯になった頃、
宮殿の庭園に向かい、いつも彼女達がよく現れた場所で
しばらく待っていると、後ろの方からガサガサと音がしたと思ったら、
急に私に向かって女の子が飛びこんできた。


「ふぎゅっ! ・・・・痛たた、何者じゃ!
妾の隠れ場に居る・・・・の は・・?」
「いたた・・・協ちゃん・・・・えっと、お久しぶり?」
「喜媚ぃぃ~っ!
喜媚ではないか! ほ、本物かや!?」
「本物だって、協ちゃん ぶつかった時に怪我とかしてない?」
「うむ! 妾は大事ないぞ、喜媚はどうじゃ?」
「こっちも大丈夫だよ。
けど どうしたの そんなに慌てて飛び込んできて。」
「う、うむ、ちょっと追われておってな・・・・
まぁ、ここまで来れば大丈夫じゃ。」
「なに? また勉強抜け出してきたの?」
「う・・・ま、まぁ、女にはいろいろあるのじゃ。」
「何処でそんな言葉覚えてきたのよ・・
そういえば弁ちゃんは?」
「うむ・・・・姉上も大事ないのじゃが・・・その
最近 姉上は忙しゅうてな、妾もあまり会えぬのじゃ。」
「そっか・・去年も忙しくなったって言ってたけど
弁ちゃんも本格的に仕事とかするようになったのかな?」
「仕事というか・・・最近ひっきりなしに
姉上に会いに来るものがおるのでな。
なかなか抜け出せんのじゃ。」
「そういうのも仕事だからしょうがないよね。」
「うむぅ・・・」


協ちゃんは微妙な、喉にものが詰まったと言うか、
言いたいけど言えなくて我慢しているような表情で
うなっていた。


「そうじゃ! 今度は喜媚はどれくらい洛陽におるのじゃ?」
「今回は結構長いよ、短くても三~四ヶ月はいるから。」
「おぉ! そんなに長く居れるのか!
ならば いっぱい遊べるのぅ!」
「遊びもいいけど協ちゃんも勉強か仕事か
私にはわから無いけど、あんまりサボっちゃだめだよ?」
「わかっておる!」
「だけど弁ちゃんが忙しいなら、ちょっとさみしいね・・・
とりあえず今度竹簡・・・・だと かさばるから
手紙でも用意して持ってこようか?」
「うむ、姉上もきっと喜ぶに違いない。」
「じゃあ、今度来る時は手紙を持ってくるよ。」
「うむ、ならば妾が姉上に届けよう!」


こうして一年ぶりくらいになるのか・・・
協ちゃんとの再開を無事に果たすことができたのだった。

後日、約束通り手紙を協ちゃんに渡して、
弁ちゃんに私が来ていることを伝えてもらうことに成功し、
弁ちゃんからの返事をもらうことが出来た。


相変わらずの達筆と言うか章草と言うか、
私には読みにくい文字だったので、
協ちゃんに訳してもらったが、
書いてある内容は
自分も元気であることと、是非私に会いたいので、
私が洛陽にいる間に必ず会いに行く。
そういった内容だった。


こうして私が洛陽に来た目的の内、
彼女達に会うと言う目的は、概ね達成され
この日以降も、毎日ではないが、
協ちゃんと会ったり、弁ちゃんの手紙を読んだりしながら
過ごしていた。


  1. 2012/09/18(火) 01:23:08|
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二十六話


許昌




翌朝、私が先に目が覚め、それに気がついた関羽さんも目が覚め、
不意に目があった私達は、すぐ目の前にお互いの顔があることや
昨晩のことを思い出して、顔が熱くなってしまう。
関羽さんの顔は真っ赤だが、おそらく私の顔も真っ赤だろう。


「そ、その・・・おはよ。」
「・・・おはよう ございます。」


その後、関羽さんはそそくさと私の部屋から出ていき、
私は顔を洗いに井戸に行ったのだが、
そこで服を着替えた関羽さんと出会い
気まずい雰囲気になってしまう。

私は先に顔を洗い、食事の用意を済ませ、
起きてきた母さんも含めて皆で朝食を摂ったのだが
私と関羽さんの様子がおかしいのを
察した母さんがニヤニヤと笑っていたので、
むかついた私は母さんのスープの中に
小皿に分けていた漬物を全部ぶち込んでやった。

その後は、関羽さんと訓練をしたのだが、
流石に武術の訓練となると、昨日のこともあり、
関羽さんの気持ちも切り替わったようで、
相変わらず私がボコボコにされた後、
小休止してから畑仕事に向かった。


畑に向かう途中で、まだ昨日の戦闘の後片付けをしている人達と
何人かすれ違ったが、関羽さんの表情には
普段と変わった様子はないが
昨晩の様な迷いは一切無く、
しっかりとした足取りで畑に向かった。


畑仕事をしていると、丁度区切りがいいところで、
桂花と郭嘉さんが二人揃ってやってきた。


「こんにちは。」 「こんにちは。」
「「こんにちは。」」


その後、二人は関羽さんの表情を観察していたが・・


「ふん、
昨日はアレから少し様子がおかしかったから
心配したけどもう大丈夫なようね。」
「そうですね。 流石は武術を
修めただけはあるということでしょうか。」
「いえ・・・そんな。」


謙遜する関羽さんは、恥ずかしそうに目をそらした。
関羽さんの様子が なにかおかしい事に気がついた
桂花が彼女を問い詰める。


「ん? ・・・・関羽、アンタ何か有ったの?」
「い、いえ! 何もありませんよ!
昨晩はちょっと喜媚殿に相談に乗ってもらっただけです。」
「そう? ならいいけど・・・」


そう言いながら桂花がいつもの定位置の
私の横の木を切っただけの椅子に座ると
不意に私の方に顔を寄せ、クンクンと鼻を鳴らす。


「・・・ん? 喜媚から女の匂いがする。」
「? 荀彧さん何を言っているのですか?」
「喜媚殿から女性の臭がするのは当たり前ではないですか。」
「・・・・違う! コレは関羽の匂い!!
あんた達昨日の夜ナニやってたのよ!?」


この桂花はどんなけ鼻がいいんだ・・・
私は自分では気が付かないが、
そんな匂いがしているのか?

とにかく、桂花は私の服の襟を掴み
私に詰問する。


「昨日の夜って・・・関羽さんの相談を少し聞いただけだよ。」
「嘘言いなさいよ! それだけでこんなに臭うわけ無いでしょう!」
「あ・・・・・っ!?」
「なに!? 関羽、アンタ何かされたの?」
「あ・・・いや、されたというかしたというか・・・」
「何よ! はっきり言いなさいよ!!」


桂花の剣幕に脅されたのと、桂花達も戦闘後の最初の夜は
皆と一緒に寝たという話を聞いていたせいもあって
関羽さんは あっさり桂花に昨晩のことを話してしまった。


「じ、じつは・・・お恥ずかしい話なのですが、
昨晩はすこし不安だったので・・・・喜媚殿と、その
一緒に寝たのですが、
私はその前に訓練をして汗をかいていたので
それで少し匂いが・・・・」
「あんた 喜媚と寝たの!?」
「は? はぁ・・・なにかまずかったでしょうか?」
「まずいって! あんた・・・・・・ん?
喜媚、あんた自分の事関羽に話したの?」
「え? ・・・・話したっけ?」
「何がですか?」


桂花が興奮する中、郭嘉さんだけが冷静に状況を見ていたようで
郭嘉さんが関羽さんに情報をまとめて説明する。


「関羽さん、貴女が知っているかわかりませんが、
喜媚さんは男性なのですよ。
それで、荀彧さんは関羽さんが男性と一緒に寝た事を
認識しているのか? と聞いているのです。」
「・・・・・・・はぁ!?」
「喜媚! あんた、話してなかったの!?」
「え? 話してなかったっけ?
昨晩は関羽さんから誘われたから
知ってるのかと思ったんだけど・・・」
「・・・・そんな!
そんな大事なことを 知っていたらあんな事誘いませんよ!!
あぁぁ・・・・そんな。
それじゃあ、私は昨晩は男性と閨を共にしたと・・・?
しかも自分から誘って?」


関羽さんが羞恥で顔を真赤にして
地面にぺたんと座り込んだところへ
郭嘉さんが関羽さんの肩にそっと手を置き。


「まぁ、知らなかったのならしょうがないですよ。
その、私も荀彧さんも 以前同じような経験はありますので
今回の事は 無かったことにしたほうが 精神的にもいいですよ?」
「・・・・あぁぁ・・・・」


郭嘉さんもそうだったが、関羽さんも貞操観念が強いようで
自分が昨晩 何をしたのか考えているのか
さきほどから百面相をしている。

関羽さんは 一通り、考え終わったのか、
俯いて地面に手を付き・・


「かくなる上は、喜媚殿に嫁にもらってもらうしか・・・・」
「あんた なに馬鹿なこと言ってるのよ!!
無しよ! 無し!!
昨晩のことは忘れなさい!!」
「いや、しかし・・・・」
「だったら私も郭嘉も一緒に喜媚に嫁入りしなきゃいけないじゃない!!」
「・・・・あの? 誰が正妻になるのでしょうか?」
「ばかっ!! 誰もなりゃしないわよ!
もうっ!! 全部アンタが悪いんだからね、喜媚!!」
「え~・・・」
「まぁ、関羽さんが喜媚さんを女性だと思っていたなら
何もなかったのでしょうが・・・・いや、
関羽さんが何も知らない無いことをいいコトに
喜媚さんが穏やかに眠る関羽さんの豊満な身体を使って
自らの欲望を・・・・」
「郭嘉は寝てなさい!!」


そういいながら桂花は私の鉄扇を奪い取り郭嘉さんの後頭部を殴りつけ、
郭嘉さんは前のめり倒れて意識を失う。


「・・・なんだこの状況?」


結局 状況が収まったのは 陽が少し傾いてきてからで
落ち着いた私達は、
とりあえず、言わなかった私が悪い。
昨日のことはなかったことに。
と 言う結論で落ち着いた。


この日はしばらく関羽さんに警戒されたが、
翌日にはいつも通りの対応になっていた。
おそらく訓練で私をボコボコにして気が晴れたのだろう。


戦場の後片付けに十日ほどかかったが、
今は普段通りの日常に戻っている。

そんな時、私と関羽さんが一緒に荀桂さんに呼ばれた。
呼んだ理由は桂花の洛陽行きの日程が決まったからだ。

桂花の家に行くと応接間に通され、
荀桂さんと桂花がやってきた。


「とうとう桂花が許昌を離れるんですか?」
「えぇ、私としては、桂花が最後だというのが
不思議なんだけど、ウチの旦那がそう決めたみたいだし・・」
「荀緄様ですか・・」
「何を思って桂花が最後なのかわからないけど、
とにかく、前の賊との戦闘で、
ここらの賊がしばらくおとなしくなってるみたいだから
いい時期だと思って。
同行する、行商人や傭兵の手配は既に済ませてあるから
後は喜媚ちゃん達だけなんだけど、
そっちの方の準備はどう?」
「私は大丈夫です。」
「私も大丈夫です。」
「じゃあ、問題無いわね。」
「関羽も悪いわね、私の護衛なんか頼んじゃって。」
「いいえ、私としても洛陽までの旅費が浮きますし
その上、護衛代金も頂いて、洛陽での宿代も浮きますし逆に申し訳ないくらいです。」


洛陽に桂花が移った時は
荀緄様のお屋敷にお世話になることになっている。
関羽さんも洛陽を視察する時に
部屋を一室借りられるように手配されている。


「喜媚ちゃんと関羽ちゃんが
一緒についてくれるなら桂花も安心ね。」
「喜媚はともかく、関羽の武は信用しているわ。」
「・・・・私行かなくてもいいかな?」
「アンタには料理で期待してるから、
ちゃんと付いてきなさいよ。
妲己様が舌が肥えてらっしゃるだけあって
アンタの料理はその辺の食堂よりも美味しいんだから。」
「桂花も料理くらい覚えればいいのに・・・」
「私はいいのよ! りょ、料理くらいできなくても生きていけるわ!」
「いや、無理でしょう・・・食べ物なかったら。」
「その話は後で二人でゆっくりなさい。
とにかく、道中と洛陽では頼んだわね、
喜媚ちゃん、関羽ちゃん。」

「「はい。」」

「それじゃあ、二人はもう戻ってもらっていいわよ。
悪かったわね、急に呼び出して。」
「荀桂さんが 私を急に呼び出すのはもう慣れましたよ・・・」
「これから喜媚の家に行くんでしょ?
じゃあ、私も一緒に行くわ。」
「桂花はまだ、話があるから残りなさい。」
「・・・分かりました。」


私と関羽さんは応接室を出て、
家に帰り 少し早いが夕食の準備でもすることにした。





--荀彧--


その頃 荀家の応接室では・・・


「さて、桂花。
今日は大事な話があるわ。」
「何ですか、お母様・・」
「貴女、喜媚ちゃん好きよね?」


お母様の話を聞くために
いったん落ち着こうとお茶を口に含んだ時・・・


「ブフゥッ!? ・・・ゲホッ・・ケホッ。
な、な、なにをいきなり言い出すのよ!?」
「なにを、って大事な話じゃない。」
「・・私が喜媚をどう思っているかが関係あるの?」
「あるわよ、貴女の婿取りの話しなんだから。」
「・・・まさか、お母様。」
「そのまさかよ、私は喜媚ちゃんを桂花の婿に取ろうと思っているわ。」
「喜媚が私の婿? ・・・本気なの?」
「本気よ、あの人はまだ納得してないみたいだけど、時間の問題よ。
喜媚ちゃんは武術も学問も修めてるし、身体にも何も問題ない。
家柄の問題があるけど、そもそも桂花は
喜媚ちゃんに命を助けられてるんだから 命の恩人なら婿にとっても問題無いわ。」
「・・・・」
「なにか言いたげね?」
「・・・・喜媚はなんて言ってるんですか?
どうせ、お母様のことだから もう喜媚にも話してあるんでしょう?
少し前から あいつの様子がおかしかったし。」
「喜媚ちゃんは 桂花とは生きる世界が違うとか言ってたわね。」
「そう・・・」


喜媚が私と生きる世界が違う、そう言った事に
私は胸に穴が開いたような喪失感を覚えた。


「でも、喜媚ちゃんもまんざらでもないようだったわよ?」
「・・・な!?
・・・嘘よ・・・あの子 最近私を避けてるもの。」
「家柄や桂花の立場のことを気にして
自分から身を引こうとしてるだけよ。
陳留に行った時は 桂花と別の部屋にしてほしいとか言ってたけど
それは桂花を女として意識してるからでしょ?
気恥ずかしいから 避けてるだけよ。
それに 本当に桂花が嫌いだったら、
私が頼んだからって 洛陽まで着いてきてくれるはずないでしょ?」
「・・・・・」
「そこで、今回の話に戻るんだけど。
桂花、貴女が本当に仕えたい主が見つかり、
その人に仕官するまで、喜媚ちゃんが桂花の使用人として、
付いてもらうように頼んであるけど、
貴女、それまでの間に、色仕掛けでもなんでもいいから、
喜媚ちゃんを堕としちゃいなさい♪」
「くっ・・・・・なんで私から そんな事をしなくちゃいけないのよ!!」
「じゃあ、聞くけど桂花 喜媚ちゃんの方から
貴女を口説いてくると思ってるの?
はっきり言うけど、無いわよ。」
「・・っ!?」
「喜媚ちゃんは荀家や桂花の将来のことを考えて、
何処かの権力者の嫁になる事がいいと考えてるのよ?
そんな喜媚ちゃんが貴女を口説こうとするわけ無いでしょう?
それに あの子の自制心ときたら・・・
一時期 本気で男が好きなんじゃないかと 疑ったことがあるくらいなのよ?
だったら貴女から行くしか無いじゃない。」
「だからなんで私がそんな事をしなくちゃいけないのよ!!」
「じゃあ貴女・・・喜媚ちゃん以外の男に抱かれて 子供を生むことできるの?」

「・・・・!?」


私が男に・・・抱かれる?
その時 私の頭にはあの時の記憶が蘇り
身体は無意識に拒絶反応を示し、震えていた。


「私の目は節穴じゃないのよ?
今でこそ 普通に男の人とも話せたりしているけど
話すのと肌を晒して抱かれるのでは全く違うのよ?
荀家の女として生まれた以上、子を成す事は当然の義務よ。
もう一度聞くけど、貴女、
喜媚ちゃん以外の男に抱かれることができるの?」
「・・・・・っ!」
「・・・無理よね、さっき想像しただけでそれだもの。
子供の頃に あんな事があったのに 忘れられるはずないわ。
心というものは、一度傷つけば傷は治っても
傷跡は残るもの・・
そんな貴女が 好きでも無い男に肌を晒すなんて無理よ。
貴女に喜媚ちゃんより好きな男がいるなら
話しは変わるけど・・いないでしょ?」
「・・・・・」
「すべての条件を満たしているのが喜媚ちゃんよ。
学問、武、五体満足な身体、命の恩人、貴女が唯一心を許せる男、
これだけ揃ってて何が不満なのよ?」
「・・・・」
「言っておくけど、コレが最後の機会よ。
貴女は今までなんだかんだ言って 見合い話を断ってきたけど、
喜媚ちゃんには喜媚ちゃんの人生があるんだから、
これ以上、桂花が煮え切らないからといって 引き止めておくことは出来ないわ。
貴女が仕官した時までに 喜媚ちゃんを堕としていなかったら、
適当な官職に付いている男の嫡子を 無理にでも婿に取るわよ。
その時に 子供を生むために貴女が無理やり犯されても 私は止めないわよ。」
「・・っ!?」
「わかったわね。
コレが家を預かる 私にできる最大の譲歩よ。」
「・・・・はい。」
「じゃあ話は終わりよ、部屋に戻っていいわよ。」
「はい・・・」


お母様の話が終わり、私は部屋に戻り寝台に身を投げ出す。


(・・・・・私が喜媚と?
喜媚の子供を私が生むの・・・?)


それを想像しただけで、
先ほどの男に抱かれるのを想像した時とは違い 全身が熱くなる。
身体の震えや拒否反応も一切しない・・・

私も荀家の女だ、そういった教育も受けているので
ありありと喜媚と私が・・・そういう事をする様子が想像できる。
それどころか、私が喜媚に無茶苦茶にされながらも、
悦んでいる姿すら浮かんできた。


「っ~~~~!!!?
あぁぁ~~~~もうっ!!
なんで私がこんな・・・!
ただでさえ仕官先を選ぶのに大変なのにぃ!!」


結局、この日はもう喜媚の顔をまともに見る自信がなかったので、
部屋に篭り、悶々とした時間を送っていた。


  1. 2012/09/18(火) 01:21:49|
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二十五話


許昌




関羽さんが一緒に生活するようになり、
畑仕事は楽になったのだが、
桂花が良く来るようになった・・・と言うか
監視しに来るので
総合的に見ると、仕事の進み方はあまり変わっていない。

桂花が来ると、作業そっちのけで
話し合いがはじまるのだ。

最初は関羽さんの希望通り、
簡単な農業の知識を話していたのだが、
途中から兵法の話になり、
小石を並べては、この状況の時はどう攻めるべきか?
等と 話しをしている。

また関羽さんが模範的な生徒なため、
教える方の桂花も楽しいらしく、
徐々に白熱していき、私も巻き込まれて
ちょっとした討論会になる。

そこに郭嘉さんが混じったらもう終わりだ。
その日はろくに作業にならない。


そして武術の訓練がまた厳しい。
関羽さんが私の限界ギリギリを見極めて 模擬戦の相手をするので、
最初の方は 終わったら ろくに立つこともできなくなる日もあった。
流石に次の日仕事にならないので、
そういうぎりぎりの訓練は止めてもらったのだが、
それでもキツいものはキツい。
更に質の悪いことに関羽さんに悪意が全く無いので、
私も下手に手を抜いたり出来ない。


そんな、新しい生活を送っていたある日、
突然城壁の見張り台に設置されている銅鑼が激しく鳴り出し、
賊が攻めてきた合図が街中に鳴り響いた。


「な、何事ですか!?」
「賊が攻めてきたんだよ!」
「喜媚、行くわよ! 関羽、あんたは喜媚の家で待ってなさい!」


私は桂花が言うように、
桂花に付いて銅鑼の鳴った東の城壁まで走っていくが、
関羽さんも私達に付いて来た。


「待ってください、お二人は何処に行くんですか?」
「城壁よ!」
「城壁!? ならばこの関雲長もお伴します!」
「あんたが何を勘違いしてるか想像はつくけど、
別に私達は戦いに行くわけじゃないわよ。」
「ならば武器も持たずに 何をしに行くのですか!?
賊が攻めてきているというのに!」
「私達は戦闘の様子を観察しに行くのよ。」
「賊が攻めてきているというのに 物見遊山ですか!!」
「違うわよ! 賊相手の策や防衛の陣形は
私達も関わっているから、実戦でどう運営されるのか見て、
兵の被害を最小限にするために少しでも改良点を見つけるのよ!」
「・・・ならばやはり私も着いて行きます!」
「ただの野次馬根性なら この許昌からあんたを叩き出すわよ!
兵の命がかかってるのよ!」
「違います! 城壁から観察するとは言え、
お二人に何かあったら大変です。
私なら飛んでくる矢くらい叩き落せますから、
お二人の護衛として着いて行きます!」
「・・・もう! だったらしっかり守りなさいよ!」
「承知!」


そう言うと私達は、城壁に登る階段を駆け上がり、
既に付いていた郭嘉さんや荀桂さんと合流する。


「どんな状況!?」
「あら、関羽ちゃんも来たの?」
「私達を守るんですって。」
「そう・・状況は悪くはないけど、
今までで一番数が多いわね・・・
どこからかき集めたのか、六百はいるわね。」
「郭嘉、兵種は?」
「ほとんどが農具などで武装した歩兵ですが
チラホラと槍が見えます。
それと騎馬が百五十ほど。」
「百五十! やっかいね・・・」
「こっちも東側で出せる最大数出していますので 平原で勝負をつけます。
畑を荒らされるわけには行きませんので。」
「他の方角は大丈夫なのね?」
「今のとこ、問題ないようです。
一応それぞれの方角に、
最低限の盾隊と槍隊の合同部隊を用意しています。
私なら騎馬は、城壁脇に伏せておいて、盾隊で抑えた所で
弓で牽制後、南北両方から突っ込ませます。
まぁ、賊が正面から突っ込んできた場合の話ですけど。」


桂花と郭嘉さんが作戦について話しあっている間に
私がこの間、郭嘉さんの眼鏡を作った職人に頼んで
部品を作ってもらい その場ですぐに組み上げれる
簡易望遠鏡を使って賊の様子を確認する。

この簡易望遠鏡は、少し厚めの皮を丸め、
その両端に作ってもらったレンズを
嵌めこむだけの簡単なものだ。
眼鏡があるなら出来るだろうと思って頼んでみたら、
以外にあっさりできてしまったので、
この世界の科学技術の進歩のいびつさを感じたのだが 便利なので使っている。


「喜媚、大将は分かった?」
「大将っていうか・・何人かそれらしいのがいるんだけど、
総大将っていうのはいないみたい。
それぞれ好き勝手に動いてる気がするんだけど・・
どう思います荀桂さん?」
「そうね、私もそうだと思うわよ。
アレだけの数の賊がまともに運用されるとは思えないわ。
見たところ装備も部族もバラバラ、
完全な寄せ集めで人数だけ集めたって感じね。」
「ならばこの後の対応はいつも通りで構いませんか、荀桂様?」
「私に言われてもね、今回総大将は私じゃないんだから。
でも警備隊の部隊長にも今の話を連絡してあげて。
あの子は優秀だから、もう知ってると思うけど一応ね。」
「はい!」


そう言うと郭嘉さんは城壁を走って行き、
部隊長の所に報告に行った。

所でさっきから関羽さんの様子が変だが大丈夫だろうか?
そう思い、彼女の方を見ると、
顔は真剣そのものだが、
きつく握りしめた拳に血が血管を回らなくなり 指が白くなっていた。


「関羽さん大丈夫?」
「・・・え? あ、大丈夫です!」
「気分がわるいなら 少し座っててもいいよ?」
「大丈夫です、私も賊退治は何度もやってますので、
この程度・・・・」
「でも関羽さんがやってた賊退治って こんな大規模な戦闘じゃないでしょ?
別に気分が悪くても誰も笑ったりしないから 少し座ってゆっくりしたら?」
「いえ、大丈夫です。
下では実際に戦う兵士の方々がいるのに、
私がのんきに座って休憩など取れるはずもありません!
それに喜媚殿達を守るのが 今の私の仕事です!」
「そう? ・・・ならお願いね。」


どう言っても 言うことを聞いてくれそうにもないので、
とりあえず関羽さんはそっとしておく。

私も賊に変な動きがないか 観察しておかないといけないので、
彼女だけにかまっている訳にはいかない。
私がなにか見落としたら、兵士の人達が危険になるのだから。


そして郭嘉さんも報告から戻ってきて、
私達は城壁の上で下の戦闘の動きを観察する。
今日は荀桂さんも弓と矢を持っているので 戦闘に参加するようだ。


「喜媚ちゃん、優先して倒すべき相手がいたら教えてね。
私が弓で狙ってみるから。」
「はい、分かりました。」


私も一応 弓は引けるが今回は簡易望遠鏡を使っての、
敵の監視が主な役割なので、その役目に徹する。


戦闘は概ね郭嘉さんや桂花の予想通りなのだが、
賊の騎馬が別々の指揮官が付いているのか 少し広がりすぎているので、
警備隊の指揮官が指示を出して、
騎馬の動きを誘導するように弓隊に指示を出す。
コレは当てるためではなく騎馬の牽制なので、
馬の進行方向を誘導するように矢の雨を降らせられれば
訓練されていない馬なら逃げるように動くので ある程度誘導できる。

誘導した所で、もはや許昌名物の長槍隊による槍衾だ。

騎馬は混乱、又は串刺しになっていくが、
一部の騎馬隊だけわかっていたように途中で方向転換し
盾隊に突っ込まず横に回り込もうとする。


「槍衾を知ってる賊がいたみたいですね。
前回の生き残りがいたのか 見てたものがいたのか・・」
「そうみたいね、でもこっちも騎馬はあるのよ。
・・・ほら。」


盾隊に突っ込まず北の方へ避けていった賊の騎馬隊は
ちょうど方向転換しようとした時、
北側城壁の影に伏せていた騎馬隊に
横から突っ込まれて蹂躙されている。

騎馬の突進が不発に終わったが
賊の方は指揮系統がしっかりしていないのか、
当初 出されたであろう 突撃の指示を律儀に守り 盾隊に正面から突撃する。

その際、既に盾隊に突っ込み槍衾に蹂躙された騎馬隊の生き残りが、
後ろから突っ込んできた歩兵に押しつぶされ、
賊の前線は崩壊、後は合図と共に 賊の歩兵後方に矢の一斉射が放たれ、
南の騎馬隊が次の合図とともに 賊の歩兵の側面から蹂躙し敵は混乱、
その後は掃討戦へと移行し、今回の戦闘は終了した。


「やはり、賊相手の防衛戦ならこの陣形や、槍衾は使えますね。」
「一本道の渓谷等でコレをやられたら最悪ね。
火計が使えればいいけど、あの盾、
燃えにくい木でできてるし、鉄板貼ってあるのよね・・・
どっかの馬鹿の入れ知恵で。
油壺の投擲だって距離が近く無いと使えないし・・・
それにあの部隊、
火計対策は徹底的に訓練で仕込んであるのよね。
・・・・私だったら どう攻めるか。」
「やはり正面からは危険です、
渓谷なら多少時間を掛けても側面に回り
落石を狙うべきでは?」
「そうね・・・でも登れる程度の渓谷ならいいけど
城壁で区切られた通路だと使えないわよ。
盾隊で抑えられて城壁上から矢で撃たれて壊滅ね。
まさに今の賊のように。」


二人は戦闘中にもかかわらず
策や敵対した場合の対策を議論している。
・・・・最初と比べて随分精神的にタフになったものである。

しかし、関羽さんはそうは行かないようだ。
城壁の上から戦闘後の戦場を見て呆然としている。
まるで、最初の頃の私達のようだ・・・
やはり幾ら未来の美髪公と言えども私達と同じ人間、
私なんかより身体も技も心も強いが 彼女も女性。
おそらく初めて見る大規模な戦場なのだろう、
大地を真っ赤に染め上げる血や 数百にも及ぶ馬や人の死体の山、
今までの常識を打ち壊すその光景に、頭が追いつかないのだろう。

私が関羽さんのそばに寄って、彼女の肩を叩くと
ビクリと一瞬 身体が震えた後、
私の方を振り向いたが、
彼女の表情は暗く、血の気が引いたのか青ざめていた。


「関羽さん大丈夫?」
「・・・だ、大丈夫です?」
「無理しなくてもいいよ?
私も そこの桂花と郭嘉さんも最初は皆 今の関羽さんみたいだったんだから。」
「・・・い、いえ! 私は武人です!
戦場で武人が怯えるなどあってはならないことです!
えぇ! 大丈夫ですとも!」


彼女の口調が少しおかしくなっている、
誰が見ても大丈夫とは思えないが
これ以上無理に彼女を追い詰めてもいい結果にはならないと思った私は
桂花達に先に帰るように言い、
彼女達もわかっているのか あっさり認めてくれた。


「じゃあ、関羽さん帰ろうか?
今回の戦闘での話し合いはまた後でもできるし、
私達がココに残ってるとみんなのじゃまになるし。」
「・・そうですね。」


私は関羽さんを連れ、家に戻る。
途中で兵士の人や死体を片付ける穴掘りの人達と何人もすれ違ったが、
皆、一様に暗い表情だった・・・


(やっぱり勝利の一瞬だけは皆喜ぶけど、
その後始末・・・この時間になると急に現実に引き戻される・・
大義ある戦争でもなく、ただ奪われるだけの争いだから
そう思うのもしょうがないんだけど、
皆がこんな目に合うのはできるだけ少ないほうがいいな・・・)


私達は家に向かう途中、お互い何も話さなかったが、
おそらく関羽さんも道中出会う人達を見て、
私と同じようなことを考えたのだろう・・・

私は気落ちするばかりだが、
関羽さんの瞳にだんだん力が戻っていくのがわかる。

何かを決意したような感じが、
彼女の表情を見ただけで感じられる。


こういう時に、私と彼女達では
明らかに生きる世界が違うのだと言うのを感じる。
私はただ、ひたすら嫌気がさし、
こんな事なくなればいいと思うばかりだが、
桂花や郭嘉さん、それに関羽さんは
自分で動いて何とかしようとしている。

時々、そんな彼女達を見るのが無性に辛い・・・


家に無事たどり着き、
母さんに簡単に報告した後、
私と関羽さんは一旦 井戸で顔を洗ってから、
母さんが作ってくれたお粥を食べた後、
軽く就寝の挨拶だけして、それぞれの部屋に向かった。




戦闘の記憶が残っていて
眠れずに布団の中でぼーっとしていると、
庭のほうから何か、風切り音のようなものが聞こえてきた。
ただの音だけなら私も無視するのだが、
その音が一定のリズムで鳴っている。

何かあるのかと思い、鉄扇を持って庭に行くと、
そこには青龍偃月刀を一心不乱に振る関羽さんが居た。


「・・・・なんだ、関羽さんか。」
「え? ・・・喜媚殿。
起こしてしまいましたか?」
「いいや、元々寝てなかったし、
気にしなくていいよ。
関羽さんは何してるの?
訓練にしては遅過ぎない?」
「・・・・・すいません。」


関羽さんはいきなり謝ったと思ったら無言になり
偃月刀を下げ その場に佇んでいる。


「・・・今日の戦闘の事?」
・・・・ビクッ。
「やっぱり・・・」


私は関羽さんの傍へ行く、
すると彼女の手が若干震えていたので
私はそっと彼女の手を握る。


「あ・・・・」
「戦場に実際出たわけじゃないけど、
あの戦場の空気に触れて、あの結末を見たらしょうがないよ。」
「・・・・しかし。」
「さっきも言ったけど、私も桂花も郭嘉さんも皆最初はそうだったよ。
皆最初は・・・怖かったよ。」
「・・・・っ!
し、しかし私は武人として! ・・・・武人として。」
「武人が怖がったって別にいいじゃない。」
「・・・え?」
「関羽さんはあの戦場を見て怖いと思ったかもしれないけど・・・・
その帰りに皆の表情を見て、何か思うことがあったんでしょ?
私が見てても、明らかに表情が変わっていったよ。」
「・・・はい。
あの時の・・・・戦場でたくさん死んでいく賊や兵士を見て、
その後、ココに来るまでの道中で見た、あの人達の表情・・・
勝利に喜ぶでもなく、怒るでもなく、
・・・確かに戦闘には勝ったのに、
それでも 虚しさや、悲しみをひた隠しにして、
戦場の処理をする人達を見ていたら、
こんな事はもう二度と・・・あんな思いをする人達を、
もう二度と出してはいけないと思いました。
家族を失って悲しむ人や、
村を襲われ怒り悲しむ人達をたくさん見てきましたけど・・・
たとえ勝っても! 守りぬいても!
・・・それでも戦争では何かを失うんですね。」
「うん・・・でも関羽さんは凄いよ。」
「え?」
「そんな人達を何とかしてあげたいと思ったんでしょう?」
「・・・・はい!」
「だったら関羽さんは立派な武人だよ。
恐怖を感じても、それでもなんとかしようと立ち上がったんだから。」
「・・・そう、でしょうか?」
「そうだよ。」
「・・・・」
「怖いのは当たり前だよ、死ぬのは皆怖いよ。
でも、それでも立ち上がっていけるから関羽さんは凄い武人なんだよ。」
「・・・喜媚殿。」
「桂花や郭嘉さんもそうだよ、
あんな状況を見て怖いと思っても 皆、前に進もうとしてる・・・
彼女達は武は修めてないけど、
その心意気は立派な武人・・・と言うか、なんというか・・・・
とにかく凄いんだよ!」
「・・・フフ、何を言っているかわかりませんよ。
・・・でも、ありがとうございます。」


関羽さんの表情もさっきまでの 切羽詰まったような表情ではなく、
今は穏やかながらも、瞳には力が宿っている。

これならば大丈夫だろう。


「さぁ、あんまり根を詰めても身体を壊すから、今日はもう寝よ。」
「そうですね・・・・なんか、喜媚殿と話したらすっきりしました。」
「そう? じゃあ、私は部屋に戻るから。」
「あっ・・・」


そう言って、私はさっきまで握っていた
関羽さんの手を離そうとしたら
逆に強く握られてしまった。


「あの・・・手を離してくれないと部屋に戻れないんだけど。」
「あ・・あの! よ、良かったら・・・今夜は、その・・一緒に
寝てくれませんか・・・その、やはり一人になると、
さっきの戦場を思い出してしまうので・・・」
「・・・・あぁ、いいよ。
実は私達も、最初に戦場を見た後は三人皆で寝たんだ。」
「そ、そうなんですか?」
「桂花が郭嘉さんと私を自分の部屋に引っ張りこんでね。
あ、桂花には私が言ったって事は内緒にしてね。」
「フフ・・はい。」
「じゃあ、寝よっか。
私の部屋の寝台の方が大きいから 二人なら大丈夫でしょ。」
「そ、そうなんですか・・・・じゃあ、そのお邪魔します。」


こうして、この日 私と関羽さんは一緒に眠ることになった。
寝台に入り片手をつないだ状態で寝たら私も関羽さんも
精神的に安心できたようで、
それまでの肉体と精神の疲労が一気に襲ってきて
すぐに寝てしまった。



しかし、私は忘れていたのだ・・・・大事なことを。


  1. 2012/09/18(火) 01:20:35|
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二十四話


許昌




(冷静になれ、冷静になるんだ。
冷静になればなんでもできる。)


私と桂花の目の前に立っているのは
知ってる人が見れば人目でわかる、美髯公
もとい美髪公こと関雲長その人だ。

そもそも なぜ 今 関羽さんが許昌に居るのか?
とにかく、彼女の話を聞くしか無いようだ・・・


「それで、関雲長といったかしら?
あなた我が家の家主、私のお母様に用があるとかいう話だけど
一体何の用事なの?」
「はい、実は・・・」


彼女の話を要約すると、こうだ。


彼女は今の漢の現状を憂い、
旅をしながら賊を狩ったりしているのだが、
旅の途中で この許昌の噂を聞いたんだとか。

なんでもこの辺りでは最も発展していて、
民が飢えること無く、賊の大群に襲われても
見事に返り討ちにしたとか。

そこで見聞のため、それと心もとなくなった旅費を稼ぐために
この許昌まで来たのだが、
市場などを周り、用心棒や傭兵等、
武を使う仕事を探したのだが、
この許昌では、警備隊が優秀なため満足な仕事がなく、
あったとしても別の町へ移動する際の警護といったものしか無い。
かと言って普通に働いたのでは
旅費を稼ぐまでにどれくらいかかるかわからないので
割のいい仕事を探していたのだが
その途中で、この辺りに顔の広い荀桂さんなら
いい仕事を紹介してくれるかもしれない。
と言う話を聞き、やってきたというのだ。


はい、彼女が許昌に来たのは私のせいですね。
ありがとうございました。


「ふ~ん、そういうこと。
生憎とお母様が帰るまでもうしばらくかかるけど・・・
貴女、誰の紹介でココに来たの?」
「市場で鍛冶屋を営んでいた熟年の男性の紹介です。」
「あぁ、あの人ね。
わかったわ、家の中に入ってお母様が帰ってくるまで待つといいわ。
お茶と飲茶くらい出すわよ。」
「ありがとうございます!」

(ちょっと、桂花いいの?)
(いいのよ、鍛冶屋のおじさんの紹介なら
この娘の為人は確かだろうし。)
(そういうものなの?)
(そういうものなのよ、この家に紹介されてきたなら
その途中で為人を確かめられてきているはずよ。
逆に為人が確かな人物じゃなければ
家に紹介されて来ることなんてないんだから。)
(ふ~ん、そんな風になってたんだ。)

「あの、どうかされましたか?」
「なんでもないわよ、
今この子にお茶の用意をさせるように言っていただけだから。
じゃあ、喜媚頼んだわね。」
「はい。」


そして私は勝手知ったる桂花の家の台所へ行き、
お茶等の用意をしてから
応接間で待っている桂花たちの元に行く。


「おまたせしました。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」


二人にお茶を出して私は下がろうとしたのだが・・


「喜媚、あんたも座りなさいよ。」
「え? ・・・・でも。」
「あんたはウチの使用人じゃないんだから
別に問題ないじゃない。」
「じゃ、じゃあ・・・失礼します。」
「それじゃあ、簡単に自己紹介しようかしら。
私は荀文若、貴女が訪ねてきた荀桂の娘よ。」
「私は胡喜媚と言います、喜媚と呼んでください。
私は・・・・なんというか、
この荀文若様の友人をさせてもらっています。」
「そうだったんですか。
では、先程も名乗りましたが、
私は関雲長、河東郡解県から諸国を旅をして回っています。」
「河東郡解県と言うと、塩で有名ね。」
「えぇ、よくご存知で。」
「有名だからね。
それで、雲長さんはどうしてわざわざ諸国を旅してるのかしら?
何処かに仕官するという道もあると思うけど?」
「はい、未だ、私が心から
仕えることができる主に出会えませんので・・・
それに、将来のため、今の内に見聞を広げようかと。」
「そう、それは立派なことね。
・・・・どこかの誰かに聞かせてあげたいわ。」


そう言いながら桂花は私の方を流し目で見てくる。


「・・・・」
「どこかの誰かに聞かせてあげたいわ。」


今度は はっきりと私の顔を正面から見ながら言ってくる。


「何度も言わなくてもいいよ。」
「あの・・・」
「あぁ、別に気にしなくてもいいわよ。」
「はぁ・・・それで、先程文若殿が名乗られて
思い出したのですが、
文若殿はもしかして、この許昌で農法や兵法等で
民の為に太守様に知恵を貸しておいでになると言う
話を聞いたのですが、その文若殿ですか?」
「まぁ、私一人の知恵じゃないけどね。
他の二人と皆で考えてその知恵をお母様に伝え、
それが結果的に太守様に伝わって、実行されただけよ。」
「おぉ、では、噂は本当だったのですね!
私では武でしか民の為に力になれませんが
文若殿は知で多くの民を救ってらっしゃるのですね。」
「私は知があるからそれを使っているだけで
貴女には武があるのだから、
私にはできない方法で民の為に力になればいいんじゃない?」
「そうですね・・・私にはそれしかありませんし。」
「おせっかいかもしれないけど、
最低限の知はつけておいたほうがいいわよ?
貴女が将来仕官して軍を率いるのに 最低限の知が無ければ、
それはただの烏合の衆と同じなのだから。」
「はい、それはわかっているので
一応兵法も学んではいるのですが、なかなか・・・・」
「まぁ、武も知も一朝一夕でどうこうなるものではないのだから、
継続することが大事よ。」
「そうですね。」


・・・・なんか凄い真面目な話をしていて
私は居づらいのだが・・・帰っては駄目だろうか?
桂花がたまに私の方を睨むのは、
「あんたも雲長を見習って少しは世のため・・・
と言うか私と一緒に働け!」 と、言っているようにしか見えない。

時折、桂花が私の方をにらみながら、
真面目な話を続ける二人を桂花の横で眺めていたのだが、
私の精神が削り取られる前に
ようやく 荀桂さんが帰って来てくれたので
なんとか、私は耐え切れずに逃げ出すという愚行を犯さずに済んだ。


「ただいま・・・あら? お客さん?」
「お帰りなさいお母様、
鍛冶屋のおじさんに紹介されて、お母様を訪ねて来そうよ。」
「そう・・初めまして、荀桂よ。」
「はじめまして、関雲長と申します。
この度は 荀桂殿に是非お願いがありまして、
こうして訪ねて参りました。」
「あら そうなの?
どんなお願いかしら?」


その後、関羽さんは最初に私達に話した内容を
荀桂さんに説明し、良い仕事を紹介してもらえないか?
と、説明をする。


「う~ん そうねぇ・・・ある程度稼ぎが良い仕事ねぇ。」
「武には自信がありますので、
賊退治や傭兵等の仕事でも構いません。」
「ふむ・・・」


荀桂さんは、関羽さんを上から下へと観察する。


「そうね、私と一対一で試合をしたら、私 負けちゃいそうね。」
「えっ!? お母様、雲長はそんなに強いんですか?」
「さん をつけなさい、お客さんなんだから。」
「ご、ごめんなさい。」
「試合なら負けるわね、戦場でなら話は別だけど。」
「む・・・如何に荀桂様といえど、
今の言葉は聞き捨てなりませぬ。」
「別に貴女の武を侮辱したわけじゃないのよ?
貴女には経験がまだ足りないから、
経験が豊富な分私でも勝ち目があるっていう話しよ。」
「・・・・」


関羽さんが荀桂さんを睨むが、
荀桂さんはどこ吹く風だ。


「戦場では常に一対一というわけではないでしょう?
それに流れ矢だって飛び交うし、
敵の兵を盾にしたりそれこそなんでもありよ?
そういう経験が私のほうがあるから、
戦場では別だといったのよ。
一騎打ちで貴方に勝てるなんて言ってはいないわよ。」
「・・・そうですか。」
「己の武に自信を持つのはいいのだけど、
もう少し、落ち着いて周りを見ることができるようになれば、
貴女も戦場で命を落とすことはなくなるでしょう。
今みたいにちょっと武を貶されたように聞こえただけで冷静さを失っていたら、
そこらの新兵にだって隙を突かれてやられちゃうわよ?
気をつけなさいね。」
「ご忠告として承っておきます。」


どうやら関羽さんも納得したようで
先ほどのピリピリとした威圧感はなくなった。


「さて、仕事の件だけど。
私が紹介できる仕事だと・・・そうねぇ、
喜媚ちゃんのところとかどうかしら?」
「「はぁ!?」」


私と桂花が、お客の前で出しては行けないような声を出して驚く。


「喜媚殿・・の所ですか?」
「えぇ、喜媚ちゃんの所は農家なんだけど
色々手広くやってて、あの袁家とも繋がりがあって
私が知ってる中でもかなり儲けている方よ?」
「袁家というと、三公を輩出したあの袁家ですか?」
「そうよ。」
「荀桂様・・・袁術ちゃんとは普通に商取引をしているだけで・・・」
「ほらね? あの袁公路様を袁術ちゃんなんて呼べるのは 許昌ではこの子だけよ。」
「・・・な、なるほど。」
「荀桂様! 雲長さんも変な風に納得しないでください!
それになぜ私のところなんですか?」
「私が紹介できる中で、一番儲けているからよ?」
「他にも商人とか居るじゃないですか・・・」
「雲長さんができそうな仕事で 高給を出せる所は無いわよ?
それに理由はもうひとつあるのよ。」
「何ですか?」
「雲長さんは許昌の見聞もしたいのよね?
この許昌がどうして発展しているのか知りたいのよね?」
「はい。」
「なら喜媚ちゃんの所が一番いいじゃない。
この許昌が他の都市よりも農作物の出来がいいのは
喜媚ちゃんの研究のおかげなんだから。
この許昌で、いま一般的に使われている農法の基礎は、
ほとんど喜媚ちゃんが考案したのよ?
ウチの桂花達はそれを普及しやすいように調整しただけだもの。」
「・・・本当ですか!?」
「本当よ、表向きは桂花が普及させたようになってるけど
農法自体は喜媚ちゃんが確立したものだもの。」
「・・・・・。」


関羽さんがなんか凄い尊敬の眼差しで見つめてくる・・・
(止めて! 私はただ人の知識を模倣してるだけなの!!)


「それと、雲長さんには もう一つ仕事を頼みたいのだけど。」
「何でしょうか?」
「今度ウチの桂花が洛陽に行くのだけど
それの護衛をして欲しいのよ。
鍛冶屋のおじさんの紹介なら為人は確かでしょうし、
武も私以上なら問題無いわ。
雲長さんは洛陽には行ったことある?」
「いいえ、まだ行ったことはありません。」
「それなら一度行っておいたほうがいいわ。
国を知るなら まずその国の首都を見ないと。」
「・・・確かに。」
「しばらく喜媚ちゃんのところで働いて、
桂花が洛陽に行く時になったら一緒に洛陽に行く。
当然その時の旅費や護衛代は私が払うから、
雲長さんは安い経費で洛陽まで旅ができるし 喜媚ちゃんのところで稼いだお金は
そのまま取って置けるわよ?」
「あの・・・まだ、私が雇うと決めたわけでは・・・」


いきなり関羽さんは立ち上がり、
私の手を両手で握る。


「喜媚殿! ぜひともお願い致します!
喜媚殿の所で働かせてください!
給金は少なくてもいいので、是非この許昌で、
作物の収穫を増やしたという農法を学ばせてください!」
「いや、雲長さんは兵法を学びたいんじゃないの?」
「兵法も大切ですが、人は食べないと生きていけません。
それに食べていけなければ心が荒み、
やがて一部の者は賊に身を窶してしまいます。
民が食べていくためにも 是非優れた農法を学ぶ事が大切なのです!」
「あ~・・・・・あの桂花どうしたら・・・・」
「・・・・なんで私に聞くのよ?
あんたの好きにすればいいじゃない!」
「うぅ・・・」
「喜媚殿!」


若干機嫌の悪い桂花と熱心に私に頭を下げて頼み込んでくる関羽さん。
その二人の様子をみてニヤニヤと笑っている荀桂さん。


(・・・・そうか、荀桂さん仕組んだな。
前から荀桂さんは私と桂花をくっつけようとしてたけど、
今回は関羽さんを間に入れることで桂花を煽るつもりか・・・
その上で、関羽さん私に押し付けて洛陽までの護衛を確保。
一石二鳥どころか三鳥と言うわけか・・・
かと言って・・こんな風に頼まれると断りづらい・・
関羽さんの場合、十割善意だから質が悪い、
それにむ、胸が当たって凄いことになってるし。)
「喜媚・・・」


私が関羽さんの胸を意識した瞬間、
桂花が地獄の底から聞こえてくるような
悍ましい声で私の名を呼んだ。


「ひぅ!?」
「・・・あんたわかってんでしょうね?
関羽とあんたはあくまで雇用関係よ。」
「は、はいっ!!」
「それでは私を雇ってくださるんですね!!」
「決まりね♪」
「え・・・? あっ!?
・・・・じゃ、じゃあ・・・しばらくお願い出来ますか。」


結局 私は弱い人間なのだ・・・
この部屋の中では最弱の虫けらの私が
桂花や関羽さん、荀桂さんに逆らえるはずがないのだ・・・

こうして、この後の話し合いの結果、
関羽さんがウチの空き部屋を使って
住みこみでウチで働くことになってしまった。


私が関羽さんと家に帰る前に
桂花に私だけ呼び出され・・


「いい、あんたと関羽はただの雇用関係なのよ!
その辺しっかりと頭に叩きこんでおくのよ!
特にあの 忌 々 し い 乳 に惑わされて
妙なことしたら あんた・・・・殺すわよ。」


あの時の桂花の目はマジだった・・・
今までの怒りから出る台詞ではなく 本気で私を殺るつもりの目だった。


関羽さんを家に連れ帰り、
母さんに話をしたら あっさり了承され、
空き部屋を関羽さんと掃除し、
とりあえず今日は寝れるような状態には出来た。

その際、他人行儀なので、
字ではなく名で呼んでほしいということで お互い名で呼ぶようになり、
関羽さんも桂花の家でのような固い話し方ではなくなり、
普段(?)通りの話し方になったのだが、
元々お固い性格のようなので そんなに変わった感じはしなかった。

掃除の後に母さんと武術の訓練となるはずだったのだが、
母さんが、 「関羽ちゃんが居るなら
関羽ちゃんに稽古をつけてもらえばいいじゃない。」と言う、
明らかに自分が面倒だからという理由で、
関羽さんと組手をすることになったのだが・・・
この人マジで武術に関することには容赦がない。

特にまだ若いと言うことで教え方が、

「痛くなければ 覚えませぬ。」

を 地で行くのだ。
そういう理由で わずか数分でボコボコにされた私は、
そこで終了・・・・・と いうわけには行かず。
叩き起こされてはボコボコにされるというループを何度か繰り返し、
流石に見かねた母さんが、
「少しは 加減してあげてね♪」 と言うまで 関羽さんのシゴキは止まらなかった。


夕食時に明日からの仕事の話をし、
農法に付いて教えて欲しいと言われたが、
実際の仕事をしながら教えたほうが覚えがいいだろうという母さんの意見で
今日は、食後は普通に寝て 仕事や農法の話は明日以降となった。


こうして、関羽さんを交えた
私達の生活が明日から本格的に始まる・・

私にとっての当面の課題は
明日の朝の稽古を生き残ることであった。


  1. 2012/09/18(火) 01:19:21|
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雑記


こんにちは。


時間余ったので雑記でも。
ウチの地元の方、風すごいんですけど、
台風かすってもいないのにコレだったら、
直撃したらどうなるんだ?

さっき執筆作業終わったんですが、ようやく風呂敷広げ終わって、
後は畳むだけ、終りが見えてきました。
……が、これ萌将伝コースかなぁ、と言う感じがします。
キャラごとに後日談やってたら終りが見えない……
そこそこキリのいいところで切らないと。


たいち

  1. 2012/09/17(月) 15:33:32|
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